鷺沢萠のレビュー一覧

  • 海の鳥・空の魚

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     難しい小説、と聞くと使ってる言葉が難しかったり、設定が難しくて読み進めることができないのだと思っていました。でも、鷺沢萠さんの小説には、違った難しさがあると思います。
    『海の魚・空の鳥』という短編集を選んだのは、一番最初に収められている「グレイの層」という小説を、高校時代、国語の時間に勉強して衝撃を受けたからです。
     このお話では、プロポーズを受けた女性がそれにどう答えるか、電車の中で自分のこれまでの人生を思い返しながら考えます。自分が今まで歩んできた、そしてもし今結婚すればそのまま歩み続けるであろう人並みな人生と、ここで違う選択をした場合に得られるかもしれない、普通とは違う人生への可能性。車窓をバックに思い悩む主人公の姿がずっと描かれるなかで、ふと入ってくるプロポーズの相手のセリフと、そして一瞬変わった車窓を目にして、主人公の心が動きます。
     初めて読んだとき、私は呆気にとられました。最初に書いたような「難しい小説」ではありません。教科書でも文庫本でも、ほんの数ページで終わってしまいます。
     過去を振り返る主人公が丁寧に描かれていたのが、急にさらっとした描き方に変わって、そして強烈な余韻を残して終わります。全体のお話ではなく、その人の心に注目しているからかもしれません。すごく躍動感のある写真を見たときのような、物足りないというわけではないのだけれど、そのちょっと先を見たくなるような、想像力を掻き立てられる終わり方です。
     この一冊には20編の作品が収められています。主人公の性別も、年齢もばらばらですが、少し前の自分を思い出したり、向き合ったりするところでほんの短いお話なのに登場人物がどんな人かを窺い知ることができます。ほんの数ページなのに、長い小説を読んでいるような厚みを感じることができます。でも今については最小限。読んだ後にそうだよな、と共感したり、それで良いのだろうか、自分だったらどうだろうと考えたりするお話ばかりではありません。何が、どこがきっかけでそうなったんだろう、とよく分からなくて何度も読み返したお話もいくつもあります。
     まるで本を読んでいるというというよりは、実際に登場人物について、もしかしたらその人自身と話をしているかのようです。それだけに、理解できないと悔しくて、この人はどういう風に考えたんだろう、どういう風に感じていたんだろう...と考えさせられます。
     作品を一つ読むごとに、もっとこの人についてわかりたい、新しい人に出会いたい、と思う、そんな本です。

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    2013年12月21日
  • 月刊サギサワ

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    学生の頃に愛読していた鷺沢さん。
    実家で手に取り、久々の再読。
    亡くなった年齢を超えてしまい感無量。
    小説も読み返そう。

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    2013年11月19日
  • そんなつもりじゃなかったんです THEY THEIR THEM

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    ☆3.8
    鷺沢萌ってどっかで聞いたことある気がする...と思って手にとってみた。筆者の周りでどうしようもないことをやり続け、ネタを提供してくれる良き友人たち、そんな「バカだけどゴキゲンな連中」のことを書いたエッセイ。私も気のおけない仲間と酔っ払って一晩中騒いで次の日二日酔いになって...ってやりたいな、と思った。たぶん次の日最悪な気分だろうけど(笑

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    2013年08月01日
  • 海の鳥・空の魚

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    どれもきっと、その人にとって忘れられない瞬間なんだろうな。みんなまじめでまっすぐで、いい人ばっかりだ。一番好きなのは、ほんとに好きになりかけてる人と一緒に、車窓を流れる街並みを見て、心を決める作品です。←「グレイの層」でした。

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    2012年11月28日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    表紙裏
    これがね、大統領のクリスマス・ツリー。治貴の言葉は香子の耳の奥に今でも残っている。ワシントンで出会い、そこで一緒に暮らし始めた二人。アメリカ人でも難関の司法試験にパスし弁護士事務所でホープとなった治貴。二人の夢は次々と現実となっていく。だが、そんな幸福も束の間・・・。感涙のラストシーン!

