鷺沢萠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
鷺沢萠の本の中で一番好きな本。この本は短編集なんだけど、「シコちゃんの夏休み」がいい。これを初めて読んだとき、シコちゃんに強く強く憧れた。
悲しいこととか何か大変なことを人に話して聞かせて「すごいね」って言わせることが、恥ずかしいことだって思うようになったのはこれを読んでからだと思う。
あとがきに鷺沢自身の言葉で「F」(落第生)でもいいって書いてあってね、それがわたしには御守りとか呪文のように、今でも響いている。
鷺沢萠どうして死んじゃったのかなあ。どうして死ななきゃいけなかったんだろう。ときどきその理由がわかるような気がして、でもときどき、本当にわからないって思う。
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Posted by ブクログ
「「A」ばかりの人生なんてつまらない、などと言う気は毛頭ありません。そうできる条件と幸運にさえ恵まれたのなら、泣かないほうがいいし痛みや悲しみは経験しないほうがいい。後悔なんて、する必要がないほうがいいに決まっています。
けれど、人々がよく口にする「後ろを振り返るな、後悔だけはするな」ということばにも、やはり私は簡単に頷くことができません。常に常に「前」だけを向いて生きていくことが、そんなに正しいこととは思えないからです。
欲しかった「A」をもらえず、「A」どころか「B」にも「C」にも手が届かずに、「F」を取ってしまったのなら、してもしても足りないほどの後悔の原因が自分の歩んできた道のどこ -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めて数ページで、よみがえる。
鷺沢萠の、小心でありながらとんがった文章の数々。
ぼろぼろ涙を流しながら、仁王立ちで世間に立ち向かう彼女の姿。
亡くなって20年以上、毎日新しい文章を探して彼女のサイトを覗いていたのは、そんなに昔のことになったのか。
何度も何度も生きることの苦しさと、でも、それを越えた先の人生について書いている。
終の棲家を探して旅に出る。
連れ合いよりも絶対に長生きして、人生を謳歌しているだろう老後を想像している。
なのになんで、という気持ちがいまだにぬぐえない。
かと思うと、最後は酒井順子との負け犬トークも収録されている。
勝ちと負けに分断するのもなんだかなあとは思 -
Posted by ブクログ
鷺沢萠は初めて読む。
大変申し訳ないのだが、最初は「あれ?思ってたのと違う…」と言う感じだった。
それから暫く、忙しくて読めずにいて、3日ぶりに読んだ。良かった。
日々の小さな出来事を切り取って書いているだけなのに、どうしてこんなにノスタルジーな気持ちになるんだろう。
懐かしさや切なさ、そして後悔やら何やら…
どこにでもいそうな、でも個性が光る登場人物たちの気持ちが、そーっとそーっと心の中に入ってくる。
そんな不思議な心地よさがあった。
私のお気に入りは、ポケットの中と柿の木坂の雨傘。思わず目頭が熱くなった。こういう話に、私は弱いのだ。 -
Posted by ブクログ
「お帰り」の声が聞こえる。
どちらの物語も、血の絆より心の絆。そもそも家族とは何なのか。型にはまった「家族」じゃなくても、むしろそのような絵に描いた「家族」よりも、温かい帰る場所、それを家族と呼びたい。
この物語が書かれたのは、最初に出版されているのが平成16年とあるから、2000年代初頭だ。その頃から、働く女性について、家族の在りかたについて、問題提起されていた。でも、そこから20年近く経って、まだ状況は変わらない。女性が家にいるべきだとか、女性が働くのなら、家事と子育てを完璧にこなしてこそとか、まだまだ日本社会の意識は変わっていない。どちらの家族も、まだ「フツー」ではないとされるだろう