朱野帰子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ*大手電器メーカーに勤める科学マニアの賢児は、非科学的な商品を「廃止すべきです」と言ったばかりに、商品企画部に島流しになる。「マイナスイオンなんて存在しません」。正論を主張する彼は、やがて部の鼻つまみ者扱いに!?自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、すべての働く人に贈るお仕事小説*
「わたし、定時で帰ります」の時も思いましたが、表紙のイラスト&書名と内容が一致していない所が意表を突くと言うか、残念と言うか。意外性はありますが、個人的には「賢者の石、売ります」のままで良かったな。
内容的には、かなりずっしり来ます。似非科学を頑なに拒む主人公と、そんなにも頑なにならざる得なかった過去の回想が悲しい。
「似非科学を撲滅して君は何がしたいの?」もわかるし、「幸せな感覚でしかないものに寄り添う」もわかるし、「正しいことを正しいと突き詰める」もわかる。何が正解なのか、答えはないと思うけど…なかなかに考えさせられるお話でした。 -
Posted by ブクログ
婚約中の私にまたもや母が貸してくれた1冊。
なんでですか??
私が、「結婚し、黙ってたら自分の名字のままでいける風潮の男はずるい」と言ったからですか??
……ちなみにそれに対する直接的なアンサーは書かれておりません。
ホラーテイストの短編もあって、ホラー小説が嫌いじゃない私にはそこそこに楽しめた1冊。
でも一番怖かったのは(おそらく幽霊の話ではない)、「鏡の男」。なんでしょう、ラストのその先に幸せの欠片も見えないんですけど。
全体通して、どうしてなかなか、結婚生活に明るさを見いだしにくい内容なのですが、なんというかこう負けないぞという気持ちにもさせられました。
あと、結婚後にもしこんなこと言われたらどうしてやろう?ってシミュレーションもできました笑 -
Posted by ブクログ
ネタバレ田中栄一の作品「メアリー・スーを殺して」。
所謂オタク女子という人物が小説を書いていて、ある人の言葉を切欠に現実と関わる。
関わる先は大きくなっていく一方、メアリー・スーは?
そう、メアリー・スー=中二病となっているが自らが生み出したキャラだ。
作中のメインヒロインを理想の女性として置き、それに自分を投影していく。
彼女の作品の中に必ず出てくる彼女の理想が、メアリー・スー。
没頭していた時代に同じくそれらに没頭していた友人が、少し離れた時間に現れて「あなたの作品が読みたい」と。
久々に訪れた母校、そこで転寝をした彼女の前に現れたメアリー・スー。
キーボードを動かし始める動作で物語は終わる。
田中栄一氏の作品でこれだけ短編は初めて読んだ。
うん・・・
やっぱこの人の作品好きだわ。 -
Posted by ブクログ
科学オタクというからには、さぞかし偏屈な人物が出てくるんだろう。
そういう期待を、本書は決して裏切らない。
羽嶋健児は、一流私大卒の大手メーカー勤務。
イケメンなので、一見高スペック男子。
が、似非科学を許せない科学オタク。
科学を信じるあまり、自社の主力商品を完全否定して干される。
父の末期がん闘病時、不安から怪しげな自然食材に大枚を費やして家に借金を増やした母親とは決裂。
姉の美空は、助産師やネット情報から、母乳神話や自然分娩神話に絡めとられていく。
こうした家族を、健児は、「未開人」と呼んで憚らない。
どこか『私、定時で帰ります』のヒロインを思わせるざらつき加減。
こういう空気を読まない人物を描かせたら、朱野さんは天下一品だ。
健児の唯一の希望は、幼馴染の譲だ。
優秀で家庭的にも恵まれていた譲は、小学生の頃の夢をかなえ、若手の地球科学研究者になっている。
けれど、彼も、大学在学中に父がリストラされ、奨学金という名の借金を負う身となっていた。
ポスドク職を渡り歩き、資金獲得に疲弊している。
物語では、健児が、似非科学にはまる人が、ただ無知であることによるのではないと悟っていく。
それが彼の仕事の上での行き詰まりを解決に導く。
そして健児だけでなく、美空、譲のそれぞれが、決して順風満帆ではないが新しい一歩を踏み出して終わる。
似非科学嫌いの人を主役に据えたところの着眼点がユニークで面白い作品だった。
たぶんシリーズ化は難しいんではないかと思うが。 -
Posted by ブクログ
中田永一(乙一)の作品が収録されていること、そして本にまつわる話のアンソロジーということで購入。
しかし、朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」と沢木まひろ「時田風音の受難」以外はすべて『ダ・ヴィンチ』に掲載されたものだった。
『ダ・ヴィンチ』に掲載される作品は結構クセがあるので苦手だ。
案の定、この短編集も特徴的というか・・・。
中田永一「メアリー・スーを殺して」
おもしろかった。しかし、終盤にかけておもしろさが加速していくような他の乙一の作品と比べると、ややしりすぼみしている。
あと、主人公の内面の話だと思ってたら外に向き始めたことにもやや違和感があった。
「メアリー・スー」という理想像は、完全になくしてもいけないのだろうな。
宮下奈都「旅立ちの日に」
手紙に書かれた物語と、父からの本当のメッセージの間に飛躍を感じる。
原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」
実話が元になっているようだが、小説としての見せ方が中途半端だ。
ノンフィクションとして書くか、もっと飾り付けるかすればいい。
小手鞠るい「ページの角の折れた本」
どうして「あなた」という語りかけ口調なのか。
