青山文平のレビュー一覧

  • 鬼はもとより

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    主人公(抄一郎)と準主役(清明)の人間性が深堀して描かれていて、物語に引き込まれた。藩札を通した経済小説の一面もあり、人としての筋を通すという生き方を表現している部分もあり、とても良い作品。

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    2024年12月17日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    印象的な言葉が出て来る。『褒められたいのだと思う』藩主が親同然の家臣に求めたものは褒められたいであった。領民の為の良政は、シンプルに褒めてもらえそうというところから来ていた。妙に納得がいった。私も仕事しながら、褒めてもらいたいと素直に思ってるのを得心したら、笑ってしまった。あぁそうか褒めてもらいが根本の本音だ。カッコよく社会の為とか、そんなんじゃない。好きな人がいたら、尊敬する人がいたら尚更だ。分かるぞ。
    もうひとつ、躾についても言っていた。躾とは気持ちが動かずとも身体が動くようにするのが躾だと。
    そのままの言葉を引用する。『人なら、疲れ果てもするし、塞ぎ込みもするでしょう。目の前の用に、手が

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    2024年10月23日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    ある御藩主と名医、そして家臣たちの物語であると読み始めるが、最後に予想しない結末が待っていた。

    蘭学や漢方医、時代背景など、細かな情報が精確に著され、表現も会話も、そして物語も武家社会そのものを感じさせる、独特の世界。
    「跳ぶ男」「本を売る日々」を読んで3冊目の作者。どれも一分の隙もなく、時に非情でさえある。しかし、どの人物も人としての魅力に惹かれる。

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    2024年08月19日
  • 跳ぶ男

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    能・・鑑賞したこともないし、興味を抱くこともなかった私

    中世期、日本では能を武士の嗜みとし、江戸期においては素養の核の一つとして重用したらしい。
    松井さんの作品に「風姿花伝3部作」があるけど読んだ事はない。

    昨年、筆者青山氏の作品に流れる骨太さに惹かれ読んできたが、これは満を持した大作だとご自身も思っておられるのではないだろうか。構想から世に問うまで2年余をかけたとある。

    時代は江戸後期?貧しい藤戸藩に生まれた主人公 剛。
    お道具役の家柄に生まれながらまともな稽古を受けられぬまま、同じ家柄の岩橋保を知り、稽古をしていく形となる・・場所は「死んだものを海に流す野宮の石舞台。

    ここから始ま

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    2024年06月24日
  • つまをめとらば

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    江戸時代が背景で、お役が回ってこない下級武士たち。

    それでもなまじ身分があるゆえお上と民衆に挟まれるような立場の苦悩があり、反対に、民衆はといえば身分の低さの苦労が描かれた短編時代小説です。

    形や程度に差はあれど、現代にも通ずるものを感じます。

    それぞれの章には救いのヒントになるような人物がおり、だいたいの話は出口が見えたような、薄日が差したようなラストになっていたように思えました。

    個人的に
    『乳付け』
    ・初産で乳が出なく、自身の子どもに乳をあげられない母親が「乳付け」に悋気しながらの葛藤しつつも、その乳付けや夫、まわりの人情を描いたお話。
    『逢対』
    ・武士とは何かを識りたいもの、武

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    2024年06月12日
  • 底惚れ

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    最初から最後まで一貫しておもしろかった。いい人も悪い人も出てくるが、それぞれの事情が納得できるかたちで書いてあり、心情がよくわかる。本当に人の人生を生きた気持ちになる秀作だと思う。

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    2024年05月31日
  • 父がしたこと

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    青山氏の向かわんとするところに疑問を生じた時代劇ミステリー。
    小納戸頭取という役職にどれほどの重みがあるかを理解できぬまま、自らの命をとして「暴走」としか受け取れなかった「父 元重」
    最期まで己の考えを突き進めていった先に、何を観たかったのか、何を伝えんとしたか、不可解なままで幕を閉じた感がある。

    紀州の山奥の蘭方医 華岡青洲
    たまたま私が住むところの近くでもあり、その館を幾度も訪れた事もあって非常に親近感を覚えている。
    それだけに向坂医が滑落していくときの想いはどうだったんだろうと、暗然とした。
    名医と言われる彼のほか、子を孫を必死に守り続けた母、嫁の熱い想いと脇を固める人々皆か一つの方向

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    2024年05月30日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    漢方と蘭方の関係の描写が興味深い。人間宣言する前の天皇というものの記憶を語るものがまだ大勢いた昭和の終わりに天皇の体にメスが入ったとの報道に、医者の気持ちというものは如何なるものかと想像した時のことを思い出す。思想信条の違う人々があれこれ申していたことも同時に思い出す。漢方から蘭方に移る過渡期について、さる藩の出来事を通じて描く。家族の物語であると同時に、流行りの言葉で言えば「イノベーション」の歴史を書いているとも言える。

    ミステリーの部分についてはなかった方が良かったと思うが、泉鏡花の「外科室」を思い出した。

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    2024年05月28日
  • 底惚れ

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    本作品の最初の方を読んだ時、「また、やっちまったな!」と思った。以前に読んだ覚えがあって、気付かずに同じ本を買ったんだ、と思ったのだ。しかし、それにしては、なかなか話が終わらないし、主人公の出世話みたいな展開になっていくし、やっぱり別の話なのか?と思っていたら、解説を読んで解った。解説を読むまで解らなかったとは、チコちゃんに叱られる。

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    2024年05月26日
  • やっと訪れた春に

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    ネタバレ

    今回も青山文平、楽しめました。
    年老いた親友2人の互いに思いやる姿が好ましいと思って読み進めていたら、2人の親友たり得たかもしれない犯人が最後に現れ、2人の人生の影の様に生きていたことが判明。
    ミステリー仕立てで現代的な匂いのする時代小説だと思いました。
    九曜紋の鮫鞘の刀、梅仕事などの詳細な描写も物語りに彩りを添え、登場人物も夫々が真摯に生きていて魅力的。

