中西輝政のレビュー一覧
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冷戦後から2020年に至るまでの特に日米中ロの情勢の推移がわかる。
【概要】
●2010年代の日米関係、日中関係
●日本の衰退、平成の「失われた30年」
●2020年代の世界秩序
●新しい現実主義
【感想】
●冷戦後の世界秩序についてまとめられている。著者が持つ日本の危機感がよくわかる。
●著者の前著から引用部分のみが書かれているなら読みやすいが、所々に書名で書かれている点が読みづらく残念である。
●書かれている危機を脱しなければならないのはよく理解できる。そのためには若い人たちに教育しなければならず、その機会を設ける必要があると感じた。既に歳を取って自分の考え方が確立した政治家や官僚に言っても何も変わることはないからである。 -
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ネタバレ中西輝政氏によるまさに考え方の羅針盤となる良著
基準を作る。明確化を進める。
メモ
・自分をまず知ること。そのために鏡となる敵を知ること。
・必ず言葉にしてみること。なんとなくではなく、表したい言葉を探す。自らのオリジナリティは考えを言葉にすることでしか、だすことはできない。
・仮説を立てる。基準をたてることで他の考え方が明瞭に見えてくる。言い切りで仮説をたてる。そうすることで情報に対する感度が高くなる。
・最初に得た直感を思い出す。
・難しいものを優しい言葉で表現、言語化してみる。真の理解につながる。
・三つのセオリーを当てはめてみる
作用反作用、慣性、鹿威し。
・問題を三つの要素に分ける。整理やまとめに向く。
・どんな情報も歴史に還元する。過去に学ぶ、歴史に学ぶことがものごとの真偽を教えてくれる。
・問題の外に出てみる。自分の立場を離れてみる。
・よき異端を目指す。異端の考えを取り入れることで考えに深みが出る。
・逆説を愛する心を持つ。
・迷うことは考えが広がることであり、深まることであり、最終的にもっとも効率のよいこと。
・択一より共存を意識する。
・社会と人間は元来うまくいかないもの。相容れないもの。それを前提とすること。
・自分の本分を貫くことで社会貢献に役立てる。
・ふと浮かんだ疑問を封じ込めない。
・誰も疑わない美しい言葉こそ疑ってみる。美しい言葉は人の思考停止を誘うので。
・全員一致はまず間違いと心得る。
真剣に考えていたら一致などするはずないというユダヤ人の教訓。
・変化を見る前にまず不変を見る。変わるものばかりに目を奪われているともっとも大切なものを見失う。変化とは全く違うものに変化するのでなく、不変であるものが常にそこに流れている。
・バラバラの事実と数字を見つめ直す。一見バラバラに見えても、支流が集まって本流になるように、やがてその本質が見えてくる。ものごとの本質を見極めるには一見バラバラに見える事実を根気よく集積することが必要。 -
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2014年の夏休み図書として購入。
以前より国際関係分野で著名な中西氏の視点での日本人論を読んでみたいと思っていたのだが、予想通り、従来の歴史学的・比較文化的アプローチとは違った切り口での持論展開で非常に興味深く読むことができた。
多くの歴史家や学者が指摘するように、やはり本書においても大東亜戦争後に大きく日本の姿が変わってしまったというところを基軸に論考が展開されるが、論点が面白い。
まずは何故日本人は戦前を全否定するようになったのかという問いかけを出発点に、いかにして戦後に三大勢力(GHQ、左派マスコミ・知識人、霞が関官僚)によって日本の姿が歪められたのかということについて持論が述べられていく。
特に戦後日本はこれらの勢力による壮大な「社会主義の実験場」であったと指摘しているところが興味深い。
当時のアメリカにおいてさえ、社会主義者や共産主義者が数多く存在し、敗戦国日本で革命を起こし、理想の国家を創りあげようと暗躍していたというのである。
このような事実が判明する理由として、中西氏の「歴史は60~70年周期で大転換する」という持論にも関連するが、ある歴史的事象から60年程度の時間が経つと、当時極秘とされていた機密文書が少しずつ公開され事実が浮き彫りになってくるために、世代間の主観的な思い込みによる言い伝えが時間とともに薄まることも手伝い、より客観的に当時の歴史的事実を知ることができるようになるからだと述べている。
