楡周平のレビュー一覧
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楡周平『限界国家』双葉文庫。
20年後、30年後の日本社会の姿を浮き彫りにする未来予測小説。
少子高齢化、実質賃金の減少、物価高騰と二重苦三重苦に喘ぐ現代の日本社会。最近の人口統計を見ても、人口が増加したのは東京だけどいう深刻な状況。地方では過疎化が加速し、身近なところでは、小中学校の統廃合、バス路線の廃止、商業施設や飲食店の閉店が相次いでいる。かつて賑わいを見せた駅前などはシャッター通り商店街と化している。
地方で稼働していた大企業の工場も次々と閉鎖され、事業統合されている。技術開発の波に乗り切れず、様々な企業が事業を売却したり、縮小している。さらに急速な技術革新が様々な事業の廃業に拍車をかけている。もはや日本はものづくり大国ではないのだ。
こんな日本の悲惨な状況を作り出したのは一体誰なのか……
本作は非常に面白く、新たな気付きもあった。もはや日本社会には明るい未来は無く、これからはよりグローバルで物事を考えなければいけないのだろう。
ストーリーは至って単純である。日本のフィクサーの1人と言われる東洋総合研究所の会長職にある前嶋がロサンゼルス・コンサルティング・グループ(LAC)に20年後、30年後の日本社会を予測して欲しいと依頼する。
LACのシニア・パートナーの津山百合は入社3年目の若手社員の神戸恒昭と共に前嶋の依頼について調査、分析を行う。調査に行き詰まった津山は知人の伝手でベンチャー企業の若手経営者の根本と前嶋を引き合せる。NTFやメタバースの世界に新たなビジネスを見出す根本の語る日本社会の未来の姿とは……
楡周平は現在の岩手県一関市の出身である。つい数年前に一関駅の東口にある某企業の地方工場が閉鎖された。この工場は某企業の地方工場の第一号であり、地方工場同士の事業の奪い合いと地方工場の統廃合の結果で閉鎖されたのだ。本作にも描かれる岩手の地方都市とは一関市がモデルではないかと思った。
本体価格800円
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ネタバレSEIKOの創業者、服部金太郎の話。丁稚をしていた少年の頃から時計に興味を持ち、鉄道が各地を繋ぐようになれば時計は必須で、その時計で商いをすればという大きな志を持っていた。周りを、人々を観察する力が備わっていたのが素晴らしい。丁稚期間が終わり、時計店に修行に行くもその時計店がお金を返せず潰れたり、やっと自分の店を持てたのに大火で失ったり、その後出会った職人たちと精工舎を創業し大きくなったのに関東大震災で本店と工場を失ったりと苦労だらけだったのに驚いた。そしてそこから立ち上がり大きくなっていく力強さに感動した。
この本を読むと、時計を作る職人たちの誇りや懐中時計から腕時計を開発しようとする向上心がグッときて、今、デジタル時計やスマホの時計、スマートウォッチが目立ち、いわゆる長針と短針がリアルで動く時計が減ってきているのがもったいなく感じる。
今はどんなものにもあるアフターケアサービスを最初に始めたのが金太郎だったのには驚いた。 -
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コロナ禍に会社がフルリモートになり、釣りが大好きで週末は関東近郊の釣り場に通っていた主人公、晋作はこれを機に…とヒラメがよく釣れる噂を聞きつけ東北三陸の物件を探す。すると家具家電付き敷金礼金ナシ即日入居可でしかも家賃が激安のピッタリな物件がヒット。移住を決めるのだが、コロナ禍で都会から来た人間に対する風当たりは強く、また娯楽のない田舎あるあるなのか町民の噂話に振り回されたりと大変なこともしばしば起こる。そこで空き家問題に直面し、物件の大家である百香(市役所勤務で空き家問題を担当)と協力していくストーリー。
空き家問題に関しては、こんなに上手くいくのか?というところはもちろんある。だがしかし、上手く行ったらいいな…!!と晋作の頑張りを応援したくなる。
晋作が釣りと料理が趣味で、出てくる魚料理や山菜や野菜を作ったお酒のアテのおいしそうな描写がすごくよかった。
百香の過去がつらすぎて涙が出そうになるが、読み終わった後にはなぜサンセットが先なのか、タイトルの伏線も回収されて幸せな気持ちになる読後感。 -
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いろんな業界を取り上げて小説を書く楡周平さんが、流通業界を舞台に描いた作品。モデルはダイエーの故・中内功会長と言われている。
小説の主人公である塙太吉は、戦後の神戸の闇市で薬屋を営み、スーパー『誠実屋』を開業、飛躍的に急成長した店は全国展開をしていく…このストーリーはまさにダイエーそのものだ。
実際の小説の展開にも、いくつかダイエーで語り継がれている逸話と同じような話が描かれる。
・安売を続けるために、メーカーがつけた商品の製造番号を削り取る話。
・出店した地域の地元商店街との軋轢を生む話。
・◯円以上買う客に映画のタダ券をあげるという商法。
・新婚旅行を仕事のために早めに勝手に切り上げたこと。
・牛肉を安く売るために牧場までつくること。
・後継者に悩み、だんだんと商売に翳りが出てくること。
これらに加え、小説の塙会長はもっとドラマチックに、殺人事件の疑いをかけられたり、婚外子と対決したり…結局は脳内出血で倒れ、85歳で帰らぬ人となる。(中内会長は83歳で逝去)『砂の王宮』というタイトルがそもそも… -
