モーリス・ルブランのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「奇岩城」モーリス・ルブラン。
とても有名な、アルセーヌ・ルパン物語の長編。
なンだけど、改めて読むとこれ、ルパンのほぼ一方的な敗北の物語でした。
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ルパン・シリーズは、どうやら、1907年の短編集「怪盗紳士ルパン」から始まります。
そのあと、中編集、とでも言うべき「ルパン対ホームズ」1908。
そして戯曲の小説化である「ルパンの冒険」1909。
そして同年1909に長編「奇岩城」。
なので、簡単に言うと、「初のルパン物の長編」として構想された、と想像できます。
想像なんですけど、短編中編ではなくて長編になると、「ルパンすごいぞ勝ちました」では、もたなくなった。むしろ、「ルパンという人の背景を描く」。そのためにはルパンの秘密が暴かれなくてはいけない。
というわけで、小説「奇岩城」は、初の長編にして同時に、はやばやとスピンオフの趣(笑)。
ぶっちゃけ、主人公はルパンぢゃなくて、名探偵役のイジドール・ボートルレ君。
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ルパン一味による謎の殺人事件。
イジドール君が解明、ルパンとの丁々発止。買勝った負けたの攻防戦。
全てイジドールくんサイドからの視点で描かれます。
ルパンは、やんごとなき女性を愛し、妻にして、まんまとハッピー…かと思いきや。
そうはさせじと、イジドール君。
「謎に包まれたルパンの、ルパン一味の本拠地。ルパンの巨万の富の秘密」に迫っていきます。
このあたりはいわば、読者としては。「ヒーロー・ルパンが追い詰められていくのを愉しむ」、というねじれ構造。
なんですが、小説「奇岩城」としては前半でユニークかつ冒険小説らしい夢のある「名探偵イジドールくん」に感情移入できているので、問題なし。イジドールくんと一緒に、「あのルパンの秘密が遂に分かるのか!」というわくわくですね。
つまりルパンは、中世以降、歴代権力者が富を隠してきた、海岸沿いの奇岩の城(中身が空洞になっている)を手に入れている。蓄積された富ごと。
その奇岩城をうまく使って、ここまでの一味の活動を展開してきた。
その奇岩城の入り口を、面倒くさく書き記した暗号がうまく使われて、ダレずに筋が運ばれます。このあたり、フランス史に詳しければよりより楽しめるんでしょうけれど。
日本に置き換えると、「天智天皇も源義経も織田信長も、みんなが奇岩城を手に入れたことで力を持ったのだ」みたいなロマンチックなお話です。胃もたれしなくて愉しい読書です。
イジドール君が、ホームズもガニマールも呼び寄せた。
御用御用!と奇岩城に打ち入ってみると。
ルパンは「ふっふっふ待っていたよ」と余裕なんです。
なんだけど、ともあれ奇岩城の機能はもう放棄せざるを得ない。
このあたりから急激に物語の主人公としてルパンが帰り咲く。というか初めて描かれる。
スリルを愉しむように間一髪で脱出。
ところがその後、ホームズに追い詰められて。
流れ弾?に愛しい奥さんが撃たれて死んでしまう。怒涛の展開。
悲嘆にくれて去っていく、愛の怪盗ルパン1世。
終わり。
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だからつまり、ルパンが本拠地を暴かれ、手放し、結婚したばかりの愛しい妻を失って、泣きの涙で去っていく。
つまりそういうお話なんです。ルパンが負けちゃう。
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よく考えたらスピンオフの構造だなあ、と思いながらも。
イジドール君のロマンチックな若さの謳歌、のびのびとした(瑣末なリアリズムとかブンガク性をふっとばすような)ロマンの味わいが、いかにもルパン・シリーズな食べ心地。
序盤、なかなかルパンが出てこない(というか、ほぼ奇岩城のラスト山場まで出てこない)ので、乗りにくいところがありましたが、イジドール君が活躍を始めると一気にエンターテイメントが走りだす。
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多分小学校とか以来の再読。
大人になっても、いや、大人になってからだからよりより、罪なく楽しめました。
この新訳シリーズで「813」を再読したいなあ、と。
(まだ出てないんですよね。このシリーズでは) -
Posted by ブクログ
