あらすじ
これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴(はるき)の言葉は香子(きょうこ)の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた二人。アメリカ人でも難関の司法試験にパスし弁護士事務所でホープとなった治貴。二人の夢は次々と現実となっていく。だが、そんな幸福も束の間……。感涙のラストシーン!
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二人が、二人で、ずっと幸せなまま話が終わると信じたかった、、
これ読んでる時ずっとaikoの「えりあし」が頭の中で流れてた
強(つよ)い心と強(こわ)い心は違うんだよ、
傷を受けてこわばった心も丁寧に丁寧に手当てをして強い心に変えられるような人間になりたい
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「あなたはあたしのクリスマス・ツリーだったのよ」
多分、今この本のページを少しもめくっていない人にとってさえ、香子のこの一言はうならずにはいられない名文句だと思う。
ロマンチックにも見えるたとえだけど、彼女がこの一言を声にするまでに経験したこと、嵐のような日々、幸福にすぎる生活、その中で胸を満たした感情、香子の強さ、そして、気付いてしまったこと。
そういうものを全て知った後のこの一言は、あまりに苦しくて、あまりに切なくて、あまりに強くて、たまらなくなる。
そう長くはないし、小難しい話でもない。
この一言に少しでもうなったなら、ぜひ本作を読んでほしい。
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何度も繰り返し読み、その度に抱く感想が違う本。もう10回以上は読んでるな。時間にしてみたら数十分の最後のドライブの間に、初々しい始まりから、確固たる信頼関係を築き上げ、徐々にすれ違って行く様を回想的に差し込んで、着々と別れへと向かっていく。結末はわかってるから、その全てが切ない。昔読んでた時はあんなに好きなのになんで別れるのか分からなかった。でも今は分かるな。同じ方向を向いていない人とは一緒にいるのは苦しい。あんな別れ方ができる香子の性格がハルによって築かれたっていうのも切ないけど…かけがえのないものを得たと思えるのだろう。そして俵万智さんの解説が秀逸でこれもセットでこの本が好き。
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出会ってから長い月日を共に過ごし、目指す生活を手に入れるために共に闘い続けてきた香子と治貴。望んでいたものを掴み、同じ幸せに包まれていたはずの二人に、静かに降る別れの物語。
やっぱり鷺沢さんは良いなぁ、と思わずにはいられない作品でした。
作品に流れる空気や登場人物たちの持つ優しさや温かさ、しなやかな強さが、別れへと向かう中でもそのままにあり続け、それ故により切ない物語になっていると思いました。
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”けれど香子が治貴とずっと一緒にいるのはそんな言葉を信じたからではなくて、
そんなことを言う治貴を愛していたからだ。”
最後までハッピーエンドを信じたくなってしまう、香子と治貴の物語。
”そんな話は聞きたくない、と香子は思う。とても強く、そう思う。
だから心が揺れている。
家に帰ろうと言い出せば、今夜をやり過ごせるだろうことを知っているからだ。
香子の強さが、治貴の優しさが切なくて、心が打たれます。
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タイトルにもなっている「大統領のクリスマス・ツリー」そのセリフが出てくるシーンがたまらなく好きだ。どんな思いで香子を誘い、そこまで連れいていき、そのセリフを口にしたのか。それを思うだけで、胸がキュッとなる。10代で出会い、20代で結婚し、子供がうまれ、30を迎え、出会った頃のようながむしゃらさや、同棲していた時の必死さも、思い出に変わりつつある。香子は折にふれその変化を「布を織り上げてきた」と例える。人との関係は確かにつむぎ、おりあげるものなのかもしれない。つよい心とこわい心。何度読んでもその言葉が沁みる。
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1時間ドラマをそのまま見ているような構成。「完璧に幸せ」と思うのは それを失いつつある時。時は一刻も止まらず過ぎていき、どんな幸せも永遠には続かない。
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とても前向きな悲しい話です。
今後、自分の人生にこんな悲しいシーンがあるのかと、ちょっと寂しい気持ちになります。
そんな、話なのに前向きな気持ちになれるのが不思議です。
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解説で俵万智さんが「あなたはあたしのクリスマスツリーだったのよ」を中心とする、ラストのほんの一言ふた言の会話を、いかにせつなく成立させるかということに、ひたすら向かっているようにも思われたと言ってるけど、まさにその通りだなーと思いました。
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なにかの評で「最後の一言のための作品」という言葉を聞いたが、正にそのための作品。
恋愛について、家族について、と切り口はいくつもあるが年月を経ることとはどういうことかを丁寧に描いていてとても好い。
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どうしようもない切なさ。
どうしてどうしてどうして?って、どうしようもない気持ちでいっぱいになる。
鷺沢さんも、一枚の布を織りあげるように小説を書く人。
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断片的に過去が描写されていく恋愛小説。
結末を予感させながらも登場人物は柔らかく、穏やかに物語が進む。
もっと鷺沢萠の小説を読みたかったと思わされる。
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香子のハルによって培われた強さ、やさしさが最後に2人の関係を終わらせる結果に至ってしまってるのがまた切ない。あんなに好きなのでなんで終わってしまうんだろう。前しか見ない人の本質、そこからはずされてしまうことがこんなに悲しいなんて想像してなかった。作品以外に解説も良かった。「このままのこの時を書く。」その短い時に至るまでこんなに素敵に書けるものなんだ。
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12月のこの時期的に、
読むなら今かなと思って。
何故別れなきゃならないのだろう。
一緒に歩いてきた軌跡より、
新しい未来を作る相手を選択するというのか。
不条理な切なさが残った。
この別れは美しいと言えるのだろうが、
最後に醜いいさかいをしないことが美徳とも思えない。
Posted by ブクログ
一度開くと最後まで読みきってしまう。
一行ごとに一本ずつ色の違う糸が通っていき、一枚の布を織り上げていくように、話を描く。
治貴はほんとうにそれを望んでいたのか?
