鷺沢萠のレビュー一覧

  • 君はこの国を好きか(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    鷺沢 萠の【君はこの国を好きか】を読んだ。

    突然こう問われたらあなたは即答できるだろうか?僕は即答できる自信がある。

    おそらく多くの若者は欧米の生活や文化に憧れを抱いているであろうから「嫌い」と即答するかもしれな

    い。そういった類の憧れは僕にだってある。しかし、この国、つまり「日本」が好きか嫌いかという話と

    なると別問題で僕は間違いなく「好き」だと即答するだろう。と、この本を読むまでは思っていた。

    鷺沢 萠の【君はこの国を好きか】に登場する人物は、主人公の雅美も含めて韓国人である。日本で生ま

    れ育った韓国人の3世の世代だ。

    日本で生まれ育ち、日本語を第一言語としている雅美は大学を卒業したあと「もう少し学生でいたい」と

    いう甘えからアメリカに留学する。そこで出会ったのが韓国からの留学生ジニー。成真伊(ソン・ジニ)

    という二十歳の女の子はアメリカでジニーと呼ばれていた。

    韓国籍でありながらハングルが一切話せない雅美とジニーの会話はお互いの祖国語ではなく英語である。

    ジニーは初対面の雅美にいきなり韓国語で話しかけてきた。

    国籍は韓国であっても自分の家は親の代からすでに日本で生まれ育っていて、教育もすべて日本で受けて

    きているから韓国語は話せないのだと雅美は英語で説明する。

    「Are you quite sure you are a Korean?」(あなたは、自分が韓国人であると確信しますか?)

