ブックライブの書店員おすすめレビュー

すべて のおすすめレビュー

  • ブックライブ書店員

    舞台は中国・春秋戦国時代。戦乱の世を終わらせ、中国を統一するという目的を掲げる政(後の始皇帝)と、低い身分でありながらも、大将軍になるという野望を胸に邁進する信の物語。
    主人公が己の才覚のみを駆使し、底辺からのし上がっていくという、成長ドラマ的な面白さはもちろん、本作の一番の魅力は、個性的すぎる登場人物にあります。まず、どの人物もみんな「濃い」! 勧善懲悪などありえない戦乱の世だからこそ、誰もが己の信じる道を目指そうとします。熱い魂を秘めているという意味では、敵も味方もみな同じ。徹底して「人間」を描いているからこそ、彼らの生や死がリアルな実感を伴って胸に迫ります。
    また、迫力ある戦闘シーンや、ピンチからの逆転劇など、単純にわくわくするシーンも盛りだくさん。テレビ番組「アメトーーク!」の「キングダム芸人」でも取り上げられ、ますます熱い盛り上がりを見せる。

    2022年07月20日
  • ある日、主人公・宇佐美 九(うさみ きゅう)の家にロボットの少女・いちこがやってきます。
    いちこは見た目は人間そっくりですが、心はまだ未完成。そのためホストファミリーと一緒に暮らしながら勉強をするというのです。
    同い年くらいな少女な見た目のいちこに戸惑う九。
    いちこの“心のプログラム”の完成は彼が高校卒業する頃。それまでいちこと一緒に過ごすことになるのですが…。

    物語は九が小学生時点からスタートします。
    いちこが現れたことで、九と九に思いを寄せる幼なじみ・愛の関係に変化が起きます。
    愛はそれまで九の一番近くにいる存在であったのに、いちこにその場を奪われてしまったことで心が揺れるようになるのです。
    中学生編では、それぞれが思春期に向かい自分の気持ちの変化に戸惑う姿が描かれるのですが…。

    いちこはロボット。そのため心もプログラムでしかない…と周りは思っています。
    もちろん九も最初はそう思っているのですが、いちこの天真爛漫さや優しさに次第に思いが変化していきます。
    それを間近で見ている愛は気が気ではありません。
    九といちこと愛の三角関係がどうなっていくのか…。
    自分に素直になれない感じや、あえて気持ちと反対の行動をとってしまう…など、思春期特有の行動にエモさが溢れています。

    描くのは中村ひなた先生。
    繊細な線にふんわりとした絵柄で画面から優しさが溢れ出ています。
    そして…いちこと愛がとにかく可愛いのです!!
    いちこのはにかむ笑顔や愛の複雑な気持ちが表れた表情など…あまりの可愛さにジタバタしてしまいます。

    1コマ1コマじっくりと味わいながら読みたくなる今作。
    少しずつ育っていく各キャラクターの心を感じてください。

    2022年07月20日
  • 舞台ははるか昔、古の北祇の国の後宮。
    主人公はジト目ギザ歯でぼっちの王花鈴(おう かりん)。
    彼女の父親は超絶美形で拷問・暗殺は当たり前な残虐非道の極悪文官・王皓(おうこう)だったのです。
    後宮の宮女見習いとして入った花鈴ですが、父の悪名が高すぎて、誰もが恐れ近寄ってきません。
    そんな状況にもめげず後宮で友達を作ろうと頑張りますが、事態は思わぬ方向に進み…!?

    友達が欲しいだけの花鈴。それなのに謀略家の父の印象が強すぎて花鈴も諜報・謀略をしていると誤解をされ、誰も花鈴の話を聞こうとしません。
    花鈴が良かれと思ってやることが、逆に怯えられる結果になるのが不憫に感じます。
    それでもめげない花鈴の姿は、ちょっと滑稽でありながらも応援したくなります。

    この物語はそんな花鈴の頑張りを面白おかしく描くのかと思いきや、それだけでは終わりません。
    舞台は陰謀渦巻く後宮…。とある事件が起きるのです。
    後宮の人員の顔を一通り記憶していた花鈴は、ふとした違和感に気付き皇帝暗殺の間者に気付きます。
    父から暗殺の英才教育を受けてきた彼女は見事間者を退治してしまうのです。

    また病弱の少年皇帝・暁星との運命的な出会いによって、花鈴の気持ちが変化します。
    「めげない、あきらめない」の強い心で友達はできるのか!?
    そして、陰謀渦巻く後宮で皇帝を守り切ることができるのか!?

