鷺沢萠のレビュー一覧

  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    読んで良かった。
    普通ではない、変わった形態の家族の二篇の物語です。
    家族とは戸籍上の構成員ではなく、人生と日々の暮らしでつながっている関係なのだ、と改めて考えさせられます。
    1つ目の渡辺毅編は、子供が書いた作文をストーリーに組み込む使い方
    が絶妙です。
    2つ目の児島律子編はラストの急展開と温かさに感動します。

    鷺沢萠はやっぱり、凄い小説家でした。

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    2024年05月26日
  • 葉桜の日(新潮文庫)

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    アイデンティティが確立しにくい時代と言われてます。実際〝自分は誰なんだろう?〟と思ってる人も多いんじゃないかなぁ。わたしはよく思います。
    思うたびに、前はこうだったけど今は違うなー、とその時々で変わってるんじゃないかという感覚があります。たぶんそれでいいんだろうな。たぶん。

    僕は、ホントは誰なんだろうね?
    (葉桜の日)
    ふちの欠けたグラス
    (果実の舟を川に流して)

    あやふやな想いがあやふやのまま、
    あやふやなさがはっきりとわかる。
    なんだろう?
    否定でも肯定でもない、
    ただこのままでという、
    わからなさ。

    葉桜忌、4月11日に、
    また思い返す、かも。

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    2023年04月28日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    二人が、二人で、ずっと幸せなまま話が終わると信じたかった、、
    これ読んでる時ずっとaikoの「えりあし」が頭の中で流れてた

    強(つよ)い心と強(こわ)い心は違うんだよ、
    傷を受けてこわばった心も丁寧に丁寧に手当てをして強い心に変えられるような人間になりたい

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    2023年04月03日
  • F 落第生

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    「F」って、大学の評価方式で「落第」の意味。

    鷺沢さんの書くFは、本当にFだと思う。
    絶望は絶望のまま、濃い色をしている。
    「Fなんてことはないよ。大丈夫だよ」という慰めは存在しない。
    希望を掴めた者もいれば、そうじゃない者もいる。
    何を希望と呼ぶかって、人それぞれだ。

    息がしづらい人の物語かもしれない。
    でも、息がしやすい場所に、希望に辿り着くことが正解とも限らない。
    そんな、多様な物語たち。

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    2022年03月31日
  • 帰れぬ人びと

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    鷺沢萠の初期作品4作。「川べりの道」、「かもめ家ものがたり」、「朽ちる町」、そして「帰れぬ人びと」。

    五つ星という評価は、贔屓目に見たものかもしれないが、それでもこの最初期の作品群が好きだ。受賞作だからという点を措いても、川べりの道、そしてここには収録されていないが、「駆ける少年」は特に良い。

    川村湊による本書の解説では、静謐感、清潔感、諦観といった言葉が並んでおり、それに異論はないのであるが、自分は、本書の作品からは、HBかBくらいで描いた硬質な鉛筆画の風景や静物画のようなイメージを抱く。或いは、丁寧に書いた楷書の文章。

    著者自身の体験、読書歴、想像力の賜物だと思うが、これらの作品を1

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    2021年04月22日
  • 帰れぬ人びと

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    鷺沢さんの御本がついに講談社文芸文庫さんに…と思うとなんとも言えない気持ちになります。
    Webサイトも大好きで、ずっと読んでいました。
    あのニュースの流れた日のことは、たぶんこれからも忘れないと思います。
    本当はもっとずっとこれからも新作が読みたかった。
    でも、素敵な作品を届けてくださって本当にありがとうございました。いつまでも大好きです。

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    2021年02月08日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    久しぶりに鷺沢萌さんの本を読みました。
    2つともいい話。
    一生懸命生きてる感じもあって、爽やかに、だけど人との繋がりの大切さをそっと教えてくれるそんな気がしました。
    鷺沢萌さんの本はわりとたくさん持ってるので再読しようかな。

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    2018年07月16日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    「ウェルカム・ホーム!」
    血なんか繋がってなくても大丈夫。魔法のことば「お帰りなさい!」を大きな声で叫んだら、大好きなあの人は、たちまち大切な家族に変わるから。


    離婚し親にも勘当され、親友の父子家庭宅に居候しながら、家事と子育てに励む元シェフ渡辺毅と、再婚にも失敗し、愛情を注いで育てあげた前夫の連れ娘と引き離されたキャリアウーマン児島律子。それぞれの奮闘が詰まった物語です。


    キャリアウーマン児島律子のウェルカム・ホーム!は、読んでからのお楽しみということで、渡辺毅のウェルカム・ホーム!に関する書評です。


    主人公は、離婚の結果、住む場所と経済力を失った毅。そんな毅に「ここに住む場所と

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    2018年06月14日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    これは素晴らしかったなぁ。遺作ってことだけど、今更ながら、早逝されたことが残念です。二つのウエルカムから構成されている中編集だけど、両方ともがそれぞれに違う魅力を放ってます。で、個人的に好きなのは後半。夫の連れ子の幼少期から思春期、ともに過ごした日々を回想した後、久しぶりの再開に用意されたドラマの数々に、もう涙腺崩壊。これだったら、作者の狙い通りに泣かされちゃっても、何も文句ないです。もちろん、ふとしたきっかけでパパ2人になってしまった前半作品も、特に息子の作文とか凄く素敵。

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    2018年02月26日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    家族って血の繋がりじゃなく、絆なんだなー
    暖かくて、感動して、少しクスリと明るくなれる物語。
    シングルとか、海外出張とか、離婚とか、現代的だけどわざとらしくない、良い本に当たりました。
    「辿り着いたじゃないか、辿り着いちゃったじゃないか!!」