世紀の怪人物の末裔を称し、絶世の美貌で男たちを魅了するカリオストロ伯爵夫人ことジョジーヌ。彼女は権謀術数を駆使する怪人ボーマニャンを相手に、普仏戦争のどさくさで失われた秘宝をめぐる争奪戦にしのぎを削っていた。その闘争の最前線に一人の若者が割り込む。その名はラウール・ダンドレジー。彼こそは、のちの怪盗紳士アルセーヌ・ルパンその人だった。妖艶なる強敵を相手にした若きルパン、縦横無尽の大活躍。
2017年最初の一冊はルパンでした。文庫を買ってから大事に積みすぎた作品ですw青年ルパンの原点とも言えるカリオストロですが、やっぱりいいなあ。ダンドレジーが若くて有頂天になったり恋におぼれたりと隙は多いけど、それがまた彼の人間らしさとして共感につながっている気がします。自分の中に天才的な才能を見つけ、ジョジーヌにやられて教えられては自分もやり返すという流れが本当にわくわくする。結果的に二人の人生がパートナーとして交わることはなかったわけですが、それでも一部分で似た者同士であり宿敵であり続けるんだな。人を殺さないからこそルパンには魅力が詰まっているのであって、ジョジーヌとは大きな差がありますが。復讐編も本当に楽しみだけど、平岡先生が新訳を出して下さらないかな・・。 -
Posted by ブクログ
後の怪盗ルパンとなる青年ラウール・ダンドレジーと妖艶な美女ジョジーヌ、怪人ボーマニャン、三者の秘宝をめぐる争奪戦を描いた小説。
子供の頃、ポプラ社版「ルパンシリーズ」を愛読していた自分にとって、アニメ「ルパン三世」のルパンの女好きっぷりに違和感を持っていたのを覚えています。
ポプラ社のルパンは女好きというより女性に優しいジェントルマンの印象だったからです。
しかし、これを読むとルパン三世の女好きの方がアルセーヌ・ルパンの実像を捉えていたのだな、と思いました。
若いルパンにはクラリスという彼女がいるのですが、その彼女をほったらかし、カリオストロ伯爵夫人ことジョジーヌに入れ込みます。浮気なんてレベルを超えた入れ込み具合に、ポプラ社版ルパンのイメージを持っていた自分は唖然とするしかありませんでした(苦笑)
ポプラ社版は児童文学だったので、ルパンの女性に情熱的な部分はカットされたみたいです。
なのでぶっちゃけ読み始めは「こいつくそ野郎だな」などと思いながら読んでいたのですが(笑)読むごとに浮気者のルパンの姿でなく、恋と善悪の狭間で揺れるルパンの姿が鮮明に描かれるようになります。
そしてそれはジョジーヌの方も同じ。愛した人が宿敵であり、今更これまでの悪の生き方を捨てきれず、恋人と対決に至る姿は読みごたえがあります。
それだけに二人の対決、そしてジョジーヌの執念というものは読んでいて面白くもあり恐ろしくもあり、ミステリや冒険小説だけでなく恋愛小説でもあるわけですね。
読み終えてみるとラウールの愛の注ぎ方は浮気ではなくどちらも本気だったのだな、と思います。(その後のルパンの生涯にはいろいろな女性が出てきますがそれもすべて本気です!)
つまりルパンは浮気者なのでなく、常に女性に対し本気で恋をしているのです、ととりあえずフォローしておきましょうか(笑)
若き日の二人の対決の物語が終わった後、ルパンとカリオストロ伯爵夫人は再び相対することが示唆されて、この本は終わります。ただその最後の戦いである「カリオストロの復讐」はハヤカワミステリ文庫では未訳です。
創元推理文庫かポプラ文庫『ルパン最後の冒険』で読めることは読めるのですが、やっぱり同じレーベル、訳者さんで読みたいな、というのが本音でもあります。
今度ハヤカワ文庫70周年企画で『ルパン対ホームズ』が新訳で出版されるみたいなのですが、どうにかその勢いで他のルパンシリーズも出してくれないかなあ、と悶々とする日々です。 -
Posted by ブクログ
ルパンシリーズは、長編よりも短編の方が冴えるのかもしれない…と思った。
少なくとも私にとっては、奇巌城よりは面白かった。
唯一、「地獄の罠」を除いて。
「太陽のたわむれ」「赤い絹のスカーフ」では、ルパンの推理力が冴え渡り、相手方よりも常に一方上手を行くのに、このストーリーでは、犯人の仕掛けた罠にまんまと嵌り、絶体絶命のピンチにまで陥っている。
それまでのストーリーからのイメージで行けば、罠に嵌るより先に、相手方を罠に嵌めちまう…か、若しくは、まんまと罠に嵌った風を装って、どんでん返しの鮮やかな切り返しが出て来るのを期待してしまう。少なくともホームズならば、こんな罠に嵌る…とは到底思えない。
その辺りがルブランの詰めの甘さかもしれない。
あまりに一貫性のない行動パターンは、結果としてルパンの人柄が掴み難い…と言う大きな欠点が出て来てしまう。