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エリートサラリーマンが、大企業の娘と結婚したことで様々な波乱が巻き起こる。その会社には絶対的権力を持つ創業者の社長がいて、部下は全く逆らえない。
創業家の令嬢と結婚するための条件は、
1.婿養子になること。
2.会社の後継者には直系の娘がなり、自分はなれないこと。
3.生まれた子供は創業者夫婦に養子縁組すること。
4.財産は引き継げないこと。
というもの。
主人公は仕方なく条件を飲み結婚し、2億のマンションを義親よりプレゼントされ、会社の役員に就任し、順風満帆な生活が始まったと思われたが…
・毎晩奥さんが丹精込めた手料理が食卓に並ぶ→良き子種を得るため種馬にいいエサを与える。
・何でも創業者の言う通りで一切の口答えもできない。→発していい言葉は『仰せの通りでございます』のみ。
・子供の命名をし、生まれたその日に養子縁組の手続き→自分の子供だという実感も生まれない。
子どもが生まれるや否や創業者に古くから仕えている番頭の画策にあい、不祥事の責任を取らされ、あえなく離婚…
ジェットコースターのような結婚生活であり、自分が最初から『種馬』の扱いだったことがわかり、そこから彼の逆襲がはじまる…
話自体は面白く最後まで飽きなかった。 -
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『サンセット・サンライズ』
楡 周平さん 初めまして
「脚本がクドカン(宮藤官九郎)で
主演が菅田将暉?
面白いに決まってんじゃん!」
これは、娘との会話です
娘と映画を観るんなら (約束してないけど…)
サッと予習しとかなきゃ……読み始めました。
すっごく おもしろかったです。
お星さま ☆たくさん付けちゃいます☆
主人公は大手電気機器メーカー・シンバルの東京支社に勤務する 西尾晋作さん。
コロナ禍が猛威を振るい始めたなか、会社が
テレワークを導入することに…。
釣りが大好き 西尾さんは 隙間時間に
釣りができるよう居住地を宮城県の「宇田濱町」に決定する…
って言う感じの入りです。
もう…とにかく面白い。
文章も滑らかで、スーッと入ってくるの。
西尾さんの "心の声" がたまらない
作中に出てくるお料理…美味しそうすぎるし
『孤独のグルメ』の五郎さんを彷彿させるというか…不思議なのは読んでいるだけで海の匂いや、山の空気の新鮮さなんかを感じるの…不思議。
のほほーん としてるでしょ✨
ただ、こんな感じだけでは終わらないの。
堅っ苦しくはないんだけど…きちんとした
経済小説の一面もあります。
なるほど〜って唸っちゃう。
あぁ…もっとうまく説明したい。
みなさん 許してね!
気になった方は…是非、読んでみてね
余談なんですけど。。。
娘との映画
「ごめーん 時間なーい
行くって 言ってたっけ」
…ですって! 言ってません ٩( ᐛ )و
ちゃんちゃん
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自動車業界にとってEV車は過去のガソリン車の遺産を継続できない窮地に追いやるものとなる。1千社をこえる中国国策での製造販売は世界の車製造会社にとって脅威であり、次なる戦略を立てる必須の課題だ。本書では超高級市場への舵取りをするために、イタリアの手作りの超高級車製造会社と協調・提携に舵を切る。人材の抜擢、人材の活用、日本・イタリヤ固有の文化芸術も取り入れた知恵と工夫を盛り込んだアート的車を手がける。現実、ガソリン車の行末は見えており次なる移動手段の乗り物を作り上げるのは必須であり、安価な製品を持つ中国企業・競争相手との差別化を意識した戦略戦術が今求められていると思う。
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楡周平『サンセット・サンライズ』講談社文庫。
地方創生をテーマにした映画化作品。映画は宮藤官九郎が脚本を書き、菅田将暉が主演を務めるようだ。ロケ地は気仙沼市と大船渡市らしい。唐桑半島に住む知人が話していたが、映画の撮影で菅田将暉ら俳優陣や映画スタッフが拠点にしたのは唐桑半島にある空き家のようだ。
ある程度の読書好きなら知っていると思うが、楡周平は岩手県一関市藤沢町出身の作家だ。藤沢を舞台にした骨太ミステリー小説『骨の記憶』の文庫本のあとがきで初めて本人が出身地について語ったことを記憶している。地元一関市で、このことが余り話題にならないのが不思議なくらいである。
楡周平と言えば、初期の頃には覆面作家として、朝倉恭介シリーズに代表されるハードボイルド・アクション小説を書いていたが、最近では『介護退職』『終の盟約』『サリエルの命題』など、社会問題をテーマにした小説が多い。
舞台は気仙沼市に近い宮城県北部の海沿いにある宇田濱という人口6.000人の架空の小さな町である。気仙沼まで車で30分と書いているのと、宇田濱という町の名称と響きが似ている歌津町がモデルではないだろうか。現在は志津川町と合併し、南三陸町と名称が変わり、東日本大震災の際には壊滅的な被害を受けた場所である。
なるほど、小説でも充分に面白いのだが、映画にしたら素晴らしいストーリーになるに違いない。
