楡周平のレビュー一覧
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プロサラリーマンの目からみても、かなりのリアリティを感じさせる楡周平の引出しの多さは凄い。本作は、リストラ狂想曲とシルバー世代と現役世代の心ある人々の隠れた活躍というテーマだが、金融であれ経営戦略であれ貿易であれ、よく書けるものだと驚く。リストラについていえば、もちろんエンターテインメントにも属する小説なので大げさに戯画化されているが、江間のような言動をちらちらと覗かせる人物は、大企業の管理部門や上級マネジャーには潜在的にはかなりいる(と感じていた)。普段は常識と体面を気にして覆い隠してはいるが、なにかの拍子にその狂気を覗かせるヤツには、思い当たるふしもある。
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かつて人口減に悩んでいた地方自治体の緑原町は、元商社マンの山崎町長がリーダーシップを取り、巨大老人定住施設「プラチナタウン」を開設。老人とその家族を定住させることで、町は人口増、雇用回復、活気を取り戻す。これで、緑原町は大丈夫、町長も一安心・・・、は束の間だった。
今は元気な老人たちだが、やがては介護が必要となり、それを子が担うようになる。働き手が少なくなる緑原町は再び、活気を失うだろう。そして、プラチナタウンは町の不良債権となる。
そんな未来を心配する山崎町長が選んだ次なる政策は、プラチナタウンの拡大ではなく、緑原町特産物の海外販売だ。
新ビジネスや次なる町長選挙の展開があまりに都合良 -
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ネタバレ(上下巻合わせてのレビューです。)
ちょっと疲れていたので、本棚に残っていた気軽に読める小説をチョイス。
今夏のテーマは、寄生虫。
ミャンマーの未開の地に生息する寄生虫に人がどんどん感染していくというバイオサスペンス的な話。
それに楡さんらしく、お得意の国際情勢や諜報活動の味付けを加えています。
ちょうど今、コロナウイルスが流行していて、
ウイルスと寄生虫で異なるとはいえ、
パンデミックの恐ろしさを感じながら読み進めることができました。
さらに自分が1か月間生活していたミャンマーにこんな場所があったなんて衝撃。。
(自分はほとんどの時間をヤンゴン(つまり、都会)にいたというのもあります -
ネタバレ 購入済み
医学の進歩の裏には
子どもが欲しい。でもできない。 そんな思いにつけこむ男たち。 ニーズがあるからやらなくてはならない。 お金になる、必要としている人がいる。だからやる。プライドを持って。 ・・・それが思い上がりなんに。。。 警察を抱き込んでの大きな犯罪は、いまでも途上国である問題やと思う。 卵子って今も結構高く売れるらしいしな。 物事のウラを知らずに過ちを犯してしまうってことを暗に示している話でもあると思う。
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【感想】
デジタルカメラというテクノロジーの普及や進歩に目を背け、「フィルム(銀塩)産業への固執」によって破綻したコダックがモデルの小説。
コダックの破綻はフィルムからデジタルへの写真産業の劇的なテクノロジーの推移・変化によってというよりも、結局は大企業ならではの腰の重さが大きな原因となったようだが、これはどの業界のどの会社にとっても決して「対岸の火事」と思えない出来事だろう。
当たり前にあったものも、いずれはイノベーションによって技術や市場は刷新される。
そしてその「進化」裏側には、必ずしも既存事業の「象の墓場」というものは存在する。
そう考えると、どの業界の人でも背筋が冷たくなるのでは? -
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面白かった。
仕事を頑張ろうと思える本だった。
主人公の吉野が 、1つの仕事を成し遂げるために、あらゆる人・知恵・力を総動員する姿に、今の自分の仕事に対する姿勢を改めさせられた。
自身が複合機メーカーやオフィス通販の代理店とやり取りすることも多く、内容をイメージしやすいこともあり、楽しめた。
社会人2年目くらいの、なんだか仕事がつまらないと思って いる人におすすめ。
基準
★ 二度と読み返すことはない
★★ 好みじゃない、いつか面白さがわかる時が来るかも
★★★ 楽しめるが人に薦めるほどではない
★★★★ 手元に保管したい
★★★★★ 周りの人に薦めた -
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プラチナタウンの続編。
大手商社の部長だった主人公が故郷の町長になり、財政破綻と過疎化対策として介護付き高齢者住宅を誘致して起死回生をはかったのが前作。
今回はすでに町長も2期目、プラチナタウン頼りの町の現状や農業の担い手不足がテーマ。高齢者は増えたが若者がやってこないと町の存続が危ない。それの解決策として農家が安定収入を得られる仕組みを作る。しかも販路は海外へ。アメリカで飲食業で成功を収めている町出身者と組んでB級グルメをアメリカで販売、テストマーケティング後、本格的に冷凍食品として輸出する。それらの材料は全て地元のもの。
農業と食、今後の世代への新しい選択肢、これらが相互に作用して物語が構 -
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出世の望みが絶たれた大手総合商社の部長職にあった主人公は故郷の同級生から頼まれた町長就任をうっかり引き受けることに。しかし故郷の町は巨額の負債を抱え過疎化も進み、さらに立場を利用して私腹を肥やすやっかいな町会議員もおり、一筋縄ではいかない様子。でも町民からは痛みのない改革を求められ、にっちもさっちも行かなくなったところで、今までにない高齢者向けの施設を作りそれを起死回生策として、古巣の商社と作り上げていく奮闘記。
展開にスピード感があり、話自体にも現実味がある。主人公の右腕となる人物が誰しもが思うネガティヴな疑問を常に投げかけるのも読者視点で良い。奮闘記としてはアイデアを思いつき実際に着工が始 -
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主人公は商社で順調にキャリアを積んでいたのだけど、とあるキッカケから退職し、生まれ育った地元の町長となる。
町長として赴任した街は、とんでもない財政難に陥っており、その建て直しのために超巨大介護施設を作ろうとするのがこの物語の核。
ただしこの小説には起伏がない。大きな山もなければ谷も無い。
ただただ順調に物事が進んでいく。
個人的には、地方の複雑な人間関係とか、事業を邪魔しようと躍起になる勢力が描写されるのかなと思ったけど、そういっためんどくさいことはほとんど起こらない。
役場には協力的で有能な同僚がいるし、街には眠っている資産が沢山あり、もともと所属していた商社はすんなりと介護事業に協力