楡周平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
久しぶりに本屋さんに行った時に文庫本化されたと宣伝されていて興味を引いた本です。限界集落という言葉を聞いたことがありますが、限界国家とはスケールの大きな話だなと思って興味深く読みました。小説の形を取ってはいますが、著者の楡氏の人口減少が確実視されている日本の将来の問題点を述べています。
この本の特徴は、人口減少による悲惨な面だけを記述するのではなく、人口が減少したからこそ起きる良い変化についても述べています。本の中で述べられていたことで共感したのは、自分が経験したことは、世代が離れた若い人や子供には役に立たないどころか、下手をすれば害になるということです。
私は親に与えられたコースを辿って良い人生だったと思っていますが、同様のことを自分の子供にはすべきではないと確信しました。この点だけは、良い子育てをしてきたなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・内需依存の経済が成り立つためには、1億人の人口が必要なのに、 今現在日本の GDP の7割は内需である 。今の日本企業の経営者、政治家、官僚にその時の備えができているのか(p19) 前例主義に加え、 キャリア官僚は経験を積むために数年単位で部署を転々とする。野心にかられてリスクを犯すより、出世の鍵はいかにしてミスを犯さないかが 修正となる(p34)
・人口動態統計は精度が高いと定評があるが、 現行と合計特殊出生率から算出したもので、人口減少に伴う当該地域の環境変化といった 要因は一切考慮されていない(p38)
・ 秀才 あるいは 専門家と称される人間には2つのタイプがある、1) 自分の知識、見識に絶対的な自信があり 断定から入るタイプ、2) 相手の話を十分に聞いた上で、一つ一つ 論点について 丁重かつ慎重に持論を展開するタイプ(p57)
・ 日本以外にも医療が無料で受けられる国があるがいつでも どこの病院にも行けるわけではない。大抵は受診、治療が受けられる医療機関は 家庭ごとに決められていて、しかも 予約が必要とされている。つまり 急な病に襲われても、まずは 予約。精密な検査が必要と診断されれば設備の整った病院をまた 予約、その日が来るまで耐えなければならない 句点 だから 富裕層は迅速に 設備の整った 病院で受診、治療を受けるために高額の料金を支払って 民間の保険会社と契約を結ぶ(p67)
・中国は2021年に人口 300万人未満の都市に 限って、農村戸籍 対象者の移住を認めることにした。しかし 農村戸籍の大半は都市部で暮らせるほどの財力を持っていないので出てきたところで貧しい暮らしを強いられる、それなら 条件次第では 日本に移住しようと考える人も少なくないかもしれない(p74)
・革新的な技術が登場すると、あって当たり前だった 職業がまるごとなくなってしまう。そこまで行かずとも必要とされていた人員が激減することになる。これが 職業 寿命 の意味である(p91) 従って これからの時代を生き抜くためには、世の中の流れを読む力、何があっても食べていける能力を身につけなければいけない(p99)
・少子化が問題視された頃から散々言われてきたが 政治家は何の有効策も打ち出さなかったどころか、若い世代よりも高齢者を優遇する政策に重点を置いてきた。選挙に勝たなきゃ 議員でいられないわけだから 高齢者の関心を買う 政策を打ち出すのはわかるけれど、そのツケを若い世代に押し付けるのはおかしい (p136)
・ 一般の人にはあまり知られていないが、 治験データの処理、効能 分析 、副作用 の内容、発生頻度、安全性の評価など、全てが 製薬会社の手によって行われている(p150)
・実は医療費が最もかかるのが、健康寿命を迎えた後からである。病気になれば 医療費が、体が思うように動かなくなれば、そこに 介護費が重なってくる。その双方を必要とする高齢者が年を重ねるごとに増えていく(p157)
・親の職業感や価値観で、これから社会に出ようという世代にアドバイス なんかできない(p164)
・組織にはしがらみもあれば既存ビジネスとの兼ね合いもある、 ベンチャー企業がまっさらな カンバスの上にフリーハンドで絵をかけるのに対して、大企業の場合は 製薬が多すぎて好き勝手に絵を描くことはできない。おまけに 師匠がたくさんいて 随時 あれこれ指示してくる(p167)
