あらすじ
「憂国の士」であり、政界、財界のフィクサーとして名を馳せる前嶋が世界最大級のコンサルティング会社「LAC」日本支社を訪れた。用件は「20年、30年先の日本がどうなるか調査してほしい」というもの。命を受けたLACの津山は調査をはじめるが……。少子高齢化、AIの進化による職業寿命の短命化、地方の過疎化、優秀な若者の海外流出――。明るい材料が何一つないなか、津山が出した結論とは。そして、こんな国にしたのは誰なのか。すべての政治家、すべての財界人、そしてこれからの日本を背負う若者必読の書。
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Posted by ブクログ
近い未来ほぼ確定しているであろう未来の残酷な現実に強制的に目を向けさせられる作品。
なんとなく知っている未来の日本の姿に皆さん真剣に向き合っていますか?と問いかけられている。
誰かが何とかしてくれる、何とかなるではなくて、
きっとこうなるし、この未来を変える力もアイデアも出てこないからその上で僕たちや子供たちの世代でどう生きていくのか考えていきましょうと。
ネガティブな未来をそのままネガティブに捉えるのではなくそれを知った上で一人ひとりが考えていくことが大切ということで。。
これまでの常識や経験が一切通じず役に立たない時代がここまで来ている。
目を瞑りたくなるページも多々あったけどこのタイミングでこの本に出会えてよかったと思う。
Posted by ブクログ
子育て世代に読んで欲しい。
日本の未来はどうなるのか?日本人の未来はどうなるのか?
日本の未来を憂える人生の勝利者が、コンサルタント会社に「日本の20年後、30年後の姿を予測してくれ」と頼む。小説の形で語られるが、限界集落と言われるように日本の限界国家の姿が語られていく。
高齢者の高齢者による高齢者のための政治。
まさしくその通り。野党は与党を叩くためだけに四苦八苦し、与党はいかに自分たちが長く政界に留まり力を持つかだけに汲々とする。
日本の優れた頭脳も、日本の未来のためではなくない、自分の未来のためだけに使われている。
この世界の中で若者はどうやって生き残っていけば良いのか?
すでに本当に優れた人々は国や人種に括られることのない世界で活躍しようとしているという。
高齢者も自分の子孫の未来について考えるべき時だと思う。
Posted by ブクログ
限界国家、確かにそうかもしれないと思った
ただ、どの視点で見るか、どの立場で見るかによって大きく見え方が変わるのがこれからの世界であり日本だとも思った。
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本書の文中より抜粋)
「現代は先を読めない者にとっては悲劇。先を読めるものにとっては喜劇」今日本が直面している状況がこのまま続けば、悲劇につながることは間違いない。しかし、その先に開けるであろう未来に想いを馳せると、一時的なことに過ぎないように思えてきた
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少子化という未だかつてなかった問題解決を日本のみならず多くの先進国が取り組んでいる。
しかしそもそも画期的な解決方法などはなく、長期視点で「前向き」解決すること自体を諦めることで、さらに先の未来の新しい可能性や希望もある。
ただその諦めるという重要な決断というボタンを押すことができる人もいないのだろうとも、また思えた。
とりあえず自身のアクションとしては、
・世界や日本の未来にもっと関心を持っていろんなことを理解する
・新しいことを食わず嫌いせずどんどんやってみる
Posted by ブクログ
少子高齢化という社会が進むとどのような未来がやってくるのかを描いた小説です。一読の価値はあるかと思いました。
印象に残ったのが、職業寿命という言葉です。同じ会社、同じ仕事で一生終えるなんてことは、ごく稀なケースであり、多くの仕事はテクノロジーの進化によりなくなっていくことを予測しています。つまり、職業寿命がどんどん短くなるということです。都市に人口が集中し、過疎化が進む地域がほとんどになることになります。
韓国の少子化のスピードにも驚きました。3世代後には、人口が現在の6%になると言われているのだと。
今から、人口を維持する対策をとったところで、大きく変わることはもはや難しい環境になったのだと感じさせてくれる小説でした。
Posted by ブクログ
楡周平『限界国家』双葉文庫。
20年後、30年後の日本社会の姿を浮き彫りにする未来予測小説。
少子高齢化、実質賃金の減少、物価高騰と二重苦三重苦に喘ぐ現代の日本社会。最近の人口統計を見ても、人口が増加したのは東京だけどいう深刻な状況。地方では過疎化が加速し、身近なところでは、小中学校の統廃合、バス路線の廃止、商業施設や飲食店の閉店が相次いでいる。かつて賑わいを見せた駅前などはシャッター通り商店街と化している。
