鷺沢萠のレビュー一覧

  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    好きなタイプの話で、終わり方もよかった。
    お話は2つ。まったく互換性はない。

    最初のストーリーは、友達と同居することになった渡邊と友達と死んだ母親の元に生まれた子供と一緒に3人で住むことで起きる些細な日常の積み重ね。
    日常って言っても、彼らにとっては事件ってこともあるしね。
    子供が無邪気なのがいいね。きっと心の中では思うことはあるにしても、きっと父親の楽天主義に影響されているのか、そういう無邪気さが救い。

    主夫をすることになる渡邊も葛藤はするんだけど、自分が「いい」と思える仕事が家事だってわかってよかったんだよね。もちろんすんなりこの結論にたどりついたわけではなけど。

    2話目のキャリアウーマンの律子の話も好き。
    子持ちと結婚して、子供の世話をすることに悪戦苦闘するんだけど、結局離婚することになって、血は繋がっていなくても大事に育ててかわいがってきた子供との別れはつらく・・そして時は経ち、ある日男の子が訪ねてくるって流れ。

    なんだろう。
    両方ともきれいごとかもしれないけど、あったかい。
    そうそう。あったかいの。
    家族っていいな。
    そういう意味で。

    二組とも子供(同居している、していた)とは血はつながっていない。でも愛おしみ、慈しみ、教えられることの大さといったら。
    単に働いているだけではわからないこともある。

    私は子供はいないけど、こういう家庭、というか心の持ち方を忘れないようにしたいと思った。

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    2014年11月24日
  • ウェルカム・ホーム!(新潮文庫)

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    【本の内容】
    いちばん大事なのは、お帰りって声をかけてくれる人がいること。

    親友の父子家庭に居候しながら家事と子育てに奮闘する元シェフ渡辺毅と、再婚にも失敗し前夫の連れ娘と引き離されたキャリアウーマン児島律子。

    それぞれの「ウェルカム・ホーム」をさがすふたつの物語に優しい涙がとめどなくあふれる。

    まるで神さまからのギフトのような慈愛に満ちたサギサワの最高傑作。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    ホーム――家族の物語だ。母親がおらず父親が二人の家庭など、少し変わった家族の姿が綴られる。

    とても温かい気持ちにさせてくれる。

    血がつながっていてもいなくても、何人かの人間が不器用に寄り添い、一緒に暮らすべく試行錯誤している様子に、「ああ、こんな家族が欲しいなあ」と思わせられる。

    彼らは最初から気が合うから家族になったというよりも、一生懸命家族になろうとしている。

    友人の息子でも、夫の連れ子でも、関わり合ううちに主人公自身が少しずつ変わっていく姿がいとおしい。

    そうしてつくりあげた家族だからこそ、ただ一緒にいる家族よりもずっと強固な絆で結ばれるのだろう。

    そんな、とても羨ましい光景を見せてくれる小説だ。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2014年08月28日
  • さいはての二人

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    【本の内容】
    「―この男は、あたしだ…」美亜がはじめて朴さんと会ったのは、所属していた劇団が潰れたのを機に、新橋の飲み屋『スタア』で働きはじめて一週間経つか経たないかの頃だった。

    三日にあげずに店に顔を出す朴さんに、美亜はやがて「あたしと同じものを持っている」と、強くひかれていくのだった…。

    家族との繋がり、自分の居場所、死について描いた、著者最後の恋愛小説集。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    孤独を抱え家族の温もりに飢えたもの同士の恋。

    でもその恋は寂しく切なく、それでいて純粋で清らかで希望も感じます。

    誰にでも孤独の穴を塞ぎ、自分が生れてきた喜びや感謝の気持ちを感じさせてくれる人は必ずいると思えるのです。

    恋愛小説というよりも家族小説、人間小説という方が適当かもしれません。

    もう、鷺沢さんの新作を読むことはできない。

    だから私は、寂しいとき、自信をなくしたとき、大事に大事に読んでいます。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

    0
    2014年08月27日
  • 過ぐる川、烟る橋(新潮文庫)

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    【本の内容】
    1970年代、東京。

    貧しくとも、ささやかな夢を分け合う二人の男がいた。

    九州から単身上京、中華料理店で働く篤志。

    身体がデカいのが悩みの彼は、店の先輩・勇のすすめでプロレスの世界に足を踏み入れる。

    運を掴む篤志と、見放される勇、その間で揺れるユキ。

    時を経て再会した三人は、何を得、何を失ったのか―?

