あらすじ
学歴に見合うポストや報酬が得られず不満を抱いたエリートたちが反エリートに転化するとき、社会は崩壊に向かう――。数理モデルを用いて歴史にパターンを見出す「歴史動力学」の第一人者が、様々な時代・地域の分析を通じて現代社会と民主主義の行方を占う!
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Posted by ブクログ
人口増加がベースになっているので、少子化最前線を行く日本には当てはまらなさそう、というのは「人口は未来を語る」とも矛盾しないところ。
2025年のトランプの言動はこれを逆行させるものに見えてくる。本当のところは知りませんが。
Posted by ブクログ
END TIMES
Elites,Counter-Elites,and the Path of Political Disintegation
数理モデルにより歴史の法則を導く「クリオダイナミクス(歴史動力学)」による分析。
不安定性をもたらす四つの構造的要因:
①潜在大衆動員力へとつながる大衆の貧困化
②エリート内の対立を引き起こすエリート過剰生産
③財政の健全さの悪化と国家としての正当性の低下
④地政学的要因
本書出版時点ではトランプは再選されていないが、モデルによれば2020年代に不安定性が恐ろしいほど高まる。
革命的状況から抜け出す道はふたつ。支配階級が最終的に打倒されるか、社会システムの適正なバランスを取り戻し、大衆の貧困化とエリート過剰生産の傾向を逆転させる道。現状は悲観的に思える。
【目次】
はじめに
第1部 権力のクリオダイナミクス
第1章 エリート、エリート過剰生産、危機への道
第2章 一歩下がって全体を見るー歴史の教訓
第2部 不安定性の要因
第3章 「農民はいつも反乱を企てている」
第4章 革命部隊
第5章 支配階級
第6章 なぜアメリカは金権国家なのか?
第3部 危機とその余波
第7章 国家の崩壊
第8章 近未来の歴史
第9章 富のポンプと民主主義の未来
謝辞
付録1 新しい歴史の科学
付録2 歴史のマクロスコープ
付録3 構造力学的アプローチ
解説/尾上正人
Posted by ブクログ
歴史からモデルや法則を導く書物は数多くあるが、本書もそのひとつ。面白いのは何らかの理由でその数が増えたにも関わらず、エリートのマジョリティに入れなかった者が革命の煽動者になり、そこから国家を滅ぼすことに繋がったという仮説。
彼らを過剰生産されたカウンターエリートと著者は呼んでいる。スーパーリッチになり損ねた人や科挙の試験に落ち続けた人たちが一般大衆を煽る役割を担っていたというのは興味深いし、そういうことはあるだろうなあと実感する。
Posted by ブクログ
その名のとおり、エリートの過剰生産が国家を滅ぼす、ということを述べている本。
なのだが、細かい議論については正直ついていけなかった。
筆者は、「複雑系科学者」とのことで、「クオリダイナミクス」=歴史は繰り返す。パターンがある。ということを前提に、今迄の歴史の中で生じた国家の崩壊の要因がエリートの過剰生産にあるということを述べている。
そして、その前提を元に、今までの歴史を振り返っている。
のだが、完全に議論についていけなかった自分にとっては、「エリートの過剰生産が国家を滅ぼす」という前提に立って歴史を読み替えている=上書き、しているようで、何となく腑に落ちなかった。勿論、それに対する反論なども記述はあったのだが、いかんせん難しすぎる言葉遣いでついていけなかった。この本、サピエンス全史と同じ匂いがする。
「エリートの過剰生産が国家を滅ぼす」ということそのものには、非常に納得がいく。
そもそもエリートとは何か、ということだが、エリートは、武力や警察力、富、行政権力、イデオロギーや説得力の保有者のことである。特に現代で言うならば、富の保有者が大きい。アメリカで言えば、やはり格差が非常に大きくなっている。
エリートが過剰生産されると、そのほかの大衆が貧困化する、その結果、エリートと大衆の格差が大きくなる。さらに、過剰生産されたエリートの中でも、エリートになりきれない人が生まれる。そして、そのエリートになりきれない人は、庶民階級に落ちるか、暗殺されるかだが、最も国家を崩壊に導くのは、革命か内戦の主導者になること。その結果、国家が崩壊する。
要するに、過剰生産されたエリートは、権力を持つエリートたちに戦いを挑み、その結果内戦が起こり(貧困化された大衆を引き連れることもある。)、国家が崩壊するのである。
そして筆者がもう一つ批判しているのが、現在のアメリカの状態。
アメリカで顕著なエリートは、金権を有している。富があるものが政治を支配しているのである。移民問題に対応する政府も、金権政治を表している。移民を受け入れることでエリートは更なる経済利益を与えられる。左派は移民の制限に反対しているが、それは逆にエリートたち経済的利益を与えるだけなのである。
ということで、ひたすらアメリカが金権政治であることと、格差が大きく開いており、エリートが過剰生産されていることを言っている。
以前読んだ、マイケルサンデルの、能力主義批判よりもさらに痛烈に今のアメリカの政治を批判している本だった。そして、最終的には、良識を持つエリートに期待しているが、そううまくもいかないんだろうなと思う。