    後宮を舞台にした作品は人気が高く作品も多くありますが、その中でもドキドキハラハラできる注目の作品です!
    ミステリー要素を含んだ作品となっていますので、『薬屋のひとりごと』がお好きな方に是非読んでいただきたい作品です。

    2022年07月20日
  • おじさま好き必見!オノ・ナツメ先生が描く大人の恋の物語。

    とある山奥で定年後の田舎暮らしを楽しむ、4人の男。
    お人よしの「大将」、プレイボーイの「キザ」、ワイルドな山男の「ドク」、無口な「教授」。
    彼らは畑を耕したりりんごを収穫し、ゆったりと自分たちのペースで自給自足の生活を送っています。
    正に都会でせわしなく働く人たちが憧れる「スローライフ」。
    そんな「男の楽園」に謎めいた美女が訪れます。
    男たちはしだいに彼女に惹かれていきますが…。
    平均年齢70歳の男女が織りなす、大人の恋と豊かな人生の物語です。

    『ACCA13区監察課』で複雑に絡み合う関係性を描き、『リストランテ・パラディーゾ』で魅力的な老紳士を描いたオノ・ナツメ先生。
    今作でもそれはそれは魅力的なおじさまたちが登場します。
    世俗と距離をとりながらも厭世している訳ではなく、人間らしさがあるチャーミングな男性たち。
    おじさま好きにはたまりません!!
    彼らの適度な距離感を保った友情も魅力的です。

    そんな彼らの手作り石窯で作る自家製パンや自家製野菜のサラダが並ぶ朝食、庭先で食べるBBQなど、魅力的なスローライフ生活が描かれており、自分もお邪魔してみたい!と思ってしまいます。
    ですがそんな彼らの中に突然現れる美女。
    「お嬢」とあだ名を付けられ彼らと共に生活を始めますが、男性陣に対する彼女の言動は何やら思わせぶりで…。
    読み進める内、思わず頭に思い浮かんだのは、グループ内で複数の色恋沙汰を起こす女性メンバー「サークルクラッシャー」。
    酸いも甘いも経験してきたハズのおじさま達。
    突然現れた年下女性に翻弄されてしまうのでしょうか。

    彼女によって、4人の男性陣の関係が変化してしまうのではないかとハラハラしっぱなしです!!

    2022年07月20日
  • 生きづらさがテーマの物語と思って読むと、予想を裏切られる展開に…!!

    主人公は、毎日生きづらさに絶望している諫早依知(いさはや いち)。
    ある日彼女の前に同級生を名乗る正木蒔人(まさき まくひと)が学生時代のお礼を言いに現れます。
    ですが依知には全く心当たりがなく…。

    女性ならではの生きづらさエピソードとして、仕事でインタビューをした男性の映画監督と上映会で再会した際、一緒にいた蒔人が依知と同じことを言っているにも関わらず反応が全く違っていたり、依知に対しては服装のことしか覚えてもらっていなかったというものがあります。
    その他にも女性にとって“あたりまえ”となっている“生きづらさ”で依知は少しずつダメージを負っていきます。
    マイペースな蒔人に対しイライラをぶつけてしまう依知ですが、彼も生きづらさを抱えている人だったのです。

    女性としての生きづらさと戦っている依知や、イレギュラーな事態に弱い蒔人など、多様性が叫ばれる現代にマッチしているキャラクター達に注目いただきたいですが、そんな生きづらさを感じている人たちのライフスタイルマンガと思って読み進めると衝撃の展開が待ち受けています。

    ラブストーリー・お仕事マンガ・トレンディな物語・ミステリと、色々な切り口から楽しめる作品です。

    2022年07月20日
  • 『東京喰種トーキョーグール』の石田スイ先生最新作!!才能はギフトか呪いか…。

    1998年、「超人」と呼ばれる特殊能力を持った人間の増加により混乱をきわめた 世界国家が「自治県」に分断されてからはや50年がすぎた世界。

    高校生の黒原トキオと東アヅマは困っている人を助けるヒーローのような活動をしていました。
    ある日、二人は以前退治した不良に報復を受けますが、なんとその不良は謎の注射によって超人となっていたのです。
    追いつめられたアヅマとトキオは、拾った謎の注射をお互いに投与します。
    薬の効果で超人となったトキオは不良を撃退しますが…アヅマは変化せず人間のままでした。
    鳥の超人になってしまったトキオは超人達の戦いに巻き込まれていきますが…

    前作『東京喰種トーキョーグール』から3年の期間を経て、石田スイ先生待望の新作です!
    物語全体にただようダークさが今後激化する戦いを予感させますが、端々にコミカルさが散りばめられてあり、先へ先へと読み進めたくなります。
    またバトルシーンやキャラクターの心情が大きなコマで表現されており、とにかく迫力が凄いところにも注目していただきたいです。

    物語の中核となる超人の才能。
    才能が開花するのは素晴らしいことで、超人的能力を得ることでプラスになることがあるかもしれません。
    ですが、物語の中には才能が開花したことで夢を諦めることになったキャラクターが登場したり、必ずしも喜ばしいことではないと描かれます。
    超人の才能は天からのギフトなのか、それとも呪いなのか…。

    (今のところ)超人にはなっていないアヅマが今後どう関わってくるのか気になるところですが、今まで自分の人生に無責任に生きてきたトキオが今後どう変化していくのか…注目です!!