読み返して、そう思った。
(本文より)
綺麗だな。自分で言うのもなんだが、ほんとうにそう思った。
がむしゃらに働いて、緊張と一過性と信んじてる若いとき特有のむこうみずな程の自信が顔と体にあふれていると
そういうものが自分を綺麗に見せている、と鏡の中を見て、香子が呟く。
ずーっと忘れられないシーン。そう思えるほど、「暮らす」ことに一生懸命だったのに。
Posted by ブクログ
小学生くらいで読んだ気がする。
ひたすら悲しくて悲しくて悲しい。
悲しい気持ちになった。
でもなんか忘れてないんだね。
もう一度読んだら変わるかな?
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最近はどちらかと言えばリアルな感じの小説ばかり読んでいたので、こういう話は久しぶりでよかった。
主人公が出会いから振り返ってる、苦しい結末に終わりそうな雰囲気がなんともいえなかった。
確かに、女にとって恋はクリスマスツリーみたいなとこあるよね。
うっすら涙が浮んだ一作。
Posted by ブクログ
とてもすらすらと読めました。微笑み、「頑張れ」と応援し、「良かった」と安心した所へ、最後の結末。
こんな事があって良いのでしょうか。そう思うのは私が私自身が強くない、強(コワ)いだけの人間だからでしょうか。いつか冷静に読み返せる強い人間になりたいです。でも、心にはとても残ったいい話です。映画にもなっているらしいので、機会があれば見てみたいです。
Posted by ブクログ
表紙裏
これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴の言葉は香子の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた二人。アメリカ人でも難関の司法試験にパスし弁護士事務所でホープとなった治貴。二人の夢は次々と現実となっていく。だが、そんな幸福も束の間・・・。感涙のラストシーン!
Posted by ブクログ
悲しいのだけれど、激しくなくて、穏やかなんだけど、確実に進んでく。
鷺沢さんの作品は、「こういうこと」という明確な答えは出してくれないけれど、
人間を描いているなあ、と感じます。
Posted by ブクログ
ホワイト・ハウスの前の半円形をした芝生の敷地に、それほど高くはないもこっとした木がたった一本、
植えられている。それが、大統領のクリスマスツリーである。
この小説は、「大統領のクリスマスツリー」をキーワードに、香子と治貴の回想物語が展開される。
回想されるのは、アメリカで出会い、愛しあった香子と治貴との恋愛。
アメリカで出会い、恋に落ちた香子と治貴はアメリカの地で一緒に暮らし始め、結婚し、子供を授かって
幸せに暮らしていた。アメリカ人でも難関の司法試験に合格し、弁護士事務所で働く治貴と、そんな夫を
支える暮らしに没頭する香子。ふたりはお互いの夢を次々に叶えていき、「こんな幸せあっていいのだ
ろうか」とさえ思うほどの順調な生活を送っていたはずだった。
どこでどう歯車が狂いはじめたのかなんて、誰にもわかりはしない。ほんの些細な事で人生なんていうも
のは一転するものだ。それを運命というのかも知れないし、そうなるべくしてそうなったのかもしれな
い。つまり、この恋愛物語は一組のカップルが終焉に向かうまでの道のりを記した失恋小説でもある。
鷺沢氏の作品は、まだまだ全部とまではいかないけれど、けっこう読んだほうであると思う。
その世界観と文章力の高さには読むたびに感動すら覚えたものだが、この【大統領のクリスマスツリー】
は、どうしてかあまり読後感に冴えがなかった。大人の恋愛の切なさとかやるせなさとか、結婚後の家庭
生活の実情とか、僕もいい歳なのでその辺りのことは知っているつもりだったけれど、それらを経て、
この物語のこの別れの形というのはどうしても釈然としないのはどうしてなんだろう。
個人的な意見になるけれど、あまりにも完璧な男だった治貴(優しくて、ユーモアがあって、行動力が
あって、紳士的で)が、別れを選んだ理由に納得がいかなかったのだと思う。
お前ほどの男がそんな理由で家庭を捨てるの?あれほど愛してやまなかった妻と娘を捨てるの?
という感想しか残らないのが残念。
夢を必死で追いかけて、幾多の困難を乗り越えて、愛を育んで幸せを手にいれた過程がとても素敵な物語
だっただけに、もっとドラマチックに終焉に向かって欲しかったな。
物語の中に色々な伏線があって、よくよく読み込めばなるべくして向かえた終焉なのだと納得できるの
だろうけど、そこの境地まで踏み込めなかった自分がいます。
でも、その反面「現実はこういう別れが多いんだろうな」と思ったりもする。ドラマチックに始まり、
あっけなく終わる恋がどれほどの数あるだろうか。そもそもドラマチックに終わる恋なんていうものが
どれほどあるのだろうか。そういった意味では、この小説は若者の群像というか、恋愛の(90年代前
半的な思考だけど)本質に迫った作品なのかもしれない。