ストーリーもなんだかよくわからなかったが、読み返す気にもならない。
主人公みたいな女の人がとにかく苦手。
朱野帰子「初めて本をつくるあなたがすべきこと」
夫が情けないのは確かだとは思うが、主人公がすべて正しいような描き方が気に食わない。
ラストの主人公にキレ方はスカッとしてよかった。
沢木まひろ「時田風音の受難」
おもしろい。
官能小説は読んだことがないが、こういう感じの文章なのだろうか。
主人公が女性編集者の百山に翻弄されるのと同じように、私も翻弄されていた。
なおかつ、そうやって振り回されるのが心地良いのもよくわかる。
小路幸也「ラバーズブック」
素敵な話だと思う。
しかし、アメリカっぽさを出しすぎで、押し付けがましい感じがする。
宮木あや子「校閲ガール」
校閲ってそんなところまで見てるのか、と勉強になった。
ただ、やはり苦手な女の人が出てくる。
全体的に、小説を読むというより、世間話を聞かされるような作品が多い。
なので、あまり心に残らない。
強い女の人ばかり出てくるのもひとつの特徴だと思う。
『ダ・ヴィンチ』が女性向けだからだろう。
掲載される作品は芸術ではなく商品であり、読んだ女性が快感を得られるようになっている。
芸能界や海外といったキラキラ感も重要視している。
そういう作品をうまく集めてくるのは、編集部が優秀でコンセプトが定まっているからだと思う。
ただ、やはり男性にはうけないだろう。
私が嫌悪感を抱いてしまうのも、器か小さいということ以上に、仕方ない面が大きいと思う。 -
Posted by ブクログ
「わたし、定時で帰ります。」の著者が描く駅を舞台としたお仕事小説。
駅での出会いを描いた作品かと思いきや、若菜直と言う女性の駅員の成長の物語。
東京駅に配属になった若菜直は、1年前に東京駅で倒れた時に助けてくれた5人の人を探す為に、内定の決まっていた大手企業から東本鉄への入社を決めた。
最初は駅員の仕事にそれほど興味のなかった直だったが、鉄オタを隠して駅員になった同期の犬塚、見た目は派手だけど、実は努力家の同い年の由香子、ぶっきらぼうで少し乱暴な先輩・藤原たちと接するうちに、駅員としての自覚が生まれて来る。
後半の駅員の人格を無視したSNSへの誹謗中傷などに傷つく様子などは、ここ数週間話題になっている自殺した女性へのSNSへの書き込みを思い浮かべずにはいられなかった。
確かに毎日駅を利用していても、駅員さんの人格などを意識したことなど、今まで一度もないかもしれない。
1人1人の駅員さんの努力で、日本の、特に首都圏の緻密なダイヤでの運行が守られていることを考えさせられた一冊。 -
Posted by ブクログ
祖父・麟太郎の突然の死から話は始まる。麟太郎の孫で法学部の大学生・りんは、親族たちが集まった席で祖父の遺産の相続手続きを成り行きから引き受けてしまう。遺産といっても古い家とわずかな貯金しかないんだからと高を括っていたりんだが、麟太郎の隠し子だという青年・植田大介が現れると次第に話は紛糾し、仲良しだと思っていた真壁家の人々の相続をめぐる醜い争いが始まる・・・
「駅物語」から注目していた朱野帰子さん、今回もなかなか抉ってくれました。
小説家の植田大介の実体験に基づく小説を作中に入れ込みながら、相続というものの恐ろしさ、親族であるが故のこじれたときの修復の難しさをひしひしと感じながら読みました。
うちは遺産なんでないから大丈夫と安心しきっている人にこそ、読んでもらいたい作品です。骨肉の争いにならないためにも、温かい思い出を醜い諍いで汚してしまわないためにも、それぞれがあとあとのことをしっかり考えて、できれば生前に冷静に話しておくことが大事なのかな・・・という感想。
ラストは小説だからこそで、実際はもっとドロドロするのかもしれないけど、フィクションではこのくらいで勘弁してほしい。そう来たか!の爽快感は小説ならでは。
家って、家族って何だろう?というごく当たり前なことをしみじみと考えるきっかけになりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昨年話題になった「わたし定時で帰ります」の著者による本ということで手に取った一冊。科学をとことん信じ、似非科学を嫌う主人公が電器メーカーで働くお仕事小説。
主人公の賢児はどうしようもないくらい不器用な人間で、読んでておいおい、とツッコミたくなる箇所がありましたが、物語の設定としてはそのほうが感情移入しやすかったです。
STAP細胞にまつわるエピソードも盛り込まれており、単行本として刊行された当時からみればタイムリーなネタです。また「博士」に関する国の施策とその問題点もそれとなく登場していて、主人公の幼なじみの譲みたいなケースは現実にも多くあるのだろうなと思うと、科学者になって科学を極めるのも楽じゃないだろうねと思わずにはいられません。
賢児はというと科学を信じるがゆえのその言動や性格により、プライベートでは彼女と別れ、家族とのコミュニケーションもうまくいかない、職場でもいまひとつといった境遇。物語の終盤では科学者である譲でさえ現実的な方向を見据え自分のなかで折り合いをつける姿を見せつけられ、仕事でも自分が信じていた科学が他人から見れば怪しいものと認識されていたことを知るなど、これまでの人生で拠りどころとしていたものの儚さを感じる展開、読みながら「この人、相当ショックだろうな…」などと感じ入ってしまいました。
でも最後は姉のちょっとした変化に救われ、仕事では自らの企画、それもやっぱり科学を軸に据えたものがなんとか上司に認められ、自分を取り戻す結果が待っており、明るい希望が見える状態で物語は完結となります。紆余曲折あったけれども賢児としてはちょっぴり成長したのかな、と思われてくれる内容でした。