濱野大道のレビュー一覧
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事件ノンフィクションには、しばしば下世話なのぞき見趣味を刺激するものがあって、読んでる自分が嫌になってくることもしばしばだが、これは違っていた。被害者と加害者の双方、本人はもちろん家族や関係者のプライバシーにかなり踏み込んでいるけれど、興味本位に暴き立てる感じがなく、こういうのって非常に珍しいと思う。
著者は、英国「ザ・タイムズ」紙アジア編集長および東京支局長で、滞日20年だそうだ。さすがに日本のことをよく知っているなあと思わされる。繰り返し言及されている、日本の「水商売」のありようとか、警察の捜査や司法制度についての疑問・批判には、若干西欧中心的な感じがあるものの、なるほど「外」からはそう見えるのかと納得するところもある。事件について、「特異な犯人の冷酷な犯罪」という側面にとどまらず、日本社会の一面をあぶり出していく書き方になっていて、そこが優れていると思った。
これはかなり騒がれた事件だったと思うが、詳しいことは知らなかったので、まずそのドラマティックな展開に驚かされた。犯罪小説そこのけ。でも、ここに登場する人たちは誰一人型どおりではない。特に被害者の父親が、「期待される被害者遺族像」からかけ離れていて、そういえば当時もバッシングの対象となっていた記憶がある。このティム・ブラックマンがもっとも印象的だが、どの人にも、どの家族にも、傍目には窺い知ることのできないそれぞれの「生」がある。多くの人に知られるはずもなかったその姿が、非道な犯罪によってさらけ出されてしまう。二重の恐ろしさを感じた。 -
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ルーシー・ブラックマン事件のことは覚えているつもりだったが、来日した家族の活動とか、ブレア首相が森総理に協力要請したとか、知らないことが多かった。
本書は「タイムズ」記者による綿密かつ詳細なルポであり、ルーシーの家族関係、犯人である織原の深い謎、日本の警察と治安といった様々な点について切り込んでいる。特に、被害者やその家族との長期にわたる関係は、英語を母語とする英国人記者ならではという気がする。かといって、日本人相手の取材にも不備がないのがすごい。
この事件、あるいは織原の犯罪を、日本人男性による西洋人女性に対する蛮行といった人種的ステレオタイプな一見分かりやすい説明にしてしまうことなく、深く考察されているところが秀逸。 -
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ネタバレ2000年に起きたルーシー・ブラックマン殺人事件。
犯人の情報。
犯人は韓国系日本人、金聖鐘(キム・ソンジョン)。
父親は日本に渡り、戦後のわずか10年で大阪の最も裕福な男になった。
駐車場・タクシー・パチンコとすべて「土地」が必要な商売ばかりで成功。
一家は星山という通名を使っていた。
学生時代には黒板に日本や日本人への怒りをあらわにした政治的なスローガンをよく書いていた。
目の一重を二重に手術したことを「交通事故にあって目を縫った」とウソをついていた。
有り余るカネで他の学生の比ではない生活をしていた。
昭和44年(1969年)から女性に睡眠薬を飲ませて強姦していた。ちなみにこの時は童貞だったので性交できなかった。
要するに30年間以上にわたり、連れ込んだ女性に睡眠薬を飲ませて、意識を失っている状態の彼女たちをレイプする行為を繰り返し続けていた本物の強姦魔。
ビデオによると女性が意識を取り戻しそうになったら、布に湿らせたクロロホルムを女性の鼻の先に差し出して、また意識を失わせた。そして何時間もレイプし続けた。
数えきれないほどのたくさんの偽名を使っていた。
70台分のプリペイド式携帯電話をまとめて購入したことがあった。
裁判ではルーシー・ブラックマンの準強姦致死罪では有罪にはできなかった。
しかしオーストラリア人女性カリタ・リッジウェイへの準強姦致死罪で有罪となった。
裁判中に自己破産。
ブラックマンの父親に1億円の「見舞金」を支払っている。出どころは不明。
リッジウェイ家にも同様に1億円。
無期懲役刑で現在、刑務所。
最後にルーシー・ブラックマンさんとカリタ・リッジウェイさんのご冥福をお祈りします。 -
