楡周平のレビュー一覧
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とある百貨店の人に「うちは富裕層ターゲットなんで庶民は相手にしていません。きちんとした格好じゃない人に来られるとブランド価値が下がります。」と言われたことがある。自分に対する評価ではなかったがもう二度と行くまいと決めた。信用は瞬間に消え失せる。
その真逆に信用第一で企業を育て上げたのがSEIKOの創始者服部金太郎だ。この小説は彼の一代記だ。信用以外にも、知と技術、そして盟友を大切にする姿に心を打たれる。資源のない日本が近代化し経済成長を遂げられたのは学問と技術を大切にしたからだろう。福沢諭吉に蒙を啓かれ、SEIKOに夜学をつくる様はそれを物語る。辻や渋沢栄一からの薫陶、鶴彦との二人三脚は大事 -
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近い未来ほぼ確定しているであろう未来の残酷な現実に強制的に目を向けさせられる作品。
なんとなく知っている未来の日本の姿に皆さん真剣に向き合っていますか?と問いかけられている。
誰かが何とかしてくれる、何とかなるではなくて、
きっとこうなるし、この未来を変える力もアイデアも出てこないからその上で僕たちや子供たちの世代でどう生きていくのか考えていきましょうと。
ネガティブな未来をそのままネガティブに捉えるのではなくそれを知った上で一人ひとりが考えていくことが大切ということで。。
これまでの常識や経験が一切通じず役に立たない時代がここまで来ている。
目を瞑りたくなるページも多々あったけどこのタイミン -
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子育て世代に読んで欲しい。
日本の未来はどうなるのか?日本人の未来はどうなるのか?
日本の未来を憂える人生の勝利者が、コンサルタント会社に「日本の20年後、30年後の姿を予測してくれ」と頼む。小説の形で語られるが、限界集落と言われるように日本の限界国家の姿が語られていく。
高齢者の高齢者による高齢者のための政治。
まさしくその通り。野党は与党を叩くためだけに四苦八苦し、与党はいかに自分たちが長く政界に留まり力を持つかだけに汲々とする。
日本の優れた頭脳も、日本の未来のためではなくない、自分の未来のためだけに使われている。
この世界の中で若者はどうやって生き残っていけば良いのか?
すでに本当に優 -
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ネタバレ限界国家、確かにそうかもしれないと思った
ただ、どの視点で見るか、どの立場で見るかによって大きく見え方が変わるのがこれからの世界であり日本だとも思った。
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本書の文中より抜粋)
「現代は先を読めない者にとっては悲劇。先を読めるものにとっては喜劇」今日本が直面している状況がこのまま続けば、悲劇につながることは間違いない。しかし、その先に開けるであろう未来に想いを馳せると、一時的なことに過ぎないように思えてきた
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少子化という未だかつてなかった問題解決を日本のみならず多くの先進国が取り組んでいる。
しかしそもそも画期的な解決方法などはなく、長期視点で -
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少子高齢化という社会が進むとどのような未来がやってくるのかを描いた小説です。一読の価値はあるかと思いました。
印象に残ったのが、職業寿命という言葉です。同じ会社、同じ仕事で一生終えるなんてことは、ごく稀なケースであり、多くの仕事はテクノロジーの進化によりなくなっていくことを予測しています。つまり、職業寿命がどんどん短くなるということです。都市に人口が集中し、過疎化が進む地域がほとんどになることになります。
韓国の少子化のスピードにも驚きました。3世代後には、人口が現在の6%になると言われているのだと。
今から、人口を維持する対策をとったところで、大きく変わることはもはや難しい環境になったのだと -
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楡周平『限界国家』双葉文庫。
20年後、30年後の日本社会の姿を浮き彫りにする未来予測小説。
少子高齢化、実質賃金の減少、物価高騰と二重苦三重苦に喘ぐ現代の日本社会。最近の人口統計を見ても、人口が増加したのは東京だけどいう深刻な状況。地方では過疎化が加速し、身近なところでは、小中学校の統廃合、バス路線の廃止、商業施設や飲食店の閉店が相次いでいる。かつて賑わいを見せた駅前などはシャッター通り商店街と化している。
