グレッグ・イーガンのレビュー一覧
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人新世SFということで、当然、地球環境の危機的状況をテーマにした作が多い。けれども、ハード面よりもソフト面にスポットを当てた作がほとんどを占める。環境危機への対応策なんて分かりきってる、問題は社会がそれを実行しようとしないことなのだ、ということなのだろう。ただ、そのアイデアが案外とナイーブ。全体に理想化されたコミュニティの登場が目に付くのだが、その描写がまるでカウンターカルチャー全盛の頃のヒッピーコミューンなのだ。「菌の歌」なんかは、あの頃のSFそのまんまである。こんな感じの話、いっぱい読んだなあ。まあお話の中とは言え、この問題に簡単に答えなんかが出るわきゃないってことなんでしょう。
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イーガンさんお初。タイトルから、テッド・チャンみたいな優しげな感情が見え隠れする、難解SFかと思いきや、人間の情緒が抱える残酷さが見え隠れする難解SFだった。後半はあってた。すごく難しい言葉ばっかり。短編集だがだいぶ積んでたし読むのも時間かかった。好きな残酷さではあるんだけど、あまり好みの文体ではなかったのと、確実に性癖に刺さってはいるんだけどどこか冷静に読んでしまっている自分がいる。今のジャンプを読むときの感情に似ている。もっと前のめりになりたかった。10代のころに読んでいればよかった。
脳死した恋人の脳を妊娠する女性、ブラックホールに飲み込まれる人たちを助けるレスキュー隊、過激なカトリッ -
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2005-2017年のグレッグ・イーガンのSF短編を集めたもの。
以前テッド・チャンの『息吹』(2019)を読んだときなかなかに感銘を受け、このチャンさんがグレッグ・イーガンなる作家を推賞していたので、本書を手に取った。
ハードSFというものだろう。最新の科学やテクノロジーについての知識を基盤にし、そこから果てしなく想像を繰り広げていく作風は、確かにテッド・チャンに似ている。
SFといえば中学・高校の頃は幾らか読んでいたが、ややこしい科学の話が頻出するような高度なハードSFは苦手だった。私が一番好きなのは、H. G. ウェルズのような古典か、崩壊感覚が素敵なフィリップ・K・ディック辺 -
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ネタバレ順列都市が私達の精神がデータ化されるまで、また自律するAIが誕生するまでの話だとしたら、これはデータ化された私達が幾重にも別れて(データ化されているので、クローンを生み出すのは簡単です)さまざまな宇宙に拡散し、探索をするさらに未来のお話でした(根源的には、未来の滅びを避けるための手がかりを探索の目的にしています)。
私達が気づいていないだけで、私達の生きる空間はトランスミューターのような存在とは既に繋がっているのかも。トランスミューターが進化の果てに獲得したのが、あらゆるものに干渉しすぎない「自制」の力であったことがとても印象的でした。
3次元以上の世界って想像するのが難しいですが、かなりイメ -
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グレッグ・イーガンの直交三部作ラスト。
相変わらず難しいんだけど、前二作に比べるとまだ理解できるかな。
ストーリーやキャラも前よりは深みがあるような。
ただ、母性への帰還はこの三部作においてかなり大きなイベントだと思うのだけど、最後にさらっと描かれるだけで、いいんでしょうか。勿体ないような気が。
頭のいい人が考えることはわからない。
未来からのメッセージという謎のシステムがメインだけれど、多分これはストーリー的必要性よりも、理論が書きたかったんだろうなー。
物理法則が異なる世界を思いつきストーリーに落とすという仕事はすごいとは思うのだけど、私は小説が好きな文系人間なので、どうしても物語的 -
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ネタバレオートヴァースをはじめ、話が難解で理解しきれない部分も多かったが、塵理論などはわからないなりに(解釈が間違ってそうだが)面白かった。塵のように散らばる要素を認識したものが世界であり、時間というものも、人間の勝手な認識の仕方に過ぎない、という感じ...?
終盤の、ランバート人が独自に納得のいく歴史を作りそれが真実になる、というあたりが特に面白かった。人類が今正しいと信じている歴史も、捏造かもしれないと仄めかすようでもある。
同じイーガンだと、「宇宙消失」のほうがとっつきやすく熱中して読めたので、その意味で⭐️3にした。
読みながら、デッド・チャンの「あなたの人生の物語」やリングシリーズの「ル -
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ネタバレ初イーガン。
なるほどなるほど、これはハードルが高い。
自分はそれなりに科学技術好きな理系脳だと思うけど、興味ない人には苦痛がまさるんじゃないだろうか。
でも、解説にもある通り分厚いサイエンス成分を透かしてみれば、どの話もものすごく哲学的。
引き込まれました。それにしても、どれもこれもよくもまあこんな設定を思い付くなあ!
「闇の中へ」時間軸を物理的なベクトルに読み替えているんですかね、すごくスリリングでした。
「道徳的ウイルス学者」いま世界がコロナに揺れている中、ウイルスをなんらかの意図をもってコントロールできる可能性が示されており、そら恐ろしくなります。
「ボーダー・ガード」量子サッカーを始