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    2024年05月26日
  • 白樫の樹の下で

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    青山文平の出世作である。
    ある武士の生き方、剣の道を通して、武士とは、そして人間とは何かを考えさせられる。
    結末は、複雑なメソッドが絡み合ってファイナルに向かう。手の込んだ小説である。

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    2024年04月29日
  • 白樫の樹の下で

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    254頁を薄いとみるか、厚いとみるか。
    筆者作品は「妻をめとらば」から惚れ込んで読んできただけに、文体、内容、着地は文句ない。
    が、しいて言えば人間性の書き込みがあっさりしすぎか。

    松本清張賞という冠に疑問を抱いたが、次々と殺されて行く江戸の社会と舞台の中州で蠢く邪念疑念のウソ寒さ・・若者を取り巻く息苦しさに加えて圧倒的な貧困と先の見えない人生の道程。

    見方を変えれば種々の面白さが見えるだろうが、全く五里霧中の筋と捉える向きがいても驚かぬ・・終始流れる霧の様な。。
    私はあえてそこをミステリーの醍醐味と思い、筆者ならではの語彙の美しさも楽しんだ。

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    2024年04月25日
  • 春山入り(新潮文庫)

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    初めて青山文平さんの著作を読んだ。藤沢周平さんの小説を彷彿とさせる。江戸時代の下級武士の信条のようなものがじわりと重みを持って感じる。他の作品も読みたくなった。2024.4.8

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    2024年04月08日
  • 父がしたこと

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    初青山文平。
    久しぶりに、華岡青洲の「麻沸散」(全身麻酔薬、通仙散)の文字を見た。
    史実を土台にした医療時代小説だけど、本筋は武家小説。
    気になって、いろいろ考えてしまった。
    藩主の妄言とは?どこの藩?
    向坂先生は気の毒だとか。
    関係ないけど、
    華岡青洲の直系の子孫は東京で歯科医院を営んでいる。

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    2024年04月08日
  • 跳ぶ男

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    ネタバレ

    主人公の剛(タケル)は能を生業とする道具役(能の役者)の家に生まれた。能の師でもあり、兄のように慕った保は武士として死んだ。
    貧しくて墓に埋葬する土地もない台地の国では遺体は川に流される。「ちゃんとした墓参りができる国」にするために、剛は身代わりの藩主となって、能の力で御当代様へ働きかけようとするが・・・・。

    なんとも壮絶な物語だった。能のなんたるかを解き明かそうとする文章が後半にあるのだが、能の真実はわからないながらも引き込まれた。そして剛の衝撃的な決断・・・。いや、極めるのはそっちじゃないだろう、勿体無いと思うのは、能だけに囚われていた自分だから。能が、それほど魅力的なものに映った。

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    2024年03月28日
  • 父がしたこと

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    「本売る日々」に続いて2冊目の作品。武士としての生き方の第一はなんとしてもその当主を守ることなのかなと感じました。自分の家族よりも重き置くというのは、現代社会の価値観で考えると理解に苦しむ一端もありました。私息子も先天性の腸の病気があり、この時代に生きていたら、とても耐えられない状況に置かれたのかなと思います。鎖肛の孫や息子を護ろうとする凛とした女性たちの生き方には感服しました。

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    2024年03月23日
  • 父がしたこと

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    藩主の痔瘻の治療や新生児の鎖肛など、肛門の話を扱った小説は稀でありながら興味深く読ませてくれた。
    御城の小納戸頭取を勤める永井元重は、藩主より絶大な信頼をよせられていた。藩主の治療に必要な麻酔は、この時代には蛮夷として忌避されていたが、医師の向坂清庵は痔瘻手術に麻酔を使ったのだったが…。
    藩主を思う元重は様々な思惑、恩義、葛藤を抱えていたが、譲れない事象の為に家族の思いを裏切り自戒の念に苛まされる。
    苦しみながら父がしたことを捉える息子の心情が、感情を抑えながらも沁みるように感じさせる結末だった。

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    2024年03月05日
  • 父がしたこと

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    タイトルに惹かれて手にした
    みんな立派過ぎて・・・
    感嘆しかない
    それでも、そうしないといけなかった??
    それが悲しい

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    2024年03月02日
  • 父がしたこと

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    譜代藩の譜代筆頭の家に生まれ、一旦はともに医師を志した父子。

    藩主と我が子の恩人である蘭方医を山の事故で失い、一家の柱となる母を卒中で亡くし、更に隠居したばかりの父も海の事故で亡くすという悲劇を続けざまに経験し、その中で父が果たした役割を知った主人公は、自家で武士であるとはどういうことかを痛切に理解し、別の道を選ぶ。

    静かな佇まいの中、武家の覚悟を感じる味わい深い一品。

    題名は地味すぎるきらいがある。

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    2024年03月01日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    「父がしたこと」

    タイトルに惹かれ
    読む前から(父は何をしてしまったの?)と
    気になって仕方がない。

    青山文平さんが描く世界だから
    「父のしたこと」の大きさは
    とても許されることではないだろうと予測はつく。

    蘭学排撃の嵐が吹き荒れる中
    藩主の病の治療は外科手術で行われることになった。
    当時は漢方医が主だ。
    手術で藩主に危機が及べば一大事。
    相当な覚悟が必要だったと思う。
    どのように蘭方外科が成ってきたのか。
    丁寧に書かれているのでその歴史も知ることができる。

    曲がらぬ一本の筋。
    ときには、それが厄介なのだと改めて思う。

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    2024年02月15日