地方で稼働していた大企業の工場も次々と閉鎖され、事業統合されている。技術開発の波に乗り切れず、様々な企業が事業を売却したり、縮小している。さらに急速な技術革新が様々な事業の廃業に拍 -
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ネタバレSEIKOの創業者、服部金太郎の話。丁稚をしていた少年の頃から時計に興味を持ち、鉄道が各地を繋ぐようになれば時計は必須で、その時計で商いをすればという大きな志を持っていた。周りを、人々を観察する力が備わっていたのが素晴らしい。丁稚期間が終わり、時計店に修行に行くもその時計店がお金を返せず潰れたり、やっと自分の店を持てたのに大火で失ったり、その後出会った職人たちと精工舎を創業し大きくなったのに関東大震災で本店と工場を失ったりと苦労だらけだったのに驚いた。そしてそこから立ち上がり大きくなっていく力強さに感動した。
この本を読むと、時計を作る職人たちの誇りや懐中時計から腕時計を開発しようとする向上心 -
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コロナ禍に会社がフルリモートになり、釣りが大好きで週末は関東近郊の釣り場に通っていた主人公、晋作はこれを機に…とヒラメがよく釣れる噂を聞きつけ東北三陸の物件を探す。すると家具家電付き敷金礼金ナシ即日入居可でしかも家賃が激安のピッタリな物件がヒット。移住を決めるのだが、コロナ禍で都会から来た人間に対する風当たりは強く、また娯楽のない田舎あるあるなのか町民の噂話に振り回されたりと大変なこともしばしば起こる。そこで空き家問題に直面し、物件の大家である百香(市役所勤務で空き家問題を担当)と協力していくストーリー。
空き家問題に関しては、こんなに上手くいくのか?というところはもちろんある。だがしかし、上 -
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いろんな業界を取り上げて小説を書く楡周平さんが、流通業界を舞台に描いた作品。モデルはダイエーの故・中内功会長と言われている。
小説の主人公である塙太吉は、戦後の神戸の闇市で薬屋を営み、スーパー『誠実屋』を開業、飛躍的に急成長した店は全国展開をしていく…このストーリーはまさにダイエーそのものだ。
実際の小説の展開にも、いくつかダイエーで語り継がれている逸話と同じような話が描かれる。
・安売を続けるために、メーカーがつけた商品の製造番号を削り取る話。
・出店した地域の地元商店街との軋轢を生む話。
・◯円以上買う客に映画のタダ券をあげるという商法。
・新婚旅行を仕事のために早めに勝手に切り上げ -
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エリートサラリーマンが、大企業の娘と結婚したことで様々な波乱が巻き起こる。その会社には絶対的権力を持つ創業者の社長がいて、部下は全く逆らえない。
創業家の令嬢と結婚するための条件は、
1.婿養子になること。
2.会社の後継者には直系の娘がなり、自分はなれないこと。
3.生まれた子供は創業者夫婦に養子縁組すること。
4.財産は引き継げないこと。
というもの。
主人公は仕方なく条件を飲み結婚し、2億のマンションを義親よりプレゼントされ、会社の役員に就任し、順風満帆な生活が始まったと思われたが…
・毎晩奥さんが丹精込めた手料理が食卓に並ぶ→良き子種を得るため種馬にいいエサを与える。
・何でも創業 -
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『サンセット・サンライズ』
楡 周平さん 初めまして
「脚本がクドカン(宮藤官九郎)で
主演が菅田将暉?
面白いに決まってんじゃん!」
これは、娘との会話です
娘と映画を観るんなら (約束してないけど…)
サッと予習しとかなきゃ……読み始めました。
すっごく おもしろかったです。
お星さま ☆たくさん付けちゃいます☆
主人公は大手電気機器メーカー・シンバルの東京支社に勤務する 西尾晋作さん。
コロナ禍が猛威を振るい始めたなか、会社が
テレワークを導入することに…。
釣りが大好き 西尾さんは 隙間時間に
釣りができるよう居住地を宮城県の「宇田濱町」に決定する… -
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自動車業界にとってEV車は過去のガソリン車の遺産を継続できない窮地に追いやるものとなる。1千社をこえる中国国策での製造販売は世界の車製造会社にとって脅威であり、次なる戦略を立てる必須の課題だ。本書では超高級市場への舵取りをするために、イタリアの手作りの超高級車製造会社と協調・提携に舵を切る。人材の抜擢、人材の活用、日本・イタリヤ固有の文化芸術も取り入れた知恵と工夫を盛り込んだアート的車を手がける。現実、ガソリン車の行末は見えており次なる移動手段の乗り物を作り上げるのは必須であり、安価な製品を持つ中国企業・競争相手との差別化を意識した戦略戦術が今求められていると思う。