楡周平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
先ごろこの本原作のドラマを見た。
世界的時計メーカー「セイコー」の創業者の一代記だ。
明治初期、丁稚奉公を終えた服部金太郎は、奉公先の主人の引き留めにも応じず、自分の決めた道を歩み始める。
「正確な時間を知る」ことの重要性に目をつけ、時計商になる、ことを目標に掲げ歩き出す。
今いる目の前ではなく、10歩先、100歩先を常に見据え、考えその道を切り開いていく。
服部にその才能、先見の明があったことは確かだろうし、そのための研鑽、努力のたまものであったろうと思う。
しかし思うに、何事を成しえるにも自分一人の力ではできないということだ。
その時々で出会った人、側にいてくれた人、あらゆる人たちの助けなり、助言があってこそ。
そのためには日ごろから、勉強を欠かさず、自分を磨き、成長していかなければいけないだろう。
そういう人間には自ずと人が集まる、引き寄せる力があるのだろう。もちろん運をも引き寄せる。
私は敢えて、服部さんを「時計バカ」と言いたい。
常に時計業界の先陣を切り、牽引しているセイコー。
バブルのころは、海外のブランド時計を買ったりしたけど、やっぱりセイコーに戻りました。
日本にはこんな素晴らしい時計があるじゃないかと最近改めて思っている次第です。 -
Posted by ブクログ
個人的に大好きな楡周平さんの小説。
文庫になったので、ちょっとした箸休め的な気分で、
読んでみました。
楡さんお得意の重厚なビジネス小説というよりは、
ちょっとライトでコメディー要素の入った小説です。
逆玉の輿婚を成し遂げた主人公が
成金生活を送っていて、
結婚の条件の一つであった子供が生まれた途端、
トラブルに巻き込まれていくという…(以降はネタバレ)、
安っぽいドラマのような設定ですが、
楡さんらしく最後まで楽しませてくれます。
若干、展開に無理があるのと、
途中、何となくストーリーの結末は読めてしまうのですが、
それでも自分の予想を確認すべく、
最後まで読ませる楡さんの筆力はさすがと言えます。
その内、大泉洋が主演当たりで、
ドラマになってそうな展開。
この手の話は、小説で読むより、
映像で見た方が本当は楽しめるのかもしれません。
楡さんファンの方は是非!って感じの小説ですね。 -
Posted by ブクログ
ラストエンペラーは中国の皇帝の話かとタイトルを見て思って読み始めた。
電気自動車、完全自動運転者、など大きく変わりつつある自動車業界の中で、最後の高級ガソリン車をラストエンペラーと名付けた物語である。
何台もトヨタの車を乗り継ぎた経験から、自動車はトヨタで良いのではないかと考えてきた。
もちろん高級なセルシオも、センチュリーも乗った事はなく、大衆車に乗り続けてきたのだが、
最近のニュースでトヨタの不祥事、ダイハツのトヨタブランドの車の不祥事、などが相次いでおり、豊田社への信頼も1部由来でいるような気もするが、EV車の時代にどう変化していくのか、予測ができないのかもしれない。国を挙げて支援を続ける。中国では、圧倒的なEV車の輸出生産の結果が報道されているが、一方で将来EV車に向かうのかどうか?と言う報道も続いている。本書の中で指摘している様々な問題点がどのような方向に向かうのか注目してみたい気もしている。 -
Posted by ブクログ
『バルス』楡 周平著
働く世界の厳しさ ☆☆☆☆☆
将来の不安との闘い☆☆☆☆☆
資本主義とは? ☆☆☆☆☆
主人公/大学生が派遣アルバイトを始めます。理由は、就職浪人をしたため、学費を稼ぐためです。派遣先は、グローバル通販企業の物流センターです。
彼の派遣アルバイトという世界を通じて、読者は下記のテーマを考察する機会に出会います。
・厳しい就職活動。
・正社員と派遣社員の環境の違いと格差。
・資本主義とはなにか?
【厳しい労働環境。その背景は?】
派遣先のグローバル通販の物流センターでは、徹底したコスト管理が実行されていました。たとえば、作業員1名あたりのピッキングする点数は、1分あたりのノルマが定められています。それが常時計測され、下回ればワーニングが出る仕組みです。
なぜ、そこまでコスト管理をするのか? それは、部流センターに発注をする個人客からの請負単価自体が安いからです。たとえば「配送料無料」というサービスを実行しても利益を出すには、徹底したコスト管理が必要となるからです。
【同窓との再会。つかのまの安らぎ】
厳しい労働で体力ならびに精神ともに消耗する毎日。そんな中で、彼は高校の同窓と会います。ミュージシャン志望だった同窓は、結局その道を断念し、彼と同様に派遣で働く生活でした。
彼と同窓は、同じ派遣の現場を体験した仲間として食事をともにすることになります。
その席で、彼は同窓にある考えを伝えたのでした。
「もしも、グローバル通販に一矢を報いたいならば、いい考えがある。」
【事件?事故?爆発が・・・。】
その食事会からしばらくの期間が過ぎたあと、事件が起こったのでした。
その事件がグローバル物流センターから出荷された荷物の「爆発」です。
爆破した犯人の名前は「バルス」。
アニメ「天空の城ラピュタ」で描かれた破壊の呪文の名前です。
「バルス」の犯行声明に記載された要求事項はお金¥ではありません。
派遣労働に関する法律の是正と、派遣労働者に対する権利の是正です。
【読み終えて】
読者側で、爆破事件/テロの動機、そしてその犯人を推察することは容易です。したがって、ミステリー小説としては、多少の消化不良を起こすかもしれません。
この小説は、ミステリーというよりも、資本主義、正社員・派遣社員の構造、そして就職氷河期世代の迫りくる未来を考えては・・・?という示唆を与える小説となっています。