神保哲生のレビュー一覧
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ルポから思想まで豪華布陣だが、宮台さんの激憤しながらの筆致が鮮やか。『「ファストフードからスローフードへ」と同じく「原子力から自然エネルギーへ」も日本的に勘違いされるでしょう。〈食の共同体自治〉の問題が、食材選択の問題に短絡したように、〈エネルギーの共同体自治〉の問題が、電源選択の問題に短絡するでしょう。(略)原発災害からの学びがその程度で終わってしまうのですか。』pp.384-385. まさにそこなのだ。設計の悪い世論調査と内閣支持率に翻弄されて愚昧な二択に落とし込んではいけない。そこで一般意志2.0の登場なんだろうな。東さんと宮台さんと津田さんは全く方法論が違うけど、震災をきっかけに議論が
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2000年代小泉政権で「構造改革路線」を提唱。
なんでも政府が面倒を見てくれる日本従来の護送船団方式から新自由主義路線、つまり自己責任の社会へ政策転換された。
終身雇用、学歴、結婚、を通じて安定した居場所を提供してくれていた社会が壊れ、自分で自分の居場所を見つけなければならなくなった。
「誰かに自分の存在を認めてもらわないと不安でたまらない」という強い「承認欲求」を持つ状況が生まれた。
そこにその心の穴を埋めてくれる理想的なツールとして登場したのがインターネットだった。
リアルの世界で悩み、ここに現実逃避した人々がバーチャルの世界に入っていく。
ということか?
とすればまだまだこういう輩が出て -
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1.最近海外の農業形態について読むことが減ったので購入しました。
2.キーワードとなるのはグローバル企業による搾取と消費者の気づきの2つです。経済効率を優先する社会を作りあげたのは両者であると著者は述べています。食料を商品としてしまい、大切なこたを見失ってしまっているのが現代の食経済の悪い部分で、どのように悪いのかを調査によって述べてくれている本です。
3.大方の予想通りの内容でしたが、読み応えがある本でした。
食料増産による人口増加という悪循環やグローバル企業によって搾取と利益を受ける立場の人間という複雑に絡んだ状況が現代を取り巻く環境の事実なので、消費者側は、なにが自分に出来るのかを -
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取り上げられている個々の事象はある程度知っているつもりだったが、それらがこんな風に繋がっているという提示に驚いた。サプライ・チェーンならぬ「サプライズ・チェーン」。
訳者解説の「食を見ればグローバリゼーションの本質が見える」が本書を端的に表している。
地球上を網羅する巨大資本のサプライチェーンは大規模小売店に食材を豊かに溢れさせながら、反面、再生産能力に限りのある大地からの強引な搾取と化している。「もっと大量に、もっと安く」を目指す、生物としての本来能力を超えた食物の無理な大量生産は、土壌の疲弊、化学合成品の混入、環境汚染、耐性細菌の拡散、遺伝子組み換え作物同士の意図せぬ交配の危険 -
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ネタバレトランプ大統領の誕生は、米国における白人のマイノリティ転落に対する恐怖(白人によるアイデンティティ・ポリティクスの行使)、急速なグローバル化やインターネットの登場による中間層の没落(豊かだったものが貧しくなったという感覚、インタネットの登場による生活様式の共有への不信)といったより大きな問題を表象しているに過ぎない。こうした社会の流れや急速な変動への揺り戻し、(移民に対して非同化政策を採ったことに起因する)共有できる敵を常に必要とする従来のアメリカン・ウェイという観点から、トランプ政権が徹底して自国第一主義に走ることは当然の予想である。政治的正当性への不信も含めた民主主義の劣化、享楽化(ポスト
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面白かった。著者は雑誌(ローリングストーン』で長く人気のコラムを担当しているジャーナリストだそうだが、皮肉の効いた筆致で、それを日本語に訳した訳者の表現もこなれていて読んでいて苦笑すること多数。
本書は後付けのトランプ論ではなく、大統領選〜当選後まで、その時々に書いていた長編コラムの再編集版らしいので、まさにリアルタイムで当時の雰囲気が少なくとも著者の目を通した形で窺え、とても興味深い。(実際、著者は選挙戦の終盤近くまで「それでもさすがにトランプにはならないだろう」というスタンスで見ていたようなので尚更)
トランプ現象とは何だったのか?何なのか?アメリカ人の目から見た肌感覚の一端がリアルに感じ -
