楡周平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初期の楡作品を彷彿させるような国際諜報小説。
元々の著者の得意ジャンルなのか、
安心してグイグイ小説にのめり込んでいけます。
さらに、純粋に物語を楽しめるだけでなく、
中国・北朝鮮と日本、アメリカの4国間のパワーバランスがフィクションと。は思えないくらいリアルで、
その辺のニュースを聞いているよりもよっぽど勉強になります。
フィクションでしょうが、もしかしたら実際に起こったリアルでは?と
本を読みながら思ってしまうほどです。
さらに、現代のネット社会における情報が如何に筒抜けかについてのリアルが描写されており、
ちょっとスマホやグーグルを使うのが怖くなってしまいます。
安定の楡作品で、★4つ!と思いながら読んでいたのですが、
初期の楡作品を読んだことのある人にとっては驚きの結末が。。
ここで一気に★5つに格上げされてしまいました。
恐るべし、楡周平。
続編も出たら、もちろん読んでみたくなること間違いなし! -
Posted by ブクログ
“実話”に着想を得ている物語で、非常に興味深い内容であると思う。
「歴史」とでも言えば、「遠い昔」というように思ってしまうと思うのだが、そういうモノに限らずに「自身の人生の時間」の中で、後から振り返って「あれば歴史上の大きな動きということになるかもしれない…」という動きは起こっているモノだ。
本作『象の墓場』は、世界的なフィルムメーカーに勤める最上という会社員が主人公だ。1990年代から2000年代に入るまでの経過が描かれる。
1990年代から2000年代に入る頃というのは、“写真”というモノの在り方、存在感が人々の中でドンドン変わって行き、フィルムの会社のような企業のビジネスが大きく変わらざるを得なかった、或いは「古くからの写真フィルム関係のビジネスが倒壊」とでも言うようなプロセスが進んだ時期である。
作中、「フィルムからデジタルへの橋渡し」というようなことで、最上達は色々なことを試みる…が…「成功」というようなモノから見放され、社会がドンドン変わって行く…作品の冒頭と、作品の末尾とで最上は新聞社の写真部員であるカメラマンと話すのだが、この対話が作中で描かれた1990年代から2000年代に入る頃の「変化」を如実に表すものかもしれない。そしてこの間に最上達の「苦闘の日々」が描かれる。
ハッキリ言えば…作中の世界的大企業のようなフィルムメーカーが辿らざるを得なかった運命、様々な模索が巧く運ばない他方でドンドン進んだ時代の変化というようなモノを、「自身の人生の時間」の中での経験として承知している。それでも本作は眼が離せなかった…と言うのは、「技術と人間と」とでもいうような、非常に大きなスケール、普遍的なことに想いを巡らせざるを得ないからだ。読後に深い余韻が残った。
なかなかにお薦めな感じの一冊だ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ【感想】
本当に面白いかった!!
もう、朝倉恭介というダークヒーローのカリスマ性に、終始痺れっぱなしでしたね~。
アーミーのように屈強で、悪魔のように非情で、ただのワルでは到底追いつかないような頭の回転の速さ。
・・・・白竜かよ!!!!
全6作のシリーズものなので、続編も早く読みたい!!
本作品は、主人公である「朝倉恭介」がどのような経路をもってダークサイドに堕ちてしまったのか。
彼が過ごしてきた生い立ちや留学生活、そして初めての殺人など、彼の人生の振り返りについても詳しく描かれていました。
また、彼自身の哲学や魅力、人生観について惜しげもなく描かれていました。
色んなものに恵まれたパワーエリートでありながら、両親の死によって世間の非情さ、「正義」というものの正体、そんな中で自身が生きていく道。
彼が辿ってきた人生で身に着けざるを得なかったそのハングリーさや野生味は、真山仁の「ハゲタカシリーズ」の主人公である鷲津政彦を彷彿とさせますね。
(ステゴロでは断トツで朝倉恭介が勝つでしょうが。笑)
一介のサラリーマンである私ごときでは、今後も朝倉恭介のような人間になる事は決してないとは思いますが、彼の金儲けへの貪欲さや知識の豊富さ、世の理についての情報量の多さなどは、見習わなくてはいけませんね。
アクション小説として、非常に面白い1冊でした!
【あらすじ】
商社マンの長男としてロンドンで生まれ、父の転勤に伴い渡米し、フィラデルフィアのミリタリースクールで聡明な頭脳と強靱な肉体を造り上げた朝倉恭介。
その彼を悲劇が見舞う。航空機事故で両親が他界し、フィラデルフィアで天涯孤独になってしまったのだ。
さらに正当防衛で暴漢二人を殺害。以来、恭介は、全身全霊を賭して「悪」の世界で生きていくことを決意する。
そんな彼が創出したのは、コンピューター・ネットワークを駆使したコカイン密輸の完璧なシステムだった。
「朝倉恭介VS川瀬雅彦」シリーズ第1弾。
【引用】
1.酒も女もドラッグも、程々にやればこんな楽しいものはない。
快楽を追求するのは人間の本能というものだ、それ自体は決して悪いものではない。
しかしそれに溺れてはいけない。そのいずれもが、一旦溺れてしまうと、そこから抜け出すには溺れる以上の苦労を伴うものだ
2.恭介は、世の中で「まとも」とか「正義」と言われるものの正体がいかに得体の知れないものであるか、そしてこの世の中が実のところそうした人間たちによってのみ動かされているという現実を、はやくも18歳にして垣間見ることになったのである。
3.「信じられるかね?最高の教育を受けた人間たちが知恵と汗のかぎりを尽くして稼ぎ出すよりも、遥かに大きな利益を最低な人間たちが産み出している現実を・・・」
ファルージオは言った。
「群の頂点に君臨していくためには、知性もさることながら、絶対的な指導力、財力、知力、そして恐怖の力、そのいずれをも持ち合わせねばならないのだ。」
4.キャンパスの生活は退屈なものだった。しかし、だからといって恭介は決して勉学を疎かにすることはなかった。
当時の恭介にはこれといった夢もなかったが、どういう道に進むにしても、ここで施される教育が将来役に立つものであることには違いなかったからである。
中でも恭介は、語学の習得により一層の時間を費やした。
同時に恭介は、勉学に割いた残りの時間の殆どを、高校時代から続けていた格闘技の訓練に費やした。
道場を経営するのはデービッド・ベイヤーという男で、いろんな格闘技の達人であり本質的な意味でのエキスパートであった。
が、道場に通い始めて2年目あたり、実戦で鍛え上げてきたベイヤーでさえ敵わなくなるほど腕を上げ、同時にその体も鋼のように磨き上げられていった。
【メモ】
Cの福音
p23
人種の坩堝(るつぼ)といわれるニューヨークの社会は、実際のところその言葉が示すほど複雑なものではない。
そこで暮らす人間が置かれるレベル、つまりは成功の度合いによって、所属する社会があからさまに違ってくるからだ。
それはある意味では、近代社会が生み出した新たな階層社会が存在するのだと言っていい。
同列のレベルにある人間が集まれば、価値観や話題も自然とそれ相応のものになる。
