青山文平のレビュー一覧

  • 白樫の樹の下で

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    先日読んで良かった青山さん。これもなかなかです。
    田沼政治が終わった頃、流行の竹刀剣道ではなく木刀による型中心の剣術道場に通う三人の若い剣士を描いた作品。
    時代小説で三人組といえば、武闘派、頭脳派、癒し系の仲間が力を合わせて事態を打開して行くというのが王道です。しかし、この作品で描かれるのは剣の道に邁進するがゆえに壊れて行く若者たちです。
    爽やかな感動のようなものはありません。妬みや破滅があります。しかし、それは道を究めようとする清冽さが、誤った方向に流れた結果です。
    純文学を目指いしていた著者の再デビュー作と言える作品。その主人公の一人の名前が青木昇平。著者のペンネームに模した名ですが、

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    2016年05月08日
  • かけおちる

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    2015年の直木賞作家さんです。
    別に賞につられたわけではないのですが、紹介文を読んでこれは好みかもと思って、文庫化されたこの作品を購入。
    当たりでした。
    身を削るようにして興産の道を進む武士と家僕と篤農家。そしてその婿養子。剣士ではなくとも武家の清冽な生き様を感じさせます。
    少々、女性たちの心情に無理を感じますが、何やらフッと笑を感じさせるエンディングも良く。
    このまま、こうした作品を書き続けていって欲しいものです。

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    2016年05月08日
  • やっと訪れた春に

    購入済み

    語り口は相変わらず良いが

    藤沢周平を思わせるような落ち着いた物静かな語り口はこの作品にも十二分に生かされている。しかしながら、ストーリー展開の方はやや冗長な感じで、特に7割方進んだところの記述に繰り返しが多く戸惑ってしまった。題名には納得できるところはあるのだが。サスペンス物として楽しむには、伏線やトリックがなさすぎる。

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    2025年11月23日
  • 底惚れ

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    終始ひとり語りで進む、異色の作品。
    なにせ最後まで主人公「俺」の名前が出てこない(笑)

    自分を刺して消えた女性を探し求めるうちに
    冴えなかった主人公の人生が変わってゆく

    軽快な語り口が絶妙

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    2025年11月12日
  • 遠縁の女

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    ★3の中。上でもいいかなー?

    なんだかんだで青山文平さんの四作品目。

    「つまをめとらば」方式。
    特に縛りもまとまりもない時代物短編三編。

    ・機織る武家
      芸(手に職)は身(家)を助く。

    ・沼尻新田
      清くて不純な開発は。

    ・遠縁の女
      俺も別嬪の幼馴染が欲しいぞー。

    この人のこういう自由な短編はおもしろいわー。
    「半席」とか「泳ぐ者」みたいな固定主人公の連作短編も悪くはないけど、特に説明も何も要らないこういう方があってるのかも。

    三編とも、どうということもない。
    何か大事件が起きるでもなく、歴史的な何かが起きるでもない。
    不思議もない。
    殺人もない。
    種も仕掛けもない。

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    2025年10月16日
  • つまをめとらば

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    短編集でどれも短いが、登場人物がそれぞれ多様性を持ち引き込まれる。短編で終わらせるのは勿体無いと思えるものばかりでこの作者の力量を感じさせる。江戸時代という設定で無くても良いのでは、と思えるが遠い昔の時代の人間でも結局悩みはいつの世も変わらないのだと思えてそれもまた面白い。この作者の作品は全て読もうと思う。

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    2025年09月11日
  • 半席(新潮文庫)

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    ★3の下かな。

    江戸物ミステリー成長物語。

    下手人は既に挙がっている。
    なぜそんなことを、という動機を解き明かします。
    若者の青い心で爺様たちをオトシまくり。
     
    ・半席
      なぜ、筏の上を走った。

    ・真桑瓜
      瓜に罪はないけれど。

    ・六代目中村庄蔵
      名前。

    ・蓼を喰う
      どぶさらい。

    ・見抜く者
      剣に生きた。

    ・役替え
      知りたくなかった。

    ストンと納得できない話が多い。
    それは、私には武士の心情が未だつかめていないということだろう。
    ミステリー色は弱め。
    心情に重きを置いている。
    通じて主人公が成長していくさまも悪くない。
    ただ、ちょっとだけ時代物に付き物の説

