黒川博行のレビュー一覧
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ネタバレ疫病神シリーズ第1作。ハードボイルドとミステリーが絶妙に融け合い、会話の掛合いで読む手を止めさせない鉄板シリーズ。
建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場の造成をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の産廃事業者・小畠一三の失踪。度重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の"相棒"桑原は、一筋縄ではいかない"疫病神"だった…。
もう、面白過ぎ。なぜ黒川さんはこの作品で直木賞をとっていないのか、ひたすら首をかしげるほかないです。
大阪弁で交わされる二宮と桑原の会話が軽妙。そして、金のにおいを嗅ぎ付けて"疫病神"のごとく二宮につきまとう桑原ですが、桑原は桑原で、二宮のことを"疫病神"呼ばわりするってのがたまらん。
金脈に群がる金の亡者どもをこのコンビが蹴散らすのが爽快。そして、何重にも張り巡らされた巧妙なプロットに思わず唸る。ここまで込み入ったストーリーを平易な言葉で綴るのがまたいいんだよな。 -
Posted by ブクログ
勁草(けいそう): 風雪に耐える強い草 思想、節操の堅固な例え 疾風に勁草を知る
オレオレ詐欺の詐欺グループのパシリ橋岡と矢代の二人が、元締めの高城を裏切り、犯罪を重ねて、逃亡するはなし
9月に映画公開とのことで、どんな映像になるのだろうと想像しながら読んだ 電話のコード、ブルーシート、花柄の毛布、血みどろで殴られるシーン、刑事が追うシーンが浮かぶ
オレオレ詐欺、自分は騙されないと高を括っていても、巧妙に練られたシナリオで畳み掛けられたら、私も騙されるかも この本は、旅先で読んでいたが、周りにいる人が全て犯罪者に思えて、常に疑心暗鬼になり、出歩くのが怖かった たった今も騙されている人がいて、本当に新聞やニュースに出てきそうなくらい臨場感がある 人気のない産廃施設には、何かがあると疑ってしまう
元はと言えば、歳の若い半グレの矢代が賭場で作った借金(トロと言うらしい)250万円が事の発端 悪事を重ねると麻痺して、歯止めが効かなくなるのか 欲とは怖いものだ
カッと血がのぼると止められない矢代に比べると、橋岡のほうが冷静で悪知恵が働く 最後まで逃げ切れるかもと思ったら、あっけない最後
いつも思うのは、日本の警察は優秀だということ
今回も一気に読めました
小説が面白いので、映画は観ないかも -
Posted by ブクログ
91歳の耕造は妻に先立たれ、69歳の小夜子を後妻に迎えていた。ある日耕造が倒れ、小夜子は結婚相談所の柏木と結託して早々に耕造の預金を引き出す。さらに公正証書遺言を盾に、遺産のほぼすべてを相続すると耕造の娘たちに宣言した―。
高齢の資産家男性を狙う“後妻業”を描き、世間を震撼させた超問題作。結婚相談所所長の柏木と会員で後妻業のパートナー小夜子が、高齢の資産家に公正証書遺言書で自分に遺産が行くように言葉巧みに書かせ、なかなか死なない資産家を事故や病気に見せかけて殺す手管、元刑事の探偵が後妻業の柏木と小夜子を追いつめていくサスペンス、小夜子と遺族の遺産の遺留分を巡っての駆け引き、小夜子と柏木の末路、金と欲に眩んだ人々のコミカルな描写特に小夜子の突き抜けた銭ゲバぶりもあって痛快なピかレスク小説に仕上がっています。 -
Posted by ブクログ
既に長い活動歴を誇る黒川博行の「初期作品」と呼び得る小説だ。
1980年代の作品なのだが、「現在では当り前のツール―例えば携帯電話やパソコン等―が使われていない…そう言えば…」という感はするのだが、全然古くない。興味深い謎解きである。続きが気になってドンドン読み進めてしまう。
物語は京都に在る芸術大学から起こる。
彫刻学科に学ぶ冴子が恒例の展覧会に向けた制作に勤しんでいれば、日本画科に学んでいる仲が好い美和に声を掛けられた。美和の姉が料理を用意してくれることになっているから、一緒に訪ねようと誘われたのだ。
美和に伴われて冴子は出掛けた。京都市内から、阪急電車を乗り換えながら足掛け2時間程度も進み、西宮の甲陽園という場所に至った。高級な住宅地で、大きな邸宅ばかりが並んでいた。
美和の姉である雅子は、この甲陽園に邸宅を構える加川家に嫁いでいた。夫の加川昌は彫刻関係の団体である立彫会の副理事長であった。立彫会という団体は加川昌の父が中心になっていた経過も在る団体だった。
冴子は一度だけ雅子と顔を合わせた記憶が在ったが、彫刻の世界で名前が売れた人物に嫁いでいて、邸宅に住んでいたというようなことは知らなかった。或いは、立彫会は「話題づくり」を前面に押し出すような活動が目立ち、冴子達が学ぶ大学では必ずしも人気が無かったので、美和は敢えて話題にしなかったのかもしれない。
