Posted by ブクログ
2011年08月04日
勤務中にビール飲んで女を囲って、好き勝手やりたい放題のワルの刑事を描いて、癒着・横領・隠蔽・裏切り・暴力満載の痛快な黒川ハードボイルド・ワールド、渾身の一編。
大阪の、ひいては日本の警察の、名伏しがたい悪辣さ・闇の真実を描いて白日の元にさらした、でも颯爽とエンターテインメントです。
まあ何という...続きを読むハイテンポの展開であることよ、と今更ながら、そう思いながら、たしか4時間もかからないで、アッという間に読んでしまったことを記憶しています。
こういう書き方は、ひょっとすると安っぽく見られるきらいがあるかもしれないなどと、老婆心ながらフト思ってしまったりすることがありますが、名人芸に近いこのストリーテーラーの、まさか、その軽薄そうな関西弁を嫌悪している訳ではないでしょうが、本作品に直木三十五賞を出さずに候補のままにした選考委員の責任はたいへん重いはずです。
そういえば黒川のおっちゃんも、もうアラカンかと今しがた驚嘆の声を上げたところですが、『二度のお別れ』(1984年)や『キャッツアイころがった』(1986年)から、すでに25年余が過ぎようとしているのですね。
実物はきっと端正な繊細な人格者であると想像しているのですが、いや、だからこそ、透徹して、とことん悪を見定めた物語を構想できるのでは、と勝手に思い込んでいます。
願わくば、今後まかりまちがっても、どうか藤田宜永のように、恋愛小説を書くなどという見っとも無いことはなさらないよう、くれぐれもご自愛くださいませ。