【感想・ネタバレ】日本人として知っておきたい「世界激変」の行方のレビュー

あらすじ

「トランプ、プーチン、習近平」の三人が勢揃いした世界が、日本にとってもはや安泰な世界であろうはずはない。トランプ大統領の誕生と「孤立主義化」するアメリカ。覇権主義的動きを強めるロシアのプーチンと中国の習近平。激震し、分裂に向けて動くかのごときEU。「地獄のオセロゲーム」と化すアジア……。いま、誰の眼にもわかる形で、世界は激しく音を立てて崩れ、明らかにこれまでの秩序は後戻りすることのない大変動を始めた。これから世界で何が起きるのか。そして、そのなかで日本はどうすべきなのか。大きな流れを見通すならば、すべての構図は「グローバリズムの終焉」とそれに伴う「アンチ・グローバリズム」「オールド・グローバリズム」「ネオ・グローバリズム」という三勢力の相克から読み解ける。いま直面する「危機」を考えるとき、もはや日本は「普遍的価値」も捨てるときは捨て、自らの生存を最優先に考えねばならぬ――日本人の覚悟を問う、刮目の書。 ●第一章 トランプのアメリカで世界に何が起きるか ●第二章 日露“北方領土”交渉と売国の危機 ●第三章 介入か孤立か――パックス・アメリカーナの行方 ●第四章 「グローバリズムの限界」に直面し流動化する世界 ●第五章 「地獄のオセロゲーム」化するアジア ●第六章 これから十年、日本はどうすべきか

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Posted by ブクログ

中国、ロシア、ドイツが手を取り合うというシナリオは考えただけで気分が悪くなる。が、それを考えるのが国際政治なのだろう。今まで読んだことのない話だったので圧倒された。

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2017年04月23日

Posted by ブクログ

現在の世界情勢について、歴史も踏まえながら論じている点がダイナミックでおもしろい。

世界は、3つの勢力の三つ巴になっている。
・オールド・グローバリズム:グローバル化を主導してきた大手金融機関や投資家、メディア、既成政党。テロや保護主義、極右排他勢力が生まれることを懸念し始めていた。
・アンチ・グローバリズム:グローバリズムによって、職を失ったり薄給を強いられつつある人びと
・ネオ・グローバリズム:金融規制などに反対し、一層のグローバル化の推進を主張するヘッジファンド、IT業界、ネオコン。無国籍で、徹底的に自己利益のみを追求する。
ネオ・グローバリストが、処々の規制を食い止めるために、敵の敵であるアンチ・グローバリストを支援したのが、トランプの勝利やブレグジットが実現した理由。

第一次世界大戦後、アメリカのウィルソン大統領はヴェルサイユ会議で国際連盟規約に調印し、議会の批准を求めた。ウォール街の金融関係者や外交評論家、ジャーナリスト、学者たちは、グローバル化しつつあったアメリカの経済国益を確保するために、自らの立場を「国際主義」と呼び、反対する陣営を「孤立主義」と呼んで批判した。しかし、ウィルソン大統領が第一次大戦に参戦したことによって多くのアメリカ人が戦死したこと、フランスが「勢力均衡」の名のもとに敷いたドイツ包囲網にアメリカも加わるよう求めていることに反発した条約反対派に敗れた。国内問題に集中した1920年代の10年間は、GNPが3倍近くに増大した。アメリカ建国の父であるジョージ・ワシントンも、18世紀のヨーロッパの王国同士が延々と領土拡大の戦争を続けていたことを背景に、1796年に対外不介入主義の演説を行っている。戦後のアメリカの対外関与政策は、建国以来の根本理念とは正反対のものになっている。世論の強い国では、民意の振れ幅が大きすぎるゆえに、政治・外交の振る舞いが反転してしまうため、どちら向きにもなり得る。

戦後、アメリカは西ドイツをNATOに取り込もうとしたが、フランスが拒んだため、当時始まっていたヨーロッパ統合の流れを利用して実績をつくろうと考え、欧州石炭鉄鋼共同体を発足させた。EUも、ASEANも、日米安保も、NATOも、アメリカが作ったパックス・アメリカーナの副産物のようなもの。NATOは米英同盟を核として、仏独などをアメリカについないでいるもの。CIAもNSAも、中国、チベット、南シナ海、ロシアや北朝鮮などの監視機構は、暗号解読や電波傍受を含めてイギリスの協力なく成り立たない。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを含むアングロサクソンによるファイブ・アイズ同盟には、互いに監視基地を持つことができ、極秘の情報を共有する不退転のシステムができあがっている。ドイツ統一は、NATOを東方に拡大させないという約束の下にゴルバチョフが認めたにもかかわらず、ソ連崩壊によって破られた。ロシアの反西側の世論は、このアメリカの嘘に不信感を持ったことが大きな原因。