地方で稼働していた大企業の工場も次々と閉鎖され、事業統合されている。技術開発の波に乗り切れず、様々な企業が事業を売却したり、縮小している。さらに急速な技術革新が様々な事業の廃業に拍車をかけている。もはや日本はものづくり大国ではないのだ。
こんな日本の悲惨な状況を作り出したのは一体誰なのか……
本作は非常に面白く、新たな気付きもあった。もはや日本社会には明るい未来は無く、これからはよりグローバルで物事を考えなければいけないのだろう。
ストーリーは至って単純である。日本のフィクサーの1人と言われる東洋総合研究所の会長職にある前嶋がロサンゼルス・コンサルティング・グループ(LAC)に20年後、30年後の日本社会を予測して欲しいと依頼する。
LACのシニア・パートナーの津山百合は入社3年目の若手社員の神戸恒昭と共に前嶋の依頼について調査、分析を行う。調査に行き詰まった津山は知人の伝手でベンチャー企業の若手経営者の根本と前嶋を引き合せる。NTFやメタバースの世界に新たなビジネスを見出す根本の語る日本社会の未来の姿とは……
楡周平は現在の岩手県一関市の出身である。つい数年前に一関駅の東口にある某企業の地方工場が閉鎖された。この工場は某企業の地方工場の第一号であり、地方工場同士の事業の奪い合いと地方工場の統廃合の結果で閉鎖されたのだ。本作にも描かれる岩手の地方都市とは一関市がモデルではないかと思った。
本体価格800円
★★★★★
Posted by ブクログ
最近どこかでよく耳にすることが小説の形で書かれているのだが、こうして落ち着いて文字として読んでみると改めてハッとする部分が多かった。個人的に面白いのは、次世代技術としてメタバースとNFTを中心に取り上げる一方で、AIについておそらく全く触れていない点。本書が単行本として出版された2023年6月からの2年半で、生成AIは生活に広く浸透したが、そこを予言していない点に、時代の変化が速く、劇的で、予想が難しいことの証明にもなっているような気がした。
Posted by ブクログ
少子高齢化、DX、人口減少、過疎化、国の財政難など、様々な社会課題を分かりやすく伝える小説。
ベンチャー企業を立ち上げて挑戦する気概はないが、世の中の動きを的確に捉える、挑戦する若者をサポートするなど、次世代のために自分でもできることを考えさせてくれた。
Posted by ブクログ
久しぶりに本屋さんに行った時に文庫本化されたと宣伝されていて興味を引いた本です。限界集落という言葉を聞いたことがありますが、限界国家とはスケールの大きな話だなと思って興味深く読みました。小説の形を取ってはいますが、著者の楡氏の人口減少が確実視されている日本の将来の問題点を述べています。
この本の特徴は、人口減少による悲惨な面だけを記述するのではなく、人口が減少したからこそ起きる良い変化についても述べています。本の中で述べられていたことで共感したのは、自分が経験したことは、世代が離れた若い人や子供には役に立たないどころか、下手をすれば害になるということです。
私は親に与えられたコースを辿って良い人生だったと思っていますが、同様のことを自分の子供にはすべきではないと確信しました。この点だけは、良い子育てをしてきたなと思いました。
以下は気になったポイントです。
・内需依存の経済が成り立つためには、1億人の人口が必要なのに、 今現在日本の GDP の7割は内需である 。今の日本企業の経営者、政治家、官僚にその時の備えができているのか(p19) 前例主義に加え、 キャリア官僚は経験を積むために数年単位で部署を転々とする。野心にかられてリスクを犯すより、出世の鍵はいかにしてミスを犯さないかが 修正となる(p34)
・人口動態統計は精度が高いと定評があるが、 現行と合計特殊出生率から算出したもので、人口減少に伴う当該地域の環境変化といった 要因は一切考慮されていない(p38)
・ 秀才 あるいは 専門家と称される人間には2つのタイプがある、1) 自分の知識、見識に絶対的な自信があり 断定から入るタイプ、2) 相手の話を十分に聞いた上で、一つ一つ 論点について 丁重かつ慎重に持論を展開するタイプ(p57)
・ 日本以外にも医療が無料で受けられる国があるがいつでも どこの病院にも行けるわけではない。大抵は受診、治療が受けられる医療機関は 家庭ごとに決められていて、しかも 予約が必要とされている。つまり 急な病に襲われても、まずは 予約。精密な検査が必要と診断されれば設備の整った病院をまた 予約、その日が来るまで耐えなければならない 句点 だから 富裕層は迅速に 設備の整った 病院で受診、治療を受けるために高額の料金を支払って 民間の保険会社と契約を結ぶ(p67)