    青春の記憶を手繰り、夜の博多に漂うノスタルジック・ラブストーリー。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    鷺沢萠は、初期の数冊ほどを読んだくらいで、自分の中では興味のない作家だった。

    本作もその程度の気持ちで読み始めたのだが、正直、やられた。

    ラストの展開に感動してしまったのだ。

    プロレスラーとして大成した男・篤志が過去を振り返り、青春時代を共に過ごした勇とユキに再会するまでの話。

    たいしてやる気もないまま入ったプロレスで成功する篤志と、頑張ればうまくいくと信じて失敗する勇。

    この対照的な二人の生き方が人生のせつなさと皮肉を見せ付ける。

    月並みな言い方だけれど、ほんとに人生って残酷。

    過去に想いを馳せる、そのベクトルが大きい分、ラストの篤志の喪失感がものすごい反動となって読み手にぐっと突き刺さる。

    それにしても、男二人に女一人の関係って必ず、女は、弱くてダメなほうの男になびく。

    これって女の本能なのか?

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2014年08月26日
  • F 落第生

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    【本の内容】
    ポジティヴに生きることだけが、決して正しい生き方じゃない。

    後悔したって、前向きじゃなくたって、少しずつでも歩くことさえ止めなければ、大丈夫。

    恋において、友情において、仕事において-。

    人生のなかで何かに「落第」してしまった女の子たちへ贈る、短編集。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    Fとは成績表で「落第」の印。

    損を承知で姉のために一肌脱ぐヒロイン、だめんずに付け入られてばかりのヒロインなど、人生の合格点をもらっていると言い難い女たちを描いた短編集。

    夏休み前の成績表に一喜一憂するのは子ども時代で卒業。

    自分で始末をつける女たちがカッコいい。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2014年08月24日
  • さいはての二人

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    人と繋がっている、そのもろくも強い縁は自分にもつくることができるだろうか。
    胸が苦しくなる、温かさにも、苦悩にも。

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    2014年07月07日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    解説で俵万智さんが「あなたはあたしのクリスマスツリーだったのよ」を中心とする、ラストのほんの一言ふた言の会話を、いかにせつなく成立させるかということに、ひたすら向かっているようにも思われたと言ってるけど、まさにその通りだなーと思いました。

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    2014年05月09日
  • 海の鳥・空の魚

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    ネタバレ

    とある実力テストに載せられていた一冊である。

    雨の日に、置いてある傘を盗って降りてしまう少年と、盗られたことに気付くおじさんの対比。
    その感じが、ありありと自分の心に響いて、忘れられずに購入した思い入れのある短編集なのだ。

    (テストだから、その時はどっぷりと浸っているわけにはいかなかったのだが)
    自分の気持ちと「ぴったり」符号する話(というか言葉の使い方というか)は、本当はあまりないように思う。
    それは、感動や涙とはまた別物である。

    何度も読みかえしたくなる本とは、こういうことをいうのかな、と思った。

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    2014年03月14日
  • 葉桜の日(新潮文庫)

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    非常に巧い小説だと思います。



    自分は一体、誰なんだろう?

    そんな思いを抱えながら生きてきたジョージ。

    彼が自分の出生の秘密、志賀さんの秘密を知った後、本来ならば、ようやく自分が誰だったのか分かるはずなのに。

    自分が余計分からなくなってしまうジョージが繊細に描かれていて、

    「僕はホントは、誰なんだろうね?」

    彼のこの一言が非常に鮮烈で染みました。


    大人への反抗心をむき出しにするわけではなく、若さを生き生きと描く、秀逸な作品。

    これを二十代前半で書いたというのだから、本当に鷺沢さんには舌を巻いてしまいます。

    天才っているのねー。

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    2014年02月06日
  • 海の鳥・空の魚

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    巧い。

    どの短編も、そのひとたちの人生の色が鮮やかにでていて引き込まれる。

    市井に生きる人の何気ない彩を書くために小説ってあるのかも。

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    2013年12月20日
  • 葉桜の日(新潮文庫)

