鷺沢萠のレビュー一覧
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鷺沢 萠 著 角川文庫
人を信じるということはそれほど難しいことなのだろうか。愛する人を信じて生きるということは、
それほど難しいことなのだろうか。この作品はそんなことを深く考えさせてくれる小説である。
主人公の男「勝利」は、祖父が言った「人間なんで、信じるもんでねえぞ。」という言葉が忘れられず、
それ故に人を心から信じることが出来ずに生きてきた。人に嫌われることを恐れ、相手を喜ばせることが
自分の居場所を確保する唯一の方法だと悟り、人の顔色を伺い、相手が求めることを瞬時に理解して、
求められたものを完璧に提供してきた。それが勝利にとっては生きる術であり、当たり前のことだった。 -
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ホワイト・ハウスの前の半円形をした芝生の敷地に、それほど高くはないもこっとした木がたった一本、
植えられている。それが、大統領のクリスマスツリーである。
この小説は、「大統領のクリスマスツリー」をキーワードに、香子と治貴の回想物語が展開される。
回想されるのは、アメリカで出会い、愛しあった香子と治貴との恋愛。
アメリカで出会い、恋に落ちた香子と治貴はアメリカの地で一緒に暮らし始め、結婚し、子供を授かって
幸せに暮らしていた。アメリカ人でも難関の司法試験に合格し、弁護士事務所で働く治貴と、そんな夫を
支える暮らしに没頭する香子。ふたりはお互いの夢を次々に叶えていき、「こんな幸せあって -
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アメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフの美亜。
父親は誰かわからず、母親も再婚により今は連絡をとっていない状態。
被爆2世の朴さんと知り合い、お互いの孤独を癒していく。
最後は朴さんの死で終わり、ミアに新しい命が授かる。
確かにアメリカの核爆弾が違う種類で2回も落とす理由は「試したかった」ということなんだと思う。
戦争は人を人として見ることはないんじゃないかな。
悪い悪くないというのではなく、価値観が破壊される。
人としてみてしまえば、全員の精神が狂ってしまう。
ありえない状況でありえないことが起こり、感覚を麻痺していく。
人間をコントロールするのって簡単なんだろう。
常に起こってしま -
Posted by ブクログ
二股、三股をかけていた男とかけられていた女の話。表紙がきれいで手にとって読み始めた。鷺沢作品には大きく2通りあって、それは作品の内容も文章の力の入れ具合も老練していて、とてもとても30代の女性が書いたとは思えないようなものと、そうじゃないものに分けられる。
これはそうじゃないものに入るんだけど、この「バイバイ」は何ていうか、わざとに若い女性受けするような作品を書いているんじゃないかしらって思わせるような作品。「スタイリッシュ・キッズ」「大統領のクリスマス・ツリー」なんかもそうなんだけど。こんな作品も書けます、みたいなね。で、恋人の心が離れていくっていうのにこだわって書いているのが若い女性受けす