鷺沢萠のレビュー一覧
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再読ですが、しっかり読むのはいつ以来かと言われると十年ぶりくらいなような気がするので新規登録。
映画や旅の話はともかく、けっこうたわいない日常の(あるいはよくわからない趣味の…麻雀とか…)内容ばかりなのについ読んでしまう…。通読よりも拾い読みに向く本ですね。わたしはおじさまに弱いので、いおりんが登場するあたりを特に好きで読みます。
わたしは麻雀しないし、お酒も(たいして)飲まないし、サギサワさんと知り合う機会がもしあったなら、つまらない小娘だなあと思われたんでしょうけれど、それでもこのひととちょっと遊んでみたかったなあと思ってしまいます。あ、大食らいなところは気に入ってもらえたかもしれません。
しかし著者が故人というのも、読みながら妙に感慨深くなってしまって困ったものです。加えていおりん(藤原伊織氏)までお亡くなりになった今では、どんな内容であっても必然的に、おもしろくてやがて悲しきものなのでした。 -
Posted by ブクログ
3股男、ショーリの物語。
はたから見て、ひどい男とされる彼だが
どうしてもそうは見れない。
相手の事を観察して、相手が求めている事を感じ
そのために全力を尽くさなければならなくなってしまった
そんな男は
多くの女に気に入られるだろう。
当たり前だ。
自分が求めていることをしてくれる人がいたら
その人といたいと思ってしまうのは。
人間の正直な気持ちだろう。
きっと、女たちは素晴らしく幸せな体験をしたことと思う。
人を信じるというのは確かに快楽かもしれない。
それを味わわせてもらったという事実だけで
幸せだと思うんだけどな。
そんなことは、一般常識では思われないんだろうけれど。
他に人の感想を見ていても
納得できない意見のほうが多数だし。
でも、私は
ショーリにはその後も
沢山の女と仲良くなって欲しい気がした。
朱実を不幸から引き上げたのはショーリだ。
きっと彼に出会っていなかったら
彼女は不幸を引きずり続けたことと思う。
その後、ショーリによってより傷ついたとも言えるけど
事実、彼女は一時は幸せを味わっている。
残念なのは、ラスト。
よくわかんない。
もっとすっきり終わらせればいいのに、と思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
桜が散る頃になると、どうしてもこの小説のことを思い出してしまう。(鷺沢 萠さんが35歳で自殺してしまって、もうこの世にいないからかもしれないけれど・・・)
上智大学の学生だったころに「少年たちの終わらない夜」でデビュー。「帰れぬ人びと」「海の鳥・空の魚」「スタイリッシュ・キッズ」と続けて出版した後の、「葉桜の日」。これらのタイトルをみただけでも、いかに言葉のセンスのある人かわかりますでしょ?
「葉桜の日」には、「葉桜の日」のほかに、三島賞候補になった「果実の舟を川に流して」が入っています。この2作品の共通点は"親のいない"19、20歳の少年の眼を通して、普通の日本人やらサラリーマンには縁のない世界(もしかしたら底辺といってよいのかも)が描かれていること。
本作品以外で、泉鏡花賞受賞のほか、芥川賞候補に4度、野間文芸新人賞候補2度、なるほどの実力。
「果実の舟を川に流して」は彼女の最高傑作という人もいるほどの作品です。 -
Posted by ブクログ
鷺沢 萠 著 角川文庫
人を信じるということはそれほど難しいことなのだろうか。愛する人を信じて生きるということは、
それほど難しいことなのだろうか。この作品はそんなことを深く考えさせてくれる小説である。
主人公の男「勝利」は、祖父が言った「人間なんで、信じるもんでねえぞ。」という言葉が忘れられず、
それ故に人を心から信じることが出来ずに生きてきた。人に嫌われることを恐れ、相手を喜ばせることが
自分の居場所を確保する唯一の方法だと悟り、人の顔色を伺い、相手が求めることを瞬時に理解して、
求められたものを完璧に提供してきた。それが勝利にとっては生きる術であり、当たり前のことだった。
誰に対してもいい顔をしてしまう。誰からも好かれたい、嫌われたくないという気持ちが、言動判断基準に
なる。仕事だけに限った話ではない。女性関係も・・・。
と、小難しい言葉で説明してみるとそんな内容の話だが、ざっくばらんに説明すると、三股を掛けている
最低な男の話である。そんな最低な男の話のどこに深く考えさせられるところがあるのかというと、
そこは天才・鷺沢 萠である。単なる好いた惚れたの恋愛小説ではない。見事な人格描写と心理描写で、
登場人物たちの心の闇と光を引き出していくのだ。
この三股を掛けている勝利という男は、けして悪巧みをもって三股を掛けていたわけではない。根本的
には「嫌われたくない」という自己中心的な思想のもとに「誰にも優しく接している」うちに、そういう
関係になってしまったのだ。この手の優しさは世間では優しさとは呼ばないのだろうが、僕には共感でき
