鷺沢萠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイトルの通り、この話に登場するのはいわゆる「F」評価を受けそうな人生を送っている女性たちだ。
でも、やっぱり悲壮感はない。
鷺沢先生の作品では度々書いている(と思うのだが)ことなのだけれど、どんなにどん底でも泥沼でも、どの主人公たち(もちろん、他の登場人物も)も、生きている。
どこか胸のすくような、「ああ、明日もがんばろう」という気持ちにさせてくれる。
底抜けに明るくもないし、底から這いあがるような話でもない。
いい意味でドライで、爽やかで、なんだか読みながら、「うん、そう、うん。」と頷きたくなる。
最近、そんな気分を味わいたくて、鷺沢先生の本、読んでいる気がする。 -
Posted by ブクログ
自分より年下の愛人の世話を父親から頼まれた息子。夫の元愛人に結婚の相談を持ちかけられた主婦。共働きの多忙な日々にささくれ立つ心を危ういバランスで保つ新婚夫婦。
三つの愛のかたちを描いた短編集。
とくにファンだったわけではないけれど、10年と少し前、鷺沢萠さんが自殺したってニュースで知った時、なぜかすごく衝撃を受けた憶えがある。
若くして文壇デビューした才能溢れる美人作家にして、何度も芥川賞の候補になりながら結局獲得出来なかった悲運な作家でもある。
名前は出さないけれどとある若い女性作家二名が芥川賞をダブル受賞したのを知って絶望したのではないか、という噂に過ぎない逸話もある。
なんて言いつつ -
Posted by ブクログ
ネタバレ『渡辺毅のウェルカム・ホーム』
憲弘(小学生)の家は少し変わっている。
お父さんがふたりいるからだ。
本当の父親である英弘と、その友人である毅がふたりの父親ということになるが、英弘は働きに出、毅が主夫(在宅で働いてもいるが)をしている。
そのことを憲弘が正直に作文に書いていることに焦る毅。
毅は英弘にマズイと相談をするのだが、それは自分が同性愛者だと誤解を受けているということではなく、自分が男としての沽券を大事にしているコンプレックスが浮き彫りにされる。
事実、毅は自分の収入だけでは生活が厳しくなったがために、忙しすぎて家事も子育てもできない英弘の家事を分担してくれれば養う(ほぼ)という条件を -
Posted by ブクログ
好きなタイプの話で、終わり方もよかった。
お話は2つ。まったく互換性はない。
最初のストーリーは、友達と同居することになった渡邊と友達と死んだ母親の元に生まれた子供と一緒に3人で住むことで起きる些細な日常の積み重ね。
日常って言っても、彼らにとっては事件ってこともあるしね。
子供が無邪気なのがいいね。きっと心の中では思うことはあるにしても、きっと父親の楽天主義に影響されているのか、そういう無邪気さが救い。
主夫をすることになる渡邊も葛藤はするんだけど、自分が「いい」と思える仕事が家事だってわかってよかったんだよね。もちろんすんなりこの結論にたどりついたわけではなけど。
2話目のキャリアウ