鷺沢萠のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
難しい小説、と聞くと使ってる言葉が難しかったり、設定が難しくて読み進めることができないのだと思っていました。でも、鷺沢萠さんの小説には、違った難しさがあると思います。
『海の魚・空の鳥』という短編集を選んだのは、一番最初に収められている「グレイの層」という小説を、高校時代、国語の時間に勉強して衝撃を受けたからです。
このお話では、プロポーズを受けた女性がそれにどう答えるか、電車の中で自分のこれまでの人生を思い返しながら考えます。自分が今まで歩んできた、そしてもし今結婚すればそのまま歩み続けるであろう人並みな人生と、ここで違う選択をした場合に得られるかもしれない、普通とは違う人生への可能性。車窓をバックに思い悩む主人公の姿がずっと描かれるなかで、ふと入ってくるプロポーズの相手のセリフと、そして一瞬変わった車窓を目にして、主人公の心が動きます。
初めて読んだとき、私は呆気にとられました。最初に書いたような「難しい小説」ではありません。教科書でも文庫本でも、ほんの数ページで終わってしまいます。
過去を振り返る主人公が丁寧に描かれていたのが、急にさらっとした描き方に変わって、そして強烈な余韻を残して終わります。全体のお話ではなく、その人の心に注目しているからかもしれません。すごく躍動感のある写真を見たときのような、物足りないというわけではないのだけれど、そのちょっと先を見たくなるような、想像力を掻き立てられる終わり方です。
この一冊には20編の作品が収められています。主人公の性別も、年齢もばらばらですが、少し前の自分を思い出したり、向き合ったりするところでほんの短いお話なのに登場人物がどんな人かを窺い知ることができます。ほんの数ページなのに、長い小説を読んでいるような厚みを感じることができます。でも今については最小限。読んだ後にそうだよな、と共感したり、それで良いのだろうか、自分だったらどうだろうと考えたりするお話ばかりではありません。何が、どこがきっかけでそうなったんだろう、とよく分からなくて何度も読み返したお話もいくつもあります。
まるで本を読んでいるというというよりは、実際に登場人物について、もしかしたらその人自身と話をしているかのようです。それだけに、理解できないと悔しくて、この人はどういう風に考えたんだろう、どういう風に感じていたんだろう...と考えさせられます。
作品を一つ読むごとに、もっとこの人についてわかりたい、新しい人に出会いたい、と思う、そんな本です。 -
Posted by ブクログ
表紙裏
あなたにはヨンマッサルがあります――。十数年前のある日、取材で訪れた韓国で占い師からそう宣言された鷺沢さん。「ヨンマッサル」とは「忙しく旅する人」の意。やだなぁ、それ・・・、と言いながらも、鷺沢さんは、その後もニューヨーク、ベルリン、ロンドン、プラハと、まさに世界中を旅してばかり。国、性別、人種、言語、あらゆるボーダーを超えて、この惑星を歩きまわる、笑いと涙の傑作エッセイ集。
目次
笑顔という魔法
冷凍イカとJAFの夜
カニ缶ミステリー
妙義にて
ブレイン&クレイン
ロスト・バゲージ
都会の善人
マフラーはパステルブルー
待っていてくれる人
クツは船に乗って
リナの野望
零下十度のミニスカート
国境を越えるために
八〇〇ドルの同情
パンダの威力
飛ばせてよし、走らせてよし
お互いツライね
友の訃報を
ソウルの月
アミュレット
歴史という名のイタズラ
人の残した思い
ああ!外国語
ふつうの名前
言語の壁
言葉という宗教
プラハと呼んで
カンジ悪いオンナ参上!
ことばは鋏
生涯の先生
ばんざい、ひとり暮らし
イヌとの闘い
「おたま死」の恐怖
負け犬宣言
餃子とガーデンテーブル
大阪は遠かった
砂浜の魔力
ビーチにて
ウェールズの王子
熊の子ら
チョゴリを着て投票に行こう
「私」という「自分」 -
Posted by ブクログ
様々な悩みと共に生きていく人々の「ホーム」を探る中篇二つ。
フツーという枠で人を括ることがどんなに愚かなことか。
ある意味ではフツーではない環境を持った主人公達が、最終的に自分なりの「ホーム」を見つけていて、じゃあフツーなあなたの「ホーム」は?と問いかけられているような読後感。今生きている環境に改めて感謝させられた。
どちらもホロリとくるようなラストが用意されていて、全体的に見るとすっきりと読めるが、個人的には二つめの話の展開がちょっと。。
回想を中心に事実の羅列のようなじれったい描写が続き、少し読み進めるのが辛かった。控え目にこの星数で。 -
Posted by ブクログ
ホームページの日記も毎日のように読んでいたけれど、文庫は眠る前にベッドでぱらぱらめくるのに最適でした。
夢中になって、職場でお昼ご飯をつつきながら、残業の待ち時間をつぶしながら、「おふぃめめ裏日記」を読みふけっていたものです。
一日に何度も読んだり、過去日記を暗記するほど読み返したり。秘かにキリ番狙ったり。
当時、鷺沢さんは30歳、わたべさんは20代、読んでいるわたしも20代半ばでした。若かったなー。そして、楽しかった。
鷺沢さんもわたべさんも、大好き。最高!
これをきっかけにそれまで手に取らなかった「いおりん」の本を読むようになったり。
トゥ(TWU)とかドゥ(DWU)の入力を覚えたのもわたべさんのおかげ。
久しぶりに読み返したら、おすしが食べたくなってしまいました。