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他人事の世界を、自分のところに引き寄せる。
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もう多くの人が忘れているのではないか、というPC遠隔操作事件。
550ページ超の大作であり、その多くが事件の顛末を追っているのだが、つまるところ、本書が語るべきことは2つだろう。
ひとつは、真犯人とされる男(片山)は、なぜこんな事件を起こしたのか。
もうひとつは、この事件によって露呈した報道や警察・司法のあり方、である。
まったく見に覚えがないのに、ある日突然警察が礼状をもって訪れて、パソコンを押収し、逮捕されてしまう。自分がやられたら怖い、と考える人が多いだろうけれど、僕はむしろ、自分がやっちまったら怖い、側にいる。となると、 -
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この本が出版されたとき、何故今更この事件をという気持ちがあった。
事件発生から、片山が自供し逮捕されるまでは、テレビや神保氏の運営するインターネットメディア『ビデオニュース』でも長い期間、日々のニュースの上位にあったような記憶がある。神保氏は当初から、大手メディアの興味本位の報道とは違っ視点「司法プロセス」にスタンスをおいて、この事件を追っていた。
簡単にいうと、テレビや新聞は片山祐輔が‘犯人として相当疑わしい’という前提で、視聴者の興味をそそる情報を小出しに流し続けていた印象がある。のに対して、神保氏は警察・検察及び裁判所を含めた一連の司法プロセスの姿を炙り出しながら、これで良いのか?と読 -
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今年の上半期に読んだ中でいちばん良い内容だった。
極度に「自分化」された生活、支払いはあとまわしにして欲しいものを今すぐ手に入れる決済手段を得たことでパワーを増した(ように感じられる)消費者、倫理観なくオンラインで転がされる企業の株式、市場化する政治……
近視眼的で他者を顧みないマネー・ゲーム的社会への警鐘を強く鳴らす1冊。
アメリカについて語られた本だが、日本も同じような道筋をたどりつつあるのではないだろうか。
……と、内容はとても良かったのに、初刷りを読んだらくだらない誤植だらけで実にもったいなかった。脚注のまとめかたも雑。大急ぎでそれこそ「衝動的に」翻訳・出版しないで、じっくり腰を据 -
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私達が普段食べているものには添加剤・保存剤・着色剤等、様々な用途に応じて使われています。私達が毎日食べている、米や小麦等も様々な品種改良がなされています。
遺伝子組み換え食品などがそれに当たりますが、それらを提供している会社、お店は「危険である」という事はできますが、この本の凄いところは、そのようなことを全部解説したうえで、そもそもそれを求めている我々が一番問題あるのでは、という提起をしています。
正にその通りだと思いました。食物にカビが生えたり傷んだら自分の目で選んで処分して以前と比べて、消費者はカビの生えない、傷まない、形の綺麗なものを求めているからこそ、それに対応した結果が今の状況を -
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「衝動」に支配される世界 ということで、アメリカにおいては金融資本主義が消費者を巻き込み、次々と商品・サービスを購入させてしまう「市場」を政府も取り込み創ってしまった。
古き良き時代の市民・消費者が保有していたキャラクターはパーソナリティへと変質してしまった。
行きつくところまで、社会関係資本は破壊されてしまった。
膨大な選挙資金が必要なアメリカの選挙民主主義。ウォール街に席巻されたしまった政党。
如何ともしがたいようだが、第Ⅲ部で「再びつながり合う社会へ」第9章 私たちはどこへ向かうのか
小さな動きだが、古き良き時代のアメリカに戻そうという諸活動を紹介している。
著者は、明確な方向性は述べて -
Posted by ブクログ
経済合理性を食物まで拡張するとどういうことになるのか、読んでいる間は本当に食欲がなくなった。今の食べ物は安すぎる。
そして、今食べているものが、一体どれだけの犠牲の上に成り立っているのか。生物として、来てはならない状態に来ている気がする。
この問題は、誰が悪い、というものではなく、システムがもたらした結果である。皆、期待効用を最大化する行動をとり、結果として持続的でない状況になった。問題を解消するには、効用の式を変える、つまり価値観を変えるしかない。
この点で筆者はドライである。外部の危機がなければ変わらないだろうと述べている。だがそれではあまりに諦観している。
むしろ、本書で紹介されている古