黒木あるじのレビュー一覧
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物件、つまり家や土地にまつわる怪談集。
表紙に並んだ著者名を見てほしい。
どれもこれも怪談の名手じゃないか!
一作品既読があるだけで、他は全て初めて。
なんだよー全然怖くない、なんて思っていたが、やっぱり夕暮れ時から夜にかけて思い出したり読んだりするとぞわぞわする。
「牢家」は、座敷牢というキーワードに引っかかってしまうと、最後にひっくり返される。
そして、ホラーにはお決まりの(作中でも言及されているが)地元の老人が「はいっちゃいかん!止めろ!」という。
もう絶望しか無いフラグが立つ。
そしておそらくその通りになる。
が、みなまで言わず余韻を残すところは作者の技量。
大島てるの「旧居の記 -
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一応、「家」にまつわる怪談、ということになるのかな。(読んでいる最中それが強く意識されるという感じでもないのだけど。)
全体的にはきちんとそれぞれ「作品」になっているので、素人っぽいノリで集めた聞き書き怪談、みたいな雰囲気ではなく、しっかり読み応えがあるものが多かった。
ただ、なんというか、「物件」と冠されたタイトルと内容とはちょっとズレがあるように思う。「怖い家」くらいの方が適当なんじゃないだろうか。あんまり、不動産としての物件にまつわる怪という方向性ではないので、いわゆる事故物件怪談みたいなのを期待していると「およ?」となるかも。
個人的に印象に残ったのは、福澤徹三『旧居の記憶』、黒 -
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黒木あるじ『小説 ノイズ』集英社文庫。
漫画原作の同名映画のノベライズ。
たった一人の凶悪犯が放つノイズが、平穏な孤島の住人たちを狂わせていくサスペンス。なかなか巧く構成されているが、甘さや粗が目立つ。漫画原作の映画のノベライズということで、映像で表現するところを文章でとなると、この著者には少々荷が重かったようだ。
果たして原作漫画、或いは映画の方は面白いのだろうか。映画は藤原竜也と松山ケンイチが主演らしいので大体の予想は付くのだが……
猪狩島という何もない孤島で幻の黒イチジクの栽培に成功した島育ちの圭太は黒イチジクを島の産業にしようと努力していた。そんな中、保護司が仮釈放された凶悪犯 -
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2021年7冊目は、黒木あるじのプロレス小説、第2弾。
「強く激しく逞しく」をモットーとするプロレス団体、ネオ・ジパング。その練習生、梶本誠は、プロレスに、強さに悩み、「くだらねえ」と思いながらの練習の日々を続けていた。そんなある日、ネオ・ジパングの創始者であり、代表取締役でもある《リングの皇帝》カイザー牙井から直々に、素性不明のフリーレスラー、サーモン多摩川の付き人を命じられる。サーモン多摩川、彼はコミックレスラー然とした、ネオ・ジパングのスタイルに不似合いな選手であった。
まづは、今作を手にした多くの方は、前作『掃除屋』を気に入った方か、プロレスファンのどちらかではないだろうか。自分は -
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黒木あるじ『葬儀屋 プロレス刺客伝』集英社文庫。
『掃除屋 プロレス始末伝』が面白かったので、本作も読むことに。長州力が絶賛しているのが不安要素ではあるが……
予感適中。やはり『掃除屋 プロレス始末伝』よりレベルは格段に下がる。『葬儀屋』というからには、もう少しハードな格闘シーンが描かれると期待したなだが、やたら能書きが多く、青臭さを感じた。
梶本はあこがれのプロレス団体で練習生になったものの、筋書きのあるプロレスに疑問を抱き、練習に身の入らぬ日々を送っていた。そんな梶本が耳にした噂。プロレス界に『葬儀屋』と呼ばれる謎のレスラーに狙われたレスラーは抹殺される……
そんな梶本は彼こそ『葬 -
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ワインのコルクが開いた時のような心地よい感触が掌に伝わった直後 差し出されたブーケは、一本残らずプラスチック製の造花だった。イミテーション・フラワー。鮮やかな偽物。華やかな嘘。つまり_プロレスラー。これは〈掃除屋(クリーナー)〉への依頼状だ。「選手を始末して欲しい」という依頼の合図だ。 「ビクトル式だ!腕ひしぎ逆十字固めだ!」最前列のマニアとおぼしき客から解説じみた声があがる。心のなかで「ご名答」と呟いた。しっかり極まれば肘が伸びて壊れる危険な技だ。 俺は、この嗜虐的な女医に毎度浴びせられる言葉のマシンガンが嫌いではなかった。手加減の無さがやけに心地良く、猛者と試合をしているような錯覚に陥って
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2019年、19冊目は、実話系怪談で知られる、黒木あるじ。
今回、あらすじは省略いたします。
まづは、プロレスへの興味関心の有無。多少の知識がナイとやはり厳しいかな……。自分も最近のプロレスには、トンと疎くなってしまっています。
中身ですが、プロレス業界の「必殺仕事人」、ピューマ藤戸が主人公。そして五話仕立てで、それぞれに、依頼人と〈清掃物件〉(ターゲット)の関係性、依頼理由や内容を軸としたライトミステリーが仕掛けてあり、各1話づつでも楽しめる。また、大きく全編を通して、主人公とかつてのライバルの関係を軸にしたモノでも読ませていくと言った作り。
さらに、細かく見ると、藤戸の会話センスが -
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怖い話で暑さを吹き飛ばしたい…という動機で手にした本だが、この世のものでない存在の怖さより、人の心の闇がほとほと怖くなってしまった。一番重かったのが『 虐目』。虐めの質が陰湿かつ壮絶なのも絶句だが、虐めのきっかけを作ったのが教師であること、のみならず虐めによって取り返しのつかない大怪我を追った被害者に「問題起こすなら卒業してからにしろ」と脅しをかける。こんな闇が(病み)がこの世には存在していて、ただ普段表向きには見えていないだけ、なのかも、と思うとゾッとする。その被害者の彼の復讐も怖かった。
この本の作者が言ったことではないけど、魔物というものは人の世の、悲しみや恨み、嫉妬、欲望など、ドロドロ -
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初めて読む作家さんですけれども…うーん、自分はあんまり怪談とかいうのにピンと来ないタチでして、「へー…実際にそういうことが起きるんダァ…」みたいな、どこか他人事めいた感覚で読み終えてしまったのですけれども…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、でも割と良い暇つぶしにはなったのかな? 登場する怪談話にSNSやらLINEやらが出てきて大分最近の話なんだなぁ…みたいな感慨を覚えました。SNSなどが新聞などにまで躍り出てきて、世の中は電脳社会一色となりつつありますけれども(!)、昔から通じる怪談話の一つや二つ、こんな社会においても発見されるものなんですねぇ…そんなことを思ったのでした。おしま -
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購入済み
怪談は細部に宿る
第76話の必勝法
本が出版された2011年から遡ること30年前、正しくは30年以上前とあるので1970年代の後半でしょうか。世の中に携帯電話はまだ存在しませんでした。自動車電話は開発されていましたが、これは携帯電話とはまったく性質の違うものです。その上、とても一般的とは言えず、電波状況が悪いために使えるエリアはごく少なく、外回りの営業業務に役立つレベルのものは、重くてかさばるショルダーホンの登場を待たねばなりませんでした。
重箱の隅をつついたようなことですが、どんな小さな誤りでも、そこに引っかかると他の作品まで嘘くさく感じられます。佳作が多いだけに非常に残念です。