高橋源一郎のレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
震災後、社会は変わった。社会というか、著作に書かれているように空気が変わった。
震災といえば、まだ311である。
あの衝撃は、以後の地震災害を未だ凌駕している。
音に出すのを慎重になった言葉、単語自体もいっぱいあった。言葉にならない、言葉が出てこない、まさに絶句した時間も長かった。
それは、死者やその身近にいる人びと、渦中にいる人の立場、心情を想像してだったと思う。
電力の大消費地である東京に住んでいる罪悪感も大きかった。加害者のような気持ちだった。
読後、この著作の内容を私は受け止められてない、ざわついた気持ちで、再度、ランダムに開いては読んでみた。
非常時、まずは自分を見つめる。足 -
Posted by ブクログ
『DJヒロヒト』から遡って手に取る。『DJヒロヒト』は帝国日本の戦争の時代だったが、こちらは明治の「近代文学」誕生から大逆事件までを取り扱う。石川啄木が援助交際をしていたり、田山花袋がアダルトビデオの製作に参加していたりと奔放なパロディが反復されているようでいて、二葉亭四迷、島崎藤村、尾崎紅葉、夏目漱石、森鷗外らの「文学」に対する真摯さ、ことばと現実の距離をめぐる苦闘に対するリスペクトは一貫している。横瀬夜雨や北村三啞、川上眉山ら、「文学」に憧れ、「文学」の夢に破れたマイナー/ポエットたちの真剣さに対しても。
初出は『群像』1997年5月号~2000年11月号だから、ちょうどすが秀実が『 -
-
Posted by ブクログ
30年間の間に発表された小説、主に10年間の間に発表された小説を中心に本読みのプロである2人が対談形式で徹底的に語った一冊。世相や日本のみならず世界で起きた出来事と絡めて、日本の文学について語られるが、凡人とは見る視点が違いすぎて、終始驚かされた。
文学から日本の社会の動向がここまで分かってしまうとは、小説がフィクションだと軽視できない存在であると改めて思い知らされた。この30年で、イラク戦争や9.11、東日本大震災などの日本だけでなく世界をも変えるような出来事が文学にも大きく反映されていて、いかに私たちの生活にもこれらの出来事が影響を及ぼしているのか知ることができた。
しかし、自分が読んだこ -
-
Posted by ブクログ
なんと言っても本書は、小説が書きたくなる本。
小説を書くためのネタ探しの方法とか、文章の書き方とかいう技術論には触れずに、小説をはじめるまえにすることは何か、小説を「つかまえる」ために何をするのかにページを割いています。
著者は作家の高橋源一郎さん。本書は小学生に小説を書かせるシーンで始まりますが、つかみが良く、ほぼ一気に読めました。
基礎篇・実践篇と段階を踏んでいく本書では、20個の「鍵」が示されます。
例えば「何にもはじまっていないこと、小説がまだ書かれていないことをじっくり楽しもう」という鍵。
そして、著者は『エミールと探偵たち』(ケストナー)の「話はまだぜんぜんはじまらない」という