香山リカのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
香山リカが、日本人からモラルが失われつつあることを嘆き、「正当な権利」と「個人の身勝手」が混同されてしまっていることを批判するという、保守論客のような口ぶりで語っていることに、まずは驚かされました。
それでも後半になると、小泉内閣の頃に見られた新自由主義の隆盛を、スパンの長い問題を考える知力や想像力の「劣化」という心理的な要因によって説明するという、著者らしい議論が見られます。もっとも新自由主義の問題を心理的な要因に還元することはできないのでしょうが、精神科医である著者の立場からこの問題に切り込むとこうした議論になるというのはそれなりに理解できます。
ただ、たとえば「劣化」の例として、『奥 -
Posted by ブクログ
著者はこれまでの著作でも、勝ち組/負け組を選別する風潮への批判をくり返し表明しています。本書にもそうした基調を見てとることができますが、あつかわれている内容が雑然としているように感じました。
恋愛にすべてを捧げるような生き方や、仕事に夢を求める生き方を理想化してしまうことで、かえって苦しんでいるひとたちいます。著者はそうした人びとに向けて、平凡で穏やかに暮らせる「ふつうの幸せ」を見なおすことを説きます。また、自分が生まれた意味についてゆるぎない確信を抱いているのは、新興宗教などにハマッたひとや、精神の病で「私は世界を救う救世主だ」といった妄想を抱いているひとくらいだと述べて、自分の生きる意味 -
-
Posted by ブクログ
けっこう真面目な本だった。鬱の急増は80年代の鬱と表明すると昇進に影響したり周囲の目が憚れれるという状況から、「うつは心の風邪」キャンペーンもあり、だれもが生涯に1度はかかるかもしれない「風邪」みたいなものという認識の変化によって以前は自律神経失調症や肝臓病と本当ではないが嘘でもない診断をしていたのが鬱と診断されるようになったこと、SSRIのように新しい薬が開発されとりあえず投薬のために鬱という診断されたり、SSRIは広範囲な病態に効くので本来なら躁鬱病や不安障害などほかの気分障害が鬱と診断されたりすることなどがあるという。
また、とりあえず自己の核がなくて不安なひとが「殻」をもとめるために「 -
Posted by ブクログ
精神科医の香山リカが、出版当時世間をにぎわせていたスピリチュアル・ブームにちくりと苦言を呈した本です。
佳川奈未らのあからさまな現世利益志向や、稲盛和夫らのビジネス界にはびこるスピリチュアル的言説をとりあげ、さらに村上和雄や飯田史彦らのアカデミズムにおけるスピリチュアルへの接近などにも触れています。
その上で、スピリチュアル・ブームの最大の立役者である江原啓之がとりあげられます。そこでは、ブームを作り出した江原本人が、彼の声に耳を傾ける人びとの現世利益志向に行きづまりを感じているのではないか、という見立てが示されています。
「トンデモ」批判というアプローチではなく、ブームに加わった人びと