黒川博行のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冒頭───
滋賀県警捜査一課班長、根尾研一郎警部が余呉湖西岸の現場に着いたのは午前八時、警備の警官に目礼し、やじ馬の包囲網を抜けた。死体は引き揚げられ、湖岸の砂地に横たえられていた。白衣の検視官と数人の鑑識課員がそのまわりを囲んでいる。検視の最中らしい。
根尾は咥えていたパイプをポケットに収め、
「死因は」
先に来ていた部下の川村を呼び寄せて訊いた。根尾は男の他殺死体が揚がったとしか報告を受けていない。電話で叩き起こされ、食事もとらずに家を飛び出して来た。
1980年代の初め、ぼくはまだ学生だった。
当時、学生の間ではインド旅行がちょっとしたブームになっていた。
インドへ行けば、人生観が根底から引っくり返されるのだと。
鉄道を下りて駅から外に出ると、道端に大勢の人間がやる気もなく朝から晩まで寝ころんでいる。
何の職業も持たない路上生活者、今の日本で言えばホームレスだ。
インドのどこに行っても、それらの人間の多さに圧倒されたと。
人間の尊厳とは何か? 生きるとはどういうことか?
それをあらためて考えさせられる。
バブル萌芽の時期、インドに行った旅行者たちはみなそう思ったと言う。
時は経ち、あれから30年。
今やインドはBRICSの一国として、今後の世界経済の一端を担う先進国になりつつある。
30年の時の流れは全てを変える。
この作品は、1980年代に大賞賞金が1000万円ということで注目を浴びたサントリーミステリー大賞の第四回受賞作だ。
最初の被害者の腹部から発見された2カラットもの高価な宝石キャッツアイ。
続いて起こった殺人事件でも、被害者の口からキャッツアイが転がり落ちる。
被害者の一人である学生のサークル仲間である女子学生が、事件のカギは、学生が訪れ、キャッツアイの生産地でもあるインドにあると見て、インド旅行を企てる。
そこであらたな事実が発覚する。
スリリングな展開と洒脱な関西弁、女子学生の魅力的なキャラ。
文章も達者でテンポも良く、とても新人の作品とは思えない。
それもそのはず、著者の黒川博行氏は、第一回、第二回と連続で佳作に入選している。
よほど才能があったに違いない
そして、ようやく四回目での大賞受賞。
感慨深かったに違いない。
その黒川氏が、つい先月、満を持しての直木賞受賞。
遅きに失したというべきか。
受賞作「破門」がなかなか面白かったので、他の作品に取り掛かったのだが、この、ほぼデビュー作ともいえる作品もかなりの秀作だった。
三十年前から、優れたエンタメ作品を書いていた黒川氏の足跡を知ることができる貴重な作品だ。
今読んでも、特に古臭い部分などなく、お薦めのミステリーです。 -
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ネタバレ12年という年月は、読書の感想を大きく変える、いやそれ以前に、人体組織も入れ替わる中で、自分という人格の許容性や理解度も大きく変化、もしくは成長というべきか、面白かった。エンタメとしてヤクザものが大丈夫でなかったのは、やはり上司や周辺にヤクザな奴ばかりで拒絶反応が出たのかもしれない。いずれにせよ、最新作まで揃えてしまったので、楽しみながら読むことにします。ということで、過去感想の唯一の180度書換えです。
正直、読書の感想を残すこと自体、恥ずかしくなってきた。たくさんの名作を再読したくなったけど、もう無理だなぁ。。。
2014年感想:直木賞受賞作破門を読もうと思ってシリーズ第一作を読んだ、いや半分以上はしっかり読んだ。よくできてるし人気シリーズになったのもすごくわかった。この異色コンビがどう進んでいくのか興味があるし、シリーズの読みどころなのだろう。でも、ヤクザが主人公というのがどうしても嫌になってページを繰るのがめんどくさくなり残りは速読し、国境は手も付けず破門までの道を放棄。ファンの人には申し訳ないですが任侠映画が嫌いな以上に、私として手を出してはいけなかった小説で、全く合わないのは私の好みに全ての責任があります。 -
Posted by ブクログ
『疫病神』シリーズ第6弾。
この極道の世界にどっぷり浸かって、約1か月半。
現在、最新作『凶花』はまだ連載中とのことなので、読むのはもう少し先になりそう。そこで一旦このシリーズも残すところ本作と次作『泥濘』のみとなった。
ずいぶんこちらの世界の言葉にも慣れてしまい、普段なら一切使うことのない「喧嘩(すてごろ)」というタイトルにも、もはや何の違和感も覚えない(笑)。
ただ、タイトルが『喧嘩』なだけに、前作『破門』後の桑原がどんな暴れっぷりを見せてくれるのかと思っていた分、少し肩透かしもあった。
『破門』されたことで二蝶会の代紋を失った桑原。
これまで怖いもの知らずに突っ走ってきたのは、本人の度胸だけではなく、背後に「二蝶会」という看板があったからこそなのか――。
そんなことを考えると、少し寂しい気持ちにもなった。
それでも桑原の嗅覚は相変わらず鋭い。
金の匂いを嗅ぎつければ食らいつき、なんやかんや言いながら二宮も結局そこに巻き込まれていく。
シリーズを6作追いかけてきた今では、事件の行方と同じくらい、この二人の腐れ縁を見届けることが楽しみになっている。
代紋があろうがなかろうが、やっぱり桑原にはイケイケ極道でいてほしい。
そして二宮には、文句を言いながらもそんな桑原から離れられない、最高のコンビ(バディ)でいてほしい(笑)。 -
Posted by ブクログ
今回はどんな作品かなーと読み始めたら自伝的エッセイだったのでびっくり!
エッセイはどちらかというと苦手だったのでどうかなぁと思ったけど、力感が全然ないのと大阪弁のテンポの良さでスイスイ読めた。
筆者がどういう人生を歩んできたかも興味深く読めたけど、個人的には文壇の友人たちとのやり取りのところが1番『おお〜』って感じでした。
新潮45の編集長のYちゃんって中瀬親方ですよね!?
白川のとおちゃんや、いおりん、色川さんとの繋がりはすごく面白かったし、東野氏との対談まで掲載されていてボリューム満点の1冊に仕上がっているので黒川ファンにはとっては必読書かと思います。