Posted by ブクログ
2017年04月28日
先日、作者のエッセイの本を読んだばかり。以前にこの作者の小説を読んだ時と、今回はちょっと印象が違ったかも。エッセイから作者の日常の様子をいろいろ知ることが出来たが、本作にはその日常がちょいちょい顔を出しているのが伝わってきたというか。それがいいのか悪いのか、どちらでもたぶんないのだけど。
ストーリ...続きを読むーはスピード感があって面白かった。展開が早く、騙し騙されの役どころがぽんぽん次々に変わっていくのも楽しめた。以前読んだ小説でもそう感じたが、会話でストーリーを展開させていくのが、一つのこの作家の特徴か。その会話も、ところどころ掛け合い漫才のようなほわんとしたものが挿入されることがあり、無駄っちゃ無駄な気がしないでもないが、小説全体の味付けになっている。また、登場する女性のうち、音楽教師とホステスの二人が、どちらも個性的で面白い。音楽教師は普段からちょっと変わっていて、しかし実は肚が座っていて、途中からどんどんかっこよくなっていく。ホステスはとにかく気が強く、相手が男だろうが、強面だろうが関係なく、どんな状況でも強気に立ち回ろうとする。それに比べると、主人公の美術教師を始めとして、男どもが全員どこか間抜けで頼りない。他の小説でもそうだし、エッセイを読んだのでそう思うのだが、そういう男たちには、どこか作者が自分を少しずつ投影して描いているように思う。
あまりひどいバイオレンスもなく、胸が締め付けられるようなどろどろの愛憎劇も特にない。さっぱりというか、あっさりとした結末。しつこいようだが作者の人間味が出ていると思わせられた。別にそれが悪いということもないが。例えるなら、お茶漬けを食べたような読後感、というか。