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    言っても仕方ないこと、考えても仕方ないことは、生きていれば山ほどある。自分は何者なのか。若者特有の青臭い考えは葉桜のむせる若葉の季節によく似合う。

    焦りや苛立ちを書かせたらピカイチの鷺沢萠が切り取る世界は、地続きで、バーのカウンターでたまたま隣り合わせた他人の身の上話に似た雰囲気がある。

    当事者なのにどこか他人事。どうしようもない日々を生きていて、何が悪い。

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    2013年11月25日
  • さいはての二人

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    人物としては多分友達になれないと感じるのに、作品にはどうしようもなく惹かれてしまう作家やアーティストがいる。鷺沢萠 はその一人である。いろいろな評伝を読むかぎりでは、きっと仲良くなれない人なのだが、彼女が描く物語はとても深く僕の世界に入り込んでくる。

    表題作である「さいはての二人」、若さゆえに人生の壁と向かい合えない男が出会う少女との短編「約束」、ひたむきに生きてきた三十路の女性が家族を考える「遮断機」の三編を収録。

    僕はもう彼らのように将来への不安や過去の傷とも向かい合うほど若くはない。でも、だからこそ、彼らが作中で気づき、前を向いて生きていこうとする姿に強く心を動かされる。

    一人であることと孤独であることは違う。人は誰しも人生において深い魂の交わりを感じることがある。その強さを感じることができるのは、人並み以上に感受性が高い若い時代だけなのだ。

    ぜひ20代の方に手に取っていただきたい名作である。

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    2013年11月21日
  • さいはての二人

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    今、ふたたび、鷺沢萠。

    と、いう、啓文堂書店さんのコピーに惹かれて。書店の働きかけで、絶版本を復刻するって、粋な試みだと思う。そして、このチョイス。痺れる。

    生きていたら、今をどんな風に書いたのかな。どんな風に苦しんだのだろう、彼女は。こんなにも才能があるのに。

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    2013年11月03日
  • 君はこの国を好きか(新潮文庫)

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    ネタバレ

    在日韓国人が日本人でもなく、韓国人そのものでもなく、自らのアイデンティティを把握しかねて悩みのうちにある様子が手に取るように分かりました。決して私達が差別をしようとしていなくても、本人たちにとっての純然たる祖国がないということだけでも大きな悲しみなのだということが良く分かりました。思わず惹きこまれ一気に読むことになりました。

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    2013年08月24日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    もしも自分が当事者なら、こんな別れ方はできないな。
    最後の一言が言えるぐらいに成長したいなって思える一作。

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    2013年07月14日
  • さいはての二人

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    結末を読んだら単純なことだったけど、この人は私だと思う気持ちはよくわかる。
    収録されている中では、さいはての二人が一番良かった。

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    2013年06月08日
  • F 落第生

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    40の足音を聞くようになった現在では、落ち着いて読むことができるけれど、若いときは本当に胸が痛くなるほど共感した。
    胸をかきむしられるような切なく辛い表現がなんともリアル。

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    2013年05月16日
  • 大統領のクリスマス・ツリー

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    なにかの評で「最後の一言のための作品」という言葉を聞いたが、正にそのための作品。
    恋愛について、家族について、と切り口はいくつもあるが年月を経ることとはどういうことかを丁寧に描いていてとても好い。

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    2013年03月13日
  • 海の鳥・空の魚

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    鷺沢萠さんの本、初めて読みました。
    読み始めてから読み終わるまでの間、自分だけ時間が止まっているように感じました。
    この本ほどに、短編集の良さを感じられた本は無いです。

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    2013年02月15日
  • 海の鳥・空の魚

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    男女が一緒にいれば、程度の差こそあれ、お互い相手に対して不満ーー不満と言うのでなければ、何か塵のようなのーーが溜まってくる。
    同感。

    天高くという短編が個人的には印象深かった。

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    2013年01月30日