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2013年6月、香港にて本書の著者やその他数人に対し、
アメリカ合衆国NSA元職員のスノーデンが自身の良心に従って、
行きすぎたアメリカの監視体制に関する機密文書数万点を暴露したことは、
日本でも大ニュースになり、みなさんもご存じだと思います。
その機密文書の内容は、アメリカやイギリスの新聞社から記事として発信され、
スノーデンはモスクワに移動して逮捕を逃れ、
本書の著者であるグリーンウォルドも共犯者とみられる向きもあり、
ブラジルのリオデジャネイロに住んでいながらも、
アメリカに帰国した際には連行される危険性も否定できないらしいです。
そんな危険を冒してまで、
政府に屈せずに報道をしていくのが、
真のジャーナリストである、と著者は述べていて、
昨今の、政府にお伺いを立ててから記事にするような、
たとえばニューヨーク・タイムズ紙の記者などを痛烈に批判しています。
そのようなスタンスで、
本書はスノーデンのリークした機密文書の紹介や、
香港で彼と著者たちが出会うまでについてや、
なぜNSAによるインターネット世界全監視システムであるプリズム計画などが
プライバシーを侵害することがよくないのかという、
どうしてプライバシーが必要なのかについての論考や、
そしてマスメディアの現在についての批判や記事発表後の
著者自身のあまりいいとはいえない状況などについて書かれています。
僕はこのNSAによる世界監視が暴露されたことは喜ぶべきだと思いました。
アメリカのオバマ政府は、
「国民の監視や盗聴や通信の傍受はしてないよ!外国人に対してだよ!」
というような苦肉の言い訳をしていて、
それに対して、マーク・ザッカーバーグ(FBの創始者)が、
「世界を相手にしているウチの商売に気を使えよ」的な愚痴を言ったとか。
そうなんです、世界監視には、フェイスブックもヤフーもグーグルも、
いろいろな企業が協力しているそうです。
そうやって、プライバシーを盗んでいるんですね。
そうしたことが秘密裏のままだと、
本当に闇の中でもっと権力を強めてしまいかねない。
日本もそうだけれど、政府っていうものは、国民やジャーナリストが厳しく見ていないと、
なにをしでかすかわかったものではないなと感じるところです。
また、著者の主張の優れているところの一つは、こういうところです。
肉体の安全を超一級の優先事項として、
精神的な価値すなわちプライバシーの安全などを明け渡すよう迫る
「監視国家是認」の言説は考えが浅いように思われるし、
詭弁として受け取れるというようなところ。
そうなんですよね、肉体の安全すなわちケガや死に対する不安を過剰に煽って、
それらを回避するためなのだから、精神的な価値つまりプライバシーを
さしだしなさいという、強引な論法なんです。
そして、読んでいて感じたのですが、
他人と違ったままでいたかったなら、知性を磨かなくちゃいけないと感じました。
労力がいるけれど、他人と違うという理由で自分に張られるレッテルを、
それはレッテルだとして説明したり論破したりしなければならないだろうからです。
へんなもので、人と違うことをすることには説明責任があるかのように扱われる。
アメリカじゃ、あいつは人格障害だとか社会不適合者だとか
レッテルを張られる場合があるらしい、問題が大きくなると。
こういうのは健全バカだと思う。
我田引水すぎるリテラシーのせいなのかな。
人権も侵害しているでしょう。
世の中の色合いってものは、
どうしても排他的な保守の色合いだったりする証拠なのかもしれない、
人と違うことをしたときに当たり前のように説明責任を持たされるのは。
説明できないと、病気だとか障害持ちだとか、
適当にレッテルを貼られてしまいます。
この件によって、ジャーナリズムの存在価値が見直されて、
国家に対する監視という立場を堅守するようになってほしいです。
そして、言論の自由ですよね。
驚いたことにイギリスでは報道の自由みたいなのって決められていないみたいです。
本書では、アメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアを
ファイブアイズという名前でもっとも親密な同盟として、
NSAの監視盗聴の恩恵を受ける国々としていたと書かれていました。
しっかし、世界をこういう感じで眺めてみると、
情報の暴露一つにしても、物騒だなと思いました。 -
