あらすじ
明治七年。十五歳の服部金太郎は、成長著しい東京の洋品問屋「辻屋」の丁稚として働いていた。主人の粂吉は、金太郎の商人としての資質を高く評価し、ゆくゆくは妹の浪子と結婚させ、金太郎を辻屋の一員として迎え入れようとする。だがそんな思いとは裏腹に、金太郎は、高価ゆえに持つ人の限られていた「時計」に目をつける。鉄道網の発達により、今後「正確な時間」を知ることの重要性が高まると見抜いていたのだ。いずれは時計商になりたいという熱い想いを粂吉に伝えるが…。経済小説の名手が史実をもとに描く、世界的時計メーカー「セイコー」創業者の一代記!
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Posted by ブクログ
とある百貨店の人に「うちは富裕層ターゲットなんで庶民は相手にしていません。きちんとした格好じゃない人に来られるとブランド価値が下がります。」と言われたことがある。自分に対する評価ではなかったがもう二度と行くまいと決めた。信用は瞬間に消え失せる。
その真逆に信用第一で企業を育て上げたのがSEIKOの創始者服部金太郎だ。この小説は彼の一代記だ。信用以外にも、知と技術、そして盟友を大切にする姿に心を打たれる。資源のない日本が近代化し経済成長を遂げられたのは学問と技術を大切にしたからだろう。福沢諭吉に蒙を啓かれ、SEIKOに夜学をつくる様はそれを物語る。辻や渋沢栄一からの薫陶、鶴彦との二人三脚は大事は一人でなし得ないことを教えてくれる。
信用、教養、技術、仲間。文字にすると当たり前のような気がするが、本当にこれらを大事に出来ている人は少ないように思う。金太郎のように仕事に向き合いたい。
Posted by ブクログ
SEIKOの創業者、服部金太郎氏に関する小説。あくまでもフィクションですが、全くそのような感がないくらい読むことができました。
個人的に服部金太郎氏は、分析能力に長けた方だったのだろうと思いました。
人の縁を改めて大事にしていこうと思った次第です。
Posted by ブクログ
SEIKOの創業者、服部金太郎の話。丁稚をしていた少年の頃から時計に興味を持ち、鉄道が各地を繋ぐようになれば時計は必須で、その時計で商いをすればという大きな志を持っていた。周りを、人々を観察する力が備わっていたのが素晴らしい。丁稚期間が終わり、時計店に修行に行くもその時計店がお金を返せず潰れたり、やっと自分の店を持てたのに大火で失ったり、その後出会った職人たちと精工舎を創業し大きくなったのに関東大震災で本店と工場を失ったりと苦労だらけだったのに驚いた。そしてそこから立ち上がり大きくなっていく力強さに感動した。
この本を読むと、時計を作る職人たちの誇りや懐中時計から腕時計を開発しようとする向上心がグッときて、今、デジタル時計やスマホの時計、スマートウォッチが目立ち、いわゆる長針と短針がリアルで動く時計が減ってきているのがもったいなく感じる。
今はどんなものにもあるアフターケアサービスを最初に始めたのが金太郎だったのには驚いた。
Posted by ブクログ
セイコー創業者の一代記。
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり
独立自尊
貧すれば鈍する
他山の石を以って玉を攻めむべし
天は自らを助く者を助く
禍福はあざなえる縄のごとし
人生一寸先は闇
禍を転じて福と為す
情けは人の為ならず
出る杭は打たれる…
Posted by ブクログ
読み応えがありました。いつもこのようなサクセスストーリーを読むと結局は人との繋がりが中心になります。この服部金太郎氏も然り。とても気持ちのいいストーリーに仕上がっています。
今どこでも当たり前のように見るSEIKOの文字、これからは創業者に思いを馳せて敬意を持って見ることでしょう
Posted by ブクログ
時計メーカー「セイコー」創業者、服部金太郎の物語。
素晴らしい小説でした。
どうしてセイコーがこんなにも大きな会社になったのか。この本を読めば全てがわかります。
