【感想・ネタバレ】異常殺人―科学捜査官が追い詰めたシリアルキラーたち―のレビュー

あらすじ

不気味で凄惨な犯行現場に臨場し続ける科学捜査官は、密かに「最凶の連続強姦殺人鬼」を追っていた。10数人が殺害され、50人以上が凌辱された未解決事件。「犯人はまだ生きている」。40年間、警察を出し抜いてきたサディストをどう炙り出せるか。DNA解析の最新技術や犯罪捜査の複雑な力学も明かす驚愕のドキュメント。

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Posted by ブクログ

未解決事件の捜査が如何に大変かがよくわかる。本の大半は苦労して容疑者を捜し出すが、非該当の繰り返し。それも数年、十数年単位。
そのうちに捜査官の生活も破綻していく。おそらく真犯人はのうのうと生活しているのかもしれない。
事件のことだけでなく、捜査官の私生活の部分も描かれているが、それがあるからこそ事件に真摯に立ち向かう捜査官たちの苦労がより重く感じられると思う。
ドラマや映画では表現できていない、捜査官の本当の様子を知ることができる貴重な記録。

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2024年06月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3.8かな。面白かった。しかし、著者自身の話が多いところと、時系列がいじられててわかりにくいところが難点。

著者のポールの生い立ちや最初の妻のローリーの話、二人目の妻のシェリーの話など、私生活の話がいろいろ出てくる。最低限度より多く、ノンフィクションであるなら、別に省いても良いような話。
この本の読者が求めているのは、どうやって犯人を見つけたり、捜査をしたりしたのかであり、ポール自身の私生活についてはさほど興味が無いんじゃないかなと思った。つまり自分がそうなので。
だが、書かれている。
ということは、捜査官も一人の問題を抱えている人間だとアピールすることで、どれだけ犯人の思考をたどれても(犯人と同一化しても)善なる読者のそばに著者がいると紐付けたかったのかなと思った。あるいは、ただたんに話がまとまらなくて、書きたくて書いたか。
自分のこと大好きなのかも。

ポールの人となりは、自分で自分を弁護できてしまうので、妻側や同僚側の視点が無いとなんとも。いくら自分の欠点を認めて直そうと努力していると語っていても、この人絶対付き合いづらそう……と感じた。プライベートな友達出てこないし。仕事仲間の延長線上の友人は出てくるが、家に招いて食事をしたり一緒に趣味を楽しむ友人が出てこない。教会の集まりも嫌がってたし。ポールの趣味は犯罪捜査なので仕事上の友達しか出来なかったのかもしれないが、こんだけ生活について話してるなら、それ以外の友達が出てきても良さそうだが出てこない。

そして、時系列。
ポール自身が印象的な事件の話や、いきなり飛んで退職の話などするので混乱する。前菜のつもりのように犯人の目星について語られるが、自分にとってはそれは楽しくなかった。わかりにくい。
黄金州の殺人鬼までたどりつく経過を追ってからたどりつきたかった。
わかりやすく、ケース番号など振って事件を説明して欲しかった。個人のプライバシー保護のために変更を加えてもノンフィクションとして読みやすい構成が良かった。

これらのうんざりするところはあれど、ポールの捜査のやり方や、実際の事件はどういうものかの臨場感は味わえて面白かった。犯人が見つからず未解決でも、疑惑の眼差しや、おそらくこんな真相であろうとうかがえるような描写がされているので面白い。
正直、一市民としては警察の縄張り争いなどくそくらえなので、そんなプライド捨てて仕事しろと思いながら読んだ。改善されると良い。

で、結局、黄金州の殺人鬼を捕まえた決定的な武器が遺伝子情報による家系図作成サイトだった。マインスイーパーのように地雷である犯人へとたどりつく。
そこら辺の科学捜査には、いろいろな手法があるらしく、用語についてはよくわからんが、まあわかったんだろうという理解。
読んでて、東野圭吾のプラチナデータのような世界を求める社会になっちゃうなあと感じた。