・中国は2021年に人口 300万人未満の都市に 限って、農村戸籍 対象者の移住を認めることにした。しかし 農村戸籍の大半は都市部で暮らせるほどの財力を持っていないので出てきたところで貧しい暮らしを強いられる、それなら 条件次第では 日本に移住しようと考える人も少なくないかもしれない(p74)
・革新的な技術が登場すると、あって当たり前だった 職業がまるごとなくなってしまう。そこまで行かずとも必要とされていた人員が激減することになる。これが 職業 寿命 の意味である(p91) 従って これからの時代を生き抜くためには、世の中の流れを読む力、何があっても食べていける能力を身につけなければいけない(p99)
・少子化が問題視された頃から散々言われてきたが 政治家は何の有効策も打ち出さなかったどころか、若い世代よりも高齢者を優遇する政策に重点を置いてきた。選挙に勝たなきゃ 議員でいられないわけだから 高齢者の関心を買う 政策を打ち出すのはわかるけれど、そのツケを若い世代に押し付けるのはおかしい (p136)
・ 一般の人にはあまり知られていないが、 治験データの処理、効能 分析 、副作用 の内容、発生頻度、安全性の評価など、全てが 製薬会社の手によって行われている(p150)
・実は医療費が最もかかるのが、健康寿命を迎えた後からである。病気になれば 医療費が、体が思うように動かなくなれば、そこに 介護費が重なってくる。その双方を必要とする高齢者が年を重ねるごとに増えていく(p157)
・親の職業感や価値観で、これから社会に出ようという世代にアドバイス なんかできない(p164)
・組織にはしがらみもあれば既存ビジネスとの兼ね合いもある、 ベンチャー企業がまっさらな カンバスの上にフリーハンドで絵をかけるのに対して、大企業の場合は 製薬が多すぎて好き勝手に絵を描くことはできない。おまけに 師匠がたくさんいて 随時 あれこれ指示してくる(p167)
・どうしたら客に喜んでもらえるかを第一に考える店は必ず繁盛する、 ところが 儲けることが先に立つと原価率を下げ、人件費を切り詰めたりすると数字を重要視するようになる。客は鋭いもので儲けを重視する 店をたちまち 見抜いてしまう(p171)
・仮想通貨 もNFTもそうだが、今までの常識が通じない 新しい市場が現れると 、 ネガティブな反応を示すのは オールドモデルの中で生きてきた人たちである(p236)
・これから国をまたぐ ビジネスの決済には 仮想通貨が主流になるので 本社をどこの国に置こうと事業には何ら支障をきたさない(p247)
・ 若い世代はネット ネイティブ、 IT技術の進歩とともに育ってきた世代である。しかし 親の世代は、新しい技術が次々に登場したかもしれないが、IT技術 に比べれば進化のスピードはとてもスローで、雇用に及ぼす影響はほとんどなかった。むしろ 新技術は 新製品を誕生させ、雇用の拡大につながった。今は全く逆で、スマホのように 一つのデバイスに機能が集約されていく時代であるから、 新技術を活用した製品が現れても、かつてほどの雇用は生まないで、 むしろ 縮小させる(p269)
・人間は何を目指して 新技術の開発に取り組んできたかというと、労働の軽減、最終的には労働からの解放だと考える。 ゆりかもめは開業時 から 無人運転で運行。山手線でも自動運転を目指した実証運転が始まっている。リニアもそう、自動車も自動運転になる日が遠からずやってくるでしょうし、アメリカや 中国では自動運転のタクシーがすでに走り始めている(p283)
・自動車メーカーが見直さなければならないのは、サプライチェーンだけではなく、全国 そして海外に張り巡らした ディーラー 網も同じである。アメリカの EV 大手は 受注も代金決済も 全てネットを返して行っている。ここでもまた大量の雇用が失われることになる(p301)
・タクシー会社だけでなく 運送会社も必要なのは 車両だけ、人事管理や 安全管理 給料計算も不要になる。 ドライバー どころか 事務職だってほとんど いらなくなる(p305)
・人類は2度の産業革命 を経験してきたが、いずれも 火を用いるものだったので 、コンピューター、インターネットの出現は 情報化社会を急速に発展させたという観点からすると、第3次産業革命といえる。ただ2回の産業革命と根本的に違うのは、2つの革命が新たな産業を創出し、膨大な 雇用を生んだのに対して、コンピューター、インターネットの出現は、雇用の喪失 どころか雇用を縮小させ、職業 寿命を縮めることになった(p330)
・労働に対する概念 、 労働の対価で生活を成り立たせるという概念というか 通念 そのものが成り立たなくなる(p336)
2025年11月7日読破
2025年11月7日作成
Posted by ブクログ