金太郎は、どんな時もどんな場面でも「人」をとても大切にしていた。目には見えない〝信頼″が、人との繋がりを広げ、夢であった時計のお店を若くして立ち上げ、どんどん大きくしていった。でもいつも順風満帆とはいかない。しかし、思いもよらない突然の不幸な出来事にも落ち込んでばかりいるのではなく、ではどうしたらこの難局を切り抜けられるかをすぐ考え実行にうつす。そんな時いつも金太郎の周りには、力になってくれる大切な人々がいた。恵まれているという言い方は少し違うかもしれない。時計に注ぐ情熱や想いはもちろんのこと、金太郎に関わる縁や、お客様、家族も従業員も、そしてその従業員の家族のことまでも全てを大切にしてきた金太郎だからこそ、ついてきてくれる人達がいるのだ。
情けは人の為ならず。
そして会社は世界に通用するほどの大きな会社となる。
どんなに大きな会社になっていっても金太郎は奢り昂ることはなかった。迷いそうになると恩師に言われた言葉を思い出し、その時を振り返り自分を律する。いつでも謙虚で真摯な姿勢が、立ち止まることなく上へ上へと向上心を捨てないその姿勢が、今も尚、トップの時計メーカーとしてあり続けるセイコーの姿であると思った。
腕時計ってどうしてあんなに高いのだろうと思ったけれど、腕時計のように小さい時計であればあるほど、とても緻密でほんの少しのズレも許されない作業があり、そこには熟練の高度な技術を持つ技師がいるということを知った。
この本を読んで、時計の世界のことをもっと知りたくなった。実際どんな風に作られているのかも見てみたいし、時計は毎日見るものだけど、その歴史は全く知らなかった世界でした。
夢は誰も、一人では叶えられないものだと学びました。
これから、テレビドラマで放送された「黄金の刻」を観るので楽しみです。
Posted by ブクログ
SEIKO創業者、服部金太郎の生涯を綴った小説。
服部の人柄の良さ、そして世間を見抜く慧眼っぷりが随所に描かれており、ビジネスを学ぶ視点でも歴史を学ぶ視点でも楽しめる。
服部の周囲の人間もキャラが上手く表現されており、飽きが無い。
こんな経営者の元で仕事をしてみたいと思える一冊。
Posted by ブクログ
服部時計店、セイコーの歴史が創業者服部金太郎の丁稚時代から描かれている。小説だからフィクションではあるが、さもありなんという個性、人格の醸し出す雰囲気はよく出ていて魅力的だ。人との縁を大切にして運を引き寄せるアイデアマン。魅力的だった。
Posted by ブクログ
楡周平君の経済ものやね。
文体はこなれていて、実に読みやすい。
この内容なら、上下巻位のボリュームで、もっと深掘りしても良えんちゃうかなぁ。それぞれの話がちょっと平板で物足りない気がするんだけど。
Posted by ブクログ
先ごろこの本原作のドラマを見た。
世界的時計メーカー「セイコー」の創業者の一代記だ。
明治初期、丁稚奉公を終えた服部金太郎は、奉公先の主人の引き留めにも応じず、自分の決めた道を歩み始める。
「正確な時間を知る」ことの重要性に目をつけ、時計商になる、ことを目標に掲げ歩き出す。
今いる目の前ではなく、10歩先、100歩先を常に見据え、考えその道を切り開いていく。
服部にその才能、先見の明があったことは確かだろうし、そのための研鑽、努力のたまものであったろうと思う。
しかし思うに、何事を成しえるにも自分一人の力ではできないということだ。
その時々で出会った人、側にいてくれた人、あらゆる人たちの助けなり、助言があってこそ。
そのためには日ごろから、勉強を欠かさず、自分を磨き、成長していかなければいけないだろう。
そういう人間には自ずと人が集まる、引き寄せる力があるのだろう。もちろん運をも引き寄せる。
私は敢えて、服部さんを「時計バカ」と言いたい。
常に時計業界の先陣を切り、牽引しているセイコー。
バブルのころは、海外のブランド時計を買ったりしたけど、やっぱりセイコーに戻りました。
日本にはこんな素晴らしい時計があるじゃないかと最近改めて思っている次第です。