グレッグ・イーガンのレビュー一覧
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グレッグ・イーガンはハードSFの極北なので一般人の私には理解できるレベルでないのだが、自分の理解への助けに概略をまとめておく。
二万年後の未来の話。人類は宇宙全域に播種し、もはや人格をデータ化しバックアップ、光速で移し替えたりでき肉体はもはや意味を持たず、肉体を持つことなく存在する人もいる。寿命も数千年にわたる。肉体ももはや男女の別はなく、性行為をしたい時はそれ用に性器を作り出す世界となっている。そういう世界が嫌で自らの肉体をコールドスリープし宇宙を漂流し続けるアナクロノートと言われる人類も登場、後に彼らが騒動を引き起こすこととなるのだが。
ミモサにてサルンペト則(架空の物理法則)に基づく -
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ネタバレハードSF作家としてよく名が挙がるグレッグ・イーガンの短編集。自分にとって初めてのイーガン作品だ。ハードSFという言葉から予測していた難解で合理的な科学的描写で埋め尽くされたような硬いイメージとは違い、意外にも容赦無く万物を物質的に還元していく科学に引き裂かれる人間の、不合理で、不完全で、柔らかな"こころ"が主題になった短編が多かった。全体的な感想としては、その"こころ"の探求が見事で、科学を通じてなされる哲学的な思案が心地良かった。
・適切な愛
女は、事故で死にかけた夫の治療の為に、彼の脳のクローンを孕む事になるが、妊娠に起因する胎盤ホルモンの -
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「難解」という評価が定着している本作であるが、確かに私自身、読み終えてみて理解できたと言えるのは全体の3割程度というのが体感であった。しかし、私はそれでも本作を人に薦めたいと思っている。なぜなら、その難解さにもかかわらず、圧倒的に面白いからである。数学や物理学等のテクニカルタームの洪水をなんとか泳ぎ切れば、今までに感じたことのない読書体験ができたと思うはずだ。
本作の主人公(であろう)ヤチマが人工生命として誕生する第1部はとりわけ難解で、数ページ読んだだけで心が折れそうにはなったが、知性を持った人工生命がいかにして生まれ、認識能力を獲得していくかが細密に描かれており、わからないながらも引 -
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ネタバレ初イーガン。どこから得たのか「グレッグ・イーガンは難解」というイメージがあって、SF歴3年目の中で読んだことがありませんでした。が、むちゃんこ面白いじゃん!!!と思いました。私好きだわこれは、と最初から思い、最後までそう思い続けられました(これは読みやすい本だということなので、この後他の本を読んでぐうの音も出なくなるかもしれませんが笑)
「適切な愛」発想が度肝を抜かれたというか、文章力と相まって度肝を抜かれた
【再読】子宮の中で夫の脳を孕む女性について。それを経ることで起きた変容。時間は流れていき、過去には戻らず、現在がある。
「闇の中へ」好きだったなー…アイディアもSFという感じでわくわ -
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前半は三回くらい呼んだ。
そこを超えると最後までやめられなくなる。
この世界の物理よく分からないので、色々な描写が理解できないのだけど、それでもその世界に馴染んで仕舞えば、気にならない。
イーガンの小説ではときどき性差別がとりあげられるけど、この世界と我々の世界がこれほど違うのに現れる差別を読むと、社会と生物の生理とには根本的に矛盾があるのかとも思う。が、これは作り話だ。
物理法則が違うことでそこに棲息する生物はことなり社会の形も異なる。そこらへんの力技が見事
物理法則については巻末に解説があったり、イーガン自身のサイトにも詳しい情報があるけど、わたしにはわかりませんー -
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グレッグ・イーガンの〈直交〉三部作の第二巻『エターナル・フレイム』を読み終わった…。なんという余韻…。これはある宇宙の物理学史であるとともに、性別とは何であるか(何であると考えたらいいか)を問いかけてくるな。すごイーガンの極地だと思うんだけど、これでまだ完結してないのである!
この〈直交〉宇宙における主人公たちである人類は、女は出産時四つの子供に分裂して死ぬという世界なので、宇宙船〈孤絶〉の中においては四つ子になると人口の増加を招くので「飢餓状態にあれば二つ子出産になるかも」という通説に従い節食している。そんな極限ななかで、いろいろすすむ。
人類はまだ、空間と時間が交換可能な宇宙についてほ -
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グレッグ・イーガンの〈直交〉三部作第一巻『クロックワーク・ロケット』。時空に関する物理法則が異なる宇宙とはどんな姿なのかを、論理的にとことん導出して見せてくれる一大ハードSF。また一人の科学者の一生の物語でもあり、生物が自身の特性とどう向き合うのかを見せてくれるドラマでもある。
時間と空間が交換可能かついくつかの仮定をおき、そこから光の性質、物質のありかた、生態系の様相までを描き出す。「球面調和関数くらい知ってるよね?」みたいな顔して怒涛の推論議論を登場人物が繰り広げるところは圧巻である。
そしてまた、恒星系ひとつが滅びるスケールの世界の危機を、物語開始時点では未解明の物理法則を解明するこ