少子高齢化の行き着く先とAIの進化がもたらす影響を考察した小説。
人口動態が経済を予測する上で最も蓋然性の高いデータであることは周知の事実である。それを真剣に考えると日本の産業の先細り、高齢者増加に伴う社会保障負担の増加は避けられない。ならそれに対してどのように産業を変革していくことが日本を豊かに維持できるのかについて真剣に考えさせられる本だった。本書で取り上げられていたプロジェクト単位の人材採用やSNSを用いて世界から人材を探しにいくという考え方には納得感があった。いまだに新卒一括採用を行い、足元の身になるかわからないような人材育成をする大企業で働いていても目に目えない速度で成長している経済に対してキャッチアップできるのだろうかと不安を抱く。同時に広く深く多様な知識を保有していることが、誰にも依存せず自分を守っていく上で大切であると直感的に感じたら、
Posted by ブクログ
年金制度の崩壊、歯止めの効かぬ少子化、高齢者ばかりの政治家、経営者。気になるワードがいっぱい出てくる。
小説だから、経済書よりも大胆な処方箋とかわからないかなと思って読み始めた。若い人に期待する話しの流れで,仮装通貨や、NFT(デジタル証明書)の話題は勉強になった。
しかし20年後30年後の事さえまともに考えている指導者がいないと言う指摘は、その通りだろうと思うが、日本人は、幕末や第二次世界大戦の後も、大きな歴史の転換点で、鮮やかに再生した事ある・・・!本を最後まで読んで若者に対して出来るのは、「日本どころか世界情勢も刻一刻と激変する真っ只中に身を置いている事を知らせるくらい」と書いてあるが、高齢者の自分が出来るのは、スマホやITを恐れず少しでも使ってみることだと改めて思う。
いずれにしても、長生きしてどんな未来が来るのかを見てみたい。
Posted by ブクログ
書店で見つけた本だ。カバーのデザインに
魅せられた。20年後の日本を予測する。
インターネットに国境はない。
否が応でも、グローバル視点になるはずだ。
全体的にネガティブな見解だと思う。
Posted by ブクログ
日本が現在抱えている課題をマクロ、ミクロの視点から小説仕立てで書かれています。特に少子高齢化が進むことによる社会的事象は考えさせられました。多くの日本人に読んで欲しい1冊です。
Posted by ブクログ
概ね予想できる話の展開なんだけど、フィクションだからこその面白さもあるというか。
日本のあちこちで似たようなことが起きていたらいいのになと思う話だった。
Posted by ブクログ
新聞広告で知った本。著者のことも初めて知った。
日本の人口減少問題を取り上げた本である。日本の将来に暗澹たる気持ちになる。都市への集中が進むと、全体としてますます社会の高齢化に拍車をかけるようになる。
政治家は老若男女問わず、この問題に真剣に取り組むべきだと思う。
本文中、登場人物同士で次の会話がある。
「一生懸命勉強して、ええ大学に行くのも結構やけど、これからの時代を生き抜くためには、世の中の流れを読む力、何があっても食うていける能力を身につけなならんと思うんです」
「それは分かるけど、親の世代の経験則や価値観って、そう簡単に変わるもんじゃないわよ?」(p.99)
これはまさにそのとおりだと思う。変化に対応していく必要がある。自分の親も、何かにつけては昔のことを言う。自分としては、今の世の中を生きる時代、昔の価値観で言われても、どうしようもない。
高齢世代でも経営者ややり手の人は、どんどん新しいことにチャレンジしている気がする。スマホにしても、使用するアプリにしても、新しいことを楽しんでいる気がする。そのような人たちが世の中を引っ張っていくべきだと思う。
Posted by ブクログ
『20年、30年先の日本がどうなるかを調査してほしい』、財界のフィクサー・前嶋から依頼を受けた、コンサルティング会社『LAC』。
調査を始める津山と神部。
少子化、高齢化、AIによる技術革新…
日本はどうなると、結論を導き出すのか…
20年、30年後…
20年後も30年後も、生きてないかも…
と、考えると思考は停止する…
ただ我が子の時代に先送りをしてはいけないと思う。
バブル時代に花形だった家電業界。
見る影もない、三洋、シャープは外資に。
液晶テレビはほとんどが外資。
都銀も13行が合併,合併で、メガバンク3行に。
自動車もこの先…
今がよくても、20年,30年先は…
やはり自分でやっていけるだけの能力、資格を持たなければ、この先は…
企業は、政府は、守ってくれない。
根本や純平が言うようにメタバースを使ったベンチャーかもしれない。
が、成功する確率はどれだけか…
自分の身は自分で守らなければ。
自分に何ができるのか⁇
考えなければ先は見えない。
考えない人には未来はない。
子どもたちの世代に借金と問題を先送りするのはやめないと。
考えさせられる一冊だった。