GHQが後の共産主義国との争いに備えるべく、新たな憲法の草案を作成したり、その後日米安保条約や日米地位協定を、日本の独立と引き替えに締結したということはよく言われることだが、その裏には共産主義者や社会主義者の影響も少なからずあったということは、確かにある程度の時間が経った現在だからこそ見えてくることなのであろう。
ゾルゲ事件はあたかも特別なことであったかのように国内では取り上げられているが、実は旧ソ連のスパイ諜報網などは各国の共産党と連携しながら戦前から世界中に張り巡らされており、日本においても政界やマスコミだけでなく、その触手は軍部にまでも及んでいたというのだから、いかに世界中が諜報活動に躍起になり、次の覇権を狙おうとしていたのかが、今日になったからこそ見えてくる。
とにかく、このような事実が過去に存在し、かつその影響が今日まで続いていることを認識した上で、従来の「あの戦争は間違っていた」「戦前の日本のような国になってはいけない」的な偏った自虐史観ではなく、今一度「正しい歴史認識」というものを再考する必要があるのではないだろうか。
また中西氏は日本の天皇制にも言及し、天皇の必要性を他国の王制と比較しながら述べていることも一読に値する。
万世一系の重みを今一度理解し、GHQに権力を削ぎ落とされながらも現在まで一心不乱に国民の平和と安寧を祈り続けている皇室の本当の価値を再認識すべきだと強く主張している。
そういった意味で、近年左派マスコミが声高に叫ぶ「開かれた皇室報道」は間違っていると警鐘を鳴らしており、これには天皇・皇后両陛下をスマホで撮り、それだけでなくその画像が何の躊躇もなくSNSに投稿されることにものすごく違和感を感じていた自分も強く賛同した。
やはり皇室は日本にとって特別な存在なのであり、戦後世界であってもそれが否定されたり軽んじられるものでは決してないということを、戦後70年になろうとしている今こそ、その尊さとともに後の世代に伝えていかなくてはならないであろう。
本書の最後では、「文明国としての日本」という観点から、日本人の“心”について述べている。
戦時中にアメリカの文化人類学者であるベネディクトが書いた「菊と刀」が、長らく欧米人における日本人論のスタンダードとされてきたが、あれは日本を統治占領するための戦時研究の一環であったことは現在では明白である。
しかしながら、いまだに日本文化の特徴を「ここがヘンだよ日本人」のように、半ば自虐的に報道されていることもまた事実であり、非常に違和感を感じざるを得ない。
やはりそれは、戦後の偏った教育が原因であるとともに「日本は文明国である」という意識がまだまだ低いからなのだろうが、過去はどうあろうと事実は事実として受け止めつつ、日本という“国のカタチ”を正しく次の世代に伝えていくのが現代の大人の役割なのだと、本書を読み終わって実感した次第である。 -
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世界の覇権は18世紀初めにイギリスが、その後アメリカが握った。両国は同じアングロサクソンであり、アメリカだけを見ていては、その本当の強さの理由がわからない。
イギリスが世界の覇権を握るため、特に注力したのは「海洋覇権」の確立。自国の船だけでなく、他国の船の安全も保障。この「航行の自由」により、どの国も覇権を受け入れた。
こうした「自由と開放」の論理が、アングロサクソンの覇権の核心。
アングロサクソンの特徴として「偽善」がある。皆の利益を尊重するように見えて、実際は自らの利益の最大化を図る。普遍的な価値観をことさら強調し、そのことを隠す。奴隷解放宣言などがそれにあたる。
「パックス・ブリタニカ」は
・覇権的な軍事力
・強大な経済力
・普遍的な自由貿易のイデオロギー
の3つが支えた。この構造はアメリカに受け継がれ「パックス・アメリカーナ」の基本原理となっている。
イギリスは、他国との共存を重視する「多極的な世界秩序」の維持と安定を目指した。アメリカもこれを引き継いだが、冷戦後「自由=正義」という独自の価値観に世界中を従わせる戦略に転じた。「一極支配」を目指した結果が、イラク戦争やアフガニスタン侵攻の失敗につながった。
アメリカが世界のリーダーとして生き残る道は、多様化してゆく世界で、多角的な協調秩序への移行を先導すること。しかし、トランプ大統領は世界を納得させられる「理念」に欠けており、その役割を望むことは難しい。 -
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全てのものの見方、考え方は正しい自画像を出発点にして始まる。