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    2025年07月12日
  • 本売る日々

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    (とくに会話が)説明的・現代的すぎて、ちょっと自分が期待していた感じとは違っていたのだけど、最後まで読んでしまった。理屈から出来たみたいでありながら、「山怪」要素のあるお話も入っていてそこは面白い。

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    2025年06月22日
  • 下垣内教授の江戸

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    幕末、豪農の次男として生まれ
    “当代きっての日本美術の目利き”と言われるまでになった下垣内邦雄。
    昭和初期にかけ芯を持って生き抜いた。
    その身の上を新聞記者に語る。

    家を継ぐのは長兄の昌邦。
    幕末江戸の混沌とした背景や
    下垣内家の内情も少しずつわかってくる。

    つましく生きる兄が人を斬った。
    その訳を探るため邦夫は旅に出る。
    出会った縁がその先へ、前に進むことを促す。

    皆さんが書かれているように前置きが少々長い。
    読破している青山文平さんのご著書なのだから
    おもしろいことはわかっている。
    邦雄が人を斬る旅に出たところから引き込まれていった。

    青山文平さんのお陰で、また新たにその時代を知る

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    2025年05月15日
  • 下垣内教授の江戸

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    全ては「俺は人を斬ろうとしたことがある」といった兄の言葉を聞いたことから始まった・・弟は 相手を徘徊浪人と定め、下野の国から歩き始める。

    森戸村の名主、寄場惣代、農兵相談役の肩書を持った兄は武士にはなりたくなかったが・・幕府が崩れていこうとするその時でも言えの格式と武士たる権威を保とうと懊悩した。
    そして弟は儒学と剣術のほか、書、画,麝香と古琴と茶しか能がないと己を貶めつつも兄の跡を受け継いでいく。

    中盤まで、この下りをじっくり隠忍して読んで行かないと彼が何ゆえに「後ろを向いて歩みを進めたか」腑に落ちないはず。

    圧巻の時代小説というには看板倒れと言えなくもないが、明治の夜明け、刀を離さな

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    2025年05月14日
  • 下垣内教授の江戸

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    東京美術学校の発足に携わった下垣内教授の自らの半生のお話。実在の人物・・・じゃないようなどうなんだろう?

    正直、半分くらいまで読んでかなり退屈を覚えまして。当時の背景みたいなものが多くて・・これ面白くなるのかな?と挫折しそうになりながらも読み進めていたら、兄が急死し家督を整理して・・・傍から見たら自暴自棄な旅にも思える「人を斬るための」旅にというあたりから後半はなかなかに興味深いことに。人を斬ることと美術とどういう関係が?と思っていたら、なるほどそういう・・・なかなかに奥深いお話でした。

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    2025年04月16日
  • 父がしたこと

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    御藩主の病状を父から秘密裏に告げられた重彰
    全身麻酔での外科手術なのだが…

    前半難しい!この時代の医学は漢方医学であり、蘭学や医学書などの名前、医者は華岡青洲くらいしか知らないし…

    御藩主の手術成功から怒涛の展開でびっくり
    そういう話?だからのタイトルか⁈

    真相が語られない終わり方
    たぶんわたしの考える「父がしたこと」は違うとは思うけど…
    たぶん…
    だったら切ないなぁ…


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    2025年03月29日
  • 下垣内教授の江戸

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    人を殺すと斬る、人を殺した後は何を思うのか、兄が人を殺したと知りどう感じるのか人を殺そうと決意する18才の弟が色々波乱に富んだ江戸から明治にかけての世相の中旅に出る。様々な人との出会いから自問自答しながら生きていく過程は自分も考えさせられる内容だし、偶然が重なって今に至るのも流れに身を任せる人生も有りなんだと感じたが、教養も必要だし勉学や踏み出す勇気も必要なんだと思う。後半まで言葉の羅列で難しいが最後まで読んでよかったと思う。
    重さがある内容だった。