る部分があって、ちょっとばかり心が痛んだりする。『優しさだけじゃ、人は愛せないから』なんて、
ブルーハーツの歌じゃないけど、そうなんだよな、なんて思ったりもして、余計に心苦しくなる。
勝利という主人公の深層心理は僕の深層心理と共通する部分が多々あるのだ。
すべての糸が切れたり解けたりしたとき、三人の女性の行動が三者三様で興味深いのだが、これほどの
修羅場を越えた後での「人を信じる」という行動はかなり重たいものがあって、信じるという行為その
ものが純真ではなく呪縛に思えてならない。僕的には、人を信じるということはもっと明快で単純で
いいのではないだろうかと思う部分もある。
『愛する人を信じて生きる。それでいいじゃねぇか、人はよぉ』って、THE・茶番ってバンドが昔
歌ってたけど「それでいいじゃねぇか」って言葉に含まれる部分が大切なんだと思うわけで。
考えすぎたり、背負い込みすぎたりすると、だいたい碌な事がない。人生なんてそんなものだと思うわけ
です。 -
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ホワイト・ハウスの前の半円形をした芝生の敷地に、それほど高くはないもこっとした木がたった一本、
植えられている。それが、大統領のクリスマスツリーである。
この小説は、「大統領のクリスマスツリー」をキーワードに、香子と治貴の回想物語が展開される。
回想されるのは、アメリカで出会い、愛しあった香子と治貴との恋愛。
アメリカで出会い、恋に落ちた香子と治貴はアメリカの地で一緒に暮らし始め、結婚し、子供を授かって
幸せに暮らしていた。アメリカ人でも難関の司法試験に合格し、弁護士事務所で働く治貴と、そんな夫を
支える暮らしに没頭する香子。ふたりはお互いの夢を次々に叶えていき、「こんな幸せあっていいのだ
ろうか」とさえ思うほどの順調な生活を送っていたはずだった。
どこでどう歯車が狂いはじめたのかなんて、誰にもわかりはしない。ほんの些細な事で人生なんていうも
のは一転するものだ。それを運命というのかも知れないし、そうなるべくしてそうなったのかもしれな
い。つまり、この恋愛物語は一組のカップルが終焉に向かうまでの道のりを記した失恋小説でもある。
鷺沢氏の作品は、まだまだ全部とまではいかないけれど、けっこう読んだほうであると思う。
その世界観と文章力の高さには読むたびに感動すら覚えたものだが、この【大統領のクリスマスツリー】
は、どうしてかあまり読後感に冴えがなかった。大人の恋愛の切なさとかやるせなさとか、結婚後の家庭
生活の実情とか、僕もいい歳なのでその辺りのことは知っているつもりだったけれど、それらを経て、
この物語のこの別れの形というのはどうしても釈然としないのはどうしてなんだろう。
個人的な意見になるけれど、あまりにも完璧な男だった治貴(優しくて、ユーモアがあって、行動力が
あって、紳士的で)が、別れを選んだ理由に納得がいかなかったのだと思う。
お前ほどの男がそんな理由で家庭を捨てるの?あれほど愛してやまなかった妻と娘を捨てるの?
という感想しか残らないのが残念。
夢を必死で追いかけて、幾多の困難を乗り越えて、愛を育んで幸せを手にいれた過程がとても素敵な物語
だっただけに、もっとドラマチックに終焉に向かって欲しかったな。
物語の中に色々な伏線があって、よくよく読み込めばなるべくして向かえた終焉なのだと納得できるの
だろうけど、そこの境地まで踏み込めなかった自分がいます。
でも、その反面「現実はこういう別れが多いんだろうな」と思ったりもする。ドラマチックに始まり、
あっけなく終わる恋がどれほどの数あるだろうか。そもそもドラマチックに終わる恋なんていうものが
どれほどあるのだろうか。そういった意味では、この小説は若者の群像というか、恋愛の(90年代前
半的な思考だけど)本質に迫った作品なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
アメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフの美亜。
父親は誰かわからず、母親も再婚により今は連絡をとっていない状態。
被爆2世の朴さんと知り合い、お互いの孤独を癒していく。
最後は朴さんの死で終わり、ミアに新しい命が授かる。
確かにアメリカの核爆弾が違う種類で2回も落とす理由は「試したかった」ということなんだと思う。
戦争は人を人として見ることはないんじゃないかな。
悪い悪くないというのではなく、価値観が破壊される。
人としてみてしまえば、全員の精神が狂ってしまう。
ありえない状況でありえないことが起こり、感覚を麻痺していく。
人間をコントロールするのって簡単なんだろう。
常に起こってしまったことに対してなにを言っても始まらない。
起こったことにどのように対処するか、そこが大事。
私は孤独ではない。
でも幸せでもないように思う。
感情なんて日々流動的で永遠に孤独な人はめずらしい。
面白かったと思う。