こうしたパーティは新たな刺激を求める場というよりは、自分の置かれているポジションを確認し、時としてそうした場で得られるビジネスチャンスやコネクションを利用して、さらに上のクラスへのステップアップのチャンスを得る場でもあった。
p50
「シゲミ、吸い過ぎは体に毒だ」チアーザは冷たく言い放った。
「私の周りにもコークをやっている人間は何人かいるが、皆中毒にならない程度にうまく付き合っている」
チアーザはゆっくりとベッドから立ち上がると、
「酒も女もドラッグも、程々にやればこんな楽しいものはない。快楽を追求するのは人間の本能というものだ、それ自体は決して悪いものではない。しかしそれに溺れてはいけない。そのいずれもが、一旦溺れてしまうと、そこから抜け出すには溺れる以上の苦労を伴うものだ」
p58
「よりによってミリタリースクールでなくとも・・・どうしても手元から離すというのなら、全寮制のプレップスクールでもいいじゃありませんか」
優一朗に対しては滅多な事では異を唱える事のない妻が、この時ばかりは必死に食い下がった。
優一朗にしても、一人息子である恭介をもうしばらく手元に置いておきたい気持ちは同じであった。
それを許さなかったのは、優一朗自身が軍人家庭の一人息子として厳格な家庭環境の下で育てられたことに一因があった。
人格を形成していく上で最も重要な時期に、自由と個性を伸ばす事を尊重する文化や習慣に染まった教育を受けた駐在員の子女の多くが、日本に帰国したのち母国の社会と自己のアイデンティティーの狭間で苦しむものなのである。
組織の中で個を生かす術を身に付けることが、恭介の将来にプラスに働く。
そして恭介は、そうした環境に見事に耐え、聡明な頭脳と強靭な体力を身につけていった。
p59
一人息子の卒業式に参加するためにニューヨークからフィラデルフィアに向かった恭介の両親を乗せた旅客機が、悪天候の中着陸に失敗し、爆発炎上した。
しかし、全くプライベートな旅行で命を失ったというだけで、四半世紀にわたって仕事に文字通り生活の全てを捧げてきた男に対し、会社は冷淡であった。
あれほど会社を思い、身を粉にして働いた男に対する代償がこれか・・・
恭介は勤め人という立場にある人間の悲哀を、いやというほど味わう事になった。
また、恭介が手にした合計300万ドルの補償金額のうち、30パーセントという額を法律事務所は当然のごとく持っていった。
実際に命を失ったわけでも、愛する人間を失ったわけでもないただの法律屋が、単にその知識を活かして交渉代行したというだけで、である。
恭介は、世の中で「まとも」とか「正義」と言われるものの正体がいかに得体の知れないものであるか、そしてこの世の中が実のところそうした人間たちによってのみ動かされているという現実を、はやくも18歳にして垣間見ることになったのである。
p63
キャンパスの生活は退屈なものだった。しかし、だからといって恭介は決して勉学を疎かにすることはなかった。
当時の恭介にはこれといった夢もなかったが、どういう道に進むにしても、ここで施される教育が将来役に立つものであることには違いなかったからである。
中でも恭介は、語学の習得により一層の時間を費やした。
同時に恭介は、勉学に割いた残りの時間の殆どを、高校時代から続けていた格闘技の訓練に費やした。
道場を経営するのはデービッド・ベイヤーという男で、いろんな格闘技の達人であり本質的な意味でのエキスパートであったが、道場に通い始めて2年目あたり、実戦で鍛え上げてきたベイヤーでさえ敵わなくなるほど腕を上げ、同時にその体も鋼のように磨き上げられていった。
p71
「信じられるかね?最高の教育を受けた人間たちが知恵と汗のかぎりを尽くして稼ぎ出すよりも、遥かに大きな利益を最低な人間たちが産み出している現実を・・・」
ファルージオは、火を見ながら静かに言った。
「君はカラスの習性を知っているかね?カラスの習性は実に我々の世界に似ていてね、知能が極めて高い上に、悪食で生命力に満ち溢れている。
仲間同士の結束も強いように見える半面、弱った仲間は決して見逃さず、寄ってたかってそいつを共食いしてしまう。
カラスの死体が滅多に見つからないのはそのせいだ。」
「群の頂点に君臨していくためには、知性もさることながら、絶対的な指導力、財力、知力、そして恐怖の力、そのいずれをも持ち合わせねばならないのだ。」
p77
「勝負は相手が完全に戦闘能力を無くした時に初めて決まる」
恭介の脳裏に、ベイヤーの教えがよぎった。
人を殺めるのは初めてのことだったが、不思議なほど恭介は落ち着いていた。
「しがらみ」のすべてから解放された恭介にとって、如何なる事態がその身に降りかかろうとも、すべては自らの責任に帰結し、自らの力をもって解決するしかないのだ。
p192
島国という日本の地理的条件は、ドラッグの国内の持ち込みを非常に困難なものにしていた。
日本の税関はきわめて優秀である上に、南米や東南アジアの一部の国とは違って職務に対するモラルも高く、密輸を行う際に官吏を買収してお目こぼしを願うといった状況を作る事は絶望的だった。
空路でコカインを日本に持ち込むのは発覚する確率があまりに高く、よしんば持ち込めてもその量はあまりにも少ない。最も合理的な方法は、やはり海路で純度の高いコカインを持ち込み、日本国内で増量して販売することだ。
p255
厄介な事になったと恭介は思った。
恭介にとって一番恐るべき事は、「鸚鵡」の暴走だ。
なにかの拍子でコカインが切れ、禁断症状に陥った「鸚鵡」が不測の行動に出る事は、ネットワークの存在そのものに重大な影響を及ぼす。
こういう事態が発生した場合、直ちにコカインを届ける事は、選択の余地がないことは確かだ。
しかし問題は、稲田がアクシンデントと呼ぶ事態が果たして本当に起きたことなのか、恭介には確かめる術がないことだ。
(中略)
恭介の腹は決まった。
やはり危険は冒すべきではない。稲田の住居は都内だ。
速達で送れば、遅くとも明後日には稲田の元に当面十分な量のコカインが届く。あと2日の我慢だ。恭介はそう判断した。
それは、自らが麻薬を使用したことのないドラッグディーラーが犯した、大きな間違いだった。
p285
「いいんですか、やつをそのまま帰しても」
しかし朱は、明らかに気分を良くしていた。
「驚いたな、よく考えたものだ。奴らがコカインを日本に運び込む方法は」
「コカインを運び込む方法ですって?」
葉は眉を少し上げ、驚いた口調で聞いた。
「おそらく稲田が流しているシッピング・インフォメーションの中のコンテナに紛れて、コカインは運ばれてくるに違いない。裏で糸を引いているのは、おそらくアメリカのマフィアだろう」
朱は言うと、そのからくりのあらましを、自らもまた納得するためであるかのように、訥々と喋り始めた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【感想】
楡周平は、相変わらずカッコイイおっさん達を描かせたら一流だ。
こんなにも頭をフル回転させてビジネスを考えているおっさん達。
感動ではなく連動。読んでいて幾度となく心が震えてしまった。
現実はどうだろうか?
