シリーズ10作目になります。
今回は葵の20歳の誕生日にホームズが九州の豪華列車「七つ星(もでるはJRの「ななつ星in九州」)」に旅をプレゼントする、というもの。
いままで紆余曲折もあり、また煮え切らない部分もあってやきもきさせられていましたがついに二人が結ばれる、といったところでしょうか。
前作で円生に煽られてから不安定になっていた部分もあったホームズですが、葵への一途な想いは変わらず、読者を安心させてくれました。
今までの作品に比べ(作者も言っていますが)謎解きや鑑定の要素は少し薄く、「甘め」の描写が多く続きます。有川作品にもすこし近いかもしれません。
まだまだシリーズは続くようですので、これからの二人の物語も楽しみです。
個人的には、「主婦である母は(自分で稼いでいるわけではないので)自分の好きなことにお金を使うことに抵抗がある」という葵からの話を受けてホームズが応えた、
「罪悪感を覚える必要は、全くないと思うんです……家庭を会社に見立てると良いかと。たとえば専業主婦の場合は、家が『会社』、働いている夫が『営業』で、家にいる主婦は『経理』だとしましょう。営業が会社の資金を調達してきて、経理は管理をして営業が動きやすいように計らう。そうやって会社は回るのですから、営業だけが好きなように振る舞うのではなく、経理も同じように会社に貢献している社員だと自負すべきかと。罪悪感なんて持つ必要はないですし、経理も息抜きをして、自分の趣味を楽しめばよいと思います。そうすることで、また仕事をがんばれて会社に活気が出るのでしたら、最高ではないですか。もちろん、会社の予算を考えながらになるでしょうがね」
という視点は非常に共感できました。
「家にいて子育てをする」ということは外で働いているときとはまた別の”負担”があることと思いますし、家にいる=楽をしている、という考えは正しくないと感じていましたので、読んでいて爽快でした。
自分にとって(将来の)糧となる「経験」にお金を使うというホームズの姿勢は、やはり素敵だと思いますし、それが(子どもに対しても)できるような生活をめざして、これからも精進していきたいところです。