そして相手、敵を正しく認識する。
敵との対比で自分自身をよりよく知ることも出来る。
正しい判断のためには、しばらく答えの出ない宙ぶらりんの状態に耐えることが必要。
考えを必ず言葉にしてみる。
自分なりの仮説を立て、結論を出してみる。
最初に得た直感を思い返す。
難しい話をやさしく話す。
行動しながら考える。
答えより、考え方の重要性を知る。
何か問題を考える時、違う立場の意見を読んだり、聞いたりしてみる。あえて外に立ち、大局的に問題を見てみる。
迷いは将来への素晴らしい投資と捉えて、迷うことから逃げない。
自分に都合のいい論理を調達しない。
世界を国単位ではなく、文明単位で見る。
評価でなく、事実だけを見る。
天下国家も自分のこととして考える。つまり、大きく考える癖をつける。
国を知るには、まず神話を知る。
ふと浮かんだ疑問を封じ込めない。
人は言葉で考える。ただ誰も疑わない美しい言葉こそ疑ってみる。
問題を早く知り、 そのタイミングを知る。
全員一致は、まず間違いと心得る。
不変に目を向けることで、一層よく変化の本質が見える。
情報を積み上げ、それを磨く。つまり、インフォメーションをインテリジェンスに変える。
その情報の9割はオープンソースである。
目的意識を明確にする。
情報収集と判断は切り替えて行う。判断の際に予断や先入観を持たない。
著者の考え方がよく現れた書である。 -
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現在の世界情勢について、歴史も踏まえながら論じている点がダイナミックでおもしろい。
世界は、3つの勢力の三つ巴になっている。
・オールド・グローバリズム:グローバル化を主導してきた大手金融機関や投資家、メディア、既成政党。テロや保護主義、極右排他勢力が生まれることを懸念し始めていた。
・アンチ・グローバリズム:グローバリズムによって、職を失ったり薄給を強いられつつある人びと
・ネオ・グローバリズム:金融規制などに反対し、一層のグローバル化の推進を主張するヘッジファンド、IT業界、ネオコン。無国籍で、徹底的に自己利益のみを追求する。
ネオ・グローバリストが、処々の規制を食い止めるために、敵の敵であるアンチ・グローバリストを支援したのが、トランプの勝利やブレグジットが実現した理由。
第一次世界大戦後、アメリカのウィルソン大統領はヴェルサイユ会議で国際連盟規約に調印し、議会の批准を求めた。ウォール街の金融関係者や外交評論家、ジャーナリスト、学者たちは、グローバル化しつつあったアメリカの経済国益を確保するために、自らの立場を「国際主義」と呼び、反対する陣営を「孤立主義」と呼んで批判した。しかし、ウィルソン大統領が第一次大戦に参戦したことによって多くのアメリカ人が戦死したこと、フランスが「勢力均衡」の名のもとに敷いたドイツ包囲網にアメリカも加わるよう求めていることに反発した条約反対派に敗れた。国内問題に集中した1920年代の10年間は、GNPが3倍近くに増大した。アメリカ建国の父であるジョージ・ワシントンも、18世紀のヨーロッパの王国同士が延々と領土拡大の戦争を続けていたことを背景に、1796年に対外不介入主義の演説を行っている。戦後のアメリカの対外関与政策は、建国以来の根本理念とは正反対のものになっている。世論の強い国では、民意の振れ幅が大きすぎるゆえに、政治・外交の振る舞いが反転してしまうため、どちら向きにもなり得る。
戦後、アメリカは西ドイツをNATOに取り込もうとしたが、フランスが拒んだため、当時始まっていたヨーロッパ統合の流れを利用して実績をつくろうと考え、欧州石炭鉄鋼共同体を発足させた。EUも、ASEANも、日米安保も、NATOも、アメリカが作ったパックス・アメリカーナの副産物のようなもの。NATOは米英同盟を核として、仏独などをアメリカについないでいるもの。CIAもNSAも、中国、チベット、南シナ海、ロシアや北朝鮮などの監視機構は、暗号解読や電波傍受を含めてイギリスの協力なく成り立たない。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを含むアングロサクソンによるファイブ・アイズ同盟には、互いに監視基地を持つことができ、極秘の情報を共有する不退転のシステムができあがっている。ドイツ統一は、NATOを東方に拡大させないという約束の下にゴルバチョフが認めたにもかかわらず、ソ連崩壊によって破られた。ロシアの反西側の世論は、このアメリカの嘘に不信感を持ったことが大きな原因。