    ジニーは韓国人でありながら韓国語が話せない雅美を責めているのではない。単に疑問なのだ。その後も

    「日本で暮らす2世、3世はみんな韓国語が話せないのか」や「どのくらいの数の韓国人が日本にいるの

    か」などの疑問を雅美にぶつける。雅美は言葉に詰まった。

    雅美は歴史的に考えて、在日という差別的な用語をもって見られていた世代ではない。だから苦渋を舐め

    るような差別も受けたことがないし、それについて深く考えたこともなかったのだ。

    この出会いをきっかけに雅美の中に流れる韓国の血が目覚める。日本にいた時には、自分の周りの人間の

    ことを韓国籍であることや韓国語が話せない問題など含めて「あなたたちは何も知らない」という思いを

    募らせていたがアメリカに来てジニーに出会い「何も知らない」のは自分だったのだと気付く。

    ジニーに韓国語を教わり、次第にハングルに夢中になる。それは自分の血だとか国籍だとかとは関係なく

    単純に言葉として「面白かった」からだ。

    あたしはハングルに感電したのだ ―。

    雅美の心は強く韓国に魅かれる。そして、韓国に行って韓国語を学ぼうと決意するのだった。

    初めて自分の祖国・韓国に足を踏み入れた雅美に待ち受けていた現実は過酷だった。

    韓国人でありながら満足に韓国語が話せないということで受ける差別、韓国という国のガサツさ、いい加

    減さ、すべてがショックだった。極度のストレスで拒食症にまでなり、祖国でドン底にまで落ちていく雅

    美。「自分は一体なんなのか?」目まぐるしく交差する自己の葛藤。そんな雅美を支えてくれたのが、同

    じ日本から韓国に留学にきた3世の仲間たちであった。

    韓国人でありながら祖国の壁にぶち当たる若者たちの葛藤は凄まじい。そしてつい口走ってしまうこんな

    セリフ。

    「だから結局韓国ってさ・・・。」

    韓国を否定することは自分の存在さえも否定することである。

    「でも、あたしたちの国なんだよね・・・」

    雅美はそう言ったとたんに冷たい涙が噴出すように流れた。

    幾多の苦難を乗り越え、韓国の大学院を卒業し日本に「帰る」日。

    見送りに来てくれたジョンヒ(在日3世で雅美よりも先に韓国に留学に来ていた男性。物語の中では雅美

    のよき理解者でありよき兄役であり親密な関係を築いていく重要人物)が言った一言が雅美の心に突き刺

    さる。

    「あんた、この国を好きやった?」

    自分がこの立場だったらどうだろう。祖国を「好き」だと言えるだろうか。胸を張って「好き」だと言え

    るようになるには、まだまだこの国について、日本という国について知らないことが多すぎる。

    安易に好きだとか嫌いだとか言ってはいけない気がする。政治の腐敗も、企業の腐敗も、凶悪な犯罪も、

    自分たちの国で起こっていることだ。関係ないことではない。こんな日本に憤りを感じるのもやはりそれ

    が自分たちの祖国であるからではないだろうか。

    もっともっと自分の祖国を知らなければ。そんな気持ちにさせられる作品だった。

    ご存知の通り、鷺沢 萠は韓国人とのクォーターである。そんな彼女だからこそ書けた世界だろう。

    他に、同じ在日3世を主人公にしてその問題を取り上げた【ほんとうの夏】も併録されたこの1冊は、ぜ

    ひとも機会があれば読んでもらいたいが、すでに絶版となっているため古本屋で見かけたら迷わず買うこ

    とをお薦めしたい。

    0
    2009年10月04日
  • さいはての二人

    Posted by ブクログ

    「動物の仔のように身を寄せ合って眠る・・・」
    「このひとはあたしだ」

    この二つのフレーズが頭から離れない。


    ろうそくの光のようなゆらゆらとした語り口が心地よく、また、どこか心許ない。

    愛するものが別の生きものであるということのせつなさ、それゆえの愛しさ。
    複雑に絡み合うルーツがもたらす、軋轢、許し。
    元々ひとつであったものがたまたま分かたれて、、
    別々のものとして生きている。
    だけなのだという単なる事実と、そこに潜む非合理ななにか。

    いてもたってもいられないような気持ちにさせる話。


    あとのふたつの短編も秀逸。

    0
    2009年10月04日
  • F 落第生

    Posted by ブクログ

    ここに出てくる女の子たちの人生はみんな、泥沼。
    だけど、誰一人ヘコたれず、めげない。
    背中を押して励まされたような気持ちになります。

    いとう

    0
    2009年10月04日
  • 海の鳥・空の魚

    Posted by ブクログ

    outofthisworldさんの本棚のコメントの言葉にひかれて手に取りました。
    そしてとても深く心に感じました。
    題名の意味、解説を読んでなるほどと。
    この本でもどこか不器用な生き方をする人たちが愛情を持って描かれていますね。
    とくに「グレイの層」と「柿の木坂の雨傘」が好きでした。
    じんとしました。
    素敵な本を教えていただいてうれしいです。

    0
    2009年10月07日
  • 海の鳥・空の魚

    Posted by ブクログ

    鷺沢萠の本はどれも面白く読んでいるけど、特に短編とエッセイが好き。この短編集は彼女のファンの中でも特に評価の高い一冊ではないかと思う。優しさにあふれたこの本が手元にあるというだけで、どこかしら安心した気持ちになれるのです。

    0
    2009年10月07日
  • F 落第生

    Posted by ブクログ

    今は亡き鷺沢さんの作品。

    どこかダメな女主人公たちの恋愛模様。
    つい自分と照らし合わせてしまいます(^ω^ ;)

    「家並の向こうにある空」は
    高校時代にテストで出題されて読みました。
    最後の「重たい色のコートを脱いで」も切なくていい。

    0
    2009年10月04日
  • 過ぐる川、烟る橋(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    流されやすい主人公のキャラ。いつもならやきもきするんですが、流されつつも成功した現在も同時に描かれていて面白かった。過去に受けた不当な仕打ちのエピソードがすごく印象深い。

    0
    2009年10月04日
  • さいはての二人

    Posted by ブクログ

    タイトル作も印象的ですが、やはりなんといっても"遮断機"。
    初めて読んだとき、涙がぼろぼろとこぼれてきました。
    鷺沢さんの追い求めた「家族の温かさ」ってこんな感じなのかなぁ、
    と読者に思わせるような作品です。