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スノーデンが著者に接触するところから現在(当時)に至るまで、時間を追って物語風に記されているので話にどんどん引き込まれました。最初TVでこのニュースを見たとき、とても表に出てきそうもない情報を暴露するとはなんて勇気のある若者だ、それにその事が色々な妨害もなく(屈せず)世間に出てきたなと衝撃を受けた事から、詳しい詳細に漠然と興味がありました。アメリカNSAが個人の通信の全ての情報(インターネット閲覧情報•電話通話記録等)を漏らさず取得しようとしていた事は驚きです。言われていたように、要注意人物や主要人物はそのターゲットになりうるという認識はありましたが、反政府的な芽を摘むという意味でも一般市民余すことなくとはそこまでやっていたのか、と。いまやネットは個人情報の宝庫でそれを盗まれ管理•操作されてしまうことがどれだけ自由と安全と人権を脅かすか、また見られてるかもという被害妄想によって行動が制限されてしまう、人間の心理による弊害については深く考えさせられました。無意識のうちに管理•洗脳されることが日々の生活の中でも確かにあると。反政府的な思想を少しでも持つものは芽を摘むがごとくに管理工作されつぶされる。筆者は政府のいいなりになっているような現在のジャーナリズムをも問題視しています。これは日本でも同じことかと。最後に、大きな組織•力であっても、論理的に考えて自ら意思決定する小さな人間ひとりひとりが、抵抗し挑戦し変えていく事ができると言っていて、まず意識を十分もって監視•行動することが大事だとおもいました。ちなみに筆者はその後アメリカに入国出来たのか気になるところ。ここまで大きな話題になったら簡単に逮捕とか出来ないと思うけど。
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スノーデン氏から著者へ接触があったのは2012年。この告発により、オバマ政権下でのアメリカ市民への盗聴が大きな話題になった。2008年に出版されたティム・ワイナー氏の「CIA秘録」では、CIA設立時から各総理大臣の対応が詳細に書かれている。そこにはオバマ政権も含まれているが、市民への盗聴は、なにも彼の政権下でのみ行われたことではない。「CIA秘録」は機密解除された内部文書をもとにした情報であり、出版当初は大変話題になったそうだ。
それから数年の時を経て、より多くの人がスマホを持ち、インターネットを使用するようになり、情報に触れる機会が増えた。そこでスノーデン氏の告発が一番インパクトのあるタイミングで炸裂したのだと思う。政府にとって不都合な真実を隠そうとする圧力や妨害行為に対しては、今更何も驚かない。いくら有名な新聞社であっても、崇高な理念だけでは資本社会で生き残れないのだ。
そもそも、他人が作った「インターネット」というものを利用しておきながら、自分のプライバシーが守られているという考え自体が甘いのではないかと思う。公共の通信を使用しているのだから、そこへ入力した内容や送信したデータが見られる可能性があることは頭に入れておくべきである。手紙にしても、第三者が配達することにより、開封される恐れがある。ただ「開封しない」というルールをもとにお互い信用しているだけで、実際いつでも開封して、痕跡を残さず閉じ直すことも可能なはず。
プライバシーに関する問題は昔からあったと思うが、インターネットがあまりに便利で簡単に使えるのに、複雑な仕組みをしていることから一般人を煙に巻きやすく、それを提供する側がプライバシーの保護を約束し過ぎたのもよくなかったかもしれない。企業や政府の言葉は建前に過ぎない。自分がコントロールできないものを使用する時は、基本的に誰もなにも信用してはいけないのだ。それでも私たちは他者を信じることでしか世界を動かせない。だからこそ、どこまで信用するかを自分で定義する必要がある。 -
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進化心理学という人間の進化の過程から、私たちの心がどのように形作られたのか書かれた本。
時々、その結論は急では?と思うところもあったりしたけれど、色々な実験も出てきて面白かった。
最後に、進化心理学の観点から見た「楽しい人生にたどり着くための10ステップ」もまとめられていて参考になったかも?
