楡周平のレビュー一覧
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久しぶりに本屋さんに行った時に文庫本化されたと宣伝されていて興味を引いた本です。限界集落という言葉を聞いたことがありますが、限界国家とはスケールの大きな話だなと思って興味深く読みました。小説の形を取ってはいますが、著者の楡氏の人口減少が確実視されている日本の将来の問題点を述べています。
この本の特徴は、人口減少による悲惨な面だけを記述するのではなく、人口が減少したからこそ起きる良い変化についても述べています。本の中で述べられていたことで共感したのは、自分が経験したことは、世代が離れた若い人や子供には役に立たないどころか、下手をすれば害になるということです。
私は親に与えられたコースを辿って -
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コダックかな?家庭用のアナログの写真を取り扱う企業の
マーケティング担当者が主人公。
業界は私の働くところとは全然違うけれど、
マーケティングって何をするところ?というのが、
物語を通して伝わってきます。
楡周平さんの作品は2作目
始めは世界観に追いつくのに時間がかかりましたが、途中からは専門用語を読み飛ばしながら
読むことにしたので、大分楽になりました。
時代設定は今から2〜30年前の外資系企業。
40代の私はフィルムカメラから、プリクラ、APSフィルムなどの流行を見てきた立場。
街のお店も、カメラ屋さんでフィルムの現像をしていた時代から、年賀状の印刷をするようになった時代など、気がつけ -
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少子高齢化の行き着く先とAIの進化がもたらす影響を考察した小説。
人口動態が経済を予測する上で最も蓋然性の高いデータであることは周知の事実である。それを真剣に考えると日本の産業の先細り、高齢者増加に伴う社会保障負担の増加は避けられない。ならそれに対してどのように産業を変革していくことが日本を豊かに維持できるのかについて真剣に考えさせられる本だった。本書で取り上げられていたプロジェクト単位の人材採用やSNSを用いて世界から人材を探しにいくという考え方には納得感があった。いまだに新卒一括採用を行い、足元の身になるかわからないような人材育成をする大企業で働いていても目に目えない速度で成長している経済 -
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『サンセット・サンライズ』
この言葉の真意を知った時に、人の想いの温かさを感じることができた。
映画視聴後に文庫版を読んだのですが、より細かな描写と登場人物たちのありのままのキャラクターが心地よくて没頭して読み進めることが出来ました。
人と深く関わることは幸福と不幸が隣り合わせで不安定なもの。それが人間関係であり、私が深い人間関係を恐れるのはこのことが理由だったと感じました。
でもその恐怖があるとしても人の出会いというのは運命的で、数少ない友人たちには感謝してもしきれないほどの幸福を貰っています。
人間関係の喪失と新たな繋がりを抱えていけるように、自分も少しでも人と深く関わって行ける -
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『象の墓場』楡周平
危機感と変革の必要性
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【物語】
ベストセラー小説家、楡周平さんの『象の墓場』は、2012年に経営破綻したアメリカのコダック社をモデルにした経済小説です。
※作中は、ソアラという社名です。
コダックは、デジタル化の波に乗り遅れ、巨大な帝国を失いました。
この小説が優れているのは、単に大企業の失敗を描いているのではなく、その失敗の裏にある組織の病巣と、変革の難しさを浮き彫りにしている点です。
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【コダックの教訓:なぜ巨人は滅びたのか】
コダックはフィルム事業で莫大な利益を上げていました。しかし、その成功体験こそが、彼らの未 -
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年金制度の崩壊、歯止めの効かぬ少子化、高齢者ばかりの政治家、経営者。気になるワードがいっぱい出てくる。
小説だから、経済書よりも大胆な処方箋とかわからないかなと思って読み始めた。若い人に期待する話しの流れで,仮装通貨や、NFT(デジタル証明書)の話題は勉強になった。
しかし20年後30年後の事さえまともに考えている指導者がいないと言う指摘は、その通りだろうと思うが、日本人は、幕末や第二次世界大戦の後も、大きな歴史の転換点で、鮮やかに再生した事ある・・・!本を最後まで読んで若者に対して出来るのは、「日本どころか世界情勢も刻一刻と激変する真っ只中に身を置いている事を知らせるくらい」と書いてあるが、 -
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戦後間もない混乱期、天涯孤独になった貴美子は、焼け野原になった横浜で以前家庭教師をしてくれていた清彦と偶然出会う。
2人は生きるために闇市のバラックで、簡素な食堂を営む。
ある日、貴美子が1人で仕込みをしているところに若い米兵2人が入ってきて襲われそうになる。
そこに清彦が仕入れから戻ってきて、2人を相手に格闘となり、近くにあった包丁で2人を刺し殺してしまう。
貴美子は、清彦の身代わりになって逮捕されることを主張する。
その代わり、服役中の間に清彦は新たな2人の生の地盤を作ってくれと頼む。
清彦は渋々貴美子の提案を受け入れ、その間にしっかりと将来のために自立の道を立てようと決意するのだが⋯。