ドイツとロシアは、自分たちの合意によってヨーロッパ全体を運営したいという意向がある。ドイツはエネルギーの4割をロシアからの天然ガスに依存し、工業製品も輸出している。プーチンはかつて東ドイツで活動していたことがあり、メルケル首相はロシア語に堪能で、ロシアの女帝エカテリーナ二世の肖像画を執務室に掲げている。歴史的にも、プロイセンが主導したドイツ統一は、ロシアが中立を保ち、普仏戦争でフランスを孤立させたためだった。さらに、ドイツが中国に接近する影響も大きい。1920年代より、中国の国民党政権はドイツから軍事顧問団を招いていた。1933年にナチスが政権をとると、中国に対してさらなる人的支援、武器支援を行い、中国軍の近代化を進めた。日本が日独伊三国同盟を結んだのも、ドイツを中国から引き離すことにあったが、その結果として対米英戦争を招いてしまった。
著者は、アメリカ一極から多極化への移行は、安定的で公平な世界があるという。次作ではそれを論じたいと書いている。 -
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長いことアメリカに住んでいると、アメリカに根付いている階層意識、階層差別というのが良く見えてくるそうである。自由の国アメリカ、一文無しからでもビックになれるアメリカンドリームというのはどうやらまやかしのようだ。先日渡米したピースの綾部、大丈夫か? 才能うんぬんより、やっぱり日本人ということで見えない差別の壁に跳ね返されるんじゃないか…
過激な発言でアメリカファーストを繰り返すためオバマ前大統領とは違う路線だと思われているが、著者によれば、実はトランプはオバマ路線の誠実な継承者らしい。
オバマは世界の警察官をやめた。トランプはアメリカファーストを掲げている。表現は違えど、二人ともアメリカはもう期待されるような超大国としての役割を果たせませんよ、と言っている。
北朝鮮の問題にしろ、アメリカが直接かの地に乗り込んで戦争をしかけるなんてありえない。もし本当に北朝鮮が核でアメリカを攻撃できるなら、いままで核保有国に戦争を仕掛けたことがないアメリカが、北朝鮮に戦争を仕掛けるわけがない。また核による脅威がないなら、極東の危機なんて、所詮はアメリカとっては喫緊の課題なんかじゃないから、本腰なんて入れるわけがない。
トランプの発言はブラフばっかり。彼の過激な発言は、結局はディールなのだ。とりあえず過激な発言をして相手の出方を伺っている。
いろいろ言っているが、北朝鮮への武力攻撃なんて、トランプの頭にはないんじゃなかろうか。
日本にとっての一番の危機は北朝鮮ではなく、やっぱり中国。日本がいま一番警戒しなければいけないのは、実は米中接近らしい。
近い将来必ず中国がアメリカを抜いて超大国になる。領土的野心を隠そうともしない中国が尖閣を奪いに来ても、アメリカは抗議くらいはするだろうが、本気で日本の味方なんてしない。そんなことより中国にすり寄ろうとしている現状からみれば、まあまあ、ここは双方矛を収めて、現実的な話でもいたしましょう、くらいな感じで仲介役になろうとするかもしれない。
著者は日米安保体制で中国の脅威に対して対抗するのは危なっかしいので、いよいよ日本独自で超大国中国に対抗する手段を考えないといけない、と言っている、防衛費もいまの2倍くらいにしないといけないとかなんとか。
2倍にしたところで中国に対抗できるわけがないし、いまの防衛体制をアメリカ抜きで維持しようとしたら5倍から6倍の予算、つまり30兆か~40兆くらいかかるはずだから、著者の言い分には納得できない。そんな国力あるわけないし。しかし、結局は中国に呑み込まれるか、一党独裁の体制が崩壊して民主化するのを期待するしか今のところない。早晩、民主化への流れは必然だから、その流れを促す戦略を立てるべきと主張には、その通りだと思う。
でもそれって、諜報活動を強化しろってことでしょ? 特定機密保護法でもあんなに揉めたんだから、いまの日本には無理でしょ? 諜報活動に関してだって中国のほうが数段上でしょ?と様々な疑問が浮かぶ。国の舵取りは当たり前だが一筋縄にはいかない。
そんな状況を知ってみると、いまのアメリカ追従の政権も、アメリカに逃げられたくないから、袖にしがみついて引き留めているだけだ。アメリカがそれで翻意するならしばらくはいいが、10年20年を見越した政策ではないことは確かなようだ。
逆にアメリカを追い出せなんて言っている勢力は中国の脅威に対してあまりに盲目だ。自国民でさえ信じていない独裁政権の善意を信じる態度は危ういと思う。