楡周平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一代でSEIKOを創業、成功に導いた服部金太郎のほぼノンフィクション作品。
この時代の成功者は、誰しもが国家天下のためと言うことを信念に持ち、目先の美味しい話に飛びつかず、将来のことを見据えた事業展開をしているなぁと思えた。
住友財閥や三菱財閥の話も読んだが、事業で得られた利益を社会に還元し、顧客の信頼を得るというのが共通した考え、振る舞いだったのを知ると、今も昔も行き着くところは人との関わり合いなんだろうなと感じた。
一番印象にのこった台詞は、322ページ。
「入りたての職工はもちろん、学校出の技術書だって、精工舎に入ってはじめて時計の製造に携わる。人間にたとえれば赤子なんですよね。まっさらな状態で生まれてきた赤子は、親から言葉を、礼儀、作法を教わりながら一人前になっていく。それと同じように職工も技術者、我々先達の仕事を見、教えを受けながら成長していく。そうして考えると、果たして私は、そうした覚悟を持って後進に接してきたのか、親としての職分を果たしてきたのだろうか。」 -
Posted by ブクログ
小説というより日本経済の未来を予見する経済書。
楡周平氏のことだから、おそらくベースとなる情報とデーターは事実に基づいたものだろう。
地方から人が減って都市部に集中する。その地方の減少を「限界集落」と呼ぶが、これが国家単位で進み、やがて日本が「限界国家」になるという予想。
日本経済をリードしてきた老練の経営者と、まだ学生ながらベンチャーを立ち上げた若い経営者の議論が面白い。老齢な若い経営者が日本を対象にしていないビジネスモデルを説明すると、老齢経営者が「日本に見切りをつけるのか?」そして日本が衰退することに対して君たちは救おうと思わないのか、といった発言をする。しかし若手は、こんな日本にしたのはあなたたちではないか?少子化だってなんでもっと早くあなたたちは手を打たなかったのか?自分たちのつけを若者に押し付けるのはやめて欲しい。そして自分たちはそんな「日本」という概念をそもそもビジネスの対象とせず、はなから世界をマーケットと見ている、と話す。
「人口減少」「産業構造の変化」「雇用基盤の脆弱化」、今これを放置しておくと間違いなくこの国は巨大な限界集落「限界国家」になる。
テクノロジーの進化は人間の労働力からの解放を目指している。解放された人民は仕事をしなくても良くなる?収入の機会が減少すると本来社会が必要とする人口はそもそも小さくなるのではないか。少子化は逆な見方をするとその適正規模に向かっているのかもしれない。
ある意味ホラーな小説だ。 -
Posted by ブクログ
物流のラストワンマイルを担う自社の強みを生かし、今までの請負体質から脱却しネット通販という新規事業を立ち上げていく小説。時代は郵政民営化の時期でサラリーマンはPHSを使い、ネット通販も黎明期。上から目線の顧客をギャフンと言わせる痛快さがあり、新規事業を立ち上げ周囲の仲間を巻き込んでいく様にはワクワク感があり、事業構想も著者で実際に立ち上げたことがあるかのような緻密さがあり、楡ワールドに引き込まれるのは待ったなし。役所勤めだとあまり経験することはないけど、企業の会社員がボトムアップで新規事業を立ち上げていくことへの憧れが強まった。
"安定は情熱を殺し、緊張、苦悩こそが情熱を産む"
繰り返し登場したこのフレーズはこれからも心に留めておきたい。
ただ、強いて言うと、色んな人に事業の説明をして回るにあたってなんども同じ表現が出てくるのはくどかったかも。