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    2012年11月21日
  • 待っていてくれる人

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    表紙裏
    あなたにはヨンマッサルがあります――。十数年前のある日、取材で訪れた韓国で占い師からそう宣言された鷺沢さん。「ヨンマッサル」とは「忙しく旅する人」の意。やだなぁ、それ・・・、と言いながらも、鷺沢さんは、その後もニューヨーク、ベルリン、ロンドン、プラハと、まさに世界中を旅してばかり。国、性別、人種、言語、あらゆるボーダーを超えて、この惑星を歩きまわる、笑いと涙の傑作エッセイ集。

    目次
    笑顔という魔法
    冷凍イカとJAFの夜
    カニ缶ミステリー
    妙義にて
    ブレイン&クレイン
    ロスト・バゲージ
    都会の善人
    マフラーはパステルブルー
    待っていてくれる人
    クツは船に乗って
    リナの野望
    零下十度のミニスカート
    国境を越えるために
    八〇〇ドルの同情
    パンダの威力
    飛ばせてよし、走らせてよし
    お互いツライね
    友の訃報を
    ソウルの月
    アミュレット
    歴史という名のイタズラ
    人の残した思い
    ああ!外国語
    ふつうの名前
    言語の壁
    言葉という宗教
    プラハと呼んで
    カンジ悪いオンナ参上!
    ことばは鋏
    生涯の先生
    ばんざい、ひとり暮らし
    イヌとの闘い
    「おたま死」の恐怖
    負け犬宣言
    餃子とガーデンテーブル
    大阪は遠かった
    砂浜の魔力
    ビーチにて
    ウェールズの王子
    熊の子ら
    チョゴリを着て投票に行こう
    「私」という「自分」

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    2012年11月21日
  • 過ぐる川、烟る橋(新潮文庫)

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    まだ話が続いていると思ってページをめくったら終わっていたのでびっくりした。
    この終わり方でやり切れなさが三割増しはしてると思う。

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    2012年11月04日
  • 海の鳥・空の魚

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    20の掌編集。
    薬指のささくれのような、日常の些事を切り取った。
    言えなかったありがとうを、ごめんねを昇華してくれる言の葉がはらりひらりと。

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    2012年09月24日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    様々な悩みと共に生きていく人々の「ホーム」を探る中篇二つ。

    フツーという枠で人を括ることがどんなに愚かなことか。
    ある意味ではフツーではない環境を持った主人公達が、最終的に自分なりの「ホーム」を見つけていて、じゃあフツーなあなたの「ホーム」は?と問いかけられているような読後感。今生きている環境に改めて感謝させられた。
    どちらもホロリとくるようなラストが用意されていて、全体的に見るとすっきりと読めるが、個人的には二つめの話の展開がちょっと。。
    回想を中心に事実の羅列のようなじれったい描写が続き、少し読み進めるのが辛かった。控え目にこの星数で。

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    2012年07月06日
  • F 落第生

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    家並みの向こうにある空が一番良くて。ダメな男ばっかり好きになってた主人公が、普通の男と付き合って、自分に無関心っておもって辛かったんだけど。辛くて家を出て、もう別れようって伝えようとしたら、家から消えたことを心配してくれた彼がやってきて。薄っぺらだなんて思った自分がバカみたい…なんて、ステキな話だった。人生なんて、そんなちょっとしたきっかけで動いてるもんだから。

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    2012年06月09日
  • 海の鳥・空の魚

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    随分前に、「東京のフラニー」という収録短編が、テストの問題に出たことがあった(高校時代のわたしは、テストの問題に出される現代文をかたっぱしから読みたがった。)
    とくに高校時代は、「攻殻」から「サリンジャー」を読み進めていたので、とりわけ気になったのだと思う。サリンジャーの短篇に、「フラニーとゾーイ」というのがあるのだ。

    内容はさっぱりおぼえていない。
    洒脱で、それでいてどこか鋭い切れ味のある書きぶりをした作家だったように記憶しているので、再読してみるのもいいかもしれない。

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    2012年06月01日
  • さいはての二人

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    はじめの一行目から、「朴さんが死んだ」だったので、
    どんな話が、引き込まれていった。


    私は、その次の話の「約束」のほうが個人的に好きです。

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    2012年05月04日
  • 夢を見ずにおやすみ

