あらすじ
一族の闇、怨霊の跋扈、そして骨肉の争い――この国に平穏をもたらした彰子を描く、感動の平安絵巻 彰子への出仕を頑なに拒否していた厄介な女房である紫式部。当初は手を焼いていたものの、彼女との絆や『源氏物語』はやがて、彰子を稀代の国母へと成長させた――。敬愛する夫・一条天皇の突然の死、一族内での足の引っ張り合い、頻発する火災や疫病……怨念うずまく宮中で闘い続け、時の権力者である父・藤原道長に唯一反旗をひるがえし、七代の天皇を支えた藤原彰子の感動の生涯を描いた長編小説。
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Posted by ブクログ
中宮彰子が一条天皇のきさきとなり、その後、故中宮定子の子、敦康の養母となって国母としてのキャリア(キャリア?)をスタートしていくのが上巻。
上巻の終盤で、才女、紫式部を女房として迎え、彼女から漢詩や教養を学ぶことで力をつけ、そしていずれ朝廷全体に大きな影響力を持っていく下巻。
この時代の権力とはすなわち外戚(天皇の母方の祖父)として摂政・関白の座につくこと。
だから自分の娘を天皇の(天皇になりそうな親王の)きさきとして嫁がせ、そして男児を産ませてその摂政になるというのが権力上のゴール。
民のことなんて一ミリも考えてないだろうってくらい、朝廷の人間は自分の娘を送り込むこと、そして男児を産ませることに集中する。
下巻もその記述がほとんど。
中途半端に記述したら、こんなん超退屈な話なのだけれども、冲方丁がすごかったのは、このなりふり構わない人間達の執念を本当に執念深く掘り出したところ。
とりわけ彰子の父、藤原道長と、彰子の弟、藤原頼通の権力への渇望。最初はいらっとするんだけど、最終的にそれを通り越して「なるほどなー。そうまでして。なー」なんて感心する。
そんな欲望と怨念が渦巻く内裏で、「私は決して人を怨まない」と心に決め、愛する一条天皇が若くして崩御してから50年近くもの間、6代もの天皇の国母として、朝廷のため、藤原家のため、そして民のために心を砕く。一条天皇が苦しんだ、そして怨みの象徴である火事(火)を起こさないために心を砕く。
きっと彰子を際立たせるためにも、道長と頼通を徹底的に醜くした部分もあるのだろうけども、まあ、賢人、賢母。
そして彼女の長い人生は最終盤、後三条天皇(圧倒的に優秀な天皇)の一言によって見事に実を結ぶ。人を怨まぬ人生で、人を怨ませぬよう計って生きてきた結果、一度も火を起こさぬ天皇を生み出す。
や、よかった。感動した。「どうせ平安貴族の政治争いなんてただのまぐわい合戦だろ」なんて思ってたんだけど、よかった。
すごい純愛。このレビューで、「え、何が純愛?」って思うと思うんだけど、最後まで読んだらわかる。純愛。よかった。
おすすめ。ただ上巻のレビューにも書いたけど、とにかく前半の藤原詮子のモノローグを乗り越えて。
Posted by ブクログ
国母として頂点に君臨せざる負えなかった彰子。
なんだか、己の親類縁者に振り回されないよう、定子の産んだ子供たちを守ろうとしながらも、思い及ばず。
そして、長生きの家系である彰子は次々と多くの死を見つめることになるのが切ないですね。
友人と彰子の家系は長生きという話をしていたことがあるのですが、それもよし悪しかと(;^_^A
幾度となく炎の災に襲われて、また流行り病に帝が倒れ、何とも言えないですねぇ。
ですが道長亡き後、彼女いなければ道長の家系が衰退するのは早かったでしょうね。
後半、いろいろと武家社会にちかづいてくる兆しも見える物語、大変面白かったです。
『はなとゆめ』が清少納言と中宮定子の友情物語に終始していたことを考えるとこちらは一族の物語でした。
しかし、諸々の事情で読破にこんなに時間がかかってしまった(-"-;A ...アセアセ
Posted by ブクログ
淡々と物語が進んでいく様は、上巻同様に小説というよりは歴史の教科書を読んでいるようでした。
それでも、この時代の火や怨み、祈りや出家に対する想いには興味深いものがありました。