    2022年07月20日
  • サスペンスマンガ好きにオススメしたいノワールサスペンス、開幕!!

    物語は自称エリート刑事・冴木仁(さえき じん)が窃盗の通報を受け訪れた豪邸で、地下室に監禁され餓死した子供たちの遺体13体をみつけることから始まります。

    屋敷の中にあるのは贋作の絵に造花など、偽物だけ。
    そんな豪邸の持ち主は灰川十三(はいかわ じゅうぞう)という男ですが、現在は行方不明。
    警察は灰川が犯人とみて全国指名手配します。
    すると、そのニュースを見て灰川の娘と名乗る女性が現れます。
    彼女の話では、灰川は育児放棄や虐待を受けている子供たちに生きる術を教え、一緒に生活をしてくれる良き父代わりであったので犯人なはずがないと言うのです。
    彼女以外にも灰川が育てていた19人の子供たちの内5人が生きていることがわかり、(収監されている1人を除き)各々に事情聴取するもその子供たち全員「灰川十三は犯人ではありません」と言います。

    事件を調べていく内に発覚する様々な事象に、冴木は子供たちを殺したのは本当に灰川なのか解らなくなっていきます。

    描くのは『親愛なる僕へ殺意をこめて』の井龍一先生と伊藤翔太先生のコンビ!!
    前作に続き、今回も極上のサスペンスとなっております。
    マンガでありながら、まるで映画を見ているかのようなシーン展開になっており、物語を俯瞰の視点で見せつつも登場キャラクターの視点を織り交ぜることで、グイグイと物語に惹きこまれます。

    屋敷にあった調度品も偽物、住人達も偽物の家族ということで、今のところ全て“偽物”で成り立っている第一容疑者の灰川。一体何が“本物”なのか…。
    物語が進むほど謎が謎を呼ぶノワールサスペンスとなっており、今後の展開が気になって仕方ありません。

    2022年07月20日
  • 人を魅了し、メロメロにしてしまう存在、猫!!
    そんな猫達が人間の社会に進出してきた世界の物語です。
    全8編の物語で構成されているオムニバスの物語ですが、どの物語も不思議な世界観で惹きこまれていきます。

    中でも注目したのが3話目の「シャパリュ」という物語です。
    人であるマオが猫社長リチャードの会社を取材した際に「猫ならでは」の部分を探してしまうのに対し、リチャードは“人”だから“猫”だからではなくそれぞれに最適でストレスフリーな雇用環境を模索していると伝えるのです。
    それは現代の多様性について示唆しているのではないでしょうか。
    “猫”と“人”という種族の違いとして描きながらも、猫だから特別なことをするのではなく、それぞれが違うことを認識し、個を尊重することが大切であると教えてくれます。

    可愛い猫と人とのほのぼのストーリーかと思いきや、社会問題に鋭く切り込んでいたり、哲学的な要素が盛り込まれていたりと奥深い作品となっています。
    是非この奥深さをじっくりと味わってみてください!

    2022年07月20日
  • 「男子のみ」で構成される伝統の歌劇団、吉祥寺少年歌劇。
    そこへ入団するために付属の音楽学校へ入学した進藤瑞穂(しんどう みずほ)は男役になることを目指していたのですが、娘役と判定されショックを受けます。
    ですがライバルであり仲間でもある同期や先輩達の言葉によって、自分の道を見つけ夢の舞台を目指すのです!!