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2024年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「異常殺人」という邦題からはシリアルキラーの捜査を中心に書かれるのかと思っていたが、どちらかというとポール・ホールズさんの自伝のようなものだった。
「未解決殺人クラブ」でミシェル・マクナマラさんの話が出てきていたので、もう少し登場するかと思ったが、ミシェルさんはホールズさんの捜査官人生の中ではほんの少しの期間しか接触していなかった。しかし最後の最後にGSKの逮捕の重要人物になったのもミシェルさんとの関わりの中で起こったことだったし、もう事実は小説よりも奇なりを地で行くような話だったなあ、と思う。ミシェルさんの死が薬物過剰摂取というのが哀しい。

日本では、シリアルキラーがパッと思い浮かばない。ウィキペディアで見てみたら、結構いたけれど、アメリカには遠く及ばない。
アメリカに比べれば、日本は殺人事件が少ないように思える。そして科学捜査は全くアメリカに追いついていないように思える。
もちろん国が違うから当然なのかもしれないけれど、もう少し科学捜査に人員を割いてもいいのではないかと思う。
ホールズさんにとっての刑事による捜査を教えてくれたコンビ、コナティーさんとジャコメッリさん。そのジャコメッリさんの殉職、これもきついなあ、と感じた。自分の友人と遺体安置室で会うって、とても辛い体験だろう。

カリフォルニアでは死刑制度が復活したという。死刑廃止を主張している日本人はこのことにどう思っているのだろう。また仮釈放から数ヶ月後に性犯罪、殺人を犯した人が書かれていたが、それについてはどう思うのだろうか。

職場恋愛が禁止されているとか、ちょっと驚きの事情も本書に描かれている。ホールズさんはかなり繊細な人だと思えるし、二人の奥さんは非常に大変だっただろうな、と他人ながら思った。そしてあまりに凄惨な事件に対峙していると信心深い家庭で育っていても性悪説に傾いていくのだろう。
ホールズさんは被害者に自分の電話番号を教えている。多分、日本ではそういうことは出来ないと思う。妻の心には寄り添えなくても被害者の心情は慮ることが出来る、それが事件解決の原動力になる、なかなか人間性の不可思議を感じさせる話だった。

最後に解説を書いていたのがデーブ・スペクター!驚きである。

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2024年06月05日

Posted by ブクログ

未解決事件を、数十年かけてとうとう犯人逮捕まで追い詰めた科学捜査官。

一言で言えばそうなんだが、実のところそんな「格好いい」話では全くなかった。
著者はおそらく使命感で立ち向かったよりは、こうした事件に依存しないと生きていけなかったのではないかと感じた。事件解決というより、この人の人生の展開を見るような内容だ。

私生活で奥さまやお子さまとどう向き合って、何が破綻したのかなんか、本当は気にならないようなもんなのだが、この本に限って言えば、意味があったような気がする。

本当は、家庭が必要なかったのかもしれない。
でも、家庭がなかったらどうなっていたのか。
その家庭、特に奥さまが、あたしを見て、それが家庭なのよというのが、この国らしいというか。
「昔の」日本だと、この旦那さんの仕事を支えるんだろうな。どっちがいいのかはともかく、社会にとっての家庭のあり方も、考えるところがあって。

執念と、科学の進歩が解決に寄与した。
捜査のドロドロした現実も、十分に描く。メインの事件は解決したが、そこに至るまでは何度も挫折があったし、未解決のままの事件もある。

何より。

こういう犯行が現実に行われているという恐ろしさ。
我と家族に、いつ降りかかるかわからない恐怖。

ほんと、やだわ。

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2024年04月02日

Posted by ブクログ

未解決事件の解決に人生を捧げる科学捜査官ポール・ホールズによるノンフィクション自叙伝。
1990年代に大学卒業後、毒物検査官になり、その後科学捜査官に転職し、様々な凶悪事件の捜査に関わっていく様子が綴られる。未解決事件の解明に没頭するあまり、うまくいかないプライベートも赤裸々に語られる。DNA解析が本格的に犯罪捜査に用いられる過渡期の内幕を知ることができる。
アメリカでは今も2000人ものシリアルキラーが活動中だそう。科学技術の発達は事件解決の助けとなる一方で、犯罪そのものをより高度・複雑化させるだろう。心身をすり減らしながら未解決事件の解明に奔走する捜査官には頭が下がる。

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2025年04月06日

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