Posted by ブクログ
藤原彰子の一生を、時系列に沿って丁寧に描いた物語。淡々と進む点は上巻と同様だが、下巻では彰子が明確な意思と目的を持って動くようになり、そこに大きな見応えがあった。特に、道長が存命中は実質的に「彰子 vs 道長」の構図になっている点が興味深い。藤原家のために強引に政治を進める道長に対し、彰子は父が兼家や詮子のようにならぬよう釘を刺し、諸卿を懐柔していく。その駆け引きが巧みに描かれ、大きな事件が起こるわけではないものの、気づけば彰子が大きな存在へと成長している。その描写技巧には驚かされた。
また、道長の死後、頼通の治世については私自身知らない点が多く、史実として新鮮に感じながら読み進めることができた。特に、彰子が白河天皇の治世まで生きていたことには驚いた。
物語を通して、この時代に長生きすることの残酷さが浮き彫りになる。夫である一条天皇、実妹の姸子・威子・嬉子、敦康親王、息子の後一条・後朱雀、孫の後冷泉・後三条——愛する者たちを次々と見送る人生の重みが、彰子の生涯に刻まれていた。
それにしても、これほど多くの人が若くして世を去る中で、大病もせず90近くまで生きた倫子(明子もそうだが)と彰子の生命力には驚かされる。改めて、道長の栄華を支えたのは、ニ男四女を産み育てた倫子の存在だったと再認識した。娘たちは代々の天皇に嫁ぎ、子を産み、息子たちは皆長寿を全うしながら政治を動かしていった。
一方で、残念に感じたのは紫式部との関係があまり描かれなかった点だ。死の直前、彰子が思い出すのは一条天皇と紫式部の二人なのに、紫式部との交流の印象が薄く感じられた。晩年はいわゆるナレ死であっさりと描かれており、もう少し回想などを交えて、互いの人生を振り返る場面が欲しかった。
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平安時代とは道長頼道の時代だと思っていたが、彰子の存在の大きさをとても感じた。
紫式部が仕えた方としか習っていないのは、とてももったいないことだった。
それにしても、この時代の放火、悪霊の考え方、そして何よりも身分、家を守るための婚姻を現代になぞらえるとぞっとする。
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内裏、焼亡しすぎ…
それだけ政が荒れてたということか。内裏に限らずいろいろなものが燃えてなくなったんだろうな。しっかりしていれば火はおこらない。いまの世なら炎上してるという表現になるのかな。実際の火がおこってないからことの重大さに気づきにくい。火は怖い。すべて灰になる。
長くて濃い一生だった。もう誰が誰だかわからなくなったが、ただ彰子が一条帝を思い続けて最期は穏やかそうで、それだけでよかった。
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彰子の長子出産から亡くなるまで。下巻は丁寧に説明された年表を読む感じで、少々駆け足で物語が進むため他の方のレビューを見ると賛否両論ある様だが私は充分楽しめた。それにしても当時は刃傷沙汰が無い代わりに建物がよく燃える
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藤原道長「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」
一条天皇「怨みをなくし和をもって尊び人々の苦境が後世の災いを生まぬようにする」
怨み怨まれる世でどう安らかに死んでいけるか、どう生き抜くか。
置かれた状況で何を思うか。
大河ドラマ「光る君へ」を見始めてから読んだ作品。同時進行で読むから面白く一気読みできたと思う。清少納言側の話しも読みたい。
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国母彰子の生涯は立派だった。
火事と病気が次々に起こり、
