グレッグ・イーガンのレビュー一覧
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読んだぞ、とにかく。おもしろかったよ、そう言っていいのかどうかわからないけど。だって、サイエンス部分が前作「クロックワークロケット」をしのぐ難しさで、ほとんどチンプンカンプン。科学的な議論が始まると、そのくだりは無念無想の境地で字面だけ追い、人間ドラマ的部分(「人間」じゃないけど)にさしかかると我に返って熟読、ということの繰り返しだった。こういう読み方でも「おもしろかった」って言っていいですか?
いやまったく、出だしからガツンと「物語」にひきこまれて、「わからないにもほどがある(byバーナード嬢)」ところがどんなに多かろうが、読むのをやめようとはちっとも思わなかった。この第二作は、特異な出産 -
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『白熱光』に似て非人類の女性科学者の物語である。『直交』三部作の第1。
舞台は、ある惑星だが、こことは違う宇宙。われわれの宇宙とは物理法則がちょっとばかり違うのだ。数式にするとプラスとマイナスの違い。しかしそれが大きな差異を生む。われわれの宇宙では光速は一定である。どこで観測しても一定である。これはとても奇妙なことで、地球上で静止して観測しても、亜光速で飛ぶ宇宙船から観測しても同じ速度である。日常生活では目の前を走り去っていく自動車は速いが、その自動車に伴走する車に乗っていたら止まって見えるのに、光速だけは一定。神の眼のような視点は存在し得ず、観測する系によって宇宙の見え方が違うのがわれわ -
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遙か未来。人間もその他の知的生命もソフトウェア知性も、すべてがオンラインのプログラム形態で暮らしたり、物理的肉体にダウンロードしたりして過ごしている、融合世界。おおむね銀河の隅々にまでこの世界が広がっている。光速は越えられないから、旅といえば、個体はデータの形で送られ、目的地でプログラム形態なり、物理的形態なりにダウンロードされる。『ディアスポラ』の設定の延長線上にある宇宙。地球人にオリジンを持つラケシュは退屈していた。もう銀河のどこにもフロンティアはないからだ。
いや、ないことはない。銀河中心部は孤高世界といわれ、そこに住む知的生命は融合世界との一切の交渉を拒否していたのだ。ただ、融合世 -
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この頃、星空を見上げると、ある感慨にうたれる。この宇宙にはいろんな世界がある。他の星の生命もいるかも知れない。宇宙人もいるかも知れない。
もしかして自分もそこに到達できるかも知れない。と思ったのは子どもの頃。
星々の世界があると思っても、もはや自分にはあの星々に到達することはあり得ないと今は思わざるを得ない。そのことにある感慨を覚える。ましてやこの宇宙の外など。しかしそんな小説を読もうという気はある。なぜだかよくわからない。
すごいSFだけど、とても読みにくい。
という評言はまあ正しい。私も最初の三分の一くらい読んだまま、数年うっちゃっておいた。
まず最初のアイディアは、人間がそ -
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年明けからこれ一冊にかかりきり。荒っぽい速読派の自分にはまったくの例外だが、いやあ、それだけのことはあった。やっぱりイーガンはすごい!想像力というものの深さと広さを思い知らされる。いや、もちろん、作者のビジョンを共有できたわけでは(全然)ないけれど、その一端を垣間見ただけで、スケールが桁外れであることはわかる。
奇数章と偶数章で別の話が語られていくが、奇数章はじまりの舞台は「ディアスポラ」と同様の遙かな未来社会。「ディアスポラ」ではその設定自体に度肝を抜かれたが、ここでは人類の末裔がとっている形は既定のものとして背景に退いている。数百万年後の人類は他の幾多の種族とともに「融合世界」という文明 -
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圧倒的スケールにして緻密。読者を選ぶ物語ではあるけれど、量子力学と認知科学のある程度の知識があれば、何とかついていける。ただし、これは宇宙オタクを満足させるためだけの衒学的な語りなのではなく、こういった舞台の中でしか語り得なかった物語なのではないか。知性とは何かということを読みながらたくさん考えた。
非知性ソフトウェア創出が作り出したヤチマという個体が〈私〉を獲得するまでの18-54pのくだりで心を鷲掴みにされ、そこからは理論的な部分が少々わからなくても一気に読み進められた。一気に読む、ということが褒め言葉ではないと思うけれど、読まずにはおられない、この物語と少しでも多くの時間結合していたい、 -
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ハードSFの大家グレッグ・イーガンの11の短編を収録した本書は、文中の言葉を借りるならば、「きみがきみであること」「自分が何者であるか」、すなわちアイデンティティを共通したテーマに据えている。
SFの手法でアイデンティティを語る作品としては、個人的にはロボットを題材にした作品が多い印象を受けるのだけど、本書においてはそれに依存することなく、多彩な視点からアイデンティティを捉えている。
ヒューゴー賞/ローカス賞を受賞した表題作もさることながら、次の2作品が特に素晴らしかった。
・『ぼくになることを』
衰退する脳を排出し、その代わりに衰えることを知らない"宝石”を移植することが一