未解決事件を、数十年かけてとうとう犯人逮捕まで追い詰めた科学捜査官。
一言で言えばそうなんだが、実のところそんな「格好いい」話では全くなかった。
著者はおそらく使命感で立ち向かったよりは、こうした事件に依存しないと生きていけなかったのではないかと感じた。事件解決というより、この人の人生の展開を見る
...続きを読むような内容だ。
私生活で奥さまやお子さまとどう向き合って、何が破綻したのかなんか、本当は気にならないようなもんなのだが、この本に限って言えば、意味があったような気がする。
本当は、家庭が必要なかったのかもしれない。
でも、家庭がなかったらどうなっていたのか。
その家庭、特に奥さまが、あたしを見て、それが家庭なのよというのが、この国らしいというか。
「昔の」日本だと、この旦那さんの仕事を支えるんだろうな。どっちがいいのかはともかく、社会にとっての家庭のあり方も、考えるところがあって。
執念と、科学の進歩が解決に寄与した。
捜査のドロドロした現実も、十分に描く。メインの事件は解決したが、そこに至るまでは何度も挫折があったし、未解決のままの事件もある。
何より。
こういう犯行が現実に行われているという恐ろしさ。
我と家族に、いつ降りかかるかわからない恐怖。
ほんと、やだわ。