・どうしたら客に喜んでもらえるかを第一に考える店は必ず繁盛する、 ところが 儲けることが先に立つと原価率を下げ、人件費を切り詰めたりすると数字を重要視するようになる。客は鋭いもので儲けを重視する 店をたちまち 見抜いてしまう(p171)
・仮想通貨 もNFTもそうだが、今までの常識が通じない 新しい市場が現れると 、 ネガティブな反応を示すのは オールドモデルの中で生きてきた人たちである(p236)
・これから国をまたぐ ビジネスの決済には 仮想通貨が主流になるので 本社をどこの国に置こうと事業には何ら支障をきたさない(p247)
・ 若い世代はネット ネイティブ、 IT技術の進歩とともに育ってきた世代である。しかし 親の世代は、新しい技術が次々に登場したかもしれないが、IT技術 に比べれば進化のスピードはとてもスローで、雇用に及ぼす影響はほとんどなかった。むしろ 新技術は 新製品を誕生させ、雇用の拡大につながった。今は全く逆で、スマホのように 一つのデバイスに機能が集約されていく時代であるから、 新技術を活用した製品が現れても、かつてほどの雇用は生まないで、 むしろ 縮小させる(p269)
・人間は何を目指して 新技術の開発に取り組んできたかというと、労働の軽減、最終的には労働からの解放だと考える。 ゆりかもめは開業時 から 無人運転で運行。山手線でも自動運転を目指した実証運転が始まっている。リニアもそう、自動車も自動運転になる日が遠からずやってくるでしょうし、アメリカや 中国では自動運転のタクシーがすでに走り始めている(p283)
・自動車メーカーが見直さなければならないのは、サプライチェーンだけではなく、全国 そして海外に張り巡らした ディーラー 網も同じである。アメリカの EV 大手は 受注も代金決済も 全てネットを返して行っている。ここでもまた大量の雇用が失われることになる(p301)
・タクシー会社だけでなく 運送会社も必要なのは 車両だけ、人事管理や 安全管理 給料計算も不要になる。 ドライバー どころか 事務職だってほとんど いらなくなる(p305)
・人類は2度の産業革命 を経験してきたが、いずれも 火を用いるものだったので 、コンピューター、インターネットの出現は 情報化社会を急速に発展させたという観点からすると、第3次産業革命といえる。ただ2回の産業革命と根本的に違うのは、2つの革命が新たな産業を創出し、膨大な 雇用を生んだのに対して、コンピューター、インターネットの出現は、雇用の喪失 どころか雇用を縮小させ、職業 寿命を縮めることになった(p330)
・労働に対する概念 、 労働の対価で生活を成り立たせるという概念というか 通念 そのものが成り立たなくなる(p336)
2025年11月7日読破
2025年11月7日作成 -
Posted by ブクログ
少子高齢化の行き着く先とAIの進化がもたらす影響を考察した小説。
人口動態が経済を予測する上で最も蓋然性の高いデータであることは周知の事実である。それを真剣に考えると日本の産業の先細り、高齢者増加に伴う社会保障負担の増加は避けられない。ならそれに対してどのように産業を変革していくことが日本を豊かに維持できるのかについて真剣に考えさせられる本だった。本書で取り上げられていたプロジェクト単位の人材採用やSNSを用いて世界から人材を探しにいくという考え方には納得感があった。いまだに新卒一括採用を行い、足元の身になるかわからないような人材育成をする大企業で働いていても目に目えない速度で成長している経済に対してキャッチアップできるのだろうかと不安を抱く。同時に広く深く多様な知識を保有していることが、誰にも依存せず自分を守っていく上で大切であると直感的に感じたら、 -
Posted by ブクログ
『サンセット・サンライズ』
この言葉の真意を知った時に、人の想いの温かさを感じることができた。
映画視聴後に文庫版を読んだのですが、より細かな描写と登場人物たちのありのままのキャラクターが心地よくて没頭して読み進めることが出来ました。
人と深く関わることは幸福と不幸が隣り合わせで不安定なもの。それが人間関係であり、私が深い人間関係を恐れるのはこのことが理由だったと感じました。
でもその恐怖があるとしても人の出会いというのは運命的で、数少ない友人たちには感謝してもしきれないほどの幸福を貰っています。
人間関係の喪失と新たな繋がりを抱えていけるように、自分も少しでも人と深く関わって行けるようにします。