    主人公の瑞穂は男役に憧れ入学したにも関わらず適正面談で娘役と判定されます。
    逆に同期のサワは娘役に憧れていましたが、その体格から娘役を諦め男役を目指します。
    ふたりはそれぞれ理想と現実の狭間で揺れ動き、どう心に折り合いをつければよいのだろうと苦しむのです。
    そんなふたりに対し先生は
    「骨や筋肉や肌質や…身長は理想通りには備わらないことの方が多いものです」
    と話し、だからこそ自分の素質を美しく磨いていくことが大切であると伝えます。

    歌舞伎の家に生まれながら音楽学校へ入学してきた白井寿(しらい ことぶき)。
    娘役を嫌がる瑞穂に「そんなことならやめてしまえ」と言ったり、実力も才能もあり何もかもが完璧と思われていましたが、そんな彼もまた立ちはだかる壁の大きさに打ちのめされるのです。

    どのキャラクターもそれぞれの物語が丁寧に描かれており、様々な想いを抱きながら舞台に上がることを目指し壁にぶつかり苦しむ姿はとてもリアルで心が震えました。
    本当に吉祥寺少年歌劇が存在しているのでは!?とすら思えてきます。

    こちら1巻完結となっておりますが、もっと読みたい!!と思わずにはいられません。

    2022年07月20日
  • 毎日淡々とした作業をこなすことを至福の喜びとしている柳(やなぎ)。
    ある日、高校時代からあこがれの同級生いちかと再会します。
    いちかは今放送中のリアリティーショーに出演している若手女優。
    柳はいちかの性格的に向いていないからあの番組に出るのはやめたほうがいいと言いますが、いちかはそんな柳に対し寂しげな笑顔を向け去っていきます。
    数日後、いちかが自殺したというニュースが流れ、柳は自分が助けられたのではないかという思いに駆られます。

    柳はショックで目の前が真っ暗になり…次に気が付いた時には、死んだはずのいちかの姿に!!
    なんと半年前に戻っており、いちかと柳の身体と中身が入れ替わっていたのです。
    眩しいくらいに憧れの存在だったいちかと、冴えない人生を歩んでいた柳との人生が交差したのでした。
    柳はいちかとしてリアリティーショーに参加し彼女が死なずに済む世界を目指しますが、一方何も知らないいちかは柳の体で予想外の展開に巻き込まれていきます…。

    描くのは『ぼくらのへんたい』『愛と呪い』などの、性や毒親といった重いテーマを可愛らしい絵柄で描いてきた、ふみふみこ先生。
    今作では今までのふわっとした絵柄とは違うタッチで描かれており、ふみ先生の表現の幅広さに驚かされます。

    タイムリープのタイミングから事件のあった半年の間にいちかの身に何があったのかを柳が追体験していくのですが、彼がどのように状況を乗り越えていくのか…。
    柳といちかが入れ替わったことで、どのような変化が起きるのか…。
    先の展開が全く読めません!!

    何故いちかは自殺をしてしまったのか?という謎を中心に社会問題にもなったリアリティーショーの闇を描きつつ、入れ替わった柳といちか二人が送る人生自体も“リアリティーショー”となっている、入れ子構造にも注目していただきたいです。

    2022年07月20日
  • 格差が広がる一方の社会で、“CEOと一般従業員の年収格差が千倍以上の世界的企業に対し、3年間の内に差を200倍未満にせよ”と声を挙げる謎のテロ集団が現れます。
    3年後、彼らは世界トップ企業のCEOを次々と襲っていきます。
    彼らは一体何者なのか…?

    テロ集団が掲げるスローガンに思わず、格差が少しでもなくなるなら…と共感しそうになる冒頭でがっちり心を掴まれました。

    主人公の石井大良(いしい たいら)は、幼少の頃何者かによって父親を目の前で殺されるという過去を持つ刑事です。
    彼は一度見ただけで人の顔と名前を覚えられるという特技がありました。
    そんな彼がたまたま見ていた東京のロケット発表会で発生した爆発事件中継に、父親を殺害した犯人の姿が映っていたのです。

    男の正体を探るべく調査に乗り出す大良ですが、その男がイベント会社に勤める佐藤と名乗る人物であるとわかったものの、名前も住所も全てが嘘であったことを知ります。
    更に証拠として押収していた動画の一部が消されていたことが発覚し…。
    なんとか跡を掴んだと思った途端するりと真実が指の間をすり抜けていく。そんな感覚になります。
    誰が敵で誰を信用してよいのか…読む側も大良同様に先が読めないまま振り回されてゆきます。
    大良はわずかな手掛かりをかき集め、少しずつ繋がっている部分を辿り男の正体を見つけ出すことができるのでしょうか。

    今作は『リウーを待ちながら』や『インハンド』で医療サスペンスを描いた朱戸アオ先生の新作です。
    朱戸先生は、「現実に起こり得そう、でも実際に起きたらとても絶望的…!!」というクライムサスペンスマンガの第一人者です。

    今回も“何かが起きている!でも何が起きているのかは解らない。”そんな漠然とした状況に、空恐ろしくなります。

    今はまだ気付いていないかもしれませんが、同じような危険がすぐ傍で蠢いているかも…。
    実際に起こり得るかもしれないという恐怖心がべっとりと張り付いて離れません。

