新海誠のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
実写版映画を見て小説を読んでから、原作アニメも見て小説を読みました。
実写版よりは原作の方が、貴樹が子どもの頃の明里との思い出を引きずらずに、大人になってからいろいろな人と付き合っていると最初は思いました。でも、違いました。結局いろいろな人のことを傷つけてしまっていて、身勝手にも感じます。でも貴樹は自分自身さえも傷つけていました。
どうしてこうなってしまったのでしょう。あの頃、貴樹が最後の手紙を渡せなかったからでしょうか。はたまた、親の都合で二人が引き離されてしまったからでしょうか。何か一つが原因ではないのかもしれません。
最後は少し立ち止まった貴樹が前に進むことができて、安心しました -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わった時には、切なさと虚無感が残った。
いつまでも初恋の穴を埋められずにどこか無感情に生きる貴樹と、貴樹ならきっと大丈夫だと信じて前に進めた明里の非対称な初恋同士の物語。
いつまでも初恋を引きずる男、という捉え方もできるが、幼少期の特別な初恋を転勤や引越しといった大人の事情で諦めるしかなかったのだから仕方が無いのかなとも思えた。空のメールをうちこむ姿や、ちゃんと愛せているつもりでも続かない恋、仕事に明け暮れる方が楽だと感じている姿には同情せざるを得なかったし、心に穴が空いたような虚無感がひしひしと伝わってきた。
物語の結末としては、ハッピーエンドと言い切れるものではないのかもしれな -
Posted by ブクログ
実写版の公開にあわせ、アプリで第1巻分が無料解放されており、続きも気になったため、本作を置いている近所の漫画喫茶を探し、読んだ。
新海誠の初期の代表作『秒速5センチメートル』のコミック版の下巻。映画の第3話「秒速5センチメートル」をベースに、補完するエピソードや映画では描かれなかった"花苗"のその後が展開されている。
実写版の鑑賞前に読んだことを後悔するレベルの名作だった(オリジナル展開が良すぎて、実写版でこれを越えられる気がしない)。
純粋な恋心を失ってしまい、いつしか自分の感情や本心すらも見えなくなってしまった主人公・貴樹の描写が見事で、同世代の自分も共感しつつ、 -
Posted by ブクログ
実写版の公開にあわせて、原作アニメ版を観た流れで、SNSでフォローしている映画アカウントの方がオススメしていて気になり、読んだ。
新海誠監督の原点と言えるアニメ映画『秒速5センチメートル』のコミック版。映画の公開から3年後に連載された本作では、物語の空白を埋めるようなサブエピソードが追加。第1巻では原作の第1話『桜花抄』と第2話『コスモナウト』を中心に、キャラクターの心情や背景がより克明に描写されている。
映画では1時間という作品尺ゆえに、悪く言えば「ダイジェスト的」、よく言えば「余白のある」物語だった"秒速5センチメートル"だが、オリジナル要素のおかげで、より分かりや -
Posted by ブクログ
ネタバレ待ち合わせに四時間も遅れたら、自分はどれほどの罪悪感を持つのか。大雪の中で遠く離れた愛しい人を、自分は来ないかもしれないと疑う欠片も持たず待ち続けられるだろうかと思うと、貴樹と明里のまっすぐで純心な恋がとても美しいものだと思えた。
駅のホームが閉まるまで話をして、雪の中桜を見て、寄り添いながら朝を迎える描写がすごく綺麗だった。13歳の二人にとって奇跡のようだったというこの時間がとても印象的。相手が時間に遅れていたら、あとで渡せる手紙を書くように、ゆっくり来てくださいねと思える人でありたいと思った。
お互いに知識として、相手の断片を交換し合い、ふいにそれを思い出すことは、「花束みたいな恋をした」 -
Posted by ブクログ
この本は、とにかく言葉の一つひとつが静かに胸に入り込んでくる作品だった。大きな事件があるわけじゃなく、日常の中で誰もが感じるような気持ちの揺れや時間の流れを、淡々と、でも鋭く描いているのが印象的。読んでいると「あ、こういう瞬間、自分にもあったかもしれない」って思い出させられて、気づけば心がじわっと締め付けられていく。
文章のリズムはゆっくりで、景色や空気の描写も丁寧だから、その場に立っているかのように情景が浮かんでくる。桜の花や夜空、踏切の音など、何気ないものがすごく鮮やかに描かれていて、その美しさと同時にどうしようもない切なさを感じさせる。小説だからこそ、登場人物の心の奥に潜む感情が細かく