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    2025年02月11日
  • かけおちる

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    青山氏を追いかけているが、初期の本はいずれも難解・・よく言えば重く、渋い。
    18世紀終わり、江戸期でいうと中期・・安定と言えば宗田が「上に立つものの力量により、藩体制の黒白も定まる。

    今と違い、社会や学的分析がなかった時代「組織とは、倫理とは、治世とは。。」等など、限られた人脈の中で己自身との闘いで懊悩している姿が良く見て取れた。
    とっかかりが中盤までできず、ず~っと霧の中の重秀や長英を追っていたように思える。

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    2024年11月01日
  • 父がしたこと

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    こないだ華岡青洲生誕の地に行ったばかりで、江戸時代の医療がテーマだったので、そういう意味では楽しめましたが、小説の結末はしっくりきませんでした。
    結局、父がやったことの原因が曖昧なままで終わったので腑に落ちないままになりました。
    ミステリー仕立てにするならきっちり落とし所を明確にしていないところが今回は評価低目になりました。

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    2024年09月16日
  • やっと訪れた春に

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    表題からすると「妻亡きあと、後妻を迎えて・」とでも推せるが、装丁の「桜色にかかる墨の暗雲」が物語の行方を暗示している。

    架空の藩で130年余続いた跡目相続の捻じれ,近習目付の立て方も含め時が流れるにつれて歪みが。
    粛々とお役目を繋ぐことに「他者には口外否」の苦悩が。
    神格化された100年余前の藩主時代に起こった事を基にした「鉢花衆」
    短絡的に 閉鎖された世界と言い切ればこの作品が持つ動と静が綾なす緊張と弛緩の不連続な世界が味わえないかと。

    能の舞台、あるいは鎌倉期の奉公、おのれの生きざまの昇華は死のみか。。などと思いがラストで伴走する。
    舞台上の人物が限られているのでおのづと【まさか】の真

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    2024年07月14日
  • 泳ぐ者(新潮文庫)

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    暗い、あくまでも人の心をのぞき込む様などす黒い・・それでいて真っ当だからやるせない展開が続く。
    はっきり言って、難解だった。
    併行して読んでいたのが垣根さんの「極楽将軍・・」という事もあるのだろが、青山氏独特の言葉の裏面を探る調子に乗れなかった。

    結局菊枝の本音は解せたが、泳ぐ者の謎との関係が今一つ分からないまま。
    直人が付き進めんとする【なぜ】心の市であり先達ともいえる源内や雅之の言葉を音読すると心に染むかのようだ。
    対馬、長崎、フェートン号事件・・江戸後期の日本が知らずのうちに置かれていた事に求道する直人・・結局心が浮遊し続ける直人の心が「泳ぐ」ものなんじゃ?と一人で合点した。

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    2024年07月06日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    いかにも青山文平らしいというか…
    でも、納得いく結末かと言われれば、ちょっと。もし、本当に「父がしなければならなかったこと」だとしたら、真相は息子にも書き置くべきではなかったのでは(それでは小説にならない、というのは置いとくとして)。

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    2024年04月14日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    目付の永井重彰視点で語られる静謐な物語。
    蘭方が認められ、発展し始め、漢方医からの反発が強まるなかで行われた藩主の外科手術。執刀医の向坂は重彰の息子の恩人だった。藩主の信頼厚い小納戸頭取永井元重は、失敗したときに孫の恩人を守るため、策を巡らし、息子と二人だけで藩主の手術・療養を乗り切ることにする。

    医師を志したことがあり、世の中の流れにも敏感で、思慮深く、柔軟な思考をもっている元重。先進的な考えを持つ英明な若き藩主。父と同じく医師を志したことがあり、息子の療養に際しても妻を守り、夫婦協力することを当然と思う重彰。芯の通った聡明な母と妻。良心的な名医向坂。
    どこをとっても悲劇になりそうもないの

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    2024年03月23日
  • 半席(新潮文庫)

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    オチのあるミステリー作品。短編集みたいに連作になっている。歴史小説が舞台なので、わかりにくい用語をスマホで検索する必要があった。

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    2024年03月15日