    2022年07月20日
  • 夫と死別したうみ子。
    ぽっかり空いた心を持て余す日々を過ごしていましたが、ある日訪れた映画館で映像専攻の美大生・海(カイ)と運命的な出会いをします。
    海から「映画を作りたい側の人間ではないのか」と言われ、ハっとするうみ子。
    更に、興味本位で訪れた美大のオープンキャンパスで海の映像作品を見たことで、制作意欲が沸き上がります。
    戸惑いながらも新しい一歩を踏み出したうみ子の先に待ち受けているものとは…。

    誰しも新しい環境に踏み出すには勇気がいります。
    若気の至りで踏み出せることもあるかもしれませんが、年齢を重ねれば重ねるほど多角的に物事を考えリスクを回避したくなり、踏み出すことを躊躇してしまう人も多くなるのではないでしょうか。
    それなのに65歳を過ぎ美大生になったうみ子の行動力は、読む人に勇気を与えてくれます。

    作中のセリフで
    「作る人と作らない人の境界線てなんだろう
    船を出すかどうか…だと思う
    その船が最初からクルーザーの人もイカダの人もいて
    誰でも船は出せる」
    というのがあります。

    作中、タイミングが訪れた表現として、うみ子の足元に波が押し寄せる描写があるのですが、“船を出す”というセリフに結び付く重要なキーとなっています。
    瞬間的意欲というのは誰しも感じることがありますが、そこから先に進むかどうかはとても難しい。
    セリフの通り船を出せる状況でも、天候が悪いから、海図が読めないから、船の性能に不安があるから…など、色々な理由をつくりがち。
    それでも漕ぎ出しさえすれば海に出ることができるのだと、うみ子さんが体現してくれています。
    どのタイミングで波が現れるのか、是非注目してください。

    また、晴れて大学生となったうみ子ですが、若者からの悪意ない高齢者扱いに気が引けてしまい自信を持つことができません。
    うみ子は、映画を撮ろうとする姿勢を学生から「老後の趣味の自由時間」と言われてしまい、モヤりつつもついつい自分のことを茶化してしまいます。
    ですがその後、海との会話で何気ない一言が取り返せない後悔になることを思い出すのです。
    真剣に取り組むのが何故か気恥ずかしくなり、自分を茶化してしまうことは年齢を問わずあるのではないでしょうか。
    そういった少しずつ摩耗していく日常にうみ子はどう立ち向かっていくのか、うみ子がどういった映画を撮るのか…続きが楽しみです!

    うみ子を見ていると、自分もまだ何かできるような気になります。
    新しい環境に踏み出す勇気をくれる作品です。

    2022年07月20日
  • 主人公のあかりは、2.5次元アイドル好きの隠れオタク。
    同じカフェのキッチン担当でコワモテ男子の恩田も、同じく2.5次元アイドル愛するオタク男子です。
    一緒に推し活をする仲ですが、ある日恩田から「好きなんだけど」と告白をされます。
    青天の霹靂の告白にとまどうあかりですが、恩田の普段と違う優しさにギャップ萌えが発動!!
    恩田のことを推せるのでは!?と気づくのです。
    その感情は一体何なのか解らないあかりですが、お試しでつき合うことに!!

    恥ずかしながら私、ギャップ萌え属性があるので、普段はぶっきらぼうな恩田が、推しを前にすると乙女モードになる姿にキュンキュンします!
    更に、恩田があかりに対してデレた姿は、見てはいけないものを見てしまったような…そっと宝箱にしまっておきたいような、そんな極上のキュンを感じます。
    あかりはそんな恩田の“デレ”に対し、“個別のファンサ(ファンサ=ファンサービスの略)をもらったようなときめき”と表現していますが、この表現がオタク心理を上手く表現しており、作者の青井みと先生流石です…!!と言わざるを得ません。

    推し活と恋愛イベントのバランスに戸惑いながらも、あかりと恩田が彼氏・彼女の関係を築こうとする姿には尊さを感じます。

    果たして、萌えは恋愛に発展するのでしょうか!?
    ふたりの今後に注目です!!

    2022年07月20日
  • 主人公は同級生のクールな琉生と人懐っこい伊吹でBL妄想にいそしむ、隠れ腐女子の本田日和。
    琉生は日和にとって“推し”だったハズですが、彼のさりげない優しさに触れる内にいつの間にか“推し”から恋愛対象に変化していきます。

    それでもBL妄想を止めることができない日和はSNSに琉生と伊吹のBLをマンガにしてUPしてしまいます。
    流石によくないと思い直し削除しようとした矢先、琉生にマンガがバレてしまいます。
    イイネを稼ぐためにUPしたと勘違いし怒った琉生は、日和に「俺の言うことを聞け」と脅すのですが…。

    脅されたにも関わらず琉生の要求に舞い上がってしまう日和。
    嫌がらせをしつつも、そこはかとなく日和への想いを伺わせる琉生。
    ふたりの想いの微妙なすれ違いにじれキュンが大暴走します!!