美和は雅子と「友達を1人連れて行くね!」という具合に約束をして、時間どおりに訪ねている訳だが、何故か呼び鈴を押しても反応が無い。
美和と冴子は邸内に踏み込んでみた。彫刻の制作等に利用するアトリエとなっている部屋の様子が不審なので入り込むと、ガスストーブのガスが漏れていて、雅子が意識を失った状態で倒れていた。2人は雅子を近くの別な部屋へ引き出し、救急車を呼んだ。
そうしていた間に不思議なことが起こった。アトリエの室内側から鍵が掛かってしまい、“密室”になってしまった。現場検証に現れた警察署の鑑識班は窓をこじ開けて中に入って調べていた。
雅子は一命を取り留めた。自殺未遂に擬せられた。とりあえず警察の捜査が入り、夫の加川昌との連絡を図る。が、東京の出先で「到着が遅れる」という電話を受けたという話しは在ったものの、行方がよく判らない。警察では「“自殺未遂”ではない事件?」という考えに傾き始める。
冴子は美和と共に事件に巻き込まれたような具合になった。深夜まで刑事達に事情を訊かれた。冴子としても状況に釈然としないが、美和は更に納得していない。美和を迎えるということになっていた雅子が、その当日に自殺を図るのは不自然で、何者かが危害を加えようとしたに違いないと考える。
こうして冴子は美和に引き込まれるように“素人探偵”というような事に関わって行く。他方で、警察も警部補の島崎を主任とする西宮北署の捜査一係が活動を始めた。
「加川昌」を巡って、“素人探偵”と警察署の捜査員達とが各々に奮戦し、揺れ動く事態の中から真相を掴み出すというのが本作の物語である。
黒川博行の作品と言えば、作中人物達の会話のやり取りが、作中の出来事の不明点を解き明かす、或いは次なる展開を導き出すというような「大事な役目」をさり気なく負いながら、それが軽妙で全体的な「好いテンポ」を創り出しているのが特徴だと思う。本作は、そういうずうっと続いている基調の中に「密室になってしまったのは何だ?」、「連絡が取れない男は何処で何を?」、「事態は誰が如何いう思惑で引き起こした?」という謎解きが幾重にも織り込まれている。
多少、余計かもしれない事に言及する。黒川博行は芸術大学を卒業して高校の美術担当の教員として勤めていた経過が在る。今作で“素人探偵”として事件に巻き込まれる女子大生が芸術大学に学んでいるという設定、著名な彫刻家の所で事件発生という感じは、作者の個人的な経験や見聞を大きく反映しているのかもしれない。
なかなかに楽しめた!この作者に関しては、新しい作品も凄く好いのだが、時々文庫で登場するやや旧い作品も面白い! -
Posted by ブクログ
かの黒川博行による、刑事コンビが活躍する物語の小説だ。書店で文庫本を視掛けて迷わず入手した。そして頁を繰る手が停まらなくなった。
表紙イラストが沖縄の衣装の女性である。沖縄方面が作中の出来事の主要な舞台にもなっている。
大阪市大正区の警察署で、新垣遼太郎刑事と上坂勤刑事が、告訴状が提出されている一件の捜査を命じられる辺りから物語は起こる。
比嘉という男が、“模合”(もあい)という仲間の集まりの金を持ち逃げしてしまって行方が知れないので、同人を詐欺で告訴するということだった。所謂「オレ詐欺」の捜査に倦んでいた2人はこの事案に邁進することになる。
「遼さん」こと新垣刑事は沖縄県出身で、兄弟等は那覇に在る。大阪の大学に進学して、そのまま大阪府警に職を得たのだった。なかなかの2枚目で女性にモテる。
「勤ちゃん」(きんちゃん)こと上坂刑事は新垣刑事より少し若い小太りな男で痛風持ちだ。些か訳アリで本部から所轄署に異動した経過も在る。無類の映画好きで食いしん坊で、酷く饒舌である。
比嘉という男が営む解体工事を主な業務とする工務店を振り出しに、幾つかの関係先や人間関係を調べる中、沖縄へ飛んだようだと判明する。比嘉の足跡を追って、新垣刑事と上坂刑事は沖縄へ飛ぶ。
比嘉や同行しているらしい人物の影が視えれば、それに手が届かないという感で追い続ける中、思いも掛けない大掛かりな話しに辿り着き、それを巡って事態が展開して行く。
これ以上は、詳しく言及するのは止めておく。思いも掛けない大掛かりな話しの謎を解く新垣刑事と上坂刑事の活躍というのが本作の醍醐味だ。
本作は新垣刑事が主要視点人物というように綴られている。酷く饒舌な上坂刑事との軽妙なやり取りに乗って事態がドンドン動く。そして大阪や沖縄県の様子が酷くリアルで後ろからこっそりと同行でもしているような気分で、作中世界に何か引き込まれる。
これは凄く愉しい作品で、広く御薦めしたい。また“シリーズ”のようになって、新垣刑事と上坂刑事のコンビが還って来るというようなことにも期待したい感だ…