考えてみれば、ウチの会社でも部長などの上役たちは、途方もないくらいエゲツないノルマに対しても、決して怖じ気づかずに何とか突破しようと頭をフル回転させていると思う。
上に行けば行くほど過酷になる数字と終始向き合って、決して逃げず、そして最終的にはいつもしっかりと結果を残していると思う。
だが、課長以下のいわゆる末端構成員達ともなると、どうだろう?
途方のないノルマに対して尻込みするだけではなく、不平不満を口にし、若い者は転職という名の「鞍替え」を行ない、おっさん連中は現状維持のまま会社にしがみついている人が多い。
勿論それぞれ今まで歩んできた人生や経験があるので、一概にそれが悪い事だと断定できないが、要するに会社を発展させていこうという責任感が少し欠けているんだろうなぁ。
要するに目の前の数字を如何にして突破するかという「覚悟」が、末端までには充分行き届いていないんだろうなと、自分の会社の人たちを見てて思ってしまう。
(かくいう自分も、会社と己の立場に甘えてしまっている人間の一人である。。。)
この本の登場人物たちは、そういった人たちではない。
自分の今いる極限状況からも誰一人逃げ出そうとせず、「どうすればこの困難を突破できるのか?」「どうすれば楽園にたどり着けるのか」という事に対し、悪戦苦闘を繰り返しつつも日々試行錯誤を重ね、非常にバイタリティに満ち溢れた毎日を送っている風に見えた。
既存のビジネスを根底から覆すなど、余程の度胸や緻密な計算がないと出来ないだろう。
なのに、現状打破の為にそういった戦略を立て、実行する。
そうした数々の苦労の末に手に入れた「果実」は、間違いなくとてつもないくらい美味しいモノなんだろうなぁ。
「どうせフィクションなんだから…」と甘えた事も少々感じはしたが、これこそプロフェッショナルとして目指すべき姿だなと読んでいてとても胸が熱くなった。
同著者の「再生巨流」でもあったが、「頭に錐を刺して、血が噴き出るくらいに考えろ」という言葉は、こういった物語を読むたびにパワーワードとなって自分の頭の中を駆け巡る。
自分にも、もう少し改善の余地があるのではないか??そういう気持ちにさせてくれる1冊でした。
最後に・・・
寺島の上司の苦労を語る台詞が心に刺さった。
「横沢よ、ノルマを課せられてんのは、何もお前ら最前線で汗水垂らして客先を回ってる人間たちばかりじゃない。
お前が課員のケツを叩くように、俺もまた本部長から、本部長は社長から、社長は株主から、常に厳しいノルマを課され監視され続けてるんだ。
お前らにしてみれば、俺たち管理職は下の奴等のケツをひっぱたくばっかで、でかい椅子に腰掛けてさぞやいい身分だと愚痴の一つも言いたいだろうが、現実はそんな甘いもんじゃねえ。」
はい。
自分ひとりの小さなノルマだけを取り上げて、あーだこーだ文句を言うのはやめにして、とことん数字と向き合おう。
そして、凄まじいくらいの実績を残して、勝利の美酒に酔いしれることの出来る人間になろう。
【あらすじ】
本当に客を掴んでいるのは誰か──。
暁星運輸の広域営業部課長・横沢哲夫は、草創期から応援してきたネット通販の「蚤の市」に、裏切りとも言える取引条件の変更を求められていた。
急速に業績を伸ばし、テレビ局買収にまで乗り出す新興企業が相手では、要求は呑むしかないのか。
だが、横沢たちは新しい通販のビジネスモデルを苦心して考案。これを武器に蚤の市と闘うことを決意する。
【引用】
1.もちろん営業マンにとってノルマの達成が絶対的なものであることは十分に承知している。
ノルマは達成して当たり前、未達の営業マンは責任を厳しく追及される。
「横沢、お前新規の客をものにするために、これまでどんだけの努力をしたってんだ」
寺島の容赦ない言葉が胸を抉る。自分の営業スタイルに、油断や慢心がなかったと言えば嘘になる。
2.「確かに郵政は強敵だ。だがな横沢、やつらの行なっているサービスには一貫したパターンがある」
「何ですそれは?」
「オリジナリティがないってことだよ。つまり俺たち民間がやっているサービスをそのまま踏襲しているってことだ」
肯いた横沢に向かって寺島は続けた。
「要するに、連中には新規ビジネスを考える頭なんかありゃしねえんだ。ここに俺たちが生き残るチャンスがある」
3.「私が狙っているのは蚤の市でもなければ、ガレージ広場でもありません。我が社が独自でネット上にショッピングモールを開発するんです!」
「部長。もしも、もしもですよ。ウチが新たに開発した出店者に加えて、蚤の市、ガレージ広場の既存顧客を一気に総取りできるとしたらどうでしょうか?」
4.金か・・・そんなことしか思いつかない人間は、一生かかっても大金を手にすることはできないな。
金は女と同じだ。追い求めれば逃げる。能力のある人間が力をフルに発揮すれば黙っていてもついてくるものさ。
走ることをやめた創業者などただの豚だ。
人の一生はあまりにも短い。その中でも、全力疾走できる期間はわずかだ。
限りある時間をどう生きるか。それが人間の価値を決めるんだ。
5.横沢よ、今更話して聞かせるまでもねえことだが、業績にノルマを課せられてんのは、何もお前ら最前線で汗水垂らして客先を回ってる人間たちばかりじゃない。
お前が課員のケツを叩くように、俺もまた本部長から常に業績を監視されてる。本部長にしたって同じで、あの人は社長から、そして社長は株主から、常に厳しいノルマを課され監視され続けてるんだ。
お前らにしてみれば、俺たち管理職は下の奴等のケツをひっぱたくばっかで、でかい椅子に腰掛けてさぞやいい身分だと愚痴の一つも言いたいだろうが、現実はそんな甘いもんじゃねえ。
6.「安定は情熱を殺し、緊張・苦悩こそが情熱を生む。私の座右の銘は変わっちゃいませんよ」
7.武村vs寺島
はっきり申し上げて、宅配業者のサービスは行き着くところまできている。
どこの会社を使っても、差なんてありはしない。そういうビジネスの行き着く先は決まってます。
最後はどこの会社が安い料金を提示できるか?その一点にかかってかます。これがどれだけ惨めなことか分かりますか?