    佐倉チカコ先生が描くキャラの目の表情にも注目していただきたいです。
    会話の中でバツが悪そうにする琉生の目線の外し方や日和のやるせない感情を含んだ目の描き方には尊さを感じます。

    タイトルにある通り、ふたりの関係性はスロースタートかもしれませんが、気持ち的にはジェットコースターです!!
    推しとの恋がこの先どうなってしまうのか…。
    キラキラした世界に是非ひたってください!!

    2022年07月20日
  • 好きな男性のタイプは俳優 高倉健な幽霊肯定派の女子校生・綾瀬桃と、同級生の怪奇現象オタク・オカルン(本名 高倉健)。
    互いに否定するUFOと怪異を信じさせるため、桃はUFOスポットの病院廃墟へ、オカルンは心霊スポットのトンネルへ行くことに。
    なんとそこで桃は宇宙人と、オカルンは心霊のターボばばあと遭遇!!
    宇宙人に襲われ必死になった桃は超能力を開花!そして、オカルンは…ターボばばあに呪われてしまい…。

    ジャンプ+で連載が開始されてすぐに注目された今作ですが、注目すべき3つのポイントがあります。

    1つ目は、画力と物語の勢いです!
    キャラの生き生きとした表情や迫力のあるアクションシーンなど絵の勢いが凄く、物語のテンポもよく、とにかく“マンガ力”が高くてびっくりしました。
    描いているのは龍幸伸先生。
    なんと『チェンソーマン』の藤本タツキ先生や『地獄楽』の賀来ゆうじ先生の下でアシスタントをされていたそうなので、納得の実力です。

    2つ目は、名作へのリスペクトです。
    セルポ星人の真の姿が『ウルトラマン』に登場するダダを彷彿としたり、ターボババアに呪われたオカルンが壁に激突するシーンでは大友克洋先生の『童夢』の名シーンを感じさせたりと、色々な作品のオマージュが散りばめられており、龍幸伸先生のリスペクト心が窺えます。

    3つ目は、桃とオカルンの人間性に注目いただきたいです。
    自分のことを育ててくれたお婆ちゃんの事が大好きな桃ですが、素直になれずに反発してしまった事を悔いていたり、友達ができないからこそ宇宙人となら友達になれるのでは…と思ったオカルンなど、思春期に抱く悩みや思いにまっすぐ向かっていく姿は等身大の少年・少女感があります。
    人間性から外れてしまいますが、太眉女子好きは必見です。桃の可愛さにハマること間違いなしです!

    1話目を読んだ時にアダルト要素が強いのかな?と思ったのですが、ご安心ください。
    少年マンガらしい展開でバランスのよいラブコメになっております。

    幽霊、都市伝説、UFO、超能力、バトルアクション…様々な要素を織り込み、化物VS化物という究極バトルを繰り広げながらも、しっかりとしたラブコメを描いている今作。
    今一番アツい『ダンダダン』の勢いに振り落とされないようにご注意ください!

    2022年07月20日
  • スピンオフマンガが増えている昨今、新たなスピンオフの金字塔マンガが登場しました!!
    主人公はバットマンシリーズで大人気ヴィラン・ジョーカー。
    「悪」の権化であるジョーカーがまさかの子育てに奔走します。
    育てるのは、ひょんなことから赤ちゃんになってしまったバットマン!!
    しかもワンオペ育児に追われ次第に“ヴィラン”としてのジョーカーではなく、“育児者・ジョーカー”に変化していく様は、育児の大変さをコミカルに描きながらも哀愁を感じます。

    ジョーカーといえば、映画「バットマン」「ダークナイト」「スーサイド・スクワッド」「ジョーカー」などで様々な俳優さんが演じられているキャラクターです。
    今作のジョーカーはそれらの作品の要素を織り交ぜた独自のジョーカーとなっております。
    映画のパロディシーンもふんだんに盛り込まれておりますので、映画を見たことがある方はどの作品のシーンかを考えながら読むのも面白いのではないでしょうか。
    (もちろん今作を読んだ後に、バットマンシリーズの映画を見ても楽しいと思います!)

