鷺沢萠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
タイトルの通り、この話に登場するのはいわゆる「F」評価を受けそうな人生を送っている女性たちだ。
でも、やっぱり悲壮感はない。
鷺沢先生の作品では度々書いている(と思うのだが)ことなのだけれど、どんなにどん底でも泥沼でも、どの主人公たち(もちろん、他の登場人物も)も、生きている。
どこか胸のすくような、「ああ、明日もがんばろう」という気持ちにさせてくれる。
底抜けに明るくもないし、底から這いあがるような話でもない。
いい意味でドライで、爽やかで、なんだか読みながら、「うん、そう、うん。」と頷きたくなる。
最近、そんな気分を味わいたくて、鷺沢先生の本、読んでいる気がする。 -
Posted by ブクログ
自分より年下の愛人の世話を父親から頼まれた息子。夫の元愛人に結婚の相談を持ちかけられた主婦。共働きの多忙な日々にささくれ立つ心を危ういバランスで保つ新婚夫婦。
三つの愛のかたちを描いた短編集。
とくにファンだったわけではないけれど、10年と少し前、鷺沢萠さんが自殺したってニュースで知った時、なぜかすごく衝撃を受けた憶えがある。
若くして文壇デビューした才能溢れる美人作家にして、何度も芥川賞の候補になりながら結局獲得出来なかった悲運な作家でもある。
名前は出さないけれどとある若い女性作家二名が芥川賞をダブル受賞したのを知って絶望したのではないか、という噂に過ぎない逸話もある。
なんて言いつつ鷺沢さんの小説を読むのは二冊目なのだけど、解説の桐野夏生さんが「若いくせに小説上手いんだよなあ」「鷺沢さん、まだ若いのにどうしてこんなことがわかるの」と書いているの、分かる気がする。
20代の時に書かれた短編集なのだけど、自分よりずっと歳上の主婦の達観した心理描写がすごくて、世の中や人の心理のことを分かりすぎていたから夭逝する結果になったのだろうか、と考えたりした。
こういうお話でこういうことを感じて、という説明が出来る感じではなくて、全体を通してじんわりと染みるものがある小説群。
人生は思い通りにはいかないことの方が多いし、変な人と関わってなんじゃこりゃ!ってこともあったりして(笑)、でもどうにかこうにか自分を納得させたり、小さなことに幸せを見出したりしながら生きていく。
そんなものさ、でもまぁいいじゃない。辛くても、馬鹿みたいでも、悪いことばかりではない。
そんなことを感じさせてくれた小説。
もし鷺沢さんが生きていたら今40代半ば。どんな小説を書いていたのだろう、と考えたりした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『渡辺毅のウェルカム・ホーム』
憲弘(小学生)の家は少し変わっている。
お父さんがふたりいるからだ。
本当の父親である英弘と、その友人である毅がふたりの父親ということになるが、英弘は働きに出、毅が主夫(在宅で働いてもいるが)をしている。
そのことを憲弘が正直に作文に書いていることに焦る毅。
毅は英弘にマズイと相談をするのだが、それは自分が同性愛者だと誤解を受けているということではなく、自分が男としての沽券を大事にしているコンプレックスが浮き彫りにされる。
事実、毅は自分の収入だけでは生活が厳しくなったがために、忙しすぎて家事も子育てもできない英弘の家事を分担してくれれば養う(ほぼ)という条件を呑んだのだから。
この物語りは一瞬、ゲイカップルの子育て奮闘記かと思うのだが、そうではなくて血の繋がりがなくても家族というあたたかい共同体はできるのだと教えてくれる物語りだ。
『児島律子のウェルカム・ホーム』
キャリアウーマンの律子の元に、ある日突然訪れた若者。
「僕、セイナさんと結婚しようと考えている者です」
突然の告白に仰天するが、何より驚くのは読者だろう。
この時点で、律子は結婚もしていなければ子供もいない雰囲気なのだ。
しかし、そこから過去に律子が結婚しており、相手の連れ子(セイナ)を育てていた時期があることがわかる。
しかしあることをきっかけにセイナとはケンカ別れ。
夫とはその前からダメになっており離婚していた。
それから年月が経っての話である。
こちらも血の繋がりのない家族の物語。
読んでいて、よかったねぇと素直に感想が出る。