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Posted by ブクログ
『象の墓場』楡周平
危機感と変革の必要性
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【物語】
ベストセラー小説家、楡周平さんの『象の墓場』は、2012年に経営破綻したアメリカのコダック社をモデルにした経済小説です。
※作中は、ソアラという社名です。
コダックは、デジタル化の波に乗り遅れ、巨大な帝国を失いました。
この小説が優れているのは、単に大企業の失敗を描いているのではなく、その失敗の裏にある組織の病巣と、変革の難しさを浮き彫りにしている点です。
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【コダックの教訓:なぜ巨人は滅びたのか】
コダックはフィルム事業で莫大な利益を上げていました。しかし、その成功体験こそが、彼らの未来を阻んだのです。小説では、その原因をこう描いています。
①ライバルは業界の外にいた:
コダックが戦うべき相手は、フジフィルムのような同業他社ではありませんでした。
デジタルカメラという新しいハード、画像を編集・共有するソフトウェア、そして人々のライフスタイルそのものの変化が、彼らのビジネスモデルを根底から揺るがしました。
②危機感の欠如:
新しい技術への投資はしていたものの、それが既存のビジネスを破壊するほどの脅威であるという危機感が、経営層や組織全体に浸透していませんでした。
③実行と修正の遅れ:
新しい事業を立ち上げても、収益性の高いフィルム事業と比較してしまい、迅速な実行、検証、そして修正ができませんでした。
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【組織が生き残るためのヒント】
『象の墓場』は、企業や組織が生き残るために必要な要素を教えてくれます。
①視野を広げる:
自社の業界内だけでなく、外部の技術やトレンド、そして人々の生活様式の変化に目を向けること。
②危機感を共有する:
経営層がどれだけ危機感を持っていても、それが組織全体に伝わり、行動に結びつかなければ意味がありません。
③迅速な行動と修正:
完璧を求めすぎず、スピーディーに実行し、失敗から学び、軌道修正していくことが重要です。
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【読み終えて】
この小説を読むと、「利益にあぐらをかいていたら、いつか足元をすくわれる」という当たり前の教訓を改めて痛感させられます。
コダックの物語は、まるで他人事のように聞こえるかもしれませんが、私たちの仕事や日々の生活にも通じる部分もあるかもしれません。 -
Posted by ブクログ
年金制度の崩壊、歯止めの効かぬ少子化、高齢者ばかりの政治家、経営者。気になるワードがいっぱい出てくる。
小説だから、経済書よりも大胆な処方箋とかわからないかなと思って読み始めた。若い人に期待する話しの流れで,仮装通貨や、NFT(デジタル証明書)の話題は勉強になった。
しかし20年後30年後の事さえまともに考えている指導者がいないと言う指摘は、その通りだろうと思うが、日本人は、幕末や第二次世界大戦の後も、大きな歴史の転換点で、鮮やかに再生した事ある・・・!本を最後まで読んで若者に対して出来るのは、「日本どころか世界情勢も刻一刻と激変する真っ只中に身を置いている事を知らせるくらい」と書いてあるが、高齢者の自分が出来るのは、スマホやITを恐れず少しでも使ってみることだと改めて思う。
いずれにしても、長生きしてどんな未来が来るのかを見てみたい。 -
Posted by ブクログ
戦後間もない混乱期、天涯孤独になった貴美子は、焼け野原になった横浜で以前家庭教師をしてくれていた清彦と偶然出会う。
2人は生きるために闇市のバラックで、簡素な食堂を営む。
ある日、貴美子が1人で仕込みをしているところに若い米兵2人が入ってきて襲われそうになる。
そこに清彦が仕入れから戻ってきて、2人を相手に格闘となり、近くにあった包丁で2人を刺し殺してしまう。
貴美子は、清彦の身代わりになって逮捕されることを主張する。
その代わり、服役中の間に清彦は新たな2人の生の地盤を作ってくれと頼む。
清彦は渋々貴美子の提案を受け入れ、その間にしっかりと将来のために自立の道を立てようと決意するのだが⋯。