モーリス・ルブランのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「813」モーリス・ルブラン、大友徳明訳、偕成社ルパン全集5。初出はフランスで1910。
もう多分20年以上前かに夢中になって読んだモノの再読。ルパン・シリーズ全部は読んでいませんが、読んだ中ではルパンの最高傑作だと思っています(水晶の栓も良かったけど…)。
ケッセルバッハという名前の実業家がパリのホテルで殺される。その真相と、ジュヌヴィエーブという美しい娘を巡って、【ルパン・警察・正体不明の犯罪者】が三つ巴の戦いを繰り広げる…という内容で、ルパンはセルニーヌ侯爵であり、はたまたルノルマン刑事部長でもあるという痛快な活躍ですが、相手も強者で何度も危機に。
そして実はこの偕成社版では「続813」と2冊に別れていて、「813」だけでは何の謎も解けずに、ルパンは獄に繋がれたまま終わります。
相変わらず冒険と美女への愛のために不利を背負ったまま疾走するルパンが素敵ですね。 -
Posted by ブクログ
思い出補正が入っていない、といえば嘘になる。それでも面白いものは面白い!
小学生の時、『奇岩城』を含むポプラ社版ルパン全集を、何度も繰り返し読んでいました。そして十数年ぶりのこの『奇岩城』
消えた強盗犯、謎の暗号、天下の大怪盗対高校生探偵の追走劇、歴史に隠された秘密の城とお宝たちと、ワクワクする要素は盛りだくさん。昔繰り返し読んでいたため、話の筋はほとんど覚えてはいたものの、それでもテンポの良さでどんどん読まされます。
ルパンと高校生探偵のイジドールの関係性も良かったなあ。怪盗と探偵という敵同士でありながらも、ルパンはイジドールの実力を認め、時によっては対等の友人、あるいはライバルに語りかけるように、また時には人質を取ってイジドールを事件から遠ざけようとしたり、親や師匠のようにイジドールを褒め称えたり。
まさにルパンらしい掴みようの無さなのですが、根底にあるのは実力があり、なおかつ爽やかな少年へのルパンなりの好意であり、そして敬意でもあるような気がします。
そしてルパンに対するイジドールのキャラも良かったなあ。マンガの影響か、高校生の名探偵ってだいたいひねてたり、生意気だったりというイメージが強いのですが(笑)このイジドールに関しては、ちゃんと警察官にも礼儀正しく謙虚だし、父親思いだし、純粋にルパンとの戦いを楽しんでる感じがみずみずしく、好感が持てます。
それに、ちゃんと授業も受けに帰ろうとするのも、真面目な高校生らしい。他の高校生探偵なんて、だいたい授業ほったらかすし……
フランスの壮大な歴史を辿りつつ、徐々にルパンの隠れ家に迫っていくイジドール。迎えるルパンとの対峙、そして二人が最後に見る光景は……
ルパンは「ジュテーム」のエンタメだと個人的に思っています。ポプラ社版を読んでいたときは、ルパンの恋愛やロマンスに関わる部分はカット・改変も多く、女性や弱者に優しいルパンというイメージでした。なのでたまにこうした完訳版ルパンを読むと、ルパンは愛に正直な怪盗なんだな、と思います。(たまに正直すぎて、笑ってしまうようなものもありますが)
結末もなんとなく覚えていたものの、ルパンの決意の重さも、ラストの余韻も当時は半分も理解してはいなかったでしょう。フランスの歴史の中の謎解きという壮大な趣向があったことに気づき、それなりに人の心や物語の酸いも甘いも知るようになり、そして、子どもの頃からルパンに親しんでいたこと。それらが合わさってこの『奇岩城』の物語の意味は、今回読んで自分の中で大きく変わったように思います。
当時はルパン一冊読むのに1週間以上はかかっていた気がしますが、今では二日で読めるようになっていました。それでも童心に帰るように、ルパンを読めたことは変わりません。これからもルパンは、自分の読書人生の礎として、あり続けるのだろうと、改めて思いました。
余談ですが、作中に出てくるシャーロック・ホームズは、コナン・ドイルとは何の関係もない、ということだけ一応言及しておきます。ルパンシリーズにおけるホームズの扱いは「ルブランも若かったんだなあ」と自分は理解しています(笑) -
Posted by ブクログ