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    「気持ちにビンボくさいところがある」、恵まれて愛されてきた人の持つ精神的豊かさみたいなものが足りない、決定的な欠落を抱えた女の子。
    きちんと自分の靴を揃えるような、どちらかと言えば豊かなほうの中流家庭で育てられたのに、「自分には一生縁がない」はずだった泥沼に足を突っ込み、地獄の一丁目まできてしまった結婚を控えた娘。
    自分がニワトリであったことを自覚せず、「他のなにものか」になれるのだと思ってしまった、亡くなった父。
    登場人物たちが、とてもリアルに描かれている。
    わたしたちは、夢を見なければ、安らかに眠ることができるのかもしれない。

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    2012年03月15日
  • さいはての二人

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    みっつの短編、「さいはての二人」「約束」「遮断機」、収録。

    オカルトっぽい物語は苦手なんだけれど、「遮断機」は特に印象的
    “変えられない日常を抱えて歳月を浪費していたのは自分だけで、他の人たちはそれと同じ歳月を確実に生き、変わっていったのだ。それだけのことだ。そうしてそう考えれば笑子はここしばらく死んだように生きていたかもしれない。一生懸命やっている、がんばって生きている、などと思っていたのは自分勝手なひとりよがりだったのかも判らない。”

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    2013年04月12日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    悲しいのだけれど、激しくなくて、穏やかなんだけど、確実に進んでく。

    鷺沢さんの作品は、「こういうこと」という明確な答えは出してくれないけれど、
    人間を描いているなあ、と感じます。

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    2011年11月15日
  • 海の鳥・空の魚

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    なにかにつまずいたり、失望したりしても、やり過ごすしか、忘れるしかない。
    そんな冴えない主人公たちの人生が、一瞬でも確かにきらめく瞬間を切り取った短編集。
    一つ一つが短いので、スピーディーに読めます。

    読後感は人によってかなり変わる気がしますね。
    日常的すぎる展開と結末が多いので、派手さは全然ありません。
    ただそれだからこそ、一瞬のキラリにもリアリティを感じられていいという方もきっとたくさんいるはず。
    「ほおずきの花束」という章で、あたしは泣きました (笑)

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    2011年10月24日
  • サギサワ@オフィスめめ

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    ホームページの日記も毎日のように読んでいたけれど、文庫は眠る前にベッドでぱらぱらめくるのに最適でした。

    夢中になって、職場でお昼ご飯をつつきながら、残業の待ち時間をつぶしながら、「おふぃめめ裏日記」を読みふけっていたものです。
    一日に何度も読んだり、過去日記を暗記するほど読み返したり。秘かにキリ番狙ったり。
    当時、鷺沢さんは30歳、わたべさんは20代、読んでいるわたしも20代半ばでした。若かったなー。そして、楽しかった。
    鷺沢さんもわたべさんも、大好き。最高!

    これをきっかけにそれまで手に取らなかった「いおりん」の本を読むようになったり。
    トゥ(TWU)とかドゥ(DWU)の入力を覚えたのもわたべさんのおかげ。
    久しぶりに読み返したら、おすしが食べたくなってしまいました。

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    2011年10月15日
  • バイバイ

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    サヨナラを言えない、この主人公キライ。でも、ここまで極端じゃなくても、男の人はこういう面がある気がする。

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    2011年09月18日
  • コマのおかあさん

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    つくづく、愛情深い人だなぁと思う。
    コマは、鷺沢さんと運命の出会いだったのかな。それとも、出会ったのがコマじゃなくても、鷺沢さんは同じように愛情を注いだんだろうな。でも、きっとコマと鷺沢さんの出会いは必然。
    人間の子供にすら、愛情を注げる自信がないわたしには、思わず涙してしまう一節もありました。
    コマと鷺沢さん、いまごろは一緒に幸せに過ごしてるかな。
    そうだといいな。

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    2011年08月25日
  • 月刊サギサワ

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    こういう学びや学習に関するエッセイは好き。
    日記エッセイなので、文体はライトでユーモラス。そんな中にも、鷺沢さんらしい真面目さ、賢さ、繊細さ、深い感受性を感じる。
    わたしには及びもつかないほどの、パワフルさとで豪快さを持ち合わせており、恐れ多いのだけれど、でもちょっと自分に通じるところがあって、だからこの人の本はやめられない。ほぼ、中毒。誤解を承知で言えば、たぶん、通じるところ、というのは一言でいえば「何かを諦めていること」なのだと思う。

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    2011年08月25日