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トップレベルの私立大学に通う百瀬陽二の就職戦線は冴えなかった。名の知れた大企業への就職に囚われていた陽二は、再チェレンジする為に就職留年を決める。留年のあいだ派遣会社を通じて世界最大のネット通販会社《スロット》の物流センターでアルバイトをすることに。そこで見たのは、派遣労働の過酷な職場環境、さらに膨大な商品の運送業務に忙殺される大手総合物流企業の厳しい現場だった。
東京から各地方に向かう東北・東名・中央・常磐など主要高速道路で、ほぼ同時に宅配便を配送するトラックが走行中に荷台から出火し交通麻痺となる。格差社会への不満を抱えた集団「バルス」により犯行声明がマスコミに届き、次なる犯行予告が伝えられた。宅配会社は荷物の受け付けを中止、それに伴いネット通販会社の出荷も停止、あらゆる産業で事業が滞りはじめた。追い打ちをかけるように、バルスは予想を超えた要求をつきつけてきた!
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Posted by ブクログ
小泉内閣時代に製造現場への派遣が解禁された時から、現在に至るのはある意味「必然」だったと思う。そして一度その領域に足を踏み入れたら二度と抜け出せないだろうなぁ、とも思う。本作のような「革命」でも起きない限りは。
企業が非正規労働者を雇用の調整弁としていること、そして消費者が「送料無料」の恩恵を受けるために、その水面下で大勢のワーキングプアが苦しんでいる、と似たような構図は他にも存在していると思う。
例えば原発問題。みんな東北の大震災で原発は危険という認識は持ったはず。そもそも何万年単位での高レベル放射性廃棄物の管理なんて、人智を超えていて人類の手に負えない、って薄々気付いているはずなのに、じゃあ原発を全部無くす代わりに電気料金が跳ね上がります、となったらみんな反対に回る。
「総論賛成、各論反対」。本作で言えば「非正規労働者を正社員に、その代わりにすでに正社員の者の給料は下がる、送料も負担する、物価も上がる」となったらみんな反対するに決まっている。これは「構造的な問題」であり、もはや後戻り出来ないだろうなぁ、と思う。
本作の「革命」はある意味「夢物語」。だからこの話を一言で言うなら「大人のお伽話」かな?
Posted by ブクログ
トップレベルの私立大学に通う百瀬陽一の就職戦線は冴えなかった。名の知れた大企業への就職に囚われていた陽一は、再チャレンジする為に就職留年を決める。留年のあいだ派遣会社を通じて世界最大のネット通販会社《スロット》の物流センターで非正規労働者としてアルバイトをすることに。
そこで見たのは、派遣労働の過酷な職場環境、さらに膨大な商品の運送業務に忙殺される大手総合物流企業の厳しい現場だった。
社会で派遣やアルバイト、パートが重用されるようになったのは何時からだっただろう。
多くの主婦たちや学生にとっては短時間のパートは働きやすかった。
けれど、そのシステムは働きたい人々、働かなければならない人々にまで広がっていく。
それは格差が大きくなることでもあった。
労働のシステムを考えさせられた作品であった。
Posted by ブクログ
『バルス』楡 周平著
働く世界の厳しさ ☆☆☆☆☆
将来の不安との闘い☆☆☆☆☆
資本主義とは? ☆☆☆☆☆
主人公/大学生が派遣アルバイトを始めます。理由は、就職浪人をしたため、学費を稼ぐためです。派遣先は、グローバル通販企業の物流センターです。
彼の派遣アルバイトという世界を通じて、読者は下記のテーマを考察する機会に出会います。
・厳しい就職活動。
・正社員と派遣社員の環境の違いと格差。
・資本主義とはなにか?
【厳しい労働環境。その背景は?】
派遣先のグローバル通販の物流センターでは、徹底したコスト管理が実行されていました。たとえば、作業員1名あたりのピッキングする点数は、1分あたりのノルマが定められています。それが常時計測され、下回ればワーニングが出る仕組みです。
なぜ、そこまでコスト管理をするのか? それは、部流センターに発注をする個人客からの請負単価自体が安いからです。たとえば「配送料無料」というサービスを実行しても利益を出すには、徹底したコスト管理が必要となるからです。
【同窓との再会。つかのまの安らぎ】
厳しい労働で体力ならびに精神ともに消耗する毎日。そんな中で、彼は高校の同窓と会います。ミュージシャン志望だった同窓は、結局その道を断念し、彼と同様に派遣で働く生活でした。
彼と同窓は、同じ派遣の現場を体験した仲間として食事をともにすることになります。
その席で、彼は同窓にある考えを伝えたのでした。
「もしも、グローバル通販に一矢を報いたいならば、いい考えがある。」
【事件?事故?爆発が・・・。】
その食事会からしばらくの期間が過ぎたあと、事件が起こったのでした。
その事件がグローバル物流センターから出荷された荷物の「爆発」です。
爆破した犯人の名前は「バルス」。
アニメ「天空の城ラピュタ」で描かれた破壊の呪文の名前です。
「バルス」の犯行声明に記載された要求事項はお金¥ではありません。
派遣労働に関する法律の是正と、派遣労働者に対する権利の是正です。
【読み終えて】
読者側で、爆破事件/テロの動機、そしてその犯人を推察することは容易です。したがって、ミステリー小説としては、多少の消化不良を起こすかもしれません。
この小説は、ミステリーというよりも、資本主義、正社員・派遣社員の構造、そして就職氷河期世代の迫りくる未来を考えては・・・?という示唆を与える小説となっています。
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