    バットマンシリーズを見たことがない方も、普段は白塗りピエロの格好をした悪役が育児に追われ悪役メイクをする時間がない…など、子育てに奔走する姿には思わず笑ってしまうことでしょう。

    仕事(銀行強盗)をするためには赤ちゃんを保育園に預けないといけないのに、保育園の申し込みが全落ちしたシーンなど思わず笑ってしまうものの、現代の保育園事情のリアルさに真顔に戻ってしまうのは私だけではないはず!
    ギャグでありながら社会派要素の織り込まれ方は秀逸です!

    新たな育児マンガとして楽しむもよし、
    新たなバットマンスピンオフマンガとして楽しむもよし、
    新たなギャグマンガとして楽しむもよし。
    色々な楽しみ方ができる作品です!
    未だかつてないジョーカーを堪能してください。

    2022年07月20日
  • 舞台は「アミガサ」という世界政府によって人類が支配・管理されている、ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』を彷彿とさせるディストピアな世界。
    人々は限られたエリアで決められた食事を与えられ、行動や思想を制限され、感情すらも制御される中、主人公のダンテだけが異質でした。

    失読症なこともあってか、彼は周りのように同一の行動・同一の思想に染まることがありませんでした。
    「危険思想」とみなされるダンテの行動でしたが、身体的能力の高さと失読症であるが故に見逃され処刑されることはなく厳罰で済んだのです。

    D-18という領域でしか生きたことのないダンテは、ある日領域外に出て反乱組織「エーテル」を撃滅するという極秘任務に配属されます。
    初めてエリア外に出るのでワクワクするダンテですが、待ち受けていたのは菌類に覆われた世界でした。
    ほぼ部隊が全滅する中、ひとりだけ生き延びたダンテは女性区から来た「エーテル」一派の少女アオイと出会います。
    彼女の
    「自由な考えも会話も許されないなんてどう考えてもおかしいじゃない!」
    という一言でダンテは自分の今までの違和感の理由を知ります。

    彼女との再会を誓いエリアに戻るダンテでしたが、彼の帰還はアミガサにとっては予定外の出来事でした。
    拷問を受けるダンテを待ち受けていたのは、「脳菌糸」を寄生させるというものでした。
    なんとアミガサタケを脳に寄生させることで自由を奪い、思考を奪い、菌類は徹底した管理社会を築き上げていたのです。

    通常なら思考を奪われるハズのダンテでしたが、奇跡的に支配を免れることに成功します。
    更に脳のアミガサと金属を合成させるメタルカプセルを取り込むことで「エーテル」の戦士となったダンテ。
    予定調和の世界で、異分子として覚醒します。
    彼はこの世界で誰にも支配されることなく、世界を変えることができるのでしょうか。

    作品内容紹介に
    『進撃の巨人』諫山創が惚れ込んだ、新たなる"絶望"と"抵抗"の物語。
    とありますが、先が見通せない物語設定に、少々粗さがある絵柄とコマ展開など、確かに『進撃の巨人』がはじまった当初を彷彿とさせます。

    菌類がどうして人間を支配するに至ったのか、アミガサの目的とは?
    更に菌類に対して鉄の力でどう人間は立ち向かうのか。
    まだまだ謎が多い今作、今後それらの謎が徐々に紐解かれていくのではないかと期待しています。

    “絶望”からはじまる物語は未だに注目度が高いジャンルです。
    絶望からはじまるからこそ、そこからの成長が引き立ち、生きる意味・立ち向かう尊さを感じられるのだと思います。
    この作品が新たな“絶望スタートの物語”の柱となってくれるのではないでしょうか。

    2022年07月20日
  • 舞台は琉球を彷彿とさせる島々からなる王国、龍宮。
    王によって滅ぼされた古来から住まう巫女の民“ルカ”の生き残りであるオトは、女であることを隠し一族の怨みを晴らすために第一王女の暗殺を企てます。
    しかし、忍び込んだ先にいたのは王女ではなくアスと名乗る替え玉の男だったのです。

    オトは人の嘘がわかるという能力を持っていました。
    暗殺は未遂に終り捕らえられたオトですが、自分が殺そうとしたアスによって助けられます。
    そして、アスや従者たちの嘘を繋ぎ、驚愕の真実を知るのです。

    それは、王女は女ではなく、アス自身が王女であるということでした。

    オトの能力に有益さを見出したアスは、頻発する王女暗殺未遂の犯人探しをさせるために手元に置くことにします。
    更に、アスはオトに「結婚しないか?」とまで持ち掛け…。

    王族に怨みがあるオトはどうしても王族であるアスのことを許すことができないのですが、アスの優しさに触れ次第に心が揺らいでいきます。
    嘘が見抜けるからこそ、彼の本心に気付いてしまったのです…。