兄弟間で政権争いが激しい中、世の安寧を一心に願い続けた生涯だった。
先日から紫式部と藤原道長を主人公にした大河ドラマが始まったが、この小説の道長像とすごく違いそう。
Posted by ブクログ
1000年前の朝廷が舞台の大河小説。主人公の彰子がまだ少女の頃から始まり、環境に負けず一条天皇と心の距離が縮まり愛が深まっていく前半、子供ができ自分の生き方の軸を定め活躍する中盤、相次ぐ不幸と戦う終盤、、あっという間に彰子の一生を追体験してしまった。
また、病気が怨みから来るとか、物怪が取り憑くなどということが真面目に書かれており、当時の人間の価値観を理解しながら感情移入できた。
とにかく面白かったが、後半は起こった出来事を並べるだけのところもあり、物足りない感もあった。(ただでさえ上下巻なのにもっと長くなってしまうが、、)
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数奇な運命というより、彰子の実務&心労のあまりの多さに「おつかれさまです……!」という感想が先立ってしまいました。骨肉の争いに肉親の度重なる死も、人事や行事の差配も、考えるだけで気が滅入ってしまいますね……; というか行事が多すぎる……。
物語のほとんどが実際に起きた出来事の列挙になっているので、読むのはなかなかくたびれましたが、これだけの沿革を網羅・解釈・作品に落とし込めるだけ文献や資料を読み込んだのだと思うと、筆者にもまた「おつかれさまです……!」と声を掛けたくなりました。
Posted by ブクログ
下巻の彰子様は宮廷政治の中枢に生きる
時代が巡り、自分の子を送り、火事や疫病が蔓延る宮廷や市中に次々と変わる後継者
そこへ入内させる姫君達
あまりの登場人物により挫折しそうだった
Posted by ブクログ
上巻より読むのに時間がかかってしまった。
後半は、小説というより、淡々と事実が並べられ、彰子の伝記という雰囲気だった。
この巻で最も盛り上がる(と私が思った)のは、やはり一条天皇崩御後、敦康親王立太子をめぐって、彰子が父道長に反旗を翻すくだりだろう。
母から皇子を取り上げ、女性を政から遠ざけようとする摂関政治のやり口に、仕える女房達を従えながら、否と主張するのだ。
小説の後半は、これまで中心的には論じられてこなかった、彰子の「母后」としての力を描いていく。
一条天皇の漢学に由来する政の理想を、彰子が引き継いでいったともあるのだが・・・。
彼女が力をふるったのは人事であり、後宮政策だ。
官人として誰を登用するかということと併せて、誰の娘を宮中に入内させるかを采配する。
儀式を行い、貴族たちに費用を負担させたり、あるいは逆に禄という形で富を分配する。
こういったことを、晩年までやっていく。
恐るべき力である。
ただ、それは、結局のところ、道長、頼通、教道へと続く藤原摂関家の利益のためだ。
摂関家内の内紛を避け勢力を保つこと、他家の摂関家への恨みを解消させること。
これが要は、この時代の「政治」なのだなあ、とつくづく感じさせられた。
Posted by ブクログ
藤原道長の娘、彰子が主人公の物語下巻。
摂関政治の頂点とも言われる道長、頼通の時代のことが語られるのだけど、ちょっと思っていたのとは違った。
一条天皇が存命の頃から中宮定子の忘れ形見の息子が亡くなる当たりまでは彰子の細やかな感情が伝わって読んでて面白かったのだけど、それから後は、ほとんどが身内の昇進や天皇への娘の入内、病に罹った折の加持祈祷、内裏の火災などが人を変え、場所を変え、何度も語られるので、なんというか飽きてしまった^^
彰子を主人公にしたため仕方ない面はあるのだけど、政治的な面、例えば前九年の役に対する朝廷の動きとかそういうのはほぼ語られない。ちょっともったいないと思ってしまった。
物語の構成というのはなかなか難しいものだなあとあらためて思った。
ちなみに病気になるとなにかと加持祈祷したり寄進したりして病気を治そうとする平安時代は、そりゃ、長生きできないよなあと今更ながら思った。