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    2018年01月02日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    血の繋がっていない家族の話が2編。どちらも良かったが特に小島さんと娘の話に涙。出来過ぎの結末ではあるが、苦労した母とそれを裏切らなかった娘。全てをハッピーエンドにまとめてもらってとってもうれしい。タケシさん家のノリくんは作文が上手過ぎ。我が家の息子もこんなに出来る子だったら親の悩みも少なかったんだろうな。

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    2017年12月10日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    ネタバレ

    鷺沢さんの本の中で一番か二番目に好きな本。
    読みやすいしね。
    特にひとつめの話は温かくて好き。
    二つめはなかなか苦しい気持ちになるけど、ハッピーエンドなので。

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    2017年07月26日
  • 過ぐる川、烟る橋(新潮文庫)

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    切ない切ない小説。読んでいて何度か涙がこぼれた。心の一番深いところに届いて、そこにとどまりそうな内容を持っている。プロレスラーとして成功した男が、夜の博多の街を歩きながら、川の水面に映ったネオンを見つめる。若い時に苦楽を共にした友と彼の恋人のことが、脳裏に甦る。巧いと感じたのは現在と過去を交互に描きながら、主人公の空虚な胸の内を浮かび上がらせる所だ。主人公は結末で、友人と恋人に再会する。その時彼の胸の中に湧き上がった感情は、どのようなものだったのか。生の哀しみを詩情豊かに描いて、胸に迫る素晴らしい作品。

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    2017年04月05日
  • サギサワ@オフィスめめ

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    鷺沢萠さんの公式ホームページを実に上手くまとめた本です。
    相方(?)わたべさんとの掛け合いも面白くて、夢中で読み進めました。

    鷺沢さんは私と同じ誕生年ということもあり、とても親近感ありますが、残念ながら若くして亡くなられてしまいました。
    いま生きていれば、きっと素敵なアラフィフ女性だったでしょうね。

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    2016年08月23日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    「あなたはあたしのクリスマス・ツリーだったのよ」

    多分、今この本のページを少しもめくっていない人にとってさえ、香子のこの一言はうならずにはいられない名文句だと思う。
    ロマンチックにも見えるたとえだけど、彼女がこの一言を声にするまでに経験したこと、嵐のような日々、幸福にすぎる生活、その中で胸を満たした感情、香子の強さ、そして、気付いてしまったこと。
    そういうものを全て知った後のこの一言は、あまりに苦しくて、あまりに切なくて、あまりに強くて、たまらなくなる。
    そう長くはないし、小難しい話でもない。
    この一言に少しでもうなったなら、ぜひ本作を読んでほしい。

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    2015年12月28日
  • 海の鳥・空の魚

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    うまくいかないことも多いけど、いいこともたまにある。どん底ってわけじゃない。わるくないよね、今も。ちょっとがんばってみようかな。

    そんな気持ちになった短編集。
    どの話も、希望に満ち溢れているわけではないのだけど、何となく過ぎていくような毎日を明日も続けようかな、と思えてしまう。
    もしかして、それは私も海の鳥だったり、空の魚だったりするからなのかもしれない。

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    2015年12月28日
  • 葉桜の日(新潮文庫)

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    高校か大学1年の頃、妙に鷺沢先生の小説にはまった時期があった。
    今となってはその理由がさっぱり思い出せないのだけれど、はっきりしているのは、多分、あの頃の私はこの話をよく理解できなかっただろうということだ。
    年齢的には、あの頃の方が登場人物に近いはず。
    けれど、生活するということ、生きるということをいまいち分かっていなかったあの頃には、この本にちりばめられた桜の花弁も、きれいごとでも格好のいい話でもない、普段なら気にも留めない人々の、気にもならない日々も、目に映らなかっただろう。
    今の私はジョージの年も健次の年も超えている。
    次は、誰の年になるのだろう。
    その頃にもう一度読めば、また見えなかっ

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    2015年10月29日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    渡辺毅と児島律子の物語。この二人に関連性はなく、それぞれの家族の形が描かれている。
    所謂、両親が揃っていて・・・という「普通」の家族、「普通」の結婚を逃した二人が、自分達なりの幸せと家族の形を捉え、受容していく過程がよかった。表現が適度にポップで、重すぎず暗すぎず。幸せにもひたりすぎずで、これからも様々に形を変えうる家族の可能性を秘めながら、前向きに進んでいこうとする家族たちに感動しました。

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    2014年03月05日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    近年、米国のファミリー映画は、ゲイカップルの子供の話だったり、ちょっと変わった形で、家族のあり方を問う作品が増えており、その度に大きな反響を呼んでいる。

    鷺沢さんが、10年も前に、先駆けるかのように、『血縁とも婚姻とも恋愛とも違うもので結びつく人々』を描いているとはなんとも素晴らしい感性。

    家族について、考えさせられました。

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    2013年12月23日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    久しぶりの鷺沢萠。家族とは何かを問い続けた作者が最後に遺した作品。フツーな家族って何?フツーな家族なんてないんだから、自分に正直に生きれば良いんじゃない、とでも言いたげな作者の優しさに触れられる作品。来年4月11日で没後10年。早すぎるよ、鷺沢さん。


    2021年3月26日更新
    家族の在り方がますます多様化している昨今、そして、自分自身も齢を重ね、子の親となったところで、久しぶりに手に取って再読。

    刊行されたのは平成16年3月。もう17年前。そして、その1か月後、4月11日に自死。

    当時、30代半ばにして、この作品を書いていた作者の慧眼に改めて感動する。

    日本でも、ようやく先日同性婚を

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    2013年12月15日