1912年の小説。ルパン・シリーズです。面白い、訳も良い。
ケレンとヒロイズムに満ちて、エンターテイメントずぶずぶです。
ルパンの手下が捕まった。もうすぐ死刑になってしまう。なんとかして救わねば・・・。という物語。
どうやら当時のフランスで話題を呼んだ汚職事件なども変奏して盛り込んでいるらしいですね。
(つまり、「モリカケ事件」を変奏して「新宿鮫」シリーズの新作を書くようなものでしょうか。期待。)
これも実はかなり読み終わってから経過しているので、詳細は覚えていませんが、とにかく悪役がすごい。強い。もうこの強烈さ、ダークさ、毒気。「そうか、伊坂幸太郎って日本のモーリス・ルブランだったのか!」という感じ。
そして、やっぱりルパンシリーズだから最後には、「あの女を手に入れる/守る」というとっても色っぽいところの攻防戦になるのも、実に素敵(笑)。
ドンデン返し、意外な落ち・・・に見えて事態は元の木阿弥に・・・スリリング。スピード感。やめられない止まらない、F1レースのような快楽。そして、もちろんハッピーエンド。
#
恐らく「第5作」と言って良い作品。
1「怪盗紳士ルパン(短編集)」
2「ルパンvsホームズ(中編2作)」
3「奇岩城」
4「813」
5「水晶の栓」
以前から、「813」が並ぶモノ無き最強傑作だと思っていたのですが、「水晶の栓」もなかなかな歯ごたえ。
40代後半の楽しみとして、ルパンシリーズを再読破、というのがはっきり見えてきました。(ただ、それにつけては「ハヤカワ・ミステリー文庫の、実に素敵な大人向けの新訳で」、という条件が付きます。がんばれハヤカワ頼むぞハヤカワ) -
Posted by ブクログ
「よろしければ葉書でも…宛名はパリ、ルパンで十分です。切手はいりませんから。さようなら、また近いうちに…」
こりゃ、書いてる作家も、訳してる人も楽しいでしょうねえ(笑)
########
コナン・ドイル(1859年生まれ)さんとモーリス・ルブラン(1864年生まれ)さんは、同時代人だったんですね。
アルセーヌ・ルパン(1905年から発表)は、当時人気のあったシャーロック・ホームズ(1886年から発表)を意識して、探偵ヒーローならぬ怪盗ヒーローを意識して作られたそうです。
今回、数年に渡ってホームズ・シリーズを全部読んでしまって。名残を愉しみたい気分もあり「ルパン対ホームズ」。
ルパン・シリーズは、ホームズ・シリーズより完全に後発です。ルパンの初期の頃から、ライバル的な名探偵としてホームズは出てきます。
当然なら、同時代ですから。
ホームズの出版社なのかドイルさん本人からなのか、抗議があったそうです。
そこで。
実は原文では、ホームズじゃないんですね。
シャーロック・ホームズじゃなくて、ハーロック・ショルメスなんだそうです。笑っちゃいますね。
それを、日本語訳にするときに、堂々と「ホームズ」にしちゃってる翻訳者と出版社には、拍手です。
最近出た新訳版だそうで、訳文としてはとてもスラスラ読めて良かったと思います。
肩の凝らないエンターテイメントの味わいをきっちり残しています。
「金髪の美女」と「ユダヤのランプ」という2つの中編が入っています。
それぞれに、パリを舞台に宝石やらダイヤやらの盗難を巡って、ロンドンからやってきたホームズとワトソンが、ルパンと対決します。
それぞれに、仕掛け建築の屋敷やら、密室的な謎がありながら、文字通り攻防互角、一進一退。
ルパンも全ては手に入れられず、でもホームズもルパンは捕まえられない上に、多少の苦い思いを残して去って行きます。
ホームズ・シリーズを読み終えてから読んだ身としては。
ルブランさんも相当にホームズが好きなんだろうなあ、と思いました。
それなりに揶揄するところもありますが、ホームズをこき下ろしてはいません。
リスペクトを払っていると思いますし、ホームズの個性や味わいは分かっています。
するすると読み易く愉しめました。そして、今回いちばんおもしろかったのは、お国柄っていうか個性っていうか。
やっぱりルパンは陽性で、人気者で、享楽的で、感情がはっきりしていて、何より美人が大好きなんですね。仲間が多い。その代り、子分や組織がすごくって、ずるいところもあります。
