青山文平のレビュー一覧
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ネタバレ印象的な言葉が出て来る。『褒められたいのだと思う』藩主が親同然の家臣に求めたものは褒められたいであった。領民の為の良政は、シンプルに褒めてもらえそうというところから来ていた。妙に納得がいった。私も仕事しながら、褒めてもらいたいと素直に思ってるのを得心したら、笑ってしまった。あぁそうか褒めてもらいが根本の本音だ。カッコよく社会の為とか、そんなんじゃない。好きな人がいたら、尊敬する人がいたら尚更だ。分かるぞ。
もうひとつ、躾についても言っていた。躾とは気持ちが動かずとも身体が動くようにするのが躾だと。
そのままの言葉を引用する。『人なら、疲れ果てもするし、塞ぎ込みもするでしょう。目の前の用に、手が -
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能・・鑑賞したこともないし、興味を抱くこともなかった私
中世期、日本では能を武士の嗜みとし、江戸期においては素養の核の一つとして重用したらしい。
松井さんの作品に「風姿花伝3部作」があるけど読んだ事はない。
昨年、筆者青山氏の作品に流れる骨太さに惹かれ読んできたが、これは満を持した大作だとご自身も思っておられるのではないだろうか。構想から世に問うまで2年余をかけたとある。
時代は江戸後期?貧しい藤戸藩に生まれた主人公 剛。
お道具役の家柄に生まれながらまともな稽古を受けられぬまま、同じ家柄の岩橋保を知り、稽古をしていく形となる・・場所は「死んだものを海に流す野宮の石舞台。
ここから始ま -
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江戸時代が背景で、お役が回ってこない下級武士たち。
それでもなまじ身分があるゆえお上と民衆に挟まれるような立場の苦悩があり、反対に、民衆はといえば身分の低さの苦労が描かれた短編時代小説です。
形や程度に差はあれど、現代にも通ずるものを感じます。
それぞれの章には救いのヒントになるような人物がおり、だいたいの話は出口が見えたような、薄日が差したようなラストになっていたように思えました。
個人的に
『乳付け』
・初産で乳が出なく、自身の子どもに乳をあげられない母親が「乳付け」に悋気しながらの葛藤しつつも、その乳付けや夫、まわりの人情を描いたお話。
『逢対』
・武士とは何かを識りたいもの、武 -
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青山氏の向かわんとするところに疑問を生じた時代劇ミステリー。
小納戸頭取という役職にどれほどの重みがあるかを理解できぬまま、自らの命をとして「暴走」としか受け取れなかった「父 元重」
最期まで己の考えを突き進めていった先に、何を観たかったのか、何を伝えんとしたか、不可解なままで幕を閉じた感がある。
紀州の山奥の蘭方医 華岡青洲
たまたま私が住むところの近くでもあり、その館を幾度も訪れた事もあって非常に親近感を覚えている。
それだけに向坂医が滑落していくときの想いはどうだったんだろうと、暗然とした。
名医と言われる彼のほか、子を孫を必死に守り続けた母、嫁の熱い想いと脇を固める人々皆か一つの方向 -
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254頁を薄いとみるか、厚いとみるか。
筆者作品は「妻をめとらば」から惚れ込んで読んできただけに、文体、内容、着地は文句ない。
が、しいて言えば人間性の書き込みがあっさりしすぎか。
松本清張賞という冠に疑問を抱いたが、次々と殺されて行く江戸の社会と舞台の中州で蠢く邪念疑念のウソ寒さ・・若者を取り巻く息苦しさに加えて圧倒的な貧困と先の見えない人生の道程。
見方を変えれば種々の面白さが見えるだろうが、全く五里霧中の筋と捉える向きがいても驚かぬ・・終始流れる霧の様な。。
私はあえてそこをミステリーの醍醐味と思い、筆者ならではの語彙の美しさも楽しんだ。 -
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ネタバレ主人公の剛(タケル)は能を生業とする道具役(能の役者)の家に生まれた。能の師でもあり、兄のように慕った保は武士として死んだ。
貧しくて墓に埋葬する土地もない台地の国では遺体は川に流される。「ちゃんとした墓参りができる国」にするために、剛は身代わりの藩主となって、能の力で御当代様へ働きかけようとするが・・・・。
なんとも壮絶な物語だった。能のなんたるかを解き明かそうとする文章が後半にあるのだが、能の真実はわからないながらも引き込まれた。そして剛の衝撃的な決断・・・。いや、極めるのはそっちじゃないだろう、勿体無いと思うのは、能だけに囚われていた自分だから。能が、それほど魅力的なものに映った。