    0
    2009年10月04日
  • 愛してる

    Posted by ブクログ

    「わたし」がよく行く「ファッサード」という店が人々の繋がりの場。酔いつぶれたり恋をしたり人生を考えたり笑ったり泣いたり。主人公をはじめとして、登場人物には細かい設定を持たせていない。若さの限界を知りつつあるわたしの周りの人々が描かれている。きらきらした胸に迫るフレーズが一杯。「思ったり感じたりした者の勝ちだ」「ここにいたらダメになる」「繭の中にいるようになりたいと、ずっと前から思っていた」「Every guy is a guy」萎れたりカラカラに乾いた時に、いつも読みたい本。

    0
    2009年10月04日
  • 愛してる

    Posted by ブクログ

    5/2 何度でも何度でも、な本の見本のような存在。これを21歳で書いたって言われても、その歳を追い抜いてしばらくたつけど信じがたい。どうしようもない気持ちに、効くホッとするような本で。夜遊び感というのもオシャレでなくこなれているものってそうそうないと思うし。あーー。言葉になりません。文章すら覚えていても何度も読み返す、そんな本。

    0
    2009年10月04日
  • 待っていてくれる人

    Posted by ブクログ

    「笑顔は人生の潤滑油、などというのは使い古された言い方だ。けれど、差しあたって何もできないなら、笑っていないより笑っているほうがいいと思う。」

    0
    2009年10月07日
  • サギサワ@オフィスめめ

    Posted by ブクログ

    3/1 なんか、むしょうに読みたくなって再々…読。一気に読んでしまりた。ブログという概念がない頃。もはやもうすぐ10年前なんだよなーと思わせないほどのおもしろさ。文章の小気味よさ。紙媒体との違いもおもしろす。ほんとに…惜しい人をなくしたなー。

    0
    2009年10月04日
  • 葉桜の日(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    するする、と入っていけるんだけど、軽くないというか… 底辺の話だなと思います。この人の本、もっと読んでみたい。

    0
    2009年10月04日
  • 待っていてくれる人

    Posted by ブクログ

    4/25 もう、この人の最近のエッセイを私はいろいろなことに想いを馳せずには読めない。いろんな考えや情景が迫ってきて泣きそうになる。
    もちろん単純におもしろいところもたくさんあるけど。

    0
    2009年10月04日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

    Posted by ブクログ

    ”けれど香子が治貴とずっと一緒にいるのはそんな言葉を信じたからではなくて、
    そんなことを言う治貴を愛していたからだ。”
    最後までハッピーエンドを信じたくなってしまう、香子と治貴の物語。

    ”そんな話は聞きたくない、と香子は思う。とても強く、そう思う。
    だから心が揺れている。
    家に帰ろうと言い出せば、今夜をやり過ごせるだろうことを知っているからだ。
    香子の強さが、治貴の優しさが切なくて、心が打たれます。

    0
    2009年10月04日
  • ありがとう。

    Posted by ブクログ

    何度も言うけど、鷺沢萌さん、好きです。
    エッセイ集なんですが、最後に収録されている酒井順子さんとの対談がおもしろすぎます。
    素敵すぎるコンビ。

    0
    2009年10月04日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

    Posted by ブクログ

    キラキラした世界が色を失っていく、とてもせつない物語。
    読後、主人公の強さが心に残る大好きな小説です。

    0
    2009年10月04日
  • バイバイ

    Posted by ブクログ

    人の顔色を窺いながら生きる主人公につい自分を重ね合わせてしまう本です。嘘を重ね、自分の本当の気持を失っていることにすら気づかない。現実を直視できます。

    0
    2009年10月04日
  • バイバイ

    Posted by ブクログ

    私はその"やさしさ"を知っている。私はそれを"やさしい"と言う。("残酷"と"親切"を並べながら、それでも)

    0
    2009年10月04日
  • バイバイ

    Posted by ブクログ

    これもまた、恋愛が終わったときに読んだ本。
    一人に決められない男。読んでる時、このヤロー!ハッキリしろよ!!なんて思ってたけど、年とって、今自分がそんな感じ。年取ると嫌でも慎重になっちゃうんだよね…。

    0
    2011年09月20日