楡周平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレダイエーの創業者・中内功を彷彿とさせる経営者塙太吉を主人公とした物語。
前半は彼の成功ストーリー、後半は現代に飛びミステリ匂いをさせたエンタメ小説の構成。前半はビジネスマンとしては非常に興味深かった。まるで経営の教本のような展開。その中で相棒の失策や乗っ取り屋の陰謀に巻き込まれていき絶対絶命のピンチに…。そのピークで第2章、急に現代になり語り手も別人に変わるため少し拍子抜けしたが、そこから現代の経営者が抱えるスーパーの経営課題や一族経営企業の相続問題が入り混じり繋がっていく。タイトルの「砂の王宮」、塙が作り上げた帝国が代替わりですぐに脆く崩れることを表現したものであるが、一方で婚外子で敵とし -
Posted by ブクログ
認知症と安楽死、尊厳死にまつわる物語。
藤枝家長男が医師、次男が弁護士、父が元医師で、父が認知症を発症するところから、父が残した事前指示書に従ってとある病院に入院し、そして亡くなるまでが前半。義父の死に疑念を抱いた、看護師で次男の妻の友人から話が広がっていくのが後半。
裕福な長男家と、弁護士なのに信念をもって儲かる仕事をしないために裕福とはいえない生活を送る次男家のお金をめぐる対比や、後半にそんなことってあるのかよ・・・とショックを受けざるを得ない展開もあり、物語として面白く読めた。
認知症になって意識もなく、周りの人に迷惑かけまくるような感じになったときに、生きていたい人ってどれだけいるん -
Posted by ブクログ
楡周平『終の盟約』集英社文庫。
認知症を患った高齢者の安楽死、尊厳死をテーマにした社会問題小説。
誰もが近い将来に起こり得る自身の老いの問題、今まさに或いはこれから我々が抱えるであろう高齢家族の問題に斬り込んだ秀作。自分や家族のことについて色々と考えさせられた。
父親から二代続く内科医の藤枝輝彦はとある事件を切っ掛けに父親の久が認知症であることを確信する。輝彦は父親が書いていた『認知症になったら専門の病院に入院させる。延命治療の類も一切拒否する。』という内容の事前指示書に従い、父の旧友が経営する病院に入院させる。
輝彦は父親の長い入院生活を覚悟していたが、程無くして父親は心不全により突 -
Posted by ブクログ
興味深いテーマである上に文体が大変読みやすく、さらにストーリーがよく練られていたため、それなりのボリュームでしたがあっという間に読み終えました。
最大のテーマは安楽死ですが、それを取り巻く介護、認知症、延命措置、後期高齢に備えるお金、現代の医療制度など、考えさせられることばかりの1冊です。
かつて内科医だった藤枝久は85歳で認知症を発症。
妻には先立たれており、前もって用意されていた事前指示書には一切の延命措置を拒むこと、また認知症になった場合は速やかにしかるべき施設への入所を望む旨が記載されていた。
久の長男・輝彦は指示書に従い、父を専門施設に入所させるが入所間もなく久は心不全で突然死す -
Posted by ブクログ
ちょっと重厚な本を読まないと行けなかったので、
気分転換に楡さんの最新の文庫本を読んでみました。
コロナ真っただ中に、「予言の書」と話題にもなった(らしい)小説。
コロナ前の話ですが、新種のインフルエンザウィルスが出現し、
日本中が大混乱に陥ってしまった際の、国の対応について書かれている。
楡さんの他の書籍からも感じることだが、
強烈な日本に対する著者の危機意識と課題・解決策の提示を感じさせてくれる本になっている。
純粋に小説を楽しむだけでなく、
日本の将来についても自ずと考える機会をくれる本である。
小説内では、人為的にインフルエンザが作られた設定になっているが、
実際のところはどうであ -
Posted by ブクログ
◎コンビニ業界の闇を暴き世に問う名著。だってコンビニのとこだけはノンフィクションだもん。消費財メーカーの営業をしているので小売流通業のビジネスについてもいささか知ってはおりますが、ほんとコンビニはえげつない。NHKをぶっ潰す政党の次にできるのはセブンイレブンをぶっ潰す政党だとすら思う。
◎相葉と同じ立場のプロ経営者が率いる組織で仕事したことがあるけど、イカリ屋のように外部から後輩引き連れてやってきて、生え抜きは経営層に皆無になりました。ただ下降気味の業績もちゃんと戻して社員にボーナスで還元したし、経営判断が悉く実績を上げたし、平社員だったこともあるけど周囲の評判は良かったんだよな。ただしその -
Posted by ブクログ
(上下巻合わせてのレビューです。)
仮想三国志を思わせるような物語。
小学生のころ難しい漢字の人名だらけの三国志に挫折して以来、
中国の歴史小説は敬遠していたけれど、
そんな自分でもあっという間にのめり込んでしまうお話でした。
間違いなく楡さんの最高傑作の一つになりそう。
楽天という5つの国の中では最小・最弱に生まれた主人公が、
純粋なまでに国(皇帝)のために命を捧げようと奮闘する物語。
どんな困難・ひどい仕打ちに遭遇しても清く美しい心を忘れず、
ただ純粋に国のために働く姿はちょっとわざとらしいけれど、
それでもいやらしくなく思わず「負けるなー!」と応援してしまう。
こういうアツい小説は -
Posted by ブクログ
(上下巻合わせてのレビューです。)
楡さんの文庫最新刊を年末に読みました。
今回は、エリート官僚・大物政治家・病院の会長たちが、
婚姻や大金を用いて、日本の中枢にまで上り詰めるべく画策するドラマ。
(予想できると思いますが、)かなりドロドロです。
エリート官僚と政治家の娘の結婚を巡り、
昔の女がでしゃばって邪魔をしたり、
政治家と病院の会長の若かりし頃の過去がクローズアップされたりと、
盛り沢山の内容です。
ちょっと関係者の繋がりがあり過ぎて、現実味はないのですが、
そこはまぁフィクションの小説なので仕方ないでしょう。
その部分を差し引いても、
先の展開が気になって