ホームズはオタクです。変人です。ともすれば陰気だし、引きこもりがち。いつも冷静。そして女性にも節度というか距離感があって、ワトソンと同性愛説もあるくらい(笑)。
その代り、ある意味潔くて、孤高で、群れず、倫理的にはとっても涼やか。
こんな風にレッテル付するのは、実際のフランスやイギリスの方には大変失礼なんでしょうけど、
それなりに両国のイメージ(実態は別として、ですが)を体現しているなあ、と微笑ましく思いました。
そして、敵対しながらも親近感のあるふたりは、イギリスとフランスという文化や歴史の距離感をそのまま表しているのかも知れませんね。
卑近に考えると、関東と関西、大阪と京都、みたいに想像してみるのも愉しみですね。
もちろん、昭和の日本産ヒーロー、ルパン三世と名探偵コナンの世界観と重ねてみるのも面白い。
ホームズ・シリーズを20数年ぶりに再読読破してしまったのですが、ルパンも何冊か読んでも良いなあ、と思いました。
大昔に「813」なんか、大興奮して読んだ気がします。
ルパンが折に触れて語り、謳い上げる、人生とロマンスと冒険への賛歌。きざな自画自賛な名調子。
負けじとマイペースで応戦するホームズ。
うーん。実はこれほど、人畜無害にオトナも愉しめる、ぬるま湯なエンターテイメントな小説もなかなか無いですね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『怪盗紳士ルパン』1907
(原題:Arsène Lupin, gentleman-cambrioleur)
収録作
アルセーヌ・ルパンの逮捕
(L'Arrestation D'Arsene Lupin)
獄中のアルセーヌ・ルパン
(Arsene Lupin en Prison)
アルセーヌ・ルパンの脱獄
(L'Evasion D'Arsene Lupin)
謎の旅行者(Le Mysterieux Voyageur)
王妃の首飾り(Le Collier de la Reine)
ハートの7(Comment J'Ai Connu Aresene Lupin:Le Sept de Coeur)
アンベール夫人の金庫
(Le Coffre-fort de Madame Imbert)
黒真珠(La Perle Noire)
遅かりしシャーロック・ホームズ(Herlock Sholmes Arrive Trop Tard)
Maurice Leblancのルパンシリーズ第一弾。平岡敦氏の訳は読みやすく、それでいて子供っぽい表現にはなっていない。ルパンのかっこよさ、頭脳の明細さがよく伝わってくる。
収録作品の中でも、「黒真珠」は一番のお気に入り。物語の構成が面白い。いきなりルパンの華麗な犯行場面が展開され、そこから話が二転三転していく。
「遅かりしシャーロック・ホームズ」で登場するHerlock Sholmes、コナン・ドイルの小説からそのまま出てきたかのような立ち居振る舞い、とはいかないもののホームズらしがあってよかった。 -
Posted by ブクログ
今さらという気もしますが、実は読んだことがないという人も多いはず。ということでアルセーヌ・ルパンのデビュー本を読みました。
いきなり、逮捕されてしまうという意表を突いた登場のルパン。細かいトリックというよりは、心理トリックで獲物に近づくルパン。冒険も活劇もありだけど、一方でアイデンティティの喪失や恋に悩む一面も。短編それぞれに趣があってあっという間に読み終わっちゃいました。
それにしても、いきなりデビュー作品でシャーロック・ホームズと対戦させるとわね。ところで、このシャーロック・ホームズ、原作ではエルロック・ショルメとなっていることを初めて知りました!コナン・ドイルの抗議があったらしいよ。そこでSを移動させたんだって。
原書名:ARSÈNE LUPIN GENTLEMAN CAMBRIOLEUR
アルセーヌ・ルパンの逮捕
獄中のアルセーヌ・ルパン
謎の旅行者
王妃の首飾り
ハートの7
アンペール夫人の金庫
黒真珠
遅かりしシャーロック・ホームズ
著者:モーリス・ルブラン(Leblanc, Maurice, 1864-1941、フランス、作家)
訳者:平岡敦(1955-、千葉県、翻訳家)