日本は首都圏にばかり人が集まり過ぎて、地方では過疎化と高齢化に歯止めが掛からない。地方の空き家問題はこの先、さらに大きな問題になるだろう。一部の不動産会社は中古住宅を買取り、リフォームして売出すというビジネスを展開しているが、これからはさらに空き家が増えていくのだろう。地方には稼げる仕事が少なく、ある程度で空き家の需要が伸びないことが予想されるのだ。
東日本大震災から9年が経過し、新型コロナウイルス感染症が流行し、東京の企業は次々とテレワークを採用する。
海釣りが趣味で36歳になる東京の大企業に勤める西尾晋作は、コロナ禍による会社のリモートワーク採用を機に田舎への移住を考える。ネットで物件を検索し、三陸の宇田濱に見付けたのは、3LDK、家賃8万円、おまけに家具家電付きの神物件だった。大家は津波で夫と子供たち、義母を失い、義父と共に暮らす39歳の関野百香だった。
早速、晋作は宇田濱に移住し、大好きな釣り三昧の日々を過ごすが、地元の人々は東京から来たよそ者の登場に気が気でない。しかし、次第に一癖も二癖もある地元民と打ち解けるようになった晋作は過疎の町で、地方創生につながるある事業を思い付く。
本体価格870円
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『ミッション建国』楡周平
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【総評】
テーマ ☆☆☆☆☆
政治・経済 ☆☆☆☆☆
シミュレーション ☆☆☆☆☆
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【購読動機】
2014年、今から10年前の執筆です。
いま2024年、自民党総裁選が行われています。
この小説「ミッション建国」は、2世議員で与党青年局長を務める40歳の政治家が、しがらみ多い与党(派閥)と官僚に真っ向から挑む物語です。
テーマは、過去も今も変わらない「少子高齢化」にどのような政策を展開するか?です。
楡さんを好きな理由が、統計数値を引用しながら、小説を展開し、物語を太くしてくれることです。
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【ここが面白い!】
①テーマ
出生率が1.5であったのは1990年も同様です。もう30年近く前のことです。
では、少子高齢化がわかってなぜ政治は変わらなかったのか?
私たちは、小説を読みながら、その回答をシミュレーションの世界ではありますが、学習できます。
②政治・経済
人口が少なくなれば、企業は労働力も消費力も確保できなくなります。
結果、法人税、消費税共に低迷すること
は明らかです。
直近、アメリカのシリコンバレー経営者が英語で「日本沈没」なるメッセージを発信しました。
国力の衰退は、海外からの投融資が衰退するという流れにもなるということです。
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【論点「出生率」を高めるには?】
人口を増やしていくことは必要であり、重要です。なぜならば、国を維持できなくなるからです。
この前提にたって、小説は展開されています。
小説では、若き2世議員が、どのように実現していくのか?周囲の助言も受けながら、政策を取りまとめていきます。
彼の論点の流れは以下のとおりです。
①出産・育児にかかるコスト
如何に政策として支援、負担を減らしていけるのか?
②出生率1.4を2.1へ
引き上げなければ人口は減り続ける。
※東京の出生率は1を切る可能性がある。
③過去の公共事業
景気は持続的に上向いたのか?所得はあがったのか?従前型の公共工事への検証が必要ではないか?
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【出生率を高める政策とは?】
彼は、大きく2つの提言を行います。
①国が、育児世帯用に専門住居施設を建設し、運営すること。
②女性側の育児がひと段落したあと、学び・資格・就業という機会を公的に支援するということ。
①は、都心から通勤1時間以内に取得したバブルの塩漬け土地の有効活用です。保育施設を併設し、一番下のお子様が15歳になるまで家賃優遇し、入居が可能です。
これも、公共事業です。
②は、育児後に安心して正社員として登用できる環境を整備するということです。第2新卒マーケットと同様の考え方での市場形成です。
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【さいごに】
この小説の斬新さは、2014年10年も前に執筆されていることです。著者が、日本の政治、経済にどのような視点をもっているのか?を伺いしることができます。
ずばり、面白いです。
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【参考 統計数値】
総務省、厚生労働省、財務省の統計情報からは下記を把握することができます。
この数値を観察するだけで、構造上の課題が明確に理解できます。
1;労働人口
1990年6200万人→2018年6700万人。
2;1世帯可処分所得
1990年430万円→2018年418万円。
3;未婚割合
1990年男48%女性32%→2018年男70%女性60%
4;出生率
1990年1.5→2018年1.4
5;;初婚年齢
1990年男28歳女26歳→2018年男31歳女30歳
6;国債
1990年200兆円→2018年1000兆円。