鷺沢萠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりの鷺沢萠。家族とは何かを問い続けた作者が最後に遺した作品。フツーな家族って何?フツーな家族なんてないんだから、自分に正直に生きれば良いんじゃない、とでも言いたげな作者の優しさに触れられる作品。来年4月11日で没後10年。早すぎるよ、鷺沢さん。
2021年3月26日更新
家族の在り方がますます多様化している昨今、そして、自分自身も齢を重ね、子の親となったところで、久しぶりに手に取って再読。
刊行されたのは平成16年3月。もう17年前。そして、その1か月後、4月11日に自死。
当時、30代半ばにして、この作品を書いていた作者の慧眼に改めて感動する。
日本でも、ようやく先日同性婚を -
Posted by ブクログ
何度も繰り返し読み、その度に抱く感想が違う本。もう10回以上は読んでるな。時間にしてみたら数十分の最後のドライブの間に、初々しい始まりから、確固たる信頼関係を築き上げ、徐々にすれ違って行く様を回想的に差し込んで、着々と別れへと向かっていく。結末はわかってるから、その全てが切ない。昔読んでた時はあんなに好きなのになんで別れるのか分からなかった。でも今は分かるな。同じ方向を向いていない人とは一緒にいるのは苦しい。あんな別れ方ができる香子の性格がハルによって築かれたっていうのも切ないけど…かけがえのないものを得たと思えるのだろう。そして俵万智さんの解説が秀逸でこれもセットでこの本が好き。
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み返してまた、泣いてしまった。
出自にまつわる孤独を抱えて生きる主人公が、バイト先の飲み屋さんで、不思議と自分と似た雰囲気を持つ男性と出会い、惹かれあっていく。ただ、ただ、ふつうのしあわせを渇望する主人公の姿に、胸を打たれる。
鷺沢 萠さんの小説はどれも好きですが、このお話が一番好きです。
自分自身の孤独と向かい合い、ひとを愛するという普遍的なテーマが描かれていると思います。
それぞれに生き難い事情を抱えているけれど、それは誰かのせいではない、と誰も恨むことなく(いや、一度は恨んだかもしれませんが、その気持ちを乗り越え)、他者を愛せるという幸せを、そっとかみしめて生きている。
『さい