ドイツとロシアは、自分たちの合意によってヨーロッパ全体を運営したいという意向がある。ドイツはエネルギーの4割をロシアからの天然ガスに依存し、工業製品も輸出している。プーチンはかつて東ドイツで活動していたことがあり、メルケル首相はロシア語に堪能で、ロシアの女帝エカテリーナ二世の肖像画を執務室に掲げている。歴史的にも、プロイセンが主導したドイツ統一は、ロシアが中立を保ち、普仏戦争でフランスを孤立させたためだった。さらに、ドイツが中国に接近する影響も大きい。1920年代より、中国の国民党政権はドイツから軍事顧問団を招いていた。1933年にナチスが政権をとると、中国に対してさらなる人的支援、武器支援を行い、中国軍の近代化を進めた。日本が日独伊三国同盟を結んだのも、ドイツを中国から引き離すことにあったが、その結果として対米英戦争を招いてしまった。

著者は、アメリカ一極から多極化への移行は、安定的で公平な世界があるという。次作ではそれを論じたいと書いている。

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2018年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

明解な語りでとても説得力があるし、分かりやすい。
このままで日本は、あるいは世界は大丈夫なのだろうか・・・と危機感が沸き上がるが、<あとがきにかえて>で、「いま世界はじつはむしろ『よい方向に向かって動いている』のだということ」を筆者が特に強調して書いているところがとても印象的。
「危うい過渡期」について、しっかりとした「自立への気概」をもって対処していかなければならないと思う。第二次世界大戦までは、聖徳太子の時代から、和の国である日本はどの国よりも自立していた国だったのだから・・・

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2017年02月02日

Posted by ブクログ

 著者は経済のグローバル化と民主主義は相容れないと述べています。イギリスのEU離脱は自国の独立性を選択し、ギリシャのEU残留は、EU経済の恩恵を受ける代わりに、自国の緊縮財政や行政サービスの削減等を強いられています。
 冷戦終了後の世界はアメリカの1極体制でドルを基軸通貨とした経済や金融の仕組みが形作られてきましたが、昨今の出来事はこの体制の綻びであり、グローバルな自由経済主義に限界が訪れています。
 そんな中、日本はこれからも形骸化した日米同盟にすがるように生きていくのか? 北方領土を交渉カードに利用するロシアの体制に組み込まれていくのか? いずれは米国を凌駕する中国の政治・経済・軍事パワーに屈するのか?・・・今、日本人としてしっかりと自立し、どういう世界を描いていくのか?日本という国は世界の中でどういう立ち位置を得たいのか?過去の歴史から脈々と流れる底流を見極め、しっかりとした準備と焦ることない行動で、国際社会に主張すべきは主張し、潮目において譲歩する。多極化する世界の間で翻弄されるのではなく、まさに今、自らが生き抜いていくための考えをもち行動に移していかねばならない時、と感じました。
 アメリカの非介入主義の歴史、冷戦終結以降のアメリカの戦略と失敗、EUの起源や意義、中ソと独の関係、等々は大変勉強になりました。

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2017年02月01日

Posted by ブクログ

日本から見た世界情勢の行方について。

2016年出版ということもあり、今からすると若干古いものの、勉強にはなった。

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2024年09月14日

Posted by ブクログ

冷戦後の世界におけるアメリカ、ロシア、中国、ドイツ等の動きを、著者独特の「歴史の土地勘」とやらで読み解く。専門家に「勘」と言われてしまうと、「そうですか」と言うしかないのだが、とにかく日本にとって中国はやっかいな存在である、というのが前提の議論。それはそうなのかもしれないが、その中国ともしたたかに手を組むような方策も検討した跡がないと、なんだか、ただの放談になってしまうのではないか。そんな印象をもった。

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2019年04月15日

Posted by ブクログ

久しぶりに当たりだった中西作品。トランプだけでなく国際関係の分析が鋭い。たぶんゴーストライターだろうけど、文体がいつもと違う気がした。

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2017年04月25日

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