個人的なツボはここ。
前段階として、進化にとって重要なのは「繁殖」。
それは性交したいという欲求と産んだ子を愛おしく感じる性格を与えた。子どもを産み育てることは人生の満足度に大きく影響する、と書いたうえで以下。
それは、子育てのために日々やるべきことが楽しいという意味ではなく(往々にして楽しくない)、子どものために正しいことをしたという知識が人生の満足度を高める大きな源になる。
どことなく今は、子育て大事だよね、楽しもうね、みたいな空気を感じてそれが私には辛かったりもする。だからこそ、この一文を読んで思わず笑ってしまった。
以下メモ
・人は森からサバンナに移ることで大きく進化をした。実際は移ったというより気候変動で住んでいた森がサバンナになった。
・生き延びるために競争ではなく「協力」を選んだ。
・火を使うことで、食べ物を調理し、より早く新陳代謝ができることで脳が発達した。
・心の理論:他者の心は自分の心とは異なるという理解。この理論があるから、他者に何かを教えることができる。さらに「嘘」をつくことができる。
文化を超えて嘘が非難されるのは、すべての人間に嘘をつく欲求があり、嘘が集団の結束や協調に対する脅威である証拠。
・農業には所有権と備蓄がつきもので、必ず不平等が生まれる。不平等を受け入れることで、富裕層と貧困層、主人と奴隷が生まれる。
ヨーロッパがアフリカ、アメリカ大陸を侵略したとき、狩猟民族よりも農耕民族の方が容易に支配できた。
・社会的脳仮説:脳が進化したのは、身体的問題を解決するためではなく、社会的問題を解決するため。
・自己高揚効果:より効果的に他者を欺くために自分を欺く(自分が写っている写真を見たときに、写りがあまり良くないと感じる。が、残念ながら、カメラマンの腕が良くないのではなく、単に自分が思っているほどルックスが良くないだけ)
・社会革新仮説:あまり社会的でない人が技術的なイノベーションを生み出す可能性が高い。他者に興味がある人(ほぼ全員)は、発明の才能を持っているのにも関わらず新しいものを多く発明しようとしない。困ったことは他者の協力を仰ぐから。
・北極南極から赤道に近づくにつれ、地域ごとの言語や宗教の数は増え、住民はより外国人を嫌う。それは、病原菌の密度が高いから。
病気の発生源を避けようとする、自分の行動と異なるものを誤ったものとみなす。自分の集団と協力しても他の集団とは協力しない。
・人間は狩猟採取時代から、長続きする幸せは手に入れられなかった。自己啓発の専門家たちは、最大または永続的な幸せを手に入れることが人間の目標と信じさせようとする。そのような目標はそもそも達成できるはずもなく、望ましくない。
・人間の免疫システムは幸せな時に円滑に動き(そこにエネルギーを向けられる)不幸な時に動きが遅くなる(エネルギーが他のより生存に必要なものに向く)。
・幸せは、生存と繁殖の助けとなるための行動をとるよう人間に動機付けする。でも幸せ自体が目的ではない。
・より良い人生、幸せについて自問自答し続けなければならない。そして古代の戦略に従うのが一番。性交、食べ物、親であること、遊び、技術の取得、ストーリーテリング、友情、親戚、家庭、共同体、貢献。現代版の表現型の贅沢(酒、ドラッグ、テレビ、ポテチなど)には注意。
最後に書かれていた、「楽しい人生にたどり着くための10ステップ」。気になったのは、「モノではなく経験を蓄積する」物質的なモノではなく、活動にお金を使うこと。モノの所有は地位に関する目標がリセットされたとたん失われる。 -
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未解決事件の解決に人生を捧げる科学捜査官ポール・ホールズによるノンフィクション自叙伝。
1990年代に大学卒業後、毒物検査官になり、その後科学捜査官に転職し、様々な凶悪事件の捜査に関わっていく様子が綴られる。未解決事件の解明に没頭するあまり、うまくいかないプライベートも赤裸々に語られる。DNA解析が本格的に犯罪捜査に用いられる過渡期の内幕を知ることができる。
アメリカでは今も2000人ものシリアルキラーが活動中だそう。科学技術の発達は事件解決の助けとなる一方で、犯罪そのものをより高度・複雑化させるだろう。心身をすり減らしながら未解決事件の解明に奔走する捜査官には頭が下がる。