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ナイーブな少年の感性をもちながら裸で大人の世界に一歩を踏みだす青年たちを、生き生きと爽やかに描く。表題作のほか、「果実の船を川に流して」(三島由紀夫賞候補作)を併せて収録。
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Posted by ブクログ
アイデンティティが確立しにくい時代と言われてます。実際〝自分は誰なんだろう?〟と思ってる人も多いんじゃないかなぁ。わたしはよく思います。 思うたびに、前はこうだったけど今は違うなー、とその時々で変わってるんじゃないかという感覚があります。たぶんそれでいいんだろうな。たぶん。 僕は、ホントは誰なんだ...続きを読むろうね? (葉桜の日) ふちの欠けたグラス (果実の舟を川に流して) あやふやな想いがあやふやのまま、 あやふやなさがはっきりとわかる。 なんだろう? 否定でも肯定でもない、 ただこのままでという、 わからなさ。 葉桜忌、4月11日に、 また思い返す、かも。
高校か大学1年の頃、妙に鷺沢先生の小説にはまった時期があった。 今となってはその理由がさっぱり思い出せないのだけれど、はっきりしているのは、多分、あの頃の私はこの話をよく理解できなかっただろうということだ。 年齢的には、あの頃の方が登場人物に近いはず。 けれど、生活するということ、生きるということを...続きを読むいまいち分かっていなかったあの頃には、この本にちりばめられた桜の花弁も、きれいごとでも格好のいい話でもない、普段なら気にも留めない人々の、気にもならない日々も、目に映らなかっただろう。 今の私はジョージの年も健次の年も超えている。 次は、誰の年になるのだろう。 その頃にもう一度読めば、また見えなかったものが見えてくるのかもしれない。
するする、と入っていけるんだけど、軽くないというか… 底辺の話だなと思います。この人の本、もっと読んでみたい。
「葉桜の日」と「果実の舟を川に流して」の二作。過去にどう向き合い、今をどう生きるか。二作に共通するテーマはこれだと僕は思った。「葉桜の日」では、自分の出生、いわば生まれ背負った宿命に対し、目をそむけながらも強気に生きる志賀さんが印象的だ。「果実〜」では、生きていく過程で生じたズレをどこかで引きずりな...続きを読むがらも、陽気に生きようとする人達がたくましい。僕は過去を割り切って生きれるほど強いタイプではないので(笑)、この作品には非常に考えさせられる部分が多かった。それにしても、若くしてこれほど素晴らしい小説をお書きになった鷺沢さんはやはりすごいと改めて感じた。ご冥福をお祈りしたい。
19歳のジョージ、44歳の滋賀さん、65歳のおじいの関係は、家族のような親戚のような不思議な距離感で魅力的。だけどそこには秘密が隠されていた。 桜が花から葉桜になるまでの数日間の物語。 明かされる秘密と死装束に拘るおじい。 真実でいきてなきゃ、どうすんのよ。 みんな、自分が誰かなんて判っちゃいね...続きを読むえよ。 人は皆、自分を偽りながら生きているのだろうか。 鷺沢萌さんの命日4月11日を葉桜忌という事を知った。もちろんこの「葉桜の日」に由来する。 若くして亡くなった鷺沢萌さんの、22歳の抑制的に綴られた青春小説。
非常に巧い小説だと思います。 自分は一体、誰なんだろう? そんな思いを抱えながら生きてきたジョージ。 彼が自分の出生の秘密、志賀さんの秘密を知った後、本来ならば、ようやく自分が誰だったのか分かるはずなのに。 自分が余計分からなくなってしまうジョージが繊細に描かれていて、 「僕...続きを読むはホントは、誰なんだろうね?」 彼のこの一言が非常に鮮烈で染みました。 大人への反抗心をむき出しにするわけではなく、若さを生き生きと描く、秀逸な作品。 これを二十代前半で書いたというのだから、本当に鷺沢さんには舌を巻いてしまいます。 天才っているのねー。
言っても仕方ないこと、考えても仕方ないことは、生きていれば山ほどある。自分は何者なのか。若者特有の青臭い考えは葉桜のむせる若葉の季節によく似合う。 焦りや苛立ちを書かせたらピカイチの鷺沢萠が切り取る世界は、地続きで、バーのカウンターでたまたま隣り合わせた他人の身の上話に似た雰囲気がある。 当事者...続きを読むなのにどこか他人事。どうしようもない日々を生きていて、何が悪い。
2作品入っている。 世間の暗い部分を切なく盛り込ませながら、それでも悲観的になりすぎていない部分に味がある。 私は、後半の「果実の船を川に流して」の方が好きだったが、前半の「葉桜の日」の「僕は、誰なんだ」と言うフレーズが非常に印象的だった。
いいですねー。この人前、何読んだんだっけ。 割と昔の人なのに、時代も若さも性別も感じさせない、いい作家。
すごいなぁ。20歳や21歳で書いたとはとても思えない。10代で作家デビューして大きな賞を受賞する作家は今も昔もいるけれど、(読んでもいないのに言ってしまえば)著者の行動半径の5キロメートル以内位のよしなしごとを描いているものが多いと思う。社会の何がしかについてその著者の目線で描いたものが作品な訳だか...続きを読むら、作品の内容が若々しくなるのはいわば当然のことなのだ。収録された2作品は、文庫解説の山田太一さんが原田宗典さんの言葉を引用して「肩の力が抜けている」と言わしめる、あるいみ「ろうたけた」風合いも感じられるほど。近年の作品の方がよっぽど若々しいかも。「ビューティフル・ネーム」や「ウェルカム・ホーム!」の根っこはデビュー当時から連綿と続いていたのですね。表題作「葉桜の日」は桜が六部咲きの頃から葉桜になるまでの数週間に主人公の身の回りに起こったことを綴った作品。主人公の青年はジョージと呼ばれながら“志賀さん”に育てられた両親のいない青年。“志賀さん”の秘書役だった明美さんの結婚式の帰り道から物語ははじまり、おじい、ロクさんと巡って、ジョージが自分の過去をなぞっていく話になり、葉桜の日に唐突に物語りは終わる。もう一編収録された「果実の舟を川に流して」は、横浜らしき町のバーに勤める健二とママ、そして常連の客たちを描く中で、ママの過去に触れる話。「私は誰?」「普通って何?」と問いかけながら「…人の生きていく方法や道はさまざまで、どれが最高ということはない。ただ、自分のめいっぱいに真実(ほんとう)で生きていればいい」というメッセージは最後の作品まで貫かれていたんだなぁ。
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