    アスとオトは女装の男子と男装の女子という組み合わせですが、ジェンダーレスなキャラクターが登場する物語は最近のトレンドと言えます。
    更に宮廷・陰謀論・偽装結婚といった要素がテンポよく織り込まれており、極上の物語になっています。

    描くのは、『大正ロマンチカ』『初恋ダブルエッジ』『花はどっちだ?』の小田原みづえ先生。
    どのキャラクターも生き生きとしており、心の機微が丁寧に描かれているのは「流石、小田原先生!!」と言いたくなります。

    1巻はアスが女装をし王女として生きる理由や、“ルカ”が狙われる理由など、ドラマチックな展開が続き、一気に読み進めてしまいます。

    宮廷・後宮ファンタジーが人気の昨今ですが、新たな宮廷ファンタジーの誕生と言えるのではないでしょうか。

    2022年07月20日
  • 強迫性障害による潔癖症のため5年間引きこもり生活をしていた主人公の黒田公正。
    そんな彼の前に車椅子姿のピアカウンセラー足立歩が訪れます。

    ※ピアカウンセラーとは、似たような境遇にある者同士が対等な立場で行われるカウンセリングと、その実践者(作中より)

    足立は黒田にゲームをしようと誘いますが、車椅子に乗り手指も不自由な足立を見て「出来ないクセに」と思い断ります。
    足立はそんな黒田の思いを笑い飛ばし、見事に口でコントローラーを操作しゲームをプレイしてみせるのです。
    足立はプロのゲーマーであり、ゲームの中は自由であることを伝えるのです。

    肉体の接触がある現実世界は潔癖症である黒田にとって不快でしかありませんが、肉体を介さないコミュニケーションができるゲームの世界は快適な環境に思えたのです。
    ですが、黒田は思考がとにかくネガティブかつ極端。中々自分自身の現状を受け入れることができません。
    それでも障害者である足立と一緒にいることで、自分自身の考えの至らなさを実感し、更には足立のポジティブさに影響を受け、少しずつですが変化していくのです…。

    黒田のように、どうしても前向きになれず自分を卑下してしまう事は誰しも経験があるのではないでしょうか?
    そんな自分の姿を思い出してしまい、負のスパイラルに陥り身動きができなくなってしまう黒田の姿に苛立ちを感じつつも、なんとか脱して欲しいと願いながら読み進めてしまいました。

    編集者の方からのコメントで
    実際に障害を持ちながらゲームをする方にお話を聞いたり、障害者施設での、eスポーツを取り入れたリハビリなどを取材するなど、リアリティには拘っている。
    とありましたが、eスポーツについての解説もあり、ゲームを全くやったことがない方でも楽しめる熱いヒューマンドラマです!

    黒田が今後どんな成長を遂げるのか注目です!!

    2022年07月20日
  • 絶賛青春中の方も、青春を通り過ぎてしまった…と感じる方も、読めば胸のトキメキを感じること間違いなしです!

    17歳の水帆(みずほ)には同じ住宅地で育った仲良しのイケメン幼馴染4人がいます。
    ですが彼らはずっと近くにいる存在のため兄弟のように感じています。
    水帆は周りが羨むような環境にも関わらず、自分にはキラキラ青春なんて関係ないと思う始末…。

    ですが、幼馴染のひとり、羽沢輝月(はざわ きづき)は、彼女からは弟としか見てもらえていないことにジレンマを感じ、水帆の誕生日会にキスをして彼氏になりたいことを伝えるのです。
    輝月のことをひとりの男として見てこなかった水帆は戸惑うばかり。

    このまま、水帆と輝月の関係で物語が進んでいくのかと思いきや、同じく幼馴染の和泉藍(いずみ あいる)、柏木深(かしわぎ しん)も何やら思わせぶりなシーンがあり…。

    イケメン幼馴染に囲まれるという憧れのシチュエーション、しかもどの男子も爽やか好青年で水帆に優しいという夢のような設定!!
    ドキドキしない訳がありません!!

    雑誌『なかよし』で連載されている作品ですが、大人も楽しめる物語となっています。
    描くのは『放課後、恋した。』や『あたし、キスした。』など、胸キュン青春ストーリーの名手・満井春香先生。
    様々なキュンシーンが散りばめられており「流石!!」の一言です。

    THE王道な少女マンガのラブストーリーのように思えますが、
    冒頭の、大人になった水帆がキラキラ眩しい高校生たちを見て
    「あのころは気づかなかった まぶしい青春がわたしにもあったこと」
    というモノローグが気になるところです。

    今後、水帆と幼馴染の関係がどう変化していくのか注目です!!

    2022年07月20日