もう、我々はこりごりなんです。頭を使わないビジネスに汲々とし、ノルマ達成のためにどこよりも安い料金を提示するための稟議書を書くだけの日々を送ることにね。
【メモ】
ラストワンマイル
p27
もちろん営業マンにとってノルマの達成が絶対的なものであることは十分に承知している。
ノルマは達成して当たり前、未達の営業マンは責任を厳しく追及される。
「そんな先があるならとっくに営業をかけてるって言うがな。横沢、お前新規の客をものにするために、これまでどんだけの努力をしたってんだ」
寺島の容赦ない言葉が胸を抉る。
自分の営業スタイルに、油断や慢心がなかったと言えば嘘になる。
p29
「確かに郵政は強敵だ。だがな横沢、やつらの行なっているサービスには一貫したパターンがある」
「何ですそれは?」
「オリジナリティがないってことだよ。つまり俺たち民間がやっているサービスをそのまま踏襲しているってことだ」
肯いた横沢に向かって寺島は続けた。
「要するに、連中には新規ビジネスを考える頭なんかありゃしねえんだ。ここに俺たちが生き残るチャンスがある」
p53
なるほどそれが資本主義の原理そのものだと言ってしまえばそれまでだ。ビジネスの世界は食うか食われるか、そこに一切の甘えも許されないというのも紛れもない事実というものだろう。
だが、ビジネスは健全な社会があって初めて成立するものだ。真っ当に働いている人間たちの生活基盤までを奪うようなものであってはならない。
規模が大きくなればなったで、そこに連なる企業には正当な利益をもたらす義務が生じるものだ。
自分の夢を実現するためなら、もぎ取れる果実はすべて自分のものにするようではならない。
p67
寺島は小首を傾げ、少し考えているようだったが、
「お前が言いたいことはこういうことか。我が社が全国に持つ支店網、営業力を駆使してまだ一般には流通していない地方の食材や名産品を発掘し、それをネット上のショッピングモール、つまり蚤の市に出店させる。その開発実績と引き換えに、蚤の市との現行取引条件を維持しようってわけか」
些かの失望の色を浮かべながら、考えは読めたと言わんばかりの口調で言った。
「私が狙っているのは蚤の市でもなければ、ガレージ広場でもありません。我が社が独自でネット上にショッピングモールを開発するんです!」
「部長。もしも、もしもですよ。ウチが新たに開発した出店者に加えて、蚤の市、ガレージ広場の既存顧客を一気に総取りできるとしたらどうでしょうか?」
p78
「一定の株式を握ったところで、株価を時価以上で極東テレビに買い取らせ、金を掴んで手じまいする。そう踏んでいるだろうな」
「極東テレビの連中だってそう思っているだろうね。我々の目的は、金以外にないって」
「金か・・・そんなことしか思いつかない人間は、一生かかっても大金を手にすることはできないな。金は女と同じだ。追い求めれば逃げる。能力のある人間が力をフルに発揮すれば黙っていてもついてくるものさ」
「走ることをやめた創業者などただの豚だ。人の一生はあまりにも短い。その中でも、全力疾走できる期間はわずかだ。限りある時間をどう生きるか。それが人間の価値を決めるんだ」
p162
蚤の市が躍進を遂げるきっかけとなったオンラインショップはネット上での架空の商店街だし、相次ぐ買収で手に入れた証券や金融会社にしたところで、換金できる資産を持っているわけでもない。
IT産業はアイデア一つ、後はサーバーさえあれば十分に成り立つ点が最大の強みであり、逆に規模が大きくなればなるほど弱みになる。
ネットビジネスは、常に新しい技術によって駆逐される危険性を孕んでいるのだ。
人間が開発した技術というものに、未来永劫に亘って使い続けられるものなど存在しない。
p234
「部長、よく考えてください。いま我々は大きなチャンスを掴もうとしているんです。下請けに過ぎないと思われていた物流業が、実は全ての産業の生命線を握っている。まさにラストワンマイルを握っている者こそが絶対的な力を発揮することを世に知らしめる絶好の機会を目の前にしてるんです!」
p262
「横沢よ、今更話して聞かせるまでもねえことだが、業績にノルマを課せられてんのは、何もお前ら最前線で汗水垂らして客先を回ってる人間たちばかりじゃない。お前が課員のケツを叩くように、俺もまた本部長から常に業績を監視されてる。本部長にしたって同じで、あの人は社長から、そして社長は株主から、常に厳しいノルマを課され監視され続けてるんだ。お前らにしてみれば、俺たち管理職は下の奴等のケツをひっぱたくばっかで、でかい椅子に腰掛けてさぞやいい身分だと愚痴の一つも言いたいだろうが、現実はそんな甘いもんじゃねえ。」
p267
「安定は情熱を殺し、緊張・苦悩こそが情熱を生む。私の座右の銘は変わっちゃいませんよ」
「フランスの哲学者、アランの言葉やったな。お前あん時も同じことを言ったで」
ついに真壁は白い歯を見せて明らかな笑みを堪えた。
p338
・武村vs寺島
「はっきり申し上げて、宅配業者のサービスは行き着くところまできている。どこの会社を使っても、差なんてありはしない。そういうビジネスの行き着く先は決まってます。最後はどこの会社が安い料金を提示できるか?その一点にかかってかます。これがどれだけ惨めなことか分かりますか?」
「もう、我々はこりごりなんです。頭を使わないビジネスに汲々としぎら、ノルマ達成のためにどこよりも安い料金を提示するための稟議書を書くだけの日々を送ることにね」 -
Posted by ブクログ
【感想】
続編の「和僑」から先に読んだので、まぁまぁネタバレな箇所も多かったが、それを差し引いてもとても面白い1冊だった。
やはり読んでいて感じるのは商社マンのビジネスセンスと目敏さかな。
現実的な目線を損なわずに、しっかりとビジネスチャンスを活かすノウハウと嗅覚を持っており、それを実行に移して実現させる能力は読んでいて痛快だった。
同じビジネスマンとして、やはり商社マンは能力が違うのかも・・・・
結末が分かっていたから少し興ざめな箇所もあったが、出てくる登場人物のキャラもとても立っていて、台詞ひとつ取っても本当に面白い。
なんてゆうか、登場人物みんな頭が良すぎる。笑
月並みな感想だが、自分もこれくらい嗅覚・商才・そしてセンスに溢れた人間になりたいものだ。
【あらすじ】
出世街道を外された総合商社部長の山崎鉄郎は、やけ酒を呷り泥酔。
気がついた時には厖大な負債を抱えた故郷緑原町の町長を引き受けることに。
だが、就任してわかったことは、想像以上にひどい実情だった。
私腹を肥やそうとする町議会のドンや、田舎ゆえの非常識。
そんな困難に挫けず鉄郎が採った財政再建の道は、老人向けテーマパークタウンの誘致だったのだが…。
【引用】
p5
・最初の一文
「ラーメンからミサイルまで」とは総合商社のビジネスを表す時に用いられる表現としては、随分手垢がついたものだが、売れるものなら人体・臓器以外はなんでも売る。
それが総合商社だ。
p38
総合商社が世界中に支社、あるいは駐在員事務所を置いているのは、単に新しい商売を拾うためばかりではない。
生の情報をいち早く掴む。それが利益を上げることに直結しているからだ。
そう、情報。
メーカーが力をつけた今の時代においても、商社があらゆるビジネスに介在していられるのは、世界中に張り巡らせた情報ネットワークがあるからに他ならない。
p84
「へえ、そうかな。ゼロからのスタートなんてもんは、企業にだってありゃしねえぜ。」
「どういう意味だ?」
私は牛島が何を言わんとしているのか、理由が分からずに問い返した。
「入社して給料もらい始めた時点から、俺たちゃ皆会社に借金抱えてんだよ。その金利は決して安くはない。その借金と金利を支払って余りある稼ぎを生み出したやつが上への階段を昇れる。それがサラリーマンってもんだろ。」
牛島は、そこで私をじろりと見ると、
「山崎、受けろよその話。俺たちゃ世界を相手に切った張ったの商売をしてきたんだ。そこで培ったノウハウを生かせば、赤字に転じた地方の町の財政を建て直すくらいのプランは必ず思いつく。地べたを這いつくばって商売を拾ってくんのが商社マンだろ。儲けを産み出すのが俺たちの仕事だろ。赤字でどうしようもない会社を再生させた例なんて、なんぼでもあるじゃねえか。田舎に籠って小さな町しか見てねえやつには、到底思いつかねえネタがきっとあるはずだ。」
「これは商売なんだ。借金を返せるだけの商売をお前が生み出しゃいいんだよ」
p168
・オリンピックについて
国家レベルの事業でも、規模が大きくなればなるほど、そこから生じる利権という甘い汁を吸おうとする人間が出てくるものだ。
オリンピックなんて、その典型的な例と言えるだろう。
誘致のために何十億という公金を使い、派手なプレゼンを繰り広げた上に視察に訪れたIOCの理事を接待する。
確かに開催地になれば経済的波及効果は計り知れないものがある。しかし問題はその後だ。
分不相応な施設をぶっ建てたら最後、今度はその維持費に莫大な金が食われていく。数週間の開催期間が終われば、街はまた元の静けさを取り戻す。
結果潤うのは、立派な施設の建設を請け負った建設業者と、その裏で蠢くウジ虫のような政治家とは名ばかりの斡旋屋ばかり。
地元の経済にしたって一時は潤うだろうが、これまた祭りが終われば元に戻るだけ。
いや、一旦甘い蜜の味を知った分ら反動は大きいら、
真の公共事業とは、一時のカンフル剤であってはならない。
恒久的に利益を生み、雇用を確保するものでなければならない。
だからこそ、終身型老人ホームの建設は何が何でも成功させなければならない。
カマタケ、おまえにはびた一文、銭はやらねえ。
p229
「リバースモーゲージってのはさ、いま住んでいる住宅を担保にして、毎月一定額の融資を受けるシステムのことを言うんだ。」
牛島は言った。
「早い話は、持ち家を借金のカタにするってわけだ。ただし、大抵の場合借りる方は、金を返済する必要は全くねえ。」
「問題は、このシステムを利用できるのは、大抵の場合ローンが終わった持ち家、れも一戸建に限られる。マンションはまずダメと見ていい。」
「マンションを買う際、大抵が目一杯の長期ローンを組んでいるもんだ。最長で35年、それだけの時間が経ちゃ建物の価値はゼロだ。その点、戸建は違う。こっちも上物こ価値は15年もすりゃあゼロになっちまうが、土地は別だ。更地にすりゃすぐに買い手は現れる。つまり、リバースモーゲージによって融資される金額は土地代、査定価格のよくて7割ってとこだ。」 -
Posted by ブクログ
【感想】
いやー、本当に面白かった!!
この本に出逢えて本当に良かった!!と思える1冊。
前作の「プラチナタウン」を読んでおらず、というより途中でこの作品が続編ということに気がついたが、前作を読んでいなくても充分に楽しめた。
小説というジャンルだけではなく、ビジネス書としても為になる1冊だった。
「プラチナタウン」という組織を元に、現在の高齢化社会が抱える問題だけでなく、その数十年後に日本の迎えるであろう将来について書かれたテーマ。
決してSFチックではなく、今からでも容易に想定されるレベルの問題の大きさに、読んでいて耳が痛くなるというか、絶望感に苛まれてしまう・・・
日本にはこんな残酷な将来が待ち受けているのかと思うとぞっとする。
ただ、この物語は悲観論を語るところで終わらない。
「いま現在の自分たちの生活」を考えている人が多い中、還暦を越えて尚「将来の日本国民たちの生活」に目を向けて奉仕する山崎鉄郎という人物に物語のスポットは当てられている。
既存のビジネスモデルや人間関係のしがらみが多い中、どうやって将来迎えるであろう難局を打破するのか。
自分の損得以上に未来に目を向けて活動してくれるこのような人物が、果たしてこの世にはどれほどいるのだろうか・・・
少なくとも、自分は山崎のような視点には到底なっていないなと赤面の至り・・・・
バイタリティと正義感あふれる山崎が主人公のこの物語は、池井戸潤の作品のように読んでいて非常に爽快感ふれる良書だった。
良いシーンが多かったが、個人的には壁にぶち当たった山崎を奮起させる父親とのやり取りが、一番読んでいてグっときた場面だった。
当たり前だけど、父と子はいくつになっても親子なんだなぁ。
自分の仕事柄、「華僑」をそっくりそのまま真似ることはできないが、これからの時代を生きていくにあたり、島国根性を捨てて海の向こうに目を向けなくてはいけない。
そう思う今日この頃です。
【あらすじ】
地方だからこそ、できることがある――
メイド・イン・ジャパン 「ローカル」を引っ提げて、
出るぜ、世界へ! 示せ、ニッポンの底力!
老人を集めて、豊かな老後と地方再生を――
逆転の発想で大反響を呼んだ『プラチナタウン』刊行から7年。
その構想は、現実に国が掲げる地方創生の切り札となった。
そして今、この物語はネクストビジョンを示す!
読めば元気になる、時代先取り小説!
日本初の、豊かな老後がコンセプトの巨大定住型老人施設「プラチナタウン」を誘致、財政破綻寸前からV字回復した緑原町。
Uターンする人々も増え、町は活気を取り戻していた。
しかしその立役者で、元四井商事の町長・山崎鉄郎は、忍び寄る危機に気がついていた。
――高齢者人口も減少に転じる将来、この町はどうなる?
もう一つの主要産業・農畜産業は、TPPや従事者の高齢化と後継者不足という難問を抱えたままなのだ。
産業振興課課長の工藤登美子を相棒に、山崎の商社マンの血が騒ぎ出す!
【内容まとめ】
1.超高齢社会の展望
「老人だらけの国になる」と騒いでいるが、それはあと30年の話。
そこから先は、老人そのものの人口が減り始める。老人対象のビジネスが有効なのはそれまでの期間である。
「介護は有望な産業だっていってんけどよ。そんな言葉に乗せられて、これから介護産業に乗り出して来る経営者は、学生なみの頭しかねえってことの証だぜ。今しか見てねえってことだ!」
2.人が押し寄せるようになったらもう終わり。美味しいとこなんて残ってない。
誰も手をつけてないビジネスを、リスクを冒して手がけて成功させた者が、美味しいところを全部かっさらう。
3.総合商社の実態
商社マンは、自ら飯の種を探し、自分の食い扶持はもちろん、仕事を支えるスタッフの分まで稼いで来ることを宿命づけられている。
要は、大看板を借りた中小企業の寄り合い所帯。
利に聡い連中が、鵜の目鷹の目で飯の種を探している。
4.日本の農業における農協の役割は、かつて山崎が在籍した総合商社の機能と極めて似ていることに気がつく。
かつて総合商社は輸出入、売り買い、そして物流で食ってきたが、情報網や流通網が進化するに従って、その役割は不要のものとなった。
商社不要論がまことしやかに語られるようになって、危機感を覚えた商社マンは活路を投資に見出した。
環境変化にいち早く対応したからこそ、いまを以てして尚、世界に類を見ない企業形態を維持しているのだ。
5.ビジネスモデルは永遠不滅のものではない。
時代の流れに対応できなければ淘汰されるのが世の宿命だ。
そして、メリットが見出せなくなれば、人は離れていく。ましてよりよい環境を提示してくれる人間が現れれば尚更のことだ。
6.世界に目を転ずれば、今後人口は爆発的に増えていく。
つまり、否応無しに海外に目を向けざるを得なくなる。
そうした時代がやって来るのは間違いないことなのだ。
7.「華僑」と日本人の比較について
世界中のどこの国にも中国人がいる。それも町を作るくらいの規模。
「商売を追い求めて、華僑となって世界を彷徨い歩く。それが中国人。」という訳だけではない。
そもそも、中国人が世界各地に行くのは、自分の国だけを信じていないという側面がある。
歴史上、幾つもの王朝が現れでは消え、離合集散を繰り返してきた国。それも、その度に国が乱れ、大変な血が流れた。中国の赤は血なのである。
そのため、資産どころか家族を各地に分散し、仮に移り住んだとしても、身内がいればゼロじゃないため、生活の目処も立てやすい。
まして身内が世界中に散らばっているとなれば、各地の精度の高いフレッシュな情報が常に入ってくる。ビジネスやリスク管理の点からも理にかなっている。
ところが、日本人は滅多なことでは国を捨てようとしない。
土地を離れると言っても、都市部に出るのが精々。国が沈没すれば、一族郎党運命を共にする。
「本人はもづろん、その子供の代になっても、この国が今まで通り、何の不足もなぐやっていげる保証なんがどごさある?」
8.「プラチナタウン」創設時のプロセス
いきなり問題点を論っては前に進まない。
大きな仕事を手がける時には、まず夢を共有する。
それができれば、後はいかにしてそれを実現するかに知恵を絞るだけ。
そうすれば、乗り越えなければならないハードルが自然と見えてくるものだ。
策を考えるのは、それからでいい。
【引用】
p21
「施設を拡張するのは簡単だ。新たに入居者を募集すれば、これだけ注目を浴びてんだ。人を集めるのもそう難しい話じゃないだろう。」
「団塊の世代がこれからどんどん引退するんだ。プラチナタウンのような定住型老人介護施設の需要は高まる一方だろう。」
「問題は、その需要がいつまで続くのか。肝心の入居者がいなくなっちまったらどうすんのかってことだ。」
「世間じゃ超高齢社会がやって来る、老人だらけの国になるって騒いじゃいるが、そんなもんあと30年かそこらの話だ。そっから先は、肝心の老人そのものの人口が減り始める。ピークに合わせてばんばん施設を造りゃ、日本中の老人介護施設は空きだらけになっちまうじゃねえか」
「それより深刻なのは介護士だ。これから現場に入って来る若い世代は、それこそ40年以上も働くことになるんだぞ。40代、50代を迎えたその時に、『入居者がいません、よって施設は閉鎖します』なんてことになってみろ。人生で一番金が必要な時に、職を失ってしまうことになるじゃねえか!」
「介護は有望な産業だっていってんけどよ。そんな言葉に乗せられて、これから介護産業に乗り出して来る経営者は、学生なみの頭しかねえってことの証だぜ。今しか見てねえってことだ。」
p23
「人が押し寄せるようになったらもう終わり。美味しいとこなんて、残ってねえんだよ。誰も手をつけてねえビジネスを、リスクを冒して手がけて成功させたやつが、美味しいのころを全部かっさらうんだ。」
p40
「町長はTPPが始まれば、日本の畜産業が大きなダメージを被ることになると懸念していらっしゃるんでしょうが、もしそうなれば、特に加工食品向けの比率が圧倒的に高い豚や鶏が、壊滅的打撃を受けると見ておくべきです。牛にしたって、これからの日本は高齢者が激増するんです。価格もさることながら、サシの多い和牛の消費は格段に落ちることは間違いありません。」
「ブランド肉の競争は、ますます激化する。その中で、どうやって生き残っていくか?左助のように、緑原産の農畜産物を専門に扱う店をいかにして多く確保するか。その一点にしかないと思うんです。」
p51
「契約農家は販売先が確保できる上に実入りは増える。仕入れる方は、市場よりも安い価格で良質な原材料が手に入る。既存流通をスキップすることで、両者ウィンウィンの関係を構築したってわけか。」
いや、西山はしかるべき利鞘を抜くのだ。それを考えれば両者じゃない、三者だ。
生産農家は一旦流通ができさえすれば、オーダーを右から左に流すだけ。そこから先は労せずして日々金が入って来る。
これぞ、まさにネットビジネスの醍醐味だ。
p65
大組織は官僚化し、動きが鈍い。
おそらく金井は、四井もまたその例に漏れないという、大企業に対するステレオタイプのイメージを抱いているに違いない。
しかし、総合商社の実態はそのイメージとは程遠い。
なぜなら商社マンは、自ら飯の種を探し、自分の食い扶持はもちろん、仕事を支えるスタッフの分まで稼いで来ることを宿命づけられているからだ。
要は、大看板を借りた中小企業の寄り合い所帯。利に聡い連中が、鵜の目鷹の目で飯の種を探している。
それが総合商社の実態なのだ。
p107
「確かに、日頃赤身ばかりを食べている人たちには、霜降りのお肉なんてたくさんは食べられないでしょうね。まして、健康志向の高いアメリカ人ともなると・・・」
「もちろん、国が違えば嗜好も違う。実際、中国人には和牛は大人気だからね。だから、どの国のどんな層をターゲットにするのか、もう一度市場ってものをよく分析する必要があると思うんだよ。日頃慣れ親しんだ味ってもんは、そう変わるわけじゃない。」
「でも、勘違いしないでくれよ。君の発想は正しいし、ゴールもはっきりしている。だから、どうしたら失敗しないかを考えるべきだと思うんだ。そのためには、考え得る問題点を洗い出して、ひとつひとつ潰していくしかないんじゃないかな。」
工藤の顔に笑みが浮かんだ。
この切り替えの早さと、あくまでも前向きな姿勢が彼女のいいところだ。
p130
日本の農業における農協の役割は、かつて山崎が在籍した総合商社の機能と極めて似ていることに気がつく。
かつて総合商社は輸出入、売り買い、そして物流で食ってきたが、情報網や流通網が進化するに従って、その役割は不要のものとなった。
商社不要論がまことしやかに語られるようになって、危機感を覚えた商社マンは活路を投資に見出した。
環境変化にいち早く対応したからこそ、いまを以てして尚、世界に類を見ない企業形態を維持しているのだ。
ビジネスモデルは永遠不滅のものではない。
時代の流れに対応できなければ淘汰されるのが世の宿命だ。
そして、メリットが見出せなくなれば、人は離れていく。ましてよりよい環境を提示してくれる人間が現れれば尚更のことだ。
p159
「世界中のどごの国さ行っても中国人がいんべ?それも町を作るくれえの勢いで、外さ出て行ぐ。あれはなすてだが分がっか?」
「商売を追い求めて、華僑となって世界を彷徨い歩く。それが中国人ですからね。」
「そいづあ少す違うな。」
「あの人だづが外さ出て行ぐのは、国なんか信ずでねえがらだ。」
「幾つもの王朝が現れでは消え、離合集散を繰り返してきた国だもの。それも、その度に国が乱れ、大変な血が流れた。中国の赤は血の赤だど、中国人自身が語っからね。」
「資産も分散しれているわけだす、移り住んだどすても、身内がいればゼロがらやるわけでねえがらね。生活の目処も立てやすがすべ。」
「まして身内が世界中に散らばっているとなれば、精度の高いフレッシュな情報が常に入ってくるでしょうからね。ビジネス、リスク管理の点からも理にかなってますね。」
「身内ばりでねえ。中国人は必ずコミュニティを作る。そこで集めた情報をやり取りすぎら、次はどこの国さビジネスチャンスが生まれっか、あの人だゔは鵜の目鷹の目で探してんだな。要は、国さば執着しねえ。生きるためにはどごの国が一番いいが、常に考えてんだよ。」
「ところが、日本人は滅多なことでは国を捨てようとしない。土地を離れると言っても、都市部に出るのが精々。国が沈没すれば、一族郎党運命を共にする…」
「本人はもづろん、その子供の代になっても、この国が今まで通り、何の不足もなぐやっていげる保証なんがどごさある?」
p169
「日本人は、サービスはタダだど思ってると語られっけんども、それは素晴らしいごどだど思うんだよね。アメリカだば、人さものを頼めば大抵対価が発生すっからね。無償の奉仕が当たり前、お客様は神様だどいう考えが染み付いている日本人と、そうでねえアメリカ人との差を、客は敏感に感ずんだよな。」
世界に目を転ずれば、今後人口は爆発的に増えていく。
つまり、否応無しに海外に目を向けざるを得なくなる。
そうした時代がやって来るのは間違いないことなのだ。
p171
「肝心な部分だけど、いきなり具体論に入るのも何だかなって思ってさ」
その時、山崎の脳裏に浮かんだのは、プラチナタウンを立ち上げた際のプロセスだ。
いきなり問題点を論っては前に進まない。
大きな仕事を手がける時には、まず夢を共有する。
それができれば、後はいかにしてそれを実現するかに知恵を絞るだけ。
そうすれば、乗り越えなければならないハードルが自然と見えてくるものだ。
策を考えるのは、それからでいい。 -
Posted by ブクログ
岩手工場の閉鎖業務に送り込まれた高見
しかし、現場の写真と組合とひざを突き合わせ話をし、理解を得ながら、工場へ伊勢業務を
確実にこなしていく。
そんな中、工場の従業員が自殺をする、その対応も上層部は保身に走り、高見は、今まで全く経験もない
営業の子会社に左遷される高見、湯下は高見を退職に追いやろうと画策する。
そんな中、父の病気は悪化し、ついにこの世を去ることになる。
この時期と合わせて、入社以来勤め上げた会社を去ることを決意
そんな中、アメリカでひょんなことで出会った、ジョン・ノーマンと展示会で再開する。
そこで、ジョン・ノーマンの会社、カイザー社への転職が決まり、単身、北京へ。
日本では東洋電機産業は莫大な赤字を抱え、再建が待ったなしの状況になる。
日本市場がほしいカイザー社と、東洋のメインバンクは、
東洋の再建のため、カイザー社の成長のため、あるプロジェクトを始動する。
東洋の行く末は、高見は・・・ -
Posted by ブクログ
ソアラ(コダック)の物語。
コダックの社員だった楡周平が 物語にするのは、
自分の中に 大きな葛藤があったのだと思う。
自分のやって来たことの意味が 問われるからだ。
それでも、冷静に 客観的に とらえる努力をして
大企業が崩壊していく過程を書いたのは、すばらしいことだと思う。
コダックは、フィルムメーカーとしては 世界でトップ。
エクセレントカンパニーと言われていた。
フィルム、現像、そしてプリント。
三つの美味しい事業で成り立っている。
利益率は 1ドルの売上で70セントもあるという。
そこにも、デジタル化の嵐が 巻き起こり始めた。
物語は 1992年から始まる。
最上は、デジタルカメラをプロカメラマンに売っていた。
プロから見るとまだ使い物にならないと言われたが、
デジタルで撮った写真なので、電送できた。
確かに、新しい時代は やって来ている。
フィルムからデジタルへ時代の移行期。
ソアラは充分に利益を上げているので、開発力もあり
デジタル化は避けられないと言うレポートが、経営者にはとどいていた。
つまり、フィルムと現像がなくなると言う大きな時代の変化が
あったが、デジタル画像にしても、どうつかうのか?
イメージがわいていない。
一方で、パソコン、ネットが急速に 発展していく。
それが 深く関連しているが、充分に理解できない状態となる。
『成功体験』とアメリカの株主優先の経営方法がソアラを追いつめる。
1995年 ウインドウズ3.0が 登場することで、
おおきな変化が起こる。
最上は 三河の堂島からアドバイスを受けて、
さまざまな商品を開発するが、残念ながら、突破できない。
中間管理職の悲哀が 綴られる。
さらに 登場したのが カメラ付き携帯電話。
それで、カメラのシャッター数は増大する。
カメラが 子供のある家庭と、老年に限られていたのが
若者が 参加してきたが、デジタル画像は ブログなどに使われて、
プリントはしないという ソアラの 三つの事業が消えざるを得なかった。
確かに、巨象が、崩れ落ちていく過程を
時系列に従って、中間管理職の最上の目線で正確に描かれていく。
ウインドウズ3と一太郎から パソコンを使っていたのだから、
確かにこの時代の歩みが、変化を伴っていること。
その変化に対応できない という企業のしがらみ。
そして、優秀な人材が去って行く。
デジタル化は、ますます さまざまな分野へ波及するのだろう。
『身につまされる』会社の崩壊過程である。
これを、変えていくには、トップの意識なんだろうね。
ここのなかにある 最上の いらだち、焦り、喪失感が
なんとも言えず、沈没する会社にいてもがんばったことが、
人生にとっても有意義だったと言えるような物語になっていると思う。 -
Posted by ブクログ
実は…特段に作者の名を確認せずに本作を眼に留め、タイトルと「沖縄でのテロを阻止すべく戦う」というような紹介だけで「これ!!」と入手して愉しんだのだが…この作者…最近は作品の幅を随分広げているようだが、1990年代に「不敵なダークヒーロー」が活躍する、犯罪や謀略の絡むアクションのシリーズで好評を博していた作家だ。幾つか、愉しく読んだ記憶も在る。或いは原点に戻ったのか?または、近年の様々な情勢の中、彼が創造する「不敵なダークヒーロー」の暗躍が「必要!?」とでも思ったのか?
この種の作品…暗躍するテロ実行犯を倒すような辺りが爽快である他方、一定程度の事実を交えて綴られる“世界情勢”や「日本の様子」というようなモノに関して深く考えさせられる面も在る。非常に好みの分野として挙げたいような作品だ… -
Posted by ブクログ
今の問題意識にぴったりの本である。
新聞がはじめにあり、そして ラジオ、テレビ。
新聞は 確かにクオリティペーパーである必要があるが
しかし、読む人のニーズにあわせなければならない。
ラジオ、テレビが 戦後やって来る。
それを 財界が中心になって ラジオ局をつくる。
さらに テレビ局も。
その野望を もつ 若杉。
それをサポートする 澁沢。
アメリカのドラマを 日本にもってくる。
東京帝大、海軍経理学校という経歴を持つ澁沢。
アメリカの船にぶつけられた船に乗っていて 生きのびる。
『活かされているのではないか?』
という事で、新聞記者として スター記者になる。
極東新聞が 大きく飛躍していく。
一方で、携帯電話の急成長をしている会社 芦野と亮輔。
電子書籍をめぐって、新しいビジネス
プラットフォームをとろうとする。
そのために リーダーを無料で100万台 配布することで
携帯のシェアーも拡げようとする。
プラットフォームをめぐる 争奪戦。