楡周平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
出世の望みが絶たれた大手総合商社の部長職にあった主人公は故郷の同級生から頼まれた町長就任をうっかり引き受けることに。しかし故郷の町は巨額の負債を抱え過疎化も進み、さらに立場を利用して私腹を肥やすやっかいな町会議員もおり、一筋縄ではいかない様子。でも町民からは痛みのない改革を求められ、にっちもさっちも行かなくなったところで、今までにない高齢者向けの施設を作りそれを起死回生策として、古巣の商社と作り上げていく奮闘記。
展開にスピード感があり、話自体にも現実味がある。主人公の右腕となる人物が誰しもが思うネガティヴな疑問を常に投げかけるのも読者視点で良い。奮闘記としてはアイデアを思いつき実際に着工が始まるまでを描いたもので、それ以降の施設のお披露目までは端折られており、またトラブルなども描かれておらず大円団な感じで終わっているのが物足りないが、読後感は良い。 -
Posted by ブクログ
主人公は商社で順調にキャリアを積んでいたのだけど、とあるキッカケから退職し、生まれ育った地元の町長となる。
町長として赴任した街は、とんでもない財政難に陥っており、その建て直しのために超巨大介護施設を作ろうとするのがこの物語の核。
ただしこの小説には起伏がない。大きな山もなければ谷も無い。
ただただ順調に物事が進んでいく。
個人的には、地方の複雑な人間関係とか、事業を邪魔しようと躍起になる勢力が描写されるのかなと思ったけど、そういっためんどくさいことはほとんど起こらない。
役場には協力的で有能な同僚がいるし、街には眠っている資産が沢山あり、もともと所属していた商社はすんなりと介護事業に協力する。
500ページもの大作なのに、物語はただただ順調に進んでいく。
だから、ドロドロとしためんどくさいものを期待したいすると拍子抜けするかも…w
あくまでこの小説は「仕事小説」に振り切っており、物語の主眼は財政難に陥った地方自治体とか、商社の仕事の進め方とか、そういった現実的なものの描写に終始する。
読書の醍醐味である、普段知ることのない世界を知ることができたという意味では、十分楽しめたし、財政と福祉の問題について考えさせられた。 -
Posted by ブクログ
楡周平氏の経済小説
世界有数の大手電機メーカー、東洋電機産業の高見龍平は、米国の半導体開発部門撤退という大任を
はたして帰国する。
帰国して高見が見た会社は、創業者一族支配と取り巻きによる恣意と保身の横行
同期の湯下は一族出身ということもあり、人事部のトップまで上り詰めている。
何かと高見を自分たちの世界にひきづり込もうとするが、高見は一線を置く。
そんな中、ライバルの鷹羽とのDRAM部門の本体から切り離しての新会社設立の話が進む。
4つある工場の1つをリストラと過剰設備として閉鎖することに。
岩手工場がそのターゲットとなり、恣意的に高見は、工場閉鎖業務要因で岩手に送り込まれる。 -
Posted by ブクログ
2012年、フィルム業界で世界に君臨していたコダックが破綻した。
この物語は、1992年から2004年まで、映像のデジタル化がじわじわとフィルムを浸食していき、他に追随を許さなかった大企業が崩れていく様子を描いたものだ。
写真は紙で楽しむもの。そんな常識が昔はあったわねと、デジタルの歴史はまだ浅いのに懐かしく思う。100年以上続いた常識が崩れ去るなんて誰が想像しただろうか。
でもコダックでの破綻はデジタルによる変化ではなく、その変化の波をうまく利用することができなかった経営不備のせいだと言われる。だってデジタルをいち早く開発したのはコダックだし、フィルムの時代は終わると自分たちで予言までしていた。デジタル商品の開発に投資するということは、現存の商売の邪魔をすることになるいう矛盾との闘い。デジタル化が進んでも、保存は紙だろうという期待に縋る甘い読み。小説の中で、会社に振り回され、不安の中で働くコダック(小説内ではソアラ)社員の奮闘ぶりが巧みに描かれている。かつてはコダックに籍を置いていた楡氏の実体験に基づく話なのか…。
この小説を読んでいると、苦しいほど身につまされる。テレビ業界、出版業界、広告業界だって他人ごとではない。未来永劫なんてものは存在しない。いかに次の時流に乗っていくきっかけをつかむか。多くの社員を路頭に迷わせることなく新しいビジネスに移行できるか。独占市場にあぐらをかく大企業(象)たちの明暗をわけるところだ。実際に、フィルムが廃れた現在でも富士フィルムは元気に生き残っている。
富士フィルムは果敢に新しい商機を探り、磁気テープ、光学デバイス、ビデオテープなどフィルムの隣接分野で商品を開発。さらにゼロックスとの合弁事業を通じて、コピー機やオフィスオートメーションなどの事業に進出した。今日、同社の年間売上高は200億ドルを超え、ヘルスケアやエレクトロニクスにも参入し、ドキュメントソリューション事業でも大きな収益を上げている。(他サイトからの抜粋)
↑上記サイトではこうも言っている。
大いなる皮肉は、既存企業こそ破壊によるチャンスを最も掴みやすい立場にあることだ。結局のところ、そうした企業は新規参入者が必死に追い求めているものを多数持ち合わせている。市場へのアクセス、技術力、健全なバランスシートなどである。もちろん、それらの組織能力は制約にもなりえる。そしてほとんど常に、新しい市場において新しいやり方で競争するには不十分だ。新たな成長を追求するには、相応の謙虚さが必要となる。