グレッグ・イーガンのレビュー一覧
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進みすぎたテクノロジーと、それに置いていかれた人の精神を取り扱う、イーガンならではのセンスが光る短編集。
あらすじを語ること自体がネタバレになってしまうので、実にもどかしいのですが…。
短編集の一話一話の密度が濃く、どれも考えさせられます。
「ぼくになることを」を読んだショックは相当なものでしたし、
「貸金庫」は今まで読んだSF小説の中で一番ほろりと来ました。
紙面には、幾何学や量子力学の話題がばらばら出てくるので、一見読みづらいと思うかもしれませんが、そんなのは雰囲気作りの装飾です。本質はもっと分かりやすくて、不可解なところにあります。最初は苦痛に感じるかもしれませんが、是非読み通してみ -
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11作品収録。
グレッグ・イーガンの発想の豊かさには舌をまく。よくこんなに様々な世界が思いつくものだと感心する。頭いいんだろうなー。しかもいずれも秀作(正直に言うと、『繭』は自分的に微妙であった)。
分類すればSFなのだが、描かれるものは、”宇宙”や”テクノロジー”というよりは、”異なる世界”といった感じ。
収録一作目の『貸金庫』は同地域・同年代の身体を毎日移動する意識だけの主人公の物語。読んでいく途中で謎が溶けていき、わかった瞬間思わず、そういうことか…、と少し居心地が悪くなる。
続く『キューティ』『ぼくになること』は、倫理観がテクノロジー(医療ではないと思う)を制御出来なかった時の物語と -
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グレッグ・イーガンはハードSF好きの自分としては外せない作家。
のはずなのにもしかしたら所有したのは初めてかもしれない。今までは何かの短編集的なもので読んだだけだったのかも(嘘でした。『クロック―ワーク・ロック』三部作を持っています。難しすぎて忘れていた)。
本短編集、SFなのだが、突拍子もない設定やかけ離れた未来の作品はそれほど多くはなく、時間軸としてもとても現代に近い設定のため、「あれ? これってSF?」となる作品も多い。
表題の作品『しあわせの理由』なんて、SFではなく人間を描いており、その設定のためにSFを利用していると言ってもいいくらい。というか、多分そう。それはタイトルに現れてい -
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イーガンは初めて読んだのが『ディアスポラ』で、めちゃくちゃ面白かったけど、難解さにイーガンへのハードルが上がりすぎてその後手を伸ばせずにいたのだけど、読みやすいものも多いよと何人にもおすすめされてようやく手を伸ばしたのがこちら。
本当に読みやすくてびっくりした。単純に難解さの程度の高い低いという話だけでなく、なんというかその設定における思考実験の方向性やそこで積み上げる論理が個人的に肌に合う感じがする。そこが自分と合わないというか発想が違うからこそ面白さを感じるSFも少なくないけど、そういうものはハード・ソフトを問わずついていくのにパワーは使ってしまう。その点イーガンの本作は設定としては斬新 -
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ネタバレグレッグイーガン、難しさもあるけど、想像出来ない展開が面白かった。
「七色覚」 目が見えないのも困るが、目が見えすぎても良くないと感じた。
「不気味の谷」 アダムが誰なのか何なのか分からないまま話が進み、老人の希望の部分だけが記憶されているが、記憶にないところにも重大なことがあった。
「ビットプレイヤー」私には難しい。平行感覚が常にずれているような気分のまま、話を追っていた。
「失われた大陸」先の見えない展開が苦しくもあり、ハラハラさせられたが、希望を感じられた。
「鰐乗り」リーラとジャシムの愛を感じられて、ウルッとした。
「孤児惑星」難しくてよくわからなかった。
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★4.4
SF界の巨匠グレッグ・イーガンが贈る、9篇のの短編集。
神経系の異常により“幸福”を感じられなくなった少年が、治療の果てにたどり着く「しあわせ」のかたち。感情操作を通じて再び幸福を手にしようとすることは、果たして“本人の意思”と言えるのか。(表題作『しあわせの理由』)
タイトルだけ見ると、宗教や自己啓発本に見えてしまう本書。中身は紛れもないハードSF、もっと言えばPF[Philosophy Fiction:哲学小説]だ。
生体操作・記憶・倫理・宗教・国家といった多様な領域を横断しながら、科学の視点で「人間とは何か」**を徹